顔面神経麻痺がんめんしんけいまひ

顔面神経麻痺は、顔の筋肉を動かす「顔面神経」が障害され、片側の顔が動かしにくくなる病気です。額にしわを寄せられない、まぶたが閉じない、口から水がこぼれるなどの症状が突然出ることが多く、早期の診断と治療が大切です

⚫︎顔面神経麻痺とは?

顔面神経麻痺は、顔の表情をつくる筋肉を動かす「顔面神経」が、何らかの原因で傷ついたり、腫れて圧迫されたりすることで、顔の筋肉が動かしにくくなる状態をいいます。

顔面神経は

  • 眉を上げる
  • 目を閉じる
  • 口角を上げる(ほほえむ・口をすぼめる)

といった動きを担当しているほか、涙や唾液の分泌、舌の前のほうの味覚、音の大きさの調整にも関わっています。
そのため顔面神経麻痺になると、見た目のゆがみだけでなく、目の乾燥、味覚の変化、耳が過敏になる(音が響きやすい)といった症状が出ることもあります。
顔面神経麻痺の多くは、耳の奥で神経が障害される「末梢性顔面神経麻痺」で、そのうち原因不明とされてきたタイプを「ベル麻痺」と呼びます。その他、帯状疱疹ウイルスによる「ラムゼイ・ハント症候群」や、外傷・脳卒中・腫瘍などに伴うものもあります。

⚫︎顔面神経麻痺の原因

 顔面神経麻痺にはさまざまな原因があり、大きく次のように分けられます。

特発性(ベル麻痺)

最も多いタイプで、ある日突然片側の顔が動かなくなります。最近では、体内に潜んでいる単純ヘルペスウイルスが顔面神経で再活性化し、炎症とむくみを起こすことが主な原因と考えられています。

ウイルス感染によるもの(ラムゼイ・ハント症候群など)

水ぼうそうの原因である「水痘・帯状疱疹ウイルス」が耳の奥の神経で再活性化し、激しい耳の痛み、耳や口のまわりの水ぶくれとともに顔面麻痺を起こすタイプです。

中耳炎・側頭骨骨折など耳の病気や外傷

重い中耳炎、頭を強く打った外傷、耳の周囲の手術などで顔面神経が直接傷ついたり圧迫されたりして起こることがあります。

脳卒中(中枢性顔面神経麻痺)

脳の中で顔面神経の中枢が障害された場合にも、顔の麻痺が出ます。この場合は、手足の麻痺やろれつが回らないなど、他の神経症状を伴うことが多く、救急対応が必要です。

⚫︎顔面神経麻痺の症状は?

典型的には、数時間〜数日の間に、片側の顔の動きがだんだん悪くなり、次のような症状が出てきます。

片側の顔がゆがむ

笑うと口角が反対側だけ上がり、麻痺側は垂れ下がって見えます。鼻のしわも片側だけになり、鏡を見ると左右差がはっきり分かることが多いです。

額にしわが寄せられない、まぶたが閉じにくい

麻痺側の眉が上げにくくなり、額にしわが入りません。まぶたがしっかり閉じられず、寝ているときも白目が少し見えていることがあります。

口から水やよだれがこぼれる

うがいをすると水がこぼれる、食事中に口の端からよだれが出る、といった症状が出ます。ストローがうまく使えないこともあります。

味覚の変化・音が響く

舌の前のほうで味が感じにくくなる、食べ物の味が薄く感じる、音が耳の中で響いて大きく感じる(聴覚過敏)といった症状が出ることがあります。

⚫︎受診の目安

次のような場合は、早めの受診をおすすめします。

  • 片側の顔が急に動かしにくい、ゆがんで見える
  • 片側の目が閉じられない、口角が下がる
  • うがいや飲み物で口から水がこぼれる
  • 味が分かりにくい、音が響くようになった

さらに、次の症状が一緒にある場合は、脳卒中の可能性もあるため、救急車を呼ぶことを検討してください。

  • 手足の力が入りにくい・しびれる
  • ろれつが回らない、言葉が出にくい・理解しにくい
  • 急な激しい頭痛、ふらつき、意識がもうろうとする

顔のゆがみが主な症状であっても、「そのうち治るだろう」と自己判断せず、早めに耳鼻咽喉科・脳神経内科・脳神経外科などを受診することが大切です。

⚫︎診断方法と治療方法(全体像)

顔面神経麻痺の診断では

  • 中枢性(脳の病気)か末梢性(神経〜耳の病気)か
  • ベル麻痺なのか、帯状疱疹・外傷・腫瘍など別の原因があるのか

を見極めることが重要です。

問診・診察で症状の出方や同時に出ている症状を確認し、必要に応じて血液検査・画像検査(CT・MRI)・神経機能検査などを組み合わせて評価します。

治療の柱は

  • ベル麻痺など末梢性顔面神経麻痺へのステロイド治療(炎症とむくみを抑える薬)
  • ラムゼイ・ハント症候群などへの抗ウイルス薬+ステロイド
  • 目を守るための点眼薬・眼軟膏・テーピング
  • 原因が外傷・腫瘍のときは、手術や全身治療など

⚫︎顔面神経麻痺の治療

A. 初期対応(まずやること/基本方針)

  • 原因が緊急性の高いもの(脳卒中・重い感染症など)ではないかを早期に見極め
  • 目が閉じにくい場合は、角膜を守るケアをすぐ始める
  • 麻痺の程度・進行スピードから、ステロイド投与などの治療方針を決める

目が閉じにくい場合は

  • 人工涙液の点眼
  • 夜間の眼軟膏や、まぶたをテープで軽く閉じる処置

などで、角膜の乾燥や傷つきを防ぎます。

B. 原因別の薬物治療

ベル麻痺(特発性末梢性顔面神経麻痺)

発症からできるだけ早期(通常は72時間以内)に、ステロイド薬の内服を開始することで、後遺症を減らせるとされています。症状が軽い場合には、薬の量や期間を調整します。

ラムゼイ・ハント症候群

水痘・帯状疱疹ウイルスに対して、抗ウイルス薬(アシクロビルなど)とステロイド薬を併用します。耳の痛みが強いことが多く、鎮痛薬も重要です。

C. リハビリテーションと後遺症対策

顔の体操(表情筋トレーニング)

急性期を過ぎて回復期に入ったら、無理のない範囲で顔の筋肉を動かす体操を行うことで、筋力の維持と回復を助けます。

後遺症(顔面拘縮・病的共同運動)のケア

回復の過程で、筋肉がつりやすくなったり、目を閉じようとすると口も動いてしまう「病的共同運動」が出ることがあります。リハビリやボツリヌス治療、形成外科的治療などが検討されることがあります。

⚫︎顔面神経麻痺の予後

  • ベル麻痺の多くは、治療の有無にかかわらず数週間〜数か月かけて改善し、7〜8割程度の方がほぼ元の表情に近いところまで回復するといわれています。
  • 一方で、2〜3割の方には、軽いゆがみ・顔面拘縮・病的共同運動など、何らかの後遺症が残ることがあります。
  • ラムゼイ・ハント症候群や外傷に伴う顔面神経麻痺では、ベル麻痺に比べて後遺症が残る割合がやや高いと報告されています。
  • 年齢が高い、発症時に完全麻痺に近い、発症から治療開始までに時間がかかった、糖尿病などの基礎疾患がある場合は、回復に時間がかかったり、後遺症が残りやすいとされています。

⚫︎顔面神経麻痺の予防

完全に防ぐことは難しい病気ですが、次のような点に気を付けることで、リスクを下げたり早期発見につなげることができます。

帯状疱疹の予防接種

50歳以上の方では、帯状疱疹ワクチンによりラムゼイ・ハント症候群を含む帯状疱疹の発症リスクを下げることが期待されています。

生活習慣病の管理

糖尿病・高血圧・脂質異常症などを適切に管理することで、脳卒中を含む血管性の病気のリスクを減らすことが重要です。

ストレス・過労をためすぎない

はっきりした原因ではありませんが、極端な疲れやストレスが引き金になると言われることがあります。十分な休養と睡眠を心がけましょう。

耳や頭部のけがへの注意

スポーツや仕事で頭や耳の周りをぶつけやすい方は、ヘルメットや防具の使用を検討してください。

⚫︎顔面神経麻痺に関連する病気や合併症

ベル麻痺(特発性末梢性顔面神経麻痺)

原因が特定できない末梢性顔面神経麻痺で、最も頻度が高いタイプです。

ラムゼイ・ハント症候群

耳の周囲の帯状疱疹と顔面麻痺を起こす病気で、耳の痛みや水ぶくれ、難聴・めまいを伴うことがあります。

外傷性顔面神経麻痺

側頭骨骨折や耳の手術などで顔面神経が損傷して起こる麻痺です。

中耳炎・側頭骨骨折・脳腫瘍・脳卒中

耳や脳の病気の一部として顔面神経麻痺が出ることがあります。

後遺症としての顔面拘縮・病的共同運動・眼の障害

長期的には、顔のこわばり、意図しない筋肉の動き、角膜の乾燥や傷などが問題になることがあり、継続的なケアが必要です。

⚫︎まとめ

顔面神経麻痺は、片側の顔が急に動かしにくくなる病気ですが、多くは治療と時間の経過で少しずつ良くなっていきます。早い段階で原因を見極め、ステロイド治療や抗ウイルス薬、目の保護、リハビリなどを適切に行うことが、後遺症を減らすポイントです。

「顔がゆがんだ」「片目が閉じにくい」「口から水がこぼれる」と感じたら、様子を見すぎず、早めに耳鼻咽喉科や脳神経内科などを受診してください。不安なことや生活上の困りごとがあれば、一人で抱え込まず、主治医と相談しながら長い目で回復を一緒に目指していきましょう。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック

大阪大学 医学部 卒

東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。

患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。

  • 公開日:2026/03/31
  • 更新日:2026/03/31

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