多発血管炎性肉芽腫症(GPA)たはつけっかんえんせいにくげしゅしょう

多発血管炎性肉芽腫症(GPA)は、以前「ウェゲナー肉芽腫症」と呼ばれていた全身性の血管炎です。鼻・副鼻腔や耳・目などの上気道、肺、腎臓に炎症が起こり、発熱・膿のような鼻水・咳・血尿などが見られます。治療しないと生命に関わることもありますが、現在はステロイドと免疫抑制薬を中心とした治療で予後は大きく改善しています。

⚫︎多発血管炎性肉芽腫症(GPA)とは?

多発血管炎性肉芽腫症(GPA)は、「ANCA関連血管炎」というグループに属する、全身の細い血管に炎症が起こる病気です。以前は「ウェゲナー肉芽腫症」と呼ばれていました。

特徴は、

  • 鼻・副鼻腔・耳・目・のどなどの上気道の炎症
  • 肺(気管・気管支・肺)に起こる炎症
  • 腎臓の炎症(半月体形成腎炎:進行が速いタイプの腎炎)

が組み合わさって起こることです。

血管の壁に炎症が起こると、その先の組織に十分な血液が行き渡らなくなり、臓器が傷ついてしまいます。また「肉芽腫(にくげしゅ)」と呼ばれるこぶのような炎症のかたまりが、鼻や肺などにできることも、この病気の特徴です。

GPAはまれな病気で、日本では年間発症率が人口100万人あたり2人程度と報告されています。

⚫︎多発血管炎性肉芽腫症(GPA)の原因

はっきりとした原因は分かっていませんが、次のような要素が関係していると考えられています。

自己免疫の異常

自分の免疫(防御システム)が、自分自身の血管を攻撃してしまう状態です。好中球という白血球を標的とする「ANCA(抗好中球細胞質抗体)」という自己抗体が、病気の発症や進行に関わっています。

ANCA(特にPR3-ANCA)の関与

GPAでは、PR3-ANCA(プロテイナーゼ3に対するANCA)が陽性になることが多く、診断の助けになります。日本ではMPO-ANCAが陽性となる例も一定数みられます。

感染などの引き金

上気道の細菌感染をきっかけに発症したり、再燃する例があることから、一部の細菌が免疫の異常を引き起こしている可能性が指摘されています。ただし、特定の細菌や生活習慣が直接の原因と特定されているわけではありません。

遺伝的な体質も関係すると考えられますが、「家族にいるから必ずなる」という病気ではありません。

⚫︎多発血管炎性肉芽腫症(GPA)の症状は?

GPAは、症状が「鼻やのどなどの局所症状」から始まり、徐々に肺や腎臓など全身の臓器に広がっていくことが多いとされています。ただし、すべての人が同じ順番で進むわけではありません。

よくみられる症状を部位別にまとめると次の通りです。

全身症状

  • 発熱
  • 強いだるさ
  • 体重減少
  • 関節痛・筋肉痛

上気道・耳・目の症状

  • 膿のような鼻水(膿性鼻漏)、鼻づまり]
  • 鼻出血、鼻の中のかさぶた、悪臭を伴う鼻汁
  • 中耳炎、耳だれ、難聴、耳の痛み

肺の症状

  • 咳、痰
  • 血痰(血の混じった痰)
  • 息切れ、呼吸困難

胸部X線やCTで結節(しこり)や空洞(くうどう:真ん中が抜けた病変)が写ることがあります。

腎臓の症状

  • 尿が赤い(血尿)
  • 尿が出にくい、むくみ

鼻中隔が壊れて「鞍鼻(あんび)」と呼ばれる鼻の変形をきたすこともあります。

⚫︎受診の目安

GPAは、早期に診断・治療を始めるほど臓器障害を抑えやすい病気です。次のような症状の組み合わせがある場合は、早めに医療機関に相談してください。

  • 長引く膿のような鼻水や鼻づまり、鼻出血が続いている
  • 副鼻腔炎や中耳炎を何度も繰り返し、耳の聞こえが悪くなってきた
  • 咳や血痰、息切れが続き、レントゲンで「陰影がある」と言われた
  • 尿検査で血尿や蛋白尿を指摘され、原因がはっきりしない
  • 発熱や体重減少、強い倦怠感に加え、皮疹や手足のしびれが出てきた

最初は耳鼻咽喉科や呼吸器内科・一般内科を受診し、血管炎が疑われる場合には膠原病内科・リウマチ内科や腎臓内科などの専門科と連携して診断・治療を行うことが多いです。

⚫︎診断方法と治療方法(全体像)

診断は、

  • 症状の出方(鼻・耳・肺・腎臓などの組み合わせ)
  • 血液・尿検査の結果(好中球、炎症反応、ANCA、腎機能など)
  • 画像検査(胸部X線・CT、副鼻腔CTなど
  • 組織検査(生検:組織を一部とって顕微鏡で確認)

を組み合わせて総合的に行います。

治療の柱は、

  • ステロイド(副腎皮質ホルモン)
  • 免疫抑制薬(シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサートなど)
  • 生物学的製剤(リツキシマブなど)

で、臓器障害の重さに応じて薬の種類や量を調整します。

▶︎多発血管炎性肉芽腫症(GPA)の診断

1)問診・身体診察

  • いつからどのような症状が出ているか(鼻・耳・肺・腎臓・神経・皮膚など)
  • 副鼻腔炎・中耳炎・肺炎・腎炎などとして治療されてきた経過
  • 体重減少・発熱・倦怠感など全身症状
  • 既往歴・服薬歴

などを詳細に確認し、耳鼻咽喉科領域や呼吸器、皮膚、神経学的な診察を行います。

2)血液・尿検査

  • 炎症反応(CRP、赤沈)
  • 貧血の有無
  • 腎機能(クレアチニンなど)
  • 尿検査(蛋白尿・血尿)

GPAではPR3-ANCAが陽性となることが多く、診断の重要な手がかりとなりますが、ANCA陰性の例もあるため、「ANCAだけで決めつけない」ことも大切です。

3)画像検査

  • 胸部X線・胸部CT:肺の結節・浸潤影・空洞形成などを確認
  • 副鼻腔CT:副鼻腔炎や骨破壊の有無
    これらは、病変の広がりを把握し、治療前後の比較にも役立ちます

など、GPAに特徴的な所見がないか確認します。ただし、すべての症例で典型的な所見が得られるわけではなく、総合的な判断が必要です。

▶︎多発血管炎性肉芽腫症(GPA)の治療

A. 初期治療(寛解導入療法)

  • 臓器障害が強い・命に関わる状態が疑われる場合には、炎症を早く抑える「寛解導入療法」を行います。
  • ステロイド
    →プレドニゾロンなどを高用量で開始し、症状・検査値を見ながら段階的に減量していきます。重症例ではステロイドの点滴療法(パルス療法)を短期間行うこともあります。
  • 免疫抑制薬
    →シクロホスファミド点滴(または内服)をステロイドと併用し、血管炎の活動性を強く抑えます。近年はリツキシマブ(B細胞を標的とする生物学的製剤)も寛解導入療法として用いられ、治療の選択肢が広がっています。

B. 維持療法

病気の勢いがおさまってきたら、再燃を防ぐ目的で「維持療法」に移行します。

  • ステロイドの漸減(できるだけ少ない量で維持)
  • アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチルなどの免疫抑制薬
  • 必要に応じてリツキシマブを一定間隔で投与

目標は「血管炎の活動性を抑えつつ、副作用をできるだけ少なくすること」です。

C. 支持療法・合併症対策

  • 感染症予防(ワクチン接種の検討、日常の感染対策)
  • ステロイドによる骨粗しょう症予防(骨粗しょう症治療薬、カルシウム・ビタミンDなど)
  • 高血圧・糖尿病・脂質異常症の管理
  • リハビリテーション(関節・筋肉・神経障害に対する機能訓練)

⚫︎多発血管炎性肉芽腫症(GPA)の予後

GPAは、治療法が確立していなかった時代には、生命予後の非常に悪い病気とされていました。しかし、現在はステロイドと免疫抑制薬・生物学的製剤を適切に用いることで、多くの患者さんで寛解(病気の勢いが静まった状態)に到達できるようになっています。

一方で、

  • 腎不全に至る腎障害
  • 肺出血(血痰・呼吸困難)
  • 心血管系の合併症
  • 再発(再燃)

などが予後に影響します。再燃は比較的多く、治療を中断したり、自己判断で薬を減らした場合に起こりやすくなります。

寛解後も定期的な通院・検査を続け、再燃のサイン(鼻・肺・腎臓・皮膚などの症状の再出現)を早くつかむことが重要です。

⚫︎多発血管炎性肉芽腫症(GPA)の予防

発症そのものを完全に防ぐ方法は、現在のところ分かっていません。

ただし、次のような点は「重症化の予防」や「早期発見」に役立ちます。

  • 長引く副鼻腔炎や中耳炎、原因不明の咳・血痰・血尿などがある場合は、早めに専門医に相談する
  • GPAと診断された後は、自己判断で治療を中断・減量しない
  • 免疫抑制療法中は、感染症予防(手洗い・マスク・ワクチンの検討など)に気を配る
  • 血圧・血糖・脂質など、動脈硬化の危険因子を整える

早期診断と適切な治療・生活管理により、臓器障害を最小限に抑えて長期的な予後を改善できる可能性があります。

⚫︎多発血管炎性肉芽腫症(GPA)に関連する病気や合併症

ANCA関連血管炎の仲間

  • 顕微鏡的多発血管炎(MPA)
  • 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)

これらは同じANCA関連血管炎に含まれ、症状やANCAのタイプが少しずつ異なります。

好酸球性副鼻腔炎・慢性副鼻腔炎

GPAでも副鼻腔炎を合併することがあり、耳鼻咽喉科との連携が重要です。

中耳炎・難聴

耳の病変により、伝音難聴・感音難聴をきたすことがあります。

鞍鼻(あんび)

鼻中隔の破壊により鼻筋がへこむ変形で、GPAの特徴的な合併症の一つです。

治療に伴う合併症

ステロイド・免疫抑制薬・生物学的製剤に伴う感染症・骨粗しょう症・糖尿病などにも注意が必要です。主治医と相談しながら定期的に評価・予防を行います。

⚫︎まとめ

多発血管炎性肉芽腫症(GPA)は、鼻・耳・肺・腎臓など全身の細い血管に炎症が起こる、まれではありますが重要な血管炎です。

治療法が整っていなかった時代には予後不良の病気でしたが、現在はステロイド・免疫抑制薬・生物学的製剤の登場により、多くの方で寛解が期待できるようになっています。

一方で、腎不全や肺出血、末梢神経障害など、生活の質や予後に影響する合併症が起こることもあり、早期診断と継続的なフォローが欠かせません。

「長引く耳鼻・呼吸器の症状に、血尿やしびれが重なっている」など気になるサインがあるときには、我慢せずに早めに専門医へ相談してみてください。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック

大阪大学 医学部 卒

東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。

患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。

  • 公開日:2026/04/01
  • 更新日:2026/04/01

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