急性乳様突起炎きゅうせいにゅうようとっきえん

急性乳様突起炎は、急性中耳炎の炎症が耳の後ろの骨(乳様突起)にまで広がり、強い痛みや腫れ、発熱を起こす重い耳の感染症です。骨の中に膿がたまることもあり、放置すると頭蓋内の合併症につながるおそれがあるため、多くは入院での点滴抗菌薬や手術が必要になります。

⚫︎急性乳様突起炎とは?

急性乳様突起炎は、耳の奥(中耳)の炎症がさらに広がり、耳の後ろにある骨「乳様突起(にゅうようとっき)」まで細菌感染が及んだ状態です。
中耳炎は鼓膜の奥の空間の病気ですが、その奥には「乳突洞・乳突蜂巣(にゅうとつどう・にゅうとつほうそう)」と呼ばれる、蜂の巣のような小さな空洞がたくさんあります。急性中耳炎が重症化したり長引いたりすると、この部分にまで炎症が広がり、骨が溶けるように壊され、膿がたまって「急性乳様突起炎」と呼ばれる状態になります。
そのため、急性乳様突起炎は「重症の耳の感染症」と位置づけられ、早期の診断と入院治療が非常に重要です。

⚫︎急性乳様突起炎の原因

急性乳様突起炎は、ほとんどの場合「急性中耳炎が悪化・遷延した結果」として起こります。
急性中耳炎の炎症が中耳腔から乳突洞・乳突蜂巣へ広がる。中耳にたまっている膿や炎症が奥の骨の中まで入り込み、骨を覆っている薄い壁を壊していきます。

原因となる細菌

  • 肺炎球菌
  • インフルエンザ菌
  • モラクセラ

など、一般的な中耳炎と同様の細菌が多いとされています。
抗菌薬が効きにくい耐性菌が関わることもあり、その場合は重症化しやすくなります。

誘因・背景となる状態

  • 急性中耳炎の治療が不十分であったり、中断してしまった場合
  • 中耳炎をくり返している、慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎がある
  • 免疫力が低下している(小児、高齢者、基礎疾患がある方など)

 といった場合にリスクが高くなります。

⚫︎急性乳様突起炎の症状は?

急性乳様突起炎は、通常、急性中耳炎の症状が続いたり悪化したあとに発症します。

急性中耳炎の症状

  • 耳の痛み
  • 発熱
  • 耳だれ(膿が出る)
  • 耳がつまった感じ、聞こえにくさ

さらに病気が進行した場合には、

  • 耳の後ろの皮膚が柔らかくなり、押すとグニャっとする(膿瘍形成)
  • 首のほうまで腫れが広がる
  • めまい、ふらつき
  • 顔半分の動かしにくさ(顔面神経麻痺)

⚫︎受診の目安

次のような症状がある場合は、早急に耳鼻咽喉科(または救急外来)の受診を検討してください。

  • 急性中耳炎がある、またはそのあとに耳の後ろが赤く腫れて強く痛む
  • 耳が前のほうに押し出されたように見える
  • 高熱やぐったりした様子が続く
  • 頭痛が強くなる、首を動かすと痛い
  • めまい、ふらつき、吐き気がある
  • 顔の動かしにくさ(片側の顔面がゆがむ)

こうした症状は「急性乳様突起炎」やその合併症のサインであり、早期の診断・治療が予後を大きく左右します。「耳の病気だから様子をみよう」と考えすぎず、気になる症状があれば早めに専門医へ相談しましょう。

⚫︎診断方法と治療方法(全体像)

急性乳様突起炎が疑われる場合、外来だけでなく入院を前提とした検査・治療が必要になることが多いです。

  • 耳や耳の後ろの状態を診察し、特徴的な腫れ・痛み・耳介の変位を確認します。
  • 鼓膜や中耳の状態を耳鏡・顕微鏡で観察します。
  • 血液検査で炎症の強さ(白血球数、CRPなど)を調べます。
  • CT検査で乳様突起の骨の中に膿がたまっていないか、骨が溶けていないか、頭蓋内への進展がないかを評価します。

治療は原則として入院のうえで、

  • 点滴による抗菌薬治療(静脈内投与)
  • 鼓膜切開や鼓膜チューブ留置による中耳の排膿
  • 必要に応じて乳突洞削開術(乳突蜂巣の手術)

●急性乳様突起炎の診断

1)問診・診察

  • 発症の経緯
     ・もともと急性中耳炎があり、何日くらい続いているか
     ・抗菌薬を内服していたか、途中で中断していないか
     ・耳の痛みや耳だれの変化、耳の後ろの腫れに気づいた時期
  • 現在の症状
     ・耳の後ろの痛み・腫れの程度
     ・発熱や全身状態(食欲、眠れないほどの痛みなど)
     ・めまい、頭痛、嘔吐、意識の変化、顔面のゆがみがないか

2)耳鏡・顕微鏡による観察

  • ・鼓膜の状態(赤く腫れているか、膿がたまっているか、穴があいて耳だれが出ているか)
    ・外耳道の腫れや耳だれの性状

3)触診・視診

  • ・耳の後ろ(乳様突起部)の発赤、腫れ、圧痛の有無
    ・耳介が前方に押し出されていないか(耳介聳立)

4)画像検査

  • CT検査
     乳様突起の骨の中にある蜂巣(小さな空洞)が白く詰まっていないか、骨の壁が壊れていないかを確認します。膿瘍の有無や、頭蓋内合併症(硬膜外膿瘍や脳膿瘍、静脈洞血栓など)の評価にも重要です。

●急性乳様突起炎の治療

A. 基本方針

急性乳様突起炎は「原則入院での治療」が必要な病気です。

  • 全身状態の評価を行い、脱水や栄養状態も含めて管理します。
  • 強力な抗菌薬を点滴で投与し、原因菌をおさえます。
  • 中耳や乳様突起内の膿をできるだけ排出してあげることが重要です。

B. 抗菌薬治療

  • 静脈内抗菌薬(点滴)
     肺炎球菌やインフルエンザ菌などをカバーできる薬を選びます。重症度や地域の耐性菌の状況により、複数の薬を組み合わせることもあります。
  • 治療期間
     合併症のない比較的軽症の症例でも、点滴と内服を合わせて3〜4週間程度の抗菌薬治療が必要になることがあります。頭蓋内合併症がある場合は、さらに長期の治療が必要です。

C. 鼓膜切開・鼓膜チューブ

  • 中耳に膿が多くたまっている場合、鼓膜を小さく切開して膿を外に出します。
  • 再発や長期の排膿が必要なときは、鼓膜に小さなチューブを入れて換気を保つこともあります。

⚫︎急性乳様突起炎の予後

  • 早期に適切な治療(点滴抗菌薬+必要な手術)が行われれば、多くの症例で命に関わらず改善が期待できます。
  • ただし、治療が遅れたり、抗菌薬が効きにくい菌による感染、基礎疾患がある場合などには、重い合併症が起こる危険があります。
  • 乳様突起炎が落ち着いても、中耳や耳小骨のダメージが残った場合には、難聴が後遺症として続くことがあります。
  • 頭蓋内合併症(髄膜炎、脳膿瘍、静脈洞血栓症など)を合併した場合、後遺症や生命予後に大きく影響することがあるため、特に慎重な経過観察が必要です。

⚫︎急性乳様突起炎の予防

急性乳様突起炎そのものを直接予防することは難しいですが、「急性中耳炎を重症化させない」「長引かせない」ことが何より重要です。

  • かぜや中耳炎を放置しない
     耳の痛みや発熱、耳だれなどがある場合は、早めに耳鼻咽喉科で診察を受けましょう。
  • 急性中耳炎の治療を中断しない
     抗菌薬が処方された場合は、症状が軽くなっても自己判断で中止せず、指示された期間きちんと内服することが大切です。
  • ワクチンの活用
     肺炎球菌ワクチンやHibワクチン、インフルエンザワクチンなどは、急性中耳炎の原因になる感染症を減らすことで、乳様突起炎の発症リスクも間接的に下げると考えられています。

⚫︎急性乳様突起炎に関連する病気や合併症

  • 急性中耳炎
     多くの急性乳様突起炎は、急性中耳炎の重症化・遷延として起こります。
  • 慢性中耳炎・真珠腫性中耳炎
     慢性的な耳だれや鼓膜の穴、真珠腫(皮膚がたまってできる塊)が背景にある場合、乳様突起炎が起こりやすくなります。
  • 耳後部皮下膿瘍
     乳様突起部の骨の外側に膿がたまり、耳の後ろに大きなしこり状の腫れができた状態です。
  • 頭蓋内合併症
     ・硬膜外膿瘍、硬膜下膿瘍
     ・脳膿瘍

⚫︎まとめ

急性乳様突起炎は、急性中耳炎の炎症が耳の後ろの骨の中まで広がった状態で、耳の後ろの強い痛みや腫れ、高熱を伴う重い耳の感染症です。
早期に診断し、入院での点滴抗菌薬や必要に応じた手術を受ければ改善が期待できますが、治療が遅れると頭蓋内合併症や難聴など、命や後の生活に影響する合併症を起こすおそれがあります。
「中耳炎がなかなか良くならない」「耳の後ろが腫れてきた」と感じたら、自己判断せず早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
日頃から中耳炎をきちんと治療し、かぜ予防やワクチン接種、受動喫煙を避けることなどが、急性乳様突起炎を防ぐためにも大切です。

 

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック

大阪大学 医学部 卒

東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。

患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。

  • 公開日:2026/03/31
  • 更新日:2026/03/31

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