鼓膜炎こまくえん

鼓膜炎は、鼓膜そのものに炎症や水ぶくれができる病気で、強い耳の痛みや聞こえづらさを起こします。多くは細菌・ウイルス感染や耳かきによる傷がきっかけで、適切な治療を行えば多くは数日〜数週間で改善が見込めます。

⚫︎鼓膜炎とは?

鼓膜炎は、外耳と中耳の境目にある「鼓膜」に限局して炎症が起きている状態です。
急に鼓膜の表面に水ぶくれ(水疱)ができて強い痛みを起こす「急性(水疱性)鼓膜炎」と、刺激や感染をくり返すことで鼓膜の表面にただれや肉芽(にくげ:ぶよぶよした組織)ができる「慢性鼓膜炎」に大きく分けられます。

急性鼓膜炎では、耳の激しい痛みが突然出ることが多く、とくに子どもでは夜中に急に泣き出す原因になることがあります。慢性鼓膜炎では、痛みはそれほど強くないものの、耳だれが長く続いたり、耳がつまった感じや聞こえにくさが続くことがあります。

⚫︎鼓膜炎の原因

鼓膜炎の原因はいくつかの要素が重なっていると考えられています。

細菌やウイルスの感染

  • かぜやインフルエンザなどのウイルス、肺炎球菌・マイコプラズマなどの細菌の感染がきっかけで、急性中耳炎と一緒に鼓膜に水ぶくれができることがあります

耳かきなどによる機械的な刺激・小さな傷

  • 綿棒や耳かきを奥まで強く入れる習慣があると、鼓膜や外耳道(耳の穴の皮膚)に細かい傷がつき、そこから細菌が入りこんで鼓膜炎を起こすことがあります。慢性鼓膜炎では、このような刺激を長年くり返しているケースも見られます。

中耳炎・外耳道炎など他の耳の病気

  • 中耳炎の経過中に鼓膜表面に水疱ができたり、外耳道炎が鼓膜近くまで広がることで鼓膜炎を合併することがあります。

⚫︎鼓膜炎の症状は?

急性鼓膜炎(水疱性鼓膜炎)でよくみられる症状

  • 急に出る強い耳の痛み(片方の耳だけのことが多い)
  • 耳の詰まった感じ(耳閉感)
  • 聞こえにくさ(軽い難聴)
  • キーン、ジーといった耳鳴り
  • 発熱や全身のだるさ(感染をともなう場合)

慢性鼓膜炎でみられやすい症状

  • 持続的またはくり返す耳だれ(においが気になることもあります)
  • 耳のつまった感じ、聞こえにくさ、耳鳴りが続く
  • 痛みは弱いか、ほとんどないこともある

⚫︎受診の目安

次のような場合には、早めに耳鼻咽喉科の受診を検討してください。

  • 強い耳の痛みが1日以上続く、夜眠れないほど痛い
  • 耳だれ(とくに血が混じる)が出る、においが気になる
  • 聞こえにくさや耳鳴りが急に出た、あるいはよくならない
  • 発熱や強いだるさを伴う
  • 子どもが耳を気にして泣く、機嫌が極端に悪い
  • 頭を打ったあとに耳だれ・難聴・めまいが出てきた

これらの症状がある場合、放置せず早めに受診することで、重症化や後遺症のリスクを減らすことが期待できます。

⚫︎診断方法と治療方法(全体像)

診断は
問診と耳の診察(耳鏡検査)が中心です。耳鼻咽喉科では、耳鏡や顕微鏡という器具を使って鼓膜を拡大して観察し、水ぶくれ・ただれ・肉芽の有無、中耳炎の合併などを確認します。必要に応じて聴力検査や、鼓膜の動きを調べる検査(ティンパノメトリー)を行い、耳全体の状態を評価します。

治療は

  • 痛みを抑える薬(解熱鎮痛薬)
  • 細菌感染が疑われる場合の抗菌薬(飲み薬や点耳薬)
  • 耳だれや汚れを取り除く耳処置
  • 痛みが非常に強い場合に行う、水ぶくれの切開(中身を出す処置)
    などが中心になります。

●鼓膜炎の診断

1)問診・全身状態の確認

  • いつからどのような耳の痛み・耳だれ・聞こえにくさがあるか
  • かぜ症状(鼻水・のどの痛み・発熱)の有無
  • 耳かきの頻度や強さ、綿棒をどこまで入れているか
  • これまで中耳炎や外耳道炎をくり返していないか
    などを詳しくうかがいます。

2)耳鏡による鼓膜の観察
耳鼻咽喉科では、耳鏡や顕微鏡で鼓膜を拡大して観察します。

  • 急性鼓膜炎:鼓膜の表面に透明〜黄色、あるいは血が混じった水ぶくれが見られ
  • 慢性鼓膜炎:鼓膜の表面にただれや白っぽい厚み、ぶよぶよした肉芽が見られる
  • 中耳炎、外耳道炎の合併の有無
    などを確認します。

3)聴力検査・鼓膜の動きの検査

  • 聞こえにくさが目立つ場合は聴力検査で程度を確認します。鼓膜や中耳の状態を調べるため、鼓膜の動きを波形として測定する検査(ティンパノメトリー)が行われることもあります。

●鼓膜炎の治療

A. 初期対応(まずやること/基本方針)

  • 痛み止め(解熱鎮痛薬)
     アセトアミノフェンなどを用いて痛みや発熱を和らげます。自己判断で市販薬を使っても構いませんが、痛みが続く場合は早めに受診しましょう。
  • 耳をさわりすぎない
     痛みやかゆみがあっても、耳かきや綿棒で奥までこするのは避けます。傷を広げて炎症を悪化させるおそれがあります。
  • 耳をできるだけ濡らさない
     シャワーや洗髪の際に耳の中に水が入ると、炎症が長引くことがあります。可能な範囲で耳へ水が入りにくいよう工夫してください。

B. 医療機関で行う治療

  • 抗菌薬(内服薬・点耳薬)
     細菌感染が疑われる場合は、抗菌薬の飲み薬や点耳薬が処方されます。中耳炎を合併しているときは、急性中耳炎に準じた治療を行います。
  • 耳の清掃(耳処置)
     耳だれや汚れを専用の器具で丁寧に吸い取り、必要に応じて鼓膜や外耳道に薬を塗布することで治りを早めます。
  • 水疱の切開
     急性鼓膜炎で痛みが非常に強く、鼓膜表面に大きな水ぶくれがある場合、局所麻酔をして水疱を小さく切開し、中の液体を出すことで痛みが軽減することがあります。

⚫︎鼓膜炎の予後

  • 急性鼓膜炎の多くは、適切な処置と薬物治療により数日〜1〜2週間ほどで痛みが落ち着き、鼓膜の状態も改善していきます。聞こえの低下も、多くは炎症がおさまるとともに回復します。
  • 慢性鼓膜炎では、耳だれや聞こえにくさが長く続くことがありますが、定期的な耳処置と生活習慣の見直しによりコントロールできるケースも少なくありません。
  • 炎症が長期間続いた場合、伝音難聴(音が伝わりにくくなるタイプの難聴)や、中耳炎をくり返しやすくなることがあります。早期の治療と再発予防が大切です。

⚫︎鼓膜炎の予防

鼓膜炎を完全に防ぐことは難しいですが、次のような工夫でリスクを下げられます。

  • 耳かきは「やりすぎない・奥まで入れない」
     耳あかは多くの場合、自然に外へ押し出されます。基本的には、耳の入り口付近をやさしくふき取る程度で十分です。かゆみが強い・耳あかが詰まっている気がする場合は、自分で奥まで触らずに耳鼻咽喉科で相談しましょう。
  • かぜ・インフルエンザの予防
     手洗い・うがい、マスクの活用、十分な睡眠とバランスの良い食事といった基本的な感染症対策は、中耳炎・鼓膜炎の予防にもつながります。必要に応じてインフルエンザワクチンなども主治医と相談してください。
  • 耳を濡らしすぎない
     頻回な水泳やダイビング、耳に水が入りやすい環境が続くと、外耳道や鼓膜の炎症の原因になることがあります。耳栓の使用などで予防できる場合があります。

⚫︎鼓膜炎に関連する病気や合併症

  • 急性中耳炎
     中耳(鼓膜の奥)が炎症を起こす病気で、鼓膜炎と同時に起こることも多く、強い耳の痛みや発熱、聞こえにくさを伴います。
  • 外耳道炎
     耳の穴の皮膚に炎症が起こる病気で、耳かきのしすぎや湿気が原因となります。慢性鼓膜炎の背景になっていることもあります。
  • 慢性中耳炎・滲出性中耳炎
     中耳に炎症や液体がたまった状態が長く続き、聞こえにくさが慢性化する病気です。鼓膜の変化と組み合わさると、聴力への影響が大きくなることがあります。
  • 鼓膜穿孔(こまくせんこう)
     炎症や外傷によって鼓膜に穴があいた状態です。耳だれや難聴を起こし、繰り返すと手術が必要となる場合もあります。

⚫︎まとめ

鼓膜炎は、耳の奥にある鼓膜そのものが炎症を起こす病気で、急な強い耳の痛みや耳だれ、聞こえにくさの原因になります。

多くは感染症や耳かきのしすぎがきっかけで、適切な治療を受ければ数日〜数週間で改善することがほとんどです。

ただし、放置すると慢性化したり、難聴や繰り返す中耳炎につながることもあるため、耳の症状が続くときは無理をせず耳鼻咽喉科を受診しましょう。

耳かきを控えめにする、かぜ予防を心がけるなど、日常のちょっとした工夫も鼓膜炎予防につながります。

 

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック

大阪大学 医学部 卒

東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。

患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。

  • 公開日:2026/03/31
  • 更新日:2026/03/31

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