耳管機能障害じかんきのうしょうがい
耳管機能障害は、耳と鼻をつなぐ「耳管」の働きがうまくいかなくなる病気の総称で、耳がつまった感じや自分の声が響く感じが続くのが特徴です。原因としては鼻炎や副鼻腔炎、急な体重減少などがあり、放置すると滲出性中耳炎や難聴につながることもあるため、長引く耳の違和感は耳鼻咽喉科での評価が大切です。
目次
⚫︎耳管機能障害とは?
耳と鼻の奥は、「耳管(じかん)」と呼ばれる細い管でつながっています。普段は耳管は閉じていて、あくびやつばを飲み込んだときなど、必要なときにだけ一瞬だけ開きます。この開け閉めによって、中耳(鼓膜の奥)の空気圧を外の気圧と同じくらいに保つことができます。
耳管機能障害(耳管機能不全)は、この耳管の働きがうまくいかなくなった状態の総称です。耳の中の圧が調整できなかったり、必要以上に耳管が開きっぱなしになったりして、
- 耳がつまった感じ(耳閉感)
- 音がこもる
- 自分の声や呼吸音が響く(自声強聴)
などの不快な症状が続きます。
⚫︎耳管機能障害の原因
耳管機能障害の原因はタイプによって少し異なりますが、代表的なものをまとめると次のようになります。
鼻やのどの炎症
風邪による急性鼻炎、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、上咽頭炎(鼻とのどの境目の炎症)などで、耳管の開口部まわりが腫れて狭くなり、耳管狭窄症を起こします。
アデノイド(咽頭扁桃)の肥大(子どもに多い)
子どもの鼻の奥にあるアデノイドが大きいと、耳管の入り口を圧迫し、耳管の働きを妨げて滲出性中耳炎や耳管狭窄症の原因になります。
急な体重減少ややせ型体質
ダイエット、病気、ストレスなどで急に体重が減ると、耳管の周囲の組織が痩せてしまい、耳管が閉じにくくなって耳管開放症を起こしやすくなります。
ホルモンバランスや体調の変化
妊娠・産後、ピル内服、更年期などのホルモン変化、睡眠不足や体調不良が耳管開放症の引き金になることがあります。
⚫︎耳管機能障害の症状は?
耳管機能障害に共通する主な症状
耳がつまった感じ(耳閉感)
耳の中に膜が張ったような、塞がったような違和感です。気圧の変化や体調によって強くなったり弱くなったりします。
音がこもって聞こえる
自分や周囲の音が「ボワン」と籠って聞こえ、テレビの音量を上げたくなることがあります。
耳鳴り
「ジー」「ゴー」などの耳鳴りを伴うことがあります。とくに伝音難聴に伴う軽い耳鳴りは、耳管狭窄症でよくみられます。
自声強聴・自己呼吸音聴取(耳管開放症に多い)
自分の声や呼吸音が頭の中で響きすぎる、不快なほど大きく聞こえるといった症状です。立っているときに症状が強く、横になると軽くなることが多いのが特徴です。
⚫︎受診の目安
次のような場合は、耳鼻咽喉科の受診をおすすめします。
- 耳がつまった感じが数日以上続き、自然に良くならない
- 片側または両側の聴こえづらさが出てきた、あるいは音がこもって聞こえる
- 自分の声や呼吸音が響いてつらい、自分の声の大きさが分かりにくい
- 飛行機・山登り・ダイビングなどで強い耳の痛みや詰まり感が続いている
- 耳の症状と同時に、めまい・ふらつき・耳鳴りが気になる
特に、
- 突然の聴力低下を伴う場合
- バランスが取れないほどのめまいを伴う場合
などは、突発性難聴や内耳の病気を否定する必要があるため、速やかな受診が重要です。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
診断は、耳の症状の経過を詳しく伺ったうえで、耳と鼻の診察、聴力検査、鼓膜や中耳の圧を調べる検査(ティンパノグラム)、必要に応じて耳管機能検査や画像検査を組み合わせて行います。耳管狭窄症・耳管開放症・圧変化による耳管機能不全などのタイプを見分けながら、他の病気(中耳炎、突発性難聴、メニエール病など)との鑑別も同時に行います。
治療は、
- 耳管狭窄症の場合:鼻やのどの炎症を改善する治療(内服薬・点鼻薬など)、耳管周囲の炎症を抑える処置
- 耳管開放症の場合:生活習慣の見直し(体重管理など)、局所薬による耳管周囲粘膜の調整、必要に応じて耳管の入口を狭める手術的治療
といった方針を、症状の程度に合わせて組み合わせていきます。
▶︎耳管機能障害の診断
1)問診・診察
耳がつまるタイミング(飛行機・入浴・体位変化など)、症状が片側か両側か、自声強聴の有無、鼻づまりや鼻水、のどの症状、急な体重減少の有無などを詳しく伺います。耳鏡や内視鏡で鼓膜の状態や鼻の奥(アデノイド・耳管開口部周囲)を観察します。
2)聴力検査・ティンパノグラム
純音聴力検査で聴力の程度を確認し、伝音難聴(音の通り道のトラブル)か感音難聴(内耳側のトラブル)かを判断します。ティンパノグラムでは、鼓膜の動き方と中耳の圧力を測定し、陰圧になっていないか、滲出液が貯まっていないかを評価します。
3)耳管機能検査
耳管開閉機能を調べる特殊な検査(耳管通気度検査など)を行い、耳管が十分に開くか、開きっぱなしになっていないかを評価します。日常診療では、耳抜きのしやすさや姿勢による症状の変化(横になると軽くなるなど)も診断の参考になります。
4)画像検査など
必要に応じてCTやMRIで中耳・副鼻腔・上咽頭の状態を確認し、腫瘍など他の病気の有無を調べます。アデノイド肥大が疑われる子どもでは、レントゲンや内視鏡検査が行われることもあります。
▶︎耳管機能障害の治療
A. 初期対応(まずやること/基本方針)
- 生活状況や体重変化、鼻炎・副鼻腔炎などの有無を整理し、「耳管狭窄症寄りか」「耳管開放症寄りか」を把握します。
- 中耳炎や突発性難聴が疑われる場合には、そちらの治療を優先しながら耳管機能もあわせて改善を図ります。
B. 耳管狭窄症に対する治療
鼻炎・副鼻腔炎の治療
抗アレルギー薬、ステロイド点鼻薬、去痰薬などで鼻の炎症を抑え、耳管の開口部まわりの腫れを改善します。
上咽頭炎(鼻の奥の炎症)に対する処置
上咽頭の炎症が強い場合には、局所の薬剤塗布(いわゆるBスポット療法など)が行われることがあります。
C. 耳管開放症に対する治療
生活習慣の調整
急な減量を避ける、十分な水分と栄養をとる、過度なストレスや睡眠不足を避けるなどが基本です。必要に応じて体重を少し戻すことで症状が改善することもあります。
局所治療
耳管の咽頭側の周囲に、粘膜を少し腫れさせる薬液を塗布したり、スプレーを使用して耳管を閉じやすくする方法があります。
D. 圧変化による耳管機能不全への対策
飛行機搭乗やダイビング前に鼻炎をしっかり治しておく、無理な潜水や急激な降下を避ける、必要に応じて専門医の指導のもとで耳抜き方法を習得するなどの対策をとります。
⚫︎耳管機能障害の予後
耳管機能障害は命にかかわる病気ではありませんが、日常生活の質(QOL)を大きく下げることがあります。原因となる鼻炎や副鼻腔炎の治療、生活習慣の調整を行うことで、症状が徐々に軽くなっていくケースも多くみられます。
一方で、耳管の働きが長期的に悪いままだと、滲出性中耳炎や癒着性中耳炎、真珠腫性中耳炎など、より重い中耳の病気へ進行してしまうことがあります。これらは手術が必要になることもあり、耳管機能の評価と管理は非常に重要です。
⚫︎耳管機能障害の予防
耳管機能障害を完全に防ぐことは難しいですが、次のような工夫でリスクを下げられます。
- 鼻炎・副鼻腔炎を放置せず、適切に治療する
- 花粉症やアレルギー性鼻炎は、シーズン前から対策(薬・舌下免疫など)を検討する
- 過度なダイエットや急激な体重減少を避ける
- 十分な睡眠と休養をとり、ストレスをため込みすぎない
- 飛行機やダイビング時は無理に耳抜きをせず、痛みが強い場合は早めに中止し、必要に応じて受診する
⚫︎耳管機能障害に関連する病気や合併症
滲出性中耳炎
耳管の働きが悪いと、中耳に液体がたまり、聞こえづらさや耳鳴りの原因になります。子どもに多い病気です。
癒着性中耳炎・真珠腫性中耳炎
長期間の陰圧で鼓膜が内側に引き込まれ、鼓膜が内側の壁にくっついたり、骨を壊していく真珠腫ができることがあります。
耳鳴り
耳管狭窄症や滲出性中耳炎に伴い、軽い耳鳴りを自覚する方もいます。
圧外傷(航空性中耳炎など)
飛行機やダイビング時に、耳管がうまく働かないと中耳内で出血や水ぶくれが起き、痛みや難聴の原因になります。
⚫︎まとめ
耳管機能障害は、耳と鼻をつなぐ耳管の働きがうまくいかなくなることで、耳がつまった感じや自分の声が響く不快感が続く病気です。
鼻炎や副鼻腔炎、急な体重減少、気圧の変化などがきっかけになることがあり、放置すると滲出性中耳炎や慢性的な中耳の病気につながることもあります。
症状や原因に応じて、鼻の治療や生活習慣の調整、耳管への局所治療・手術などを組み合わせて対処します。
長引く耳の違和感や聴こえの変化があれば、早めに耳鼻咽喉科で相談し、ご自身に合った治療方針を一緒に考えていきましょう。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- 木戸耳鼻咽喉科クリニック「耳管機能不全症とは?」
(https://kido-ent.com/ear/jikankinohuzen/ kido-ent.com) - 長谷川耳鼻咽喉科医院「耳管開放症・狭窄症(自分の声がひびく、耳がつまる)
(耳鼻咽喉科長谷川医院)
■ この記事を監修した医師
岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック
大阪大学 医学部 卒
東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。
患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。
- 公開日:2026/03/31
- 更新日:2026/03/31
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