真珠腫性中耳炎しんじゅしゅせいちゅうじえん
真珠腫性中耳炎は、鼓膜の一部が奥に引き込まれ、その中に耳あかのような皮膚のかたまり(真珠腫)がたまって骨を溶かしながら進行する中耳炎です。耳だれや片側の難聴が続き、進行するとめまい・顔面神経麻痺・髄膜炎など重い合併症につながるため、手術による治療が基本となります。
目次
⚫︎真珠腫性中耳炎とは?
真珠腫性中耳炎は、慢性中耳炎の一種です。鼓膜の一部が袋状に奥へ引き込まれ、その袋の中に鼓膜表面の皮膚の成分や耳あかのようなカスがたまって「真珠腫(しんじゅしゅ)」という塊を作る病気です。見た目が白く光沢があり真珠のように見えるため、この名前がついていますが、「がん」などの本当の腫瘍ではなく、炎症性のできものです。
真珠腫は中耳の狭い空間の中で大きくなりながら、周囲の骨を少しずつ溶かしていきます。その結果、難聴だけでなく、めまい、顔面神経麻痺、さらには髄膜炎や脳膿瘍といった命に関わる合併症を起こすこともある「やっかいな中耳炎」です。早めに見つけて、きちんと治療することがとても大切です。
⚫︎真珠腫性中耳炎の原因
真珠腫性中耳炎が起こるしくみには、いくつかのタイプがありますが、多くは次のような流れで発生すると考えられています。
耳管(じかん)機能の低下
鼻の奥と中耳をつなぐ細い管(耳管)がうまく働かず、中耳の換気が悪くなると、鼓膜の一部が内側に引き込まれやすくなります。
鼓膜のくぼみ(リトラクションポケット)からの進展
鼓膜の上の方が袋状にくぼみ、そのくぼみの中に鼓膜表面の皮膚がはがれ落ちてたまり続けることで、真珠腫の塊になります。
滲出性中耳炎や慢性中耳炎が長く続く
中耳に液体がたまる滲出性中耳炎や、鼓膜に穴が開いた慢性中耳炎をくり返すと、鼓膜がさらに変形し、真珠腫ができやすくなります。
⚫︎真珠腫性中耳炎の症状は?
真珠腫性中耳炎は、初期には自覚症状が少なく、静かに進行することも多い病気です。次のような症状がみられます。
耳だれ(耳漏)
くり返し出てくる、においの強い耳だれが特徴的です。中耳で炎症が起こり、真珠腫の中や周囲に細菌感染が加わると、膿のような分泌物が出てきます。
聞こえにくい(難聴)
鼓膜や中耳の骨が壊れることで、片側の聞こえが徐々に下がります。テレビの音を大きくする、呼びかけに気づきにくい、電話で片側が聞き取りづらいなどの形で気づかれることがあります。
耳鳴り
「ジー」「ゴー」といった音が片耳で鳴ることがあります。
⚫︎受診の目安
次のような症状がある場合は、早めに耳鼻咽喉科の受診をおすすめします。
- 片側の耳だけ耳だれがくり返し出る、においが強い
- 片側の聞こえにくさが徐々に進んでいる
- 耳だれが続き、なかなか治らない慢性中耳炎がある
- 耳だれに加えて、めまい・ふらつき・耳の奥の痛みがある
- 片側の顔が動かしにくい、ゆがむ感じがある
- 耳の症状とともに、強い頭痛・発熱・意識がぼんやりする
「長く続く耳だれと片側の難聴」は、真珠腫性中耳炎を疑う大事なサインです。痛みが少ないからといって放置せず、早めに検査を受けることが重要です。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
診断は、耳鼻咽喉科で耳の中を詳しく観察し、聴力検査やCTなどの画像検査を組み合わせて行います。鼓膜の奥や乳突部(耳の後ろの骨の中)に真珠腫の塊がないか、その広がりや骨の破壊の程度を確認します。
治療の基本は「手術」です。真珠腫は自然にはなくならず、薬だけで完全に治すことはできません。中耳や乳突部の真珠腫をきれいに取り除き、骨の破壊をこれ以上進ませないようにすることが目的です。耳だれを止めて「安全な耳」にし、可能な範囲で聴力の改善も目指します。
▶︎真珠腫性中耳炎の診断
1)問診・診察
- 耳だれの出始めた時期、くり返す頻度、においの有無
- これまでの中耳炎や耳の手術歴、難聴に気づいた時期
- めまい・顔面の動かしにくさ・頭痛などの合併症を疑う症状の有無
などを詳しく確認します。
2)耳鏡・顕微鏡による観察
- 鼓膜の上方に袋状のくぼみ(リトラクションポケット)があり、その中に白いかたまりが見える
- 鼓膜の穴(穿孔)の縁や中耳の奥に白い角化物(真珠腫)が見える
- 肉芽(赤く盛り上がった組織)やポリープが見られる
といった所見を確認します。
3)聴力検査
- どの程度の難聴があるか、伝音難聴(音の伝わりの問題)か、感音難聴(内耳の障害)を伴っているかを調べます。将来の手術後の聴力予測にも役立ちます
4)画像検査(主にCT)
- 中耳から乳突部にかけて真珠腫の範囲や、骨の破壊の程度を確認します
- 内耳や顔面神経、頭蓋内に近い部分がどのような状態かを評価し、手術の方法や難易度を判断します
必要に応じて、MRIで頭蓋内合併症の有無や、術後の再発チェックを行うこともあります。
▶︎真珠腫性中耳炎の治療
A. 保存的治療(手術まで/手術が難しい場合に行うこと)
耳の洗浄・吸引
外来で耳の中の膿や汚れを吸い取り、感染を抑えます。
点耳薬・内服薬
細菌感染が強いときは、点耳薬や抗菌薬の内服で炎症をおさえます。ただし、これらはあくまで「周りの炎症を落ち着かせる」もので、真珠腫自体をなくすことはできません。
B. 手術治療
真珠腫性中耳炎の根本治療は、手術で真珠腫を取り除くことです。
鼓室形成術+乳突削開術など
耳の穴の中や耳の後ろを切開して、中耳から乳突部にかけて真珠腫をていねいに取り除きます。同時に、崩れた骨の部分を整え、必要に応じて耳小骨の再建(音を伝える骨のつなぎ直し)を行います。
再手術(セカンドルック)が必要なことも
真珠腫は隠れたところに残りやすく、再発することもあります。そのため、状態によっては一定期間後にもう一度手術(確認手術)を行い、残っていないかチェックすることがあります。
手術方法や入院期間は、年齢・真珠腫の広がり・反対側の耳の聞こえ・生活環境などによって変わりますので、担当医とよく相談しながら決めていきます。
⚫︎真珠腫性中耳炎の予後
- 真珠腫性中耳炎は放置すると進行し続けますが、適切な時期に手術を受けることで、多くの方で耳だれが止まり、日常生活に支障の少ない状態を目指すことができます
- ただし、すでに骨の破壊が進んでいる場合は、難聴が完全には元に戻らないこともあります
- 真珠腫は再発することがあるため、手術後も定期的な診察や必要に応じた画像検査が大切です
- 早期発見・早期治療により、顔面神経麻痺や髄膜炎・脳膿瘍などの重い合併症を防げる可能性が高くなります
⚫︎真珠腫性中耳炎の予防
真珠腫性中耳炎そのものを完全に防ぐことは難しいですが、次のような工夫でリスクを減らすことができます。
- 急性中耳炎・慢性中耳炎をきちんと治療する
- 鼻やのどの病気をそのままにしない
- 耳をいじりすぎない・強く耳掃除をしない
- 耳に水を入れないように注意する
- 受動喫煙を避ける
- 定期的な受診と聴力チェック
⚫︎真珠腫性中耳炎に関連する病気や合併症
慢性中耳炎
鼓膜に穴が開き耳だれや難聴が続く慢性中耳炎が、真珠腫性中耳炎の背景にあることがあります。
滲出性中耳炎
中耳に水がたまる滲出性中耳炎が長く続くと、鼓膜が引き込まれ真珠腫ができやすくなると考えられています。
慢性乳様突起炎
炎症が耳の後ろの骨(乳突部)に広がり、腫れや痛み・発熱を起こす状態です。
内耳炎・迷路炎
内耳に炎症が及ぶと、激しいめまいやさらに強い難聴が起きることがあります。
顔面神経麻痺
真珠腫が顔面神経の通り道の骨を溶かして障害すると、顔の動きが悪くなります。
⚫︎まとめ
真珠腫性中耳炎は、耳だれや片側の難聴が静かに続き、気づいたときには骨が溶けてしまっていることもある中耳炎です。
薬だけで治すことはできず、根本的な治療には手術が必要になりますが、適切なタイミングで治療すれば、重い合併症を防ぎながら「安全な耳」を目指すことができます。
耳だれがくり返し出る、片側だけ聞こえにくい、においの強い分泌物が続くといった症状がある場合は、早めに耳鼻咽喉科で検査を受けることが大切です。
不安なときは一人で抱え込まず、耳の専門医に相談して、自分に合った治療方針を一緒に考えていきましょう。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- バイオミ診療ガイド 耳疾患 真珠腫性中耳炎 ほか
(https://www.byomie.com/products/vol1/) - Ubie 症状チェック・病気事典(中耳炎・真珠腫性中耳炎関連ページなど)
(https://ubie.app/byoki_qa)
■ この記事を監修した医師
岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック
大阪大学 医学部 卒
東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。
患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。
- 公開日:2026/03/31
- 更新日:2026/03/31
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