外リンパ瘻がいりんぱろう

外リンパ瘻は、内耳のリンパ液が耳小骨の奥にある小さな窓(卵円窓・正円窓)から中耳に漏れ出す病気です。頭部の打撲や強い鼻かみ、ダイビングなどをきっかけに、急な難聴や耳鳴り、めまいが起こります。早期に安静や手術などの適切な治療を行うことで、症状の改善が期待できます。

⚫︎外リンパ瘻とは?

外リンパ瘻は、内耳(ないじ)の中を満たしている「外リンパ液(がいりんぱえき)」という体液が、本来閉じているはずの小さな窓(卵円窓・正円窓)から中耳(ちゅうじ)へ漏れ出してしまう病気です。

内耳には、音を感じる「蝸牛(かぎゅう)」や、体のバランスをとる「前庭・三半規管」があります。この部分の圧(内耳の中の圧力)が急に変化したり、外から強い力が加わることで、膜に裂け目ができ、リンパ液が漏れてしまうと、難聴や耳鳴り、めまいなどが起こります。

⚫︎外リンパ瘻の原因

外リンパ瘻の原因として、次のようなことが知られています。

頭部や耳への外傷

転倒や交通事故で頭を強く打った、ボールが耳に当たった、耳かきや綿棒で奥まで強く入れてしまった、などの外傷がきっかけになることがあります。

急激な気圧の変化・圧の変化

飛行機の離着陸、スキューバダイビング、潜水、激しいくしゃみ・強い鼻かみ、重いものを持ち上げるときの「いきみ」などで、耳の中の圧力が急激に変化し、薄い膜(卵円窓・正円窓)に負担がかかって裂けてしまうことがあります。

中耳・内耳の病気や手術のあと

中耳炎、真珠腫(しんじゅしゅ)などの中耳の病気、耳の手術、こどもの先天的な耳の形の異常などが背景にあり、そこに外傷や圧変化が加わって発症することもあります。

⚫︎外リンパ瘻の症状は?

外リンパ瘻の症状は、「あるきっかけのあとに急に耳の症状とめまいが出る」という特徴があります。

耳の聞こえにくさ(難聴)

片耳に急な難聴が起こることが多く、「突然こもったように聞こえる」「片方だけ音が遠い」と感じます。進行性・変動性(よくなったり悪くなったりする)の難聴として気づかれることもあります。

耳鳴り

「シー」「ザー」「ゴー」といった水の流れるような音や、「キーン」という高い音が聞こえることがあります。

耳がつまった感じ(耳閉感)

飛行機に乗ったときのような耳の閉塞感、圧迫感を自覚する方もいます。

⚫︎受診の目安

次のような場合は、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。

  • 転倒、頭部打撲、耳への強い衝撃のあとに、片耳の急な難聴、激しい耳鳴り、回転性めまい、立てないほどのふらつきが出現した場合
  • ダイビング、飛行機、潜水、強く鼻をかんだ直後に、耳が詰まった感じと同時に難聴やめまいが出た場合
  • 突発性難聴やメニエール病と診断されたものの、「きっかけ」がはっきりしている安静で良くなり、動くと悪化するといった特徴があり、説明に納得がいかない場合

特に、急に起こった難聴や強いめまいは、早期の診断と治療が将来の聞こえに影響します。
「そのうち良くなるだろう」と放置せず、早めの受診が大切です。

⚫︎診断方法と治療方法(全体像)

診断では、次のような点を総合して、外リンパ瘻がどの程度疑われるかを判断します。

  • どのようなきっかけで症状が始まったか(外傷・圧変化など)
  • 難聴、耳鳴り、めまいの程度や経過
  • 聴力検査や平衡機能検査の結果

治療は、主に次のような流れで行います。

  • まずは安静を中心とした保存的治療で、リンパ漏れの自然閉鎖を期待する
  • 症状が強い場合や、よくならない場合には、手術で窓の部分を塞ぐ

▶︎外リンパ瘻の診断

1)問診・診察

  • 発症前に転倒や頭部打撲、耳への衝撃、ダイビング、飛行機搭乗、強い鼻かみ・いきみなどがなかったか
  • 症状が出たタイミング(その直後か、しばらくしてからか)
  • 難聴・耳鳴り・めまいの程度、変動の有無

2)聴力検査・平衡機能検査

純音聴力検査

どの高さの音がどのくらい聞こえにくいかを調べます。外リンパ瘻では、感音難聴(音を感じる部分の障害)パターンを示すことが多いとされます。

温度刺激検査や頭位変換による平衡機能検査

めまいの性質や左右差を調べ、他のめまい疾患(良性発作性頭位めまい症、メニエール病など)との鑑別に役立てます。

3)画像検査など

必要に応じてCT・MRIで内耳やその周囲の構造を確認し、骨折や腫瘍など他の病気がないか調べます。

4)手術所見・特殊検査

外リンパ瘻は、症状や通常の検査だけでは確定診断が難しい病気です。実際に手術で卵円窓・正円窓を観察し、リンパ液の漏れを確認して初めて確定診断となる場合があります。最近では、中耳を洗浄した液から内耳特異的なタンパク質(CTPなど)を測定して診断の助けとする方法も開発されています。

▶︎外リンパ瘻の治療

A. 保存的治療(まず行う治療)

絶対安静

入院して頭を高くして横になり、1週間前後ベッド上で安静に過ごします。トイレ以外はできるだけ動かないようにし、内耳の圧を安定させて自然に穴がふさがることを期待します。

生活上の制限

  • いきむこと(重いものを持ち上げる、強く鼻をかむ、便秘で強く踏ん張るなど)を避ける
  • 咳やくしゃみはできるだけ口を開けた状態で行い、耳への圧を減らす

B. 手術治療

外リンパ瘻閉鎖術(内耳窓閉鎖術)

保存的治療で改善しない場合、症状が悪化する場合、安静を解除すると再び症状が出る場合などには、鼓膜を切開して中耳をのぞき、卵円窓・正円窓の部分に自分の筋膜や脂肪などをあてて「ふた」をする手術が行われます。

手術の目的

リンパ液の漏れを止めることで、めまいの改善や難聴の進行予防を目指します。めまいは手術後に比較的早く改善することが多いとされますが、難聴や耳鳴りはもともとのダメージが大きいほど回復が不十分となることもあります。

⚫︎外リンパ瘻の予後

めまいについて

リンパの漏れが止まり、内耳の圧が安定すると、ぐるぐる回るような強いめまいは改善することが多いです。早期に治療を行うほど、日常生活への復帰もスムーズになる傾向があります。

難聴・耳鳴りについて

難聴や耳鳴りは、内耳の感覚細胞へのダメージの程度によって回復の度合いが変わります。早期の安静や手術でこれ以上の悪化を防ぐことはできますが、完全に元の聞こえに戻らない場合も少なくありません。

再発

再び強い外傷や圧変化が加わると、同じ側、または反対側で外リンパ瘻を起こす可能性があります。予防のために、日常生活で耳に過度な負担をかけないことが大切です。

⚫︎外リンパ瘻の予防

完全に防ぐことは難しいものの、次のような工夫でリスクを減らすことができます。

耳や頭を守る

スポーツや交通事故での頭部打撲を防ぐために、ヘルメットの着用や安全運転を心がけましょう。耳かき・綿棒は深く入れず、「耳の入り口だけ」を目安にやさしく行うようにします。

気圧変化に注意する

飛行機に乗るときは、上昇・下降時にあめやガムをかむ、こまめに唾を飲み込むなどして耳抜きをします。耳が痛いときに無理に強く鼻をかむのは避けてください。

ダイビングや潜水

耳抜きがうまくできないときは無理をせず、潜水を中止する勇気も必要です。ダイビング前には風邪や中耳炎がないかチェックしておくと安心です。

中耳・内耳の病気を放置しない

中耳炎や突発性難聴などの耳の病気は、早めに治療を受けることで、外リンパ瘻などの合併症を予防できる可能性があります。

⚫︎外リンパ瘻に関連する病気や合併症

突発性難聴

片耳の急な難聴と耳鳴りを起こす病気で、外リンパ瘻との鑑別が重要です。初期には症状が似ていることがあります。

メニエール病

めまい・難聴・耳鳴りをくり返す内耳の病気で、外リンパ瘻と症状が重なります。内リンパ水腫(内耳のむくみ)が背景にあるとされます。

内耳炎

中耳炎などから内耳に炎症が広がる病気で、強い難聴やめまいを起こします。内耳の障害という点で外リンパ瘻と関連が深い病気です。

慢性的な平衡障害・耳鳴り

外リンパ瘻の治療後も、軽いふらつきや耳鳴りが残ることがあります。必要に応じてリハビリテーションや心理的サポートを含めて対応していきます。

⚫︎まとめ

外リンパ瘻は、内耳のリンパ液が漏れ出すことで、急な難聴や耳鳴り、めまいを起こす病気です。

頭部外傷やダイビング、強い鼻かみなど、はっきりしたきっかけのあとに症状が出ることが多く、突発性難聴やメニエール病と似ているため見逃されやすい点に注意が必要です。

早期に安静や手術などの治療を行うことで、めまいの改善や難聴の悪化防止が期待できますので、「きっかけのある急な耳のトラブル」があれば、我慢せず耳鼻咽喉科を受診してください。

不安なときは一人で抱え込まず、症状や心配ごとを医師に伝えながら、一緒に治療方針を考えていきましょう。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック

大阪大学 医学部 卒

東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。

患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。

  • 公開日:2026/03/31
  • 更新日:2026/03/31

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