ANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)あんかかんれんけっかんえんせいちゅうじえん
ANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)は、自己免疫による小さな血管の炎症が耳に起こることで生じる難治性中耳炎です。通常の治療で良くならない耳の症状や急に進む難聴が特徴で、早期に見つけてステロイドや免疫抑制薬で治療することが、聴力と命を守るうえでとても大切です。
目次
⚫︎ANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)とは?
ANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)は、鼓膜の奥にある中耳に「好酸球(こうさんきゅう)」という白血球が多く集まり、にかわ状のとても粘り気の強い液体がたまるタイプの中耳炎です。
いわゆる「子どもの中耳炎」「滲出性中耳炎」と似て、耳がつまった感じや聞こえにくさが出ますが、次の点が大きく異なります。
- 治りにくく、再発しやすい
- 中耳の粘膜や内耳を傷つけやすく、難聴が進みやすい
- 多くの方に気管支喘息や好酸球性副鼻腔炎(鼻の慢性的な病気)を合併する
成人、とくに中年以降の方に多くみられ、「難治性中耳炎」の代表的な病気のひとつです。
⚫︎ANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)の原因
OMAAVの「原因」は、いわゆる細菌やウイルスによる一般的な中耳炎とは異なり、「自己免疫の異常」が中心です。現時点で、なぜこの病気になるのかを完全に説明できる単一の原因は分かっていませんが、次のような要因が関わると考えられています。
ANCA関連血管炎そのもの
体の免疫システムが自分自身の血管を攻撃してしまう「ANCA関連血管炎」が背景にあり、その病変が耳の血管に現れた状態と考えられます。
ANCA(抗好中球細胞質抗体)の産生
ANCAが産生されることで、好中球が活性化し、耳の周囲の小さい血管に炎症や血流障害が起こり、中耳・内耳の組織が傷つきます。
関連する全身疾患
多発血管炎性肉芽腫症(GPA)、顕微鏡的多発血管炎(MPA)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)といった全身性のANCA関連血管炎の一部として、耳症状が先に現れることがあります。
⚫︎ANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)の症状は?
OMAAVの症状は、「耳の症状」と「全身症状(ほかの臓器の症状)」に分けて考えると分かりやすいです。最初は耳の症状だけのことも多く、一般的な中耳炎と区別がつきにくいため注意が必要です。
主な症状:
治りにくい耳の痛み・耳だれ・耳のつまった感じ
抗菌薬や鼓膜切開を行っても改善しない・すぐに再発する中耳炎が続きます。滲出性中耳炎や肉芽性中耳炎のような所見をとることが多いです。
難聴(聴こえにくさ)の急な進行
はじめは片側でも、やがて両側性の感音難聴・混合難聴が比較的短期間で進行します。高音域から急に聞こえにくくなることもあります。
耳鳴り・めまい
「キーン」「ゴー」といった耳鳴りや、ふらつき・回転性めまいを伴う場合があります。
顔面神経麻痺
片側の顔の筋肉が動かしづらい、口角が下がる、まぶたが閉じにくいなどの症状が出ることがあります。
⚫︎受診の目安
次のような場合は、耳鼻咽喉科(できれば中耳・難聴を専門とする外来)への受診をおすすめします。
- 抗菌薬や鼓膜切開を行っても中耳炎が良くならない・すぐに再発する
- 数日〜数週間のうちに、「片耳だけだった難聴が両耳になった」「急に聞こえが落ちた」と感じる
- 耳の症状に加えて、長引く発熱、原因不明の倦怠感、咳や息切れ、血尿・むくみ、皮疹、しびれなどがある
- 顔が動かしにくい、口角が下がる、まぶたが閉じにくいといった顔面神経麻痺の症状が出てきた
- 強い頭痛や首のこり、視力低下、ふらつきなど、神経症状が気になる
「難治性の中耳炎+急に進む難聴+何となく全身もしんどい」という組み合わせは、OMAAVを含む全身性の病気がかくれているサインの一つです。全身状態によっては、一般内科や腎臓内科、膠原病(リウマチ)内科などと連携した精査・治療が必要になります。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
診断は、「治りにくい中耳炎と急速に進む難聴」がないかを丁寧に確認したうえで、耳の診察・聴力検査・画像検査と、血液検査(特にANCA)や尿検査などの全身評価を組み合わせて行います。日本耳科学会が提案した「OMAAV診断基準2015」に沿って、他の中耳疾患を除外しながら総合的に判断します。
治療の基本は、一般的な中耳炎治療だけではなく、「ANCA関連血管炎そのものに対する全身治療」を早期に行うことです。ステロイド(副腎皮質ホルモン)に加えて免疫抑制薬や生物学的製剤を用いることで、耳の炎症と全身の血管炎を同時に抑え、聴力の回復や進行抑制、命に関わる合併症の予防を目指します。一般に、耳症状が出てから治療開始までの期間が短いほど、聴力の予後は良いとされています。
▶︎ANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)の診断
1)問診・診察
いつからどのような耳の症状があるか(耳痛・耳だれ・耳鳴り・めまい・難聴など)、抗菌薬や鼓膜切開でどの程度良くなったか、左右差はどうかを詳しく確認します。同時に、発熱や咳、息切れ、血尿、皮疹、しびれなどの全身症状の有無もチェックし、「耳だけの病気か」「全身の血管炎の一部として出ているのか」を見極めます。
2)耳の診察・聴力検査・画像検査
耳鏡や顕微鏡で鼓膜を観察すると、滲出性中耳炎様の貯留液や、肉芽性変化が見られることがあります。純音聴力検査で感音難聴や混合難聴の程度、左右差・経過を評価します。CTやMRIでは、中耳・乳突洞の炎症や骨破壊、硬膜肥厚の有無などを確認します。
3)血液・尿検査(ANCA検査を含む)
炎症反応(CRP、赤沈)、腎機能、尿検査(血尿・蛋白尿の有無)などを確認するとともに、ANCA(MPO-ANCA、PR3-ANCA)を測定します。ANCA陽性は診断の重要な手がかりですが、陰性でも典型的な経過をとる例があり、総合的な判断が必要です。
4)病理検査・鑑別診断
中耳の肉芽や粘膜を採取し、病理組織検査を行うと、血管の壊死性炎症や肉芽腫性変化が確認できることもあります。ただし、必ずしも典型的な所見が得られるとは限りません。好酸球性中耳炎、真珠腫性中耳炎、IgG4関連疾患など、類似の所見をとる病気との鑑別も重要です。
▶︎ANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)の治療
A. 初期対応(まずやること/基本方針)
- 一般的な中耳炎治療に反応しない場合は、早い段階で「ANCA関連血管炎の可能性」を念頭に置き、血液検査(ANCAを含む)や全身評価を追加します。
- OMAAVが疑われた時点で、耳鼻咽喉科だけでなく、膠原病内科・腎臓内科・呼吸器内科などと連携し、全身状態を踏まえた治療計画を立てます。
B. 全身治療(寛解導入療法と維持療法)
ステロイド(副腎皮質ホルモン)
プレドニゾロンなどを用いて炎症を強力に抑える「寛解導入療法」が行われます。重症例では点滴で高用量を短期間投与することもあります。
免疫抑制薬・生物学的製剤
シクロホスファミドやアザチオプリン、メトトレキサートなどの免疫抑制薬、リツキシマブなどの生物学的製剤を併用し、血管炎の活動性を抑えます。最近の研究では、軽症〜中等症でも免疫抑制薬を早期から併用することで、聴力予後が改善する可能性が示されています。
C. 耳局所の治療と補助療法
- 鼓膜換気チューブ留置や中耳内の処置により、貯留液を減らし、耳の症状緩和を図ります。
- 聴力が戻らない場合には、補聴器や人工内耳などの聴覚補償手段を検討します。
⚫︎ANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)の予後
適切な診断と治療が早く行われれば、耳の炎症が治まり、ある程度聴力が回復したり、進行を抑えられる可能性があります。一方で、診断が遅れ、すでに高度の感音難聴になってから治療を開始した場合は、聴力の回復が難しく、補聴器や人工内耳によるサポートが必要になることも少なくありません。
全国調査では、OMAAVは再燃しやすく、長期的な経過観察が必要な病気であることが示されています。また、耳に限局していた病変が、時間とともに肺や腎臓など他の臓器に広がるケースもあり、「耳の病気が落ち着いたように見えても、定期的な通院と検査が重要」というのが大きなポイントです。
⚫︎ANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)の予防
自己免疫の異常そのものを完全に防ぐ方法は現時点では分かっていませんが、次のような点を意識することで、早期発見や再燃予防につながります。
- 中耳炎が「いつもと違う」「なかなか治らない」と感じたら、早めに耳鼻咽喉科で相談する
- ANCA関連血管炎やOMAAVと診断された場合、指示された薬を自己判断で中断・減量しない
- 定期的な血液検査・尿検査・聴力検査を継続し、再燃のサイン(聴力低下、耳鳴りの悪化、血尿、息切れなど)があれば早めに受診する
感染症にかかると全身状態が悪化し、血管炎が再燃しやすくなることがあるため、日頃から手洗い・うがい、ワクチン接種(医師と相談)など基本的な感染対策を心掛ける。
⚫︎ANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)に関連する病気や合併症
全身性ANCA関連血管炎
多発血管炎性肉芽腫症(GPA)、顕微鏡的多発血管炎(MPA)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)など。耳症状がこれらの病気の「最初のサイン」になることがあります。
肺の合併症
肺胞出血や間質性肺炎などにより、咳・息切れ・血痰が出ることがあります。
腎臓の合併症(急速進行性糸球体腎炎など)
血尿や蛋白尿、むくみ、高血圧などを通して見つかることがあり、放置すると腎不全に進行することがあります。
顔面神経麻痺
片側の顔の筋肉が動かしづらくなり、表情の変化・まばたきの障害・口の閉じにくさなどが現れます。
⚫︎まとめ
ANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)は、自己免疫の異常により耳まわりの血管に炎症が起こり、通常の治療では治りにくい中耳炎や急速に進む難聴をきたす病気です。
抗菌薬や鼓膜切開でよくならない中耳炎が続いたり、短期間で両耳の聴こえが悪くなるときは、この病気を含む全身性の血管炎を疑うことが大切です。
治療はステロイドや免疫抑制薬・生物学的製剤による全身治療が中心で、早期に開始できれば聴力や全身の予後の改善が期待できます。
「いつもの中耳炎と違う」「全身もしんどい」と感じたら、耳鼻咽喉科を中心に内科(腎臓・呼吸器・膠原病)などと連携できる医療機関で早めに相談しましょう。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- 好酸球性中耳炎とANCA関連血管炎性中耳炎の病態と治療.耳鼻咽喉科関連学会誌2024.
(J-STAGE) - ANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)の診断基準2015(日本耳科学会).
(https://www.otology.gr.jp/common/pdf/diagnostic_criteria%20for_omaav.pdf)
■ この記事を監修した医師
岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック
大阪大学 医学部 卒
東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。
患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。
- 公開日:2026/03/31
- 更新日:2026/03/31
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