好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)こうさんきゅうせいたはつけっかんえんせいにくげしゅしょう
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)は、気管支喘息や鼻茸を伴う副鼻腔炎などのアレルギーを背景に、白血球の一種である好酸球が増えて全身の細い血管に炎症(血管炎)を起こす指定難病です。発熱・しびれ・皮疹・息苦しさなどが出現し、放置すると心臓・腎臓など臓器障害につながるため、早期診断とステロイドを中心とした治療が重要です。
目次
⚫︎好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)とは?
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)は、以前は「チャーグ・ストラウス症候群」と呼ばれていた病気で、「ANCA関連血管炎」というグループに含まれる全身性の血管炎です。症状検索エンジン「ユビー」
もともと気管支喘息や、鼻茸(鼻ポリープ)を伴う好酸球性副鼻腔炎などのアレルギー症状がある人に、
- 好酸球(こうさんきゅう)という白血球が異常に増える
- 体中の細い血管に炎症(血管炎)が起こる
という変化が重なり、肺・皮膚・末梢神経・心臓・腎臓などさまざまな臓器に障害が出るのが特徴です。難病情報センター+2症状検索エンジン「ユビー」
好酸球は、もともと「アレルギー反応」や「寄生虫の防御」に関わる細胞ですが、増えすぎると自分自身の組織を傷つけてしまいます。血管の中や周りで好酸球が炎症を起こすことで、血液の流れが悪くなり、臓器がうまく働けなくなります。
⚫︎好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)の原因
現在のところ、「これが原因」と断定できるものは見つかっていませんが、次のような要因が関係していると考えられています。
アレルギー体質
気管支喘息や好酸球性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎など、アレルギーを背景にもつ人に多く見られます。
好酸球の異常な増加
何らかの免疫の異常により、好酸球が増えやすくなり、血管や臓器の中に入り込んで炎症を起こします。
自己免疫の関与
自分の体を敵とみなして攻撃してしまう「自己免疫」の仕組みが関わっていると考えられており、約半数でMPO-ANCAという自己抗体が陽性になります(ANCA:好中球に対する自己抗体)
環境要因・薬剤など
一部で、薬剤や感染症などをきっかけに発症・増悪する例が報告されていますが、多くは「はっきりした引き金は分からない」状態です。
遺伝的な体質も関係すると考えられていますが、「家族にいるから必ずなる」という病気ではありません。
⚫︎好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)の症状は?
EGPAの症状は、「アレルギー期」「好酸球が増える時期」「血管炎の時期」と、ある程度の流れをもって出てくることが多いとされていますが、実際には重なり合うことも少なくありません。
よく見られる症状を、部位ごとに挙げます。
呼吸器(肺・気道・副鼻腔)
- 成人になってからの気管支喘息、喘息が急に悪化する
- ゼーゼー・ヒューヒューする息(喘鳴)、息切れ
- 好酸球性副鼻腔炎による鼻づまり・嗅覚低下・鼻茸
全身症状
- 発熱
- 強いだるさ、体重減少
- 関節痛や筋肉痛
皮膚
- 紫色の斑点(紫斑)や赤いポツポツ(皮疹)、皮下出血(あざ)
末梢神経
- 手足のしびれ・ぴりぴりした痛み
- 力が入りにくい(足首が下がる、つまずきやすいなど)
※「多発単神経炎」と呼ばれ、EGPAで非常に頻度の高い症状です
注意ポイント
- 「喘息+好酸球の増加+手足のしびれ・紫斑」の組み合わせは、EGPAを強く疑うサインです
- 心臓や腎臓、消化管が障害されると、命に関わることもあるため、早期診断・早期治療が重要です
⚫︎受診の目安
次のような場合は、早めに膠原病内科・リウマチ内科・呼吸器内科・腎臓内科などの専門診療科への紹介が必要になります。
- 成人発症または急に悪化した気管支喘息があり、血液検査で好酸球が高いと言われている
- 喘息や副鼻腔炎に加え、手足のしびれ・力の入りにくさ・紫斑が出てきた
- 原因不明の発熱や体重減少、息切れ、胸痛、血尿・黒色便などが続く
最初は一般内科や呼吸器内科・耳鼻咽喉科を受診し、必要に応じて専門科に紹介してもらう流れが一般的です。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
診断は、
- 経過:喘息・副鼻腔炎などのアレルギー歴
- 血液検査:好酸球数、炎症反応、自己抗体(ANCAなど)
- 画像検査:胸部CT、副鼻腔CT など
- 必要に応じた組織検査:皮膚や神経、生検可能な臓器の一部
を組み合わせて総合的に行います。
治療の柱は、
- ステロイド(副腎皮質ホルモン)
- 免疫抑制薬
- 生物学的製剤(新しいタイプの注射薬)
で、「臓器障害の重さ」によって使い方を調整します。
▶︎好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)の診断
1)問診・身体診察
- 喘息の有無・発症時期・これまでの経過
- 副鼻腔炎・鼻茸の有無
- 発熱・体重減少・関節痛・皮疹など全身症状
- しびれや筋力低下、胸痛、息切れ、腹痛、血尿など臓器ごとの症状
これらを丁寧に聞き取り、皮膚・神経学的診察、心音・呼吸音などを確認します。
2)血液・尿検査
- 好酸球数の増加
- 炎症反応(CRP、赤沈など)の上昇
- ANCA(特にMPO-ANCA)
- 腎臓の状態(クレアチニン、尿検査での蛋白尿・血尿)
などを確認し、活動性や臓器障害の程度を評価します。
3)画像検査
- 胸部X線・胸部CT:肺に浸潤影(白い影)がないかを確認
- 副鼻腔CT:副鼻腔炎・鼻茸の有無や程度
- 心エコーや心臓MRI:心臓の障害が疑われる場合に実施
4)組織検査(生検)
皮膚や神経、場合によっては肺などから小さな組織を採取し、顕微鏡で
- 好酸球浸潤
- 壊死性血管炎
- 肉芽腫性変化
などの特徴的な所見を確認することで診断の助けとします
▶︎好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)の治療
A. 重症度に応じた治療の考え方
- 生命に関わる臓器障害(心臓・腎臓・消化管・中枢神経など)があるか
- 主に末梢神経や皮膚などの障害にとどまるか
によって、治療の強さを決めます。
B. ステロイド治療
- プレドニゾロンなどのステロイドを比較的高用量から開始し、症状や検査値の改善を見ながら少しずつ減量していきます
- 重症例では、メチルプレドニゾロンの点滴「パルス療法」を短期間行うこともあります
C. 免疫抑制薬
- シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサートなどが用いられ、特に臓器障害が強い場合や再発を繰り返す場合に、ステロイドと併用して使われます
D. 生物学的製剤
- 好酸球を標的とする抗IL-5抗体(メポリズマブなど)や、その類似薬は、EGPAに対して有効性が報告されており、既に一部で治療選択肢として用いられています
- 難治例や再発例で、ステロイドを減らしたい場合などに検討されます
⚫︎好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)の予後
ステロイドと免疫抑制薬の導入により、EGPAの5年生存率は80〜90%以上と報告されており、適切に治療すれば多くの方が長期的な生活を送ることができます。
一方で、
- 心臓や腎臓、消化管など重要臓器の障害
- 治療中止・減量時の再燃
- 末梢神経障害によるしびれ・筋力低下の残存
などが、予後や生活の質に大きく影響します。末梢神経障害によるしびれは、炎症が落ち着いても長く残ることが少なくありません。
病状が落ち着いた後も、定期的な外来受診や血液検査・画像検査を続けながら、再燃のサインがないかをチェックしていくことが大切です。
⚫︎好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)の予防
現在のところ、「発症そのものを確実に防ぐ方法」は分かっていません。
ただし、次のような点を意識することで、「重症化を防ぐ」「早期に気づく」ことは可能です。
- 喘息や副鼻腔炎など、もともとのアレルギー疾患をきちんと治療しておく
- 好酸球が高いと指摘されたり、原因不明の紫斑・しびれ・体重減少・発熱が続く場合は、早めに専門医に相談する
- 治療中は自己判断で薬を中断・大幅減量しない
早期診断・早期治療により、臓器障害を抑え、長期的な予後を改善できる可能性があります。
⚫︎好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)に関連する病気や合併症
好酸球性副鼻腔炎・鼻茸
強い嗅覚障害や鼻づまりを伴い、EGPAの背景疾患としてよく見られます。
気管支喘息
EGPA患者さんの多くに喘息があり、病気のコントロールに大きく関わります。
他のANCA関連血管炎
顕微鏡的多発血管炎(MPA)、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)など、似た仕組みを持つ血管炎との鑑別が必要になります。
好酸球増多症
寄生虫感染や薬剤、他の膠原病などでも好酸球が増えるため、「EGPA以外の好酸球増多症」との区別も重要です。
治療に伴う合併症
ステロイド・免疫抑制薬に伴う感染症リスク、骨粗しょう症、糖代謝異常などにも注意が必要です。
⚫︎まとめ
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)は、喘息や好酸球性副鼻腔炎を背景に、好酸球と血管炎が全身の臓器を傷つける指定難病です。
治療薬の進歩により、適切にステロイドや免疫抑制薬・生物学的製剤を用いることで、多くの方が長期的な生活を送れるようになってきました。
一方で、心臓や腎臓、末梢神経などの障害が残ることもあり、早期診断と継続的な通院・検査がとても大切です。
「喘息+好酸球増加+しびれや紫斑」など気になる症状の組み合わせがあるときは、一人で抱え込まず、早めに専門医へ相談してください。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- 難病情報センター「好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(指定難病45)」
(https://www.nanbyou.or.jp/entry/3877 難病情報センター) - 好酸球関連疾患調査研究班 解説ページ「好酸球性多発血管炎性肉芽腫症」
(https://www.vas-mhlw.org/kaisetsu-iryo/3-1-3)
■ この記事を監修した医師
岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック
大阪大学 医学部 卒
東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。
患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。
- 公開日:2026/03/31
- 更新日:2026/03/31
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