喉頭癌こうとうがん
喉頭癌は、声帯を含む「喉頭」にできるがんで、ほとんどが扁平上皮がんです。長引く声がれが代表的な症状で、部位によりのどの痛みや飲みこみにくさ、息苦しさもみられます。進行度や部位に応じて、放射線治療・手術・抗がん剤治療などを組み合わせて治療します。
目次
⚫︎喉頭癌とは?
喉頭癌は、喉頭(こうとう)と呼ばれる「声帯のある部分」に発生するがんで、頭頸部がんの1つです。喉頭は
- 声を出す(発声)
- 空気の通り道を守る(気道の番人)
- 飲食物が気管に入らないようにする
といった大切な役割を担っています。
喉頭は大きく
- 声門上部(声帯より上)
- 声門部(声帯そのものを含む部分)
- 声門下部(声帯より下で気管につながる部分)
の3つに分けられ、がんの場所によって「声門がん」「声門上部がん」「声門下部がん」と呼び分けられます。最も多いのは声門がんで、全体の約7割を占めるとされています。
⚫︎喉頭癌の原因
喉頭癌に特有の原因が1つあるわけではありませんが、「発症リスクを高める要因」はよく知られています。
喫煙(たばこ)
最も大きな危険因子です。たばこの煙に含まれる有害物質が長年にわたり喉頭の粘膜を刺激し、細胞ががん化しやすい状態になります。喫煙本数・年数が多いほどリスクが高くなります。
多量の飲酒
アルコール、とくに多量の飲酒は、喫煙と組み合わさると頭頸部がん全般のリスクを大きく高めます。咽頭がん・食道がんと同様、喉頭癌でも飲酒の影響が指摘されています。
長期間の声の酷使
教師・保育士・販売職・歌手など、長年にわたり声を酷使する生活も、喉頭の粘膜に負担をかける一因と考えられています。ただし、喫煙・飲酒ほど強いリスク因子ではありません。
ヒトパピローマウイルス(HPV)などの感染
中咽頭がんではHPVの関与が強く知られていますが、喉頭癌でも一部でHPV陽性例が報告されています。
⚫︎喉頭癌の症状は?
喉頭癌の症状は、「がんができた場所」により少しずつ異なります。
声門がん(声帯にできるがん)
- 初期から声がれ(嗄声:させい)が出やすく、「風邪が治っても声だけ戻らない」という形で気づかれることが多いです
- 進行すると、声のかすれが強くなり、声が出しにくくなっていきます
声門上部がん(声帯より上にできるがん)
- 初期には声の変化が目立たず、のどの違和感や軽い痛み程度のこともあります
- 進行すると、飲みこみ時の痛み(嚥下時痛)、飲みこみにくさ、耳にひびくようなのどの痛み、血の混じった痰などが出てきます
声門下部がん(声帯より下にできるがん)
頻度は少ないですが、気管に近い部位にできるため、咳や息苦しさ、進行した段階での呼吸困難などが主な症状になります。
⚫︎受診の目安
次のような症状があれば、耳鼻咽喉科(頭頸部外来)での受診をおすすめします。
- 声のかすれが3週間以上続いている
- 風邪が治っても、声だけ戻らない
- のどの痛みや違和感が続き、飲みこむとしみる
- 血がまじった痰がときどき出る
- 首にしこりがあり、だんだん大きくなっている
特に
- 急に呼吸が苦しくなった
- 大量の出血や黒い痰が出る
- 声のかすれに加えて、体重減少・食欲不振が目立つ
といった場合は、早めの精査が必要です。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
診断は
- 問診(症状・喫煙歴・飲酒歴など)
- 喉頭内視鏡検査(のどに細いカメラを入れて直接観察)
- 病理検査(組織の一部を採って顕微鏡で調べる)
- 画像検査(CT・MRI・PETなど)
組み合わせて行い、がんの有無・広がり・進行度(ステージ)を評価します。
治療は
- 放射線治療
- 手術(喉頭部分切除・喉頭全摘術など)
- 薬物療法(抗がん剤・分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬など)
の組み合わせで行います。
0〜Ⅱ期の比較的早期がんでは、声や喉頭の機能を残すことを目標に、放射線治療または喉頭温存手術が選択されることが多いです。Ⅲ期以上の進行がんでは、化学放射線療法(放射線+抗がん剤)で喉頭を温存するか、喉頭全摘術でがんを確実に取り切るかを検討します。
⚫︎喉頭癌の診断
1)問診・診察
- 声の変化の期間や程度
- のどの痛み・飲み込みの症状・息苦しさ
- 喫煙・飲酒歴、他の病気の有無
などを確認し、首のリンパ節の腫れも触診します。
2)喉頭内視鏡検査
- 声帯やその周囲に、白く盛り上がった部分・隆起・潰瘍(ただれ)などがないかを調べます。
- がんが疑われる部分があれば、大きさ・範囲・声帯の動きへの影響などを評価します。
3)組織検査(生検)
内視鏡や手術の際に、病変の一部を採取し、顕微鏡でがん細胞の有無・タイプ(扁平上皮がんかどうか)・悪性度などを確認します。これが確定診断になります。
4)画像検査
- CT/MRI:喉頭の深い部分への広がり、頸部リンパ節転移の有無を評価します。
- PET-CT:他の部位への転移(肺・骨など)が疑われる場合に行われることがあります。
これらを総合して、国際的なTNM分類に基づきステージ(病期)を決定し、治療方針を検討します。
⚫︎喉頭癌の治療
A. 早期喉頭癌(0〜Ⅱ期)の治療
放射線治療
声門がんの早期例では、放射線治療単独で高い治癒率が得られ、声も比較的保ちやすいとされています。外来通院で、1日1回・週5回の照射を数週間続けるのが一般的です。
喉頭温存手術(部分切除)
病変が限局している場合には、喉頭の一部だけを切除する手術が行われることがあります。近年は、経口的レーザー手術など、内視鏡で喉頭を拡大しながら切除する方法も広く行われています。
B. 進行喉頭癌(Ⅲ〜Ⅳ期)の治療
化学放射線療法(CRT)
放射線と抗がん剤を同時に行う治療で、喉頭の機能を残しながら根治を目指す方法です。声を残せる可能性がある一方で、副作用(口内炎・嚥下障害・血液毒性など)が強く出ることもあり、全身状態を見ながら治療強度を調整します。
喉頭全摘術+頸部郭清術
腫瘍が広範囲に及ぶ場合や、喉頭の機能温存が難しい場合には、喉頭をすべて取り除く「喉頭全摘術」が選択されます。反対側や転移のある側の頸部リンパ節をまとめて切除する「頸部郭清術」を同時に行うこともあります。
喉頭全摘後は、鼻や口から肺へ空気が通らないため、首の前に「永久気管孔(きかんこう)」という呼吸の出口ができます。また、もとの声は失われるため、食道発声・電気式人工喉頭・シャント発声などの代用音声を使って会話する方法を練習します。
C. 再発・転移喉頭癌の治療
薬物療法(抗がん剤・分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬)
プラチナ製剤を中心とした化学療法、EGFR阻害薬(セツキシマブなど)、免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ・ペムブロリズマブなど)が、再発・転移のある頭頸部扁平上皮がんに用いられています。喉頭癌もその対象に含まれます。
緩和ケア
がんを完全に治すことが難しい場合でも、痛みや息苦しさ、飲み込みのつらさなどの症状緩和を行い、その人らしい生活を支えることが重要です。治療の初期から緩和ケアチームが関わることも増えています。
⚫︎喉頭癌の予後
喉頭癌の予後(治りやすさ)は
- がんの場所(声門・声門上部・声門下部)
- 発見されたステージ(早期か進行期か)
- 治療内容・全身状態・他の病気の有無
などによって大きく変わります。
一般的には
- 声門がんは早期から声の変化が出やすく、比較的早く見つかることが多いため、頭頸部がんの中では予後が良いとされます。
- 一方、声門上部・声門下部がんは症状が出にくく、リンパ節転移もしやすいため、見つかった時点で進行していることも少なくありません。
早期に発見され、適切な治療を行った場合には、5年生存率は高く、喉頭を残しながら治療できるケースも多くあります。一方、進行した状態で見つかった場合や、再発・遠隔転移を伴う場合は、治療が長期にわたり、完治ではなく「病気とうまく付き合いながら生活の質を保つこと」を目標とすることもあります。
⚫︎喉頭癌の予防
喉頭癌を完全に防ぐことはできませんが、次のような生活習慣の見直しが、リスクを下げるうえでとても大切です。
禁煙・節煙
たばこは喉頭癌の最大の危険因子です。禁煙は喉頭癌だけでなく、肺がん・心筋梗塞・脳卒中・COPD(慢性閉塞性肺疾患)など多くの病気の予防につながります。
節度ある飲酒
多量の飲酒は、咽頭がん・食道がん・喉頭癌などのリスクを高めます。お酒はほどほどにし、「飲まない日(休肝日)」を作ることも意識しましょう。
かぜやのどの炎症を軽く見ない
声がれやのどの違和感が長く続くときは、市販薬だけで様子を見るのではなく、一度耳鼻咽喉科で診てもらう習慣をつけることが、早期発見につながります。
⚫︎喉頭癌に関連する病気や合併症
咽頭がん(中咽頭がん・下咽頭がん)
同じ頭頸部にできるがんで、飲酒・喫煙など共通の危険因子を持ちます。飲みこみの障害や首のしこりで見つかることが多く、喉頭癌と同時に・あるいは時間をおいて発生することもあります。
食道がん・肺がん
たばこやアルコールの影響を受けやすい領域で、「フィールドがん化」といって、同じ人に複数のがんが発生しやすくなることがあります。そのため、喉頭癌の診断時には、食道や肺の検査も行われることがあります。
嚥下障害・誤嚥性肺炎
手術や放射線の影響で飲みこみ機能が低下すると、食べ物や唾液が気道に入りやすくなり、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。嚥下リハビリや食事形態の工夫が重要です。
音声障害・コミュニケーションの困難
喉頭部分切除や喉頭全摘後は、声の質が変わったり、元のような発声が難しくなることがあります。代用音声の習得や、周囲の理解・環境調整が大切です。
⚫︎まとめ
喉頭癌は、主に声門部、声門上部、声門下部に発生する扁平上皮癌です。早期(T1-T2期)において発見された場合、放射線療法や喉頭微細手術、レーザー治療等を選択することで、極めて高い局所制御率と喉頭機能(発声・嚥下機能)の温存が期待できます。
危険因子として喫煙および過度の飲酒が強く関与するため、これらの生活習慣を有する群における定期的な喉頭内視鏡検査は極めて重要です。
遷延する嗄声(させい)や咽喉頭違和感を認める際は、早期診断・早期治療がQOL維持の決定打となります。速やかに耳鼻咽喉科専門医を受診し、適切な精査・加療を受けてください。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- 病気がみえる vol.13 耳鼻咽喉科(喉頭疾患・頭頸部癌総論:喉頭がんの分類・症状・治療方針など)
(https://www.byomie.com/products/vol13/) - 国立がん研究センター がん情報サービス「喉頭がんについて」「喉頭がんの治療」(https://ganjoho.jp/public/cancer/larynx/about.html)
■ この記事を監修した医師
岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック
大阪大学 医学部 卒
東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。
患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。
- 公開日:2026/03/31
- 更新日:2026/03/31
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