慢性中耳炎まんせいちゅうじえん
慢性中耳炎は、鼓膜にあいた穴が長くふさがらず、中耳の炎症や耳だれ・難聴が続く病気です。多くは急性中耳炎や鼓膜外傷のあとに起こり、放置すると聞こえの低下や合併症のリスクが高まります。適切な処置と手術治療で改善が期待できます。
目次
⚫︎慢性中耳炎とは?
慢性中耳炎は、鼓膜にあいた穴(鼓膜穿孔)が3か月以上ふさがらず、中耳に慢性的な炎症が続いている状態をさします。耳だれ(耳漏)がくり返し出たり、聞こえにくさ(難聴)が長く続くのが特徴です。
多くは急性中耳炎を何度もくり返したり、鼓膜が破れたあとに自然にふさがらなかった場合に起こります。鼓膜の穴を通して中耳が外気や水にさらされるため、細菌感染や炎症が続きやすくなります。
⚫︎慢性中耳炎の原因
慢性中耳炎の主な原因は、鼓膜の穴が長期間ふさがらず残ってしまうことです。
- 急性中耳炎の遷延・再発
急性中耳炎で鼓膜が破れ、そのまま穴が閉じにくくなると、慢性中耳炎に移行することがあります。炎症をくり返すと鼓膜の再生が妨げられます。 - 鼓膜外傷
耳かきの入れすぎや強い衝撃、爆発音、事故などで鼓膜が破れ、そのまま慢性化する場合があります。 - 耳管機能の低下
鼻の奥と中耳をつなぐ「耳管(じかん)」の働きが悪いと、中耳の換気がうまくいかず炎症が続きやすくなります。 - その他の全身的要因
糖尿病や喫煙、抵抗力の低下などは、感染や炎症が長引く原因となります。
⚫︎慢性中耳炎の症状は?
慢性中耳炎では、次のような症状がみられます。
- 耳だれ(耳漏)
膿のような分泌物が鼓膜の穴から出てきます。風邪をひいた時や水が耳に入った時に増えやすく、においを伴うこともあります。 - 聞こえにくい(難聴)
鼓膜に穴があくことで音が伝わりにくくなり、伝音難聴(でんおんなんちょう:音を伝える仕組みの障害による難聴)が起こります。炎症が長引くと、内耳(音を感じる部分)にも影響して混合難聴(伝音難聴+感音難聴)になることもあります。 - 耳鳴り
「ジー」「ゴー」といった音が聞こえることがあります。 - 耳のつまった感じ・違和感
耳の奥が重い、詰まった感覚が続くことがあります。
⚫︎受診の目安
次のような症状がある場合は、耳鼻咽喉科の受診をおすすめします。
- 耳だれが2〜3週間以上続く、くり返し出てくる
- 長いあいだ聞こえにくさが続いている
- 鼓膜に穴があると言われたことがあり、その後も耳だれや難聴が改善しない
- 耳だれに強いにおいがある、血液がまざる
- 耳だれに加えて、強い耳の痛み・めまい・顔の動かしにくさ・激しい頭痛がある
子どもの場合、テレビの音を大きくする・呼んでも反応が鈍い・言葉の遅れが気になるといったサインから気づかれることもあります。気になる症状が続くときは早めに相談しましょう。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
診断は、耳鼻咽喉科で耳の中を詳しく観察し、聴力検査や必要に応じて画像検査を行って行います。鼓膜に穴が残っているか、どの程度の難聴があるか、炎症が中耳やその周囲にどこまで広がっているかを確認します。
治療は、
- 耳だれや炎症をおさえる「保存的治療」
- 鼓膜の穴をふさぎ、聞こえを改善する「手術治療(鼓室形成術など)」
の二本立てで行います。状態や年齢、生活環境によって方針が変わるため、主治医とよく相談しながら治療を進めます。
●慢性中耳炎の診断
- 問診・診察
・耳だれが出始めた時期、くり返す頻度、きっかけ(かぜ・水泳・入浴など)を確認します。
・過去の中耳炎の回数、耳の手術歴、耳かきの習慣、他の持病(糖尿病など)の有無も重要です。 - 耳の観察(耳鏡・顕微鏡検査)
・鼓膜の穴の位置・大きさ、周囲の粘膜の状態、耳だれの量や性状を観察します。
・真珠腫性中耳炎(しんじゅしゅせいちゅうじえん:皮膚が塊となって骨を侵食するタイプ)を疑う所見がないかもチェックします。 - 聴力検査
・どの程度聞こえが下がっているか、伝音難聴か・感音難聴か・混合難聴かを調べます。 - 画像検査(必要に応じて)
・CT検査で、中耳から乳突部(耳の後ろの骨の中)への炎症の広がりや骨の破壊の有無を調べます。真珠腫性中耳炎や頭蓋内合併症が疑われる場合に重要です。
●慢性中耳炎の治療
保存的治療(まず行うこと)
- 耳だれのコントロール
外来で耳の中をていねいに洗浄・吸引し、局所の炎症を減らします。必要に応じて点耳薬(耳にさす薬)や内服薬を併用します。 - 耳を清潔に保つ・水を避ける
自宅では耳の奥を綿棒でいじりすぎないことが大切です。シャンプーやプールで耳に水が入ると悪化しやすいため、主治医の指示に従い耳栓の使用や水泳制限を検討します。 - 鼻・のどの治療
鼻炎や副鼻腔炎がある場合は、並行して治療し、耳管の環境を整えます。
手術治療(鼓室形成術など)
耳だれが落ち着いても、鼓膜の穴が残り難聴が続く場合や、再発をくり返す場合には、手術を検討します。
- 鼓膜形成・鼓室形成術
鼓膜の穴を自分の組織(筋膜など)でふさぎ、必要に応じて耳小骨(音を伝える小さな骨)を再建する手術です。これにより、再発しにくい中耳環境を作り、聞こえの改善を目指します。 - 手術の目的
①耳だれを止めて、乾いた耳にする
②聞こえを改善または悪化を防ぐ
③真珠腫など重い合併症の予防
手術の方法や時期は、年齢・耳の状態・反対側の耳の聞こえ・職業や生活スタイルなどを総合的に考えて決めます。
⚫︎慢性中耳炎の予後
- 適切な治療により、多くの方で耳だれはおさまり、日常生活に支障のない程度まで聴力が改善することが期待できます。
- 一方で、長期間放置した慢性中耳炎では、耳小骨の破壊や内耳障害が進み、難聴が残ることもあります。
- 真珠腫性中耳炎へ進展した場合や、炎症が骨や頭蓋内に広がった場合には、顔面神経麻痺・めまい・髄膜炎・脳膿瘍などの重い合併症を起こすことがあります。現在は抗菌薬や手術技術の進歩により頻度は減っていますが、早期対応が重要です。
⚫︎慢性中耳炎の予防
慢性中耳炎そのものを完全に防ぐことは難しいですが、次のような工夫でリスクを減らすことができます。
- 急性中耳炎をきちんと治療する
耳の痛みや発熱があるときは自己判断でやめず、医師の指示どおりに治療を続けることが大切です。 - 耳の中をいじりすぎない
耳かきを奥まで入れたり、強くこすったりすると鼓膜を傷つけるおそれがあります。耳そうじは「入口を軽く」が基本です。 - 耳に水をためない
鼓膜に穴があるときは、入浴やプールで水が入らないように注意し、必要なら耳栓や防水対策について医師に相談します。
⚫︎慢性中耳炎に関連する病気や合併症
真珠腫性中耳炎
鼓膜の一部が内側にくぼみ、そこに皮膚がたまって塊(真珠腫)を作るタイプの中耳炎です。骨を溶かしながら広がるため、めまい・顔面神経麻痺・髄膜炎などの重い合併症につながることがあります。
慢性乳様突起炎
中耳の炎症が耳の後ろの骨(乳様突起)に広がった状態で、耳の後ろの腫れや痛み・発熱などがみられます。
頭蓋内合併症
ごくまれですが、炎症が頭蓋内に広がると、髄膜炎・脳膿瘍・静脈洞血栓症など命に関わる病気を引き起こすことがあります。
耳管機能障害・滲出性中耳炎
耳管の働きが悪いと、滲出性中耳炎(中耳に水がたまる状態)や他の中耳疾患をくり返しやすくなり、慢性中耳炎の背景となることがあります。
⚫︎まとめ
慢性中耳炎は、鼓膜にあいた穴がふさがらず、耳だれや聞こえにくさが長く続く病気です。
急性中耳炎や鼓膜外傷をきっかけに起こることが多く、放置すると難聴や重い合併症につながるおそれがあります。
耳だれが続く・聞こえづらいと感じたときは、「そのうち治る」と決めつけず、早めに耳鼻咽喉科で状態を確認することが大切です。
適切な処置や手術治療によって、耳の乾燥と聴力の改善を目指すことができますので、不安なことがあれば遠慮なく相談してください。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- バイオミ診療ガイド vol.1/vol.13(耳鼻咽喉科 耳疾患・中耳炎に関する解説)
(https://www.byomie.com/products/vol1/) - Ubie 症状チェック・病気事典(中耳炎関連ページなど)
(https://ubie.app/byoki_qa)
■ この記事を監修した医師
岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック
大阪大学 医学部 卒
東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。
患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。
- 公開日:2026/03/31
- 更新日:2026/03/31
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