急性喉頭蓋炎きゅうせいこうとうがいえん
急性喉頭蓋炎は、気管の入口のフタである喉頭蓋(こうとうがい)が細菌感染などで急に腫れ上がる病気です。つばも飲みこめないほどの強いのどの痛みと、急な息苦しさが特徴で、放置すると窒息を起こし命に関わることがあります。疑ったらすぐに救急受診が必要です。
目次
⚫︎急性喉頭蓋炎とは?
喉頭蓋(こうとうがい)は、気管の入口にある「フタ」のような部分で、飲みこむときに気管に食べ物や飲み物が入らないよう守る役割をしています。
急性喉頭蓋炎は、この喉頭蓋に細菌感染などが起こり、短時間のうちに急激に腫れあがる病気です。腫れた喉頭蓋が空気の通り道(気道)をふさぎ、息ができなくなる危険があり、適切な対応が遅れると命に関わることがあります。
- 以前は、小児(特に未就学児)に多い病気でしたが、ヒブワクチン(インフルエンザ菌b型ワクチン)の普及により子どもの発症は減ってきており、現在は成人の急性喉頭蓋炎が増えていると報告されています。
- 見た目は「強いのど風邪」にも似ていますが、急激に悪化しやすいため、一般のかぜとは区別して考える必要があります。
⚫︎急性喉頭蓋炎の原因
細菌感染
もっとも多いのは細菌による感染です。かつてはインフルエンザ菌b型(Hib)が代表的でしたが、現在は肺炎球菌、溶血性レンサ球菌、ブドウ球菌などさまざまな細菌が原因となることが知られています。
ウイルス感染に続発する場合
かぜやインフルエンザなどウイルス感染をきっかけに、二次的に喉頭蓋が細菌感染を起こすこともあります。
外傷ややけど
とても熱い飲み物・食べ物(やけどするほどのラーメンや飲料)や、薬剤・化学物質の誤嚥(誤って飲み込むこと)による刺激で、喉頭蓋が腫れることもあります。
体質・基礎疾患
糖尿病、免疫力の低下(ステロイド内服中、がんの治療中など)、高齢者、喫煙者では、重い感染症を起こしやすく、急性喉頭蓋炎も重症化しやすいとされています。
⚫︎急性喉頭蓋炎の症状は?
典型的には、数時間〜1日ほどの短い経過で次のような症状が現れます。
強いのどの痛み
「今まで経験したことがないほどののどの痛み」と表現されることが多く、つばを飲みこむだけでも激痛が走ります。
つばが飲み込めない、よだれが垂れる
痛みや腫れのためにつばを飲みこめず、口からよだれが垂れてしまうことがあります。
発熱
多くは38〜39℃台の高熱を伴い、悪寒や全身のだるさを感じます。
呼吸のしにくさ、息苦しさ
喉頭蓋の腫れが進行すると、息を吸うときにヒューヒュー(またはゼーゼー)と音がしたり(喘鳴)、肩や胸を大きく動かして呼吸するようになります。
⚫︎受診の目安
次のような症状がある場合は、時間帯にかかわらず、救急外来や耳鼻咽喉科のある医療機関の受診を検討してください。
- 突然の強いのどの痛みで、つばも飲み込めない
- よだれが多く、口から垂れてしまう
- 息を吸うときヒューヒュー音がする、息苦しそう
- 話しにくい/声がこもっている
- 高熱と強いだるさがある
とくに
「座っても苦しそう」「横になるとさらに息がしにくい」「唇が紫色っぽい」「ぐったりしている」
といった場合は、一刻を争う状態の可能性があり、救急車を呼ぶことをおすすめします。
「のど風邪だろう」と自己判断して様子をみているうちに、急速に気道がふさがってしまうケースも報告されており、強いのどの痛み+呼吸の異常があれば迷わず受診することが重要です。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
急性喉頭蓋炎が疑われる場合、診断と治療は「同時進行」で行われます。何よりも優先されるのは「気道(空気の通り道)を守ること」であり、状態によってはすぐに酸素投与や挿管(気管に管を入れて呼吸を確保する処置)を検討します。
診断は
- 問診(症状の経過、のどの痛みの程度、つばが飲みこめるかなど)
- 視診・聴診(呼吸状態、顔色、姿勢)
- 喉頭ファイバー(細いカメラで喉頭を直接観察)
を組み合わせて行います。確定したら、入院のうえで抗菌薬・ステロイド薬などの点滴治療を行い、必要に応じて気道確保の処置(挿管・気管切開)を行います。
⚫︎急性喉頭蓋炎の診断
1)問診・診察
- 発症時期、痛みの強さの変化、つばや水分が飲みこめるか
- 呼吸が苦しいタイミング(横になると悪化するかなど)
- ワクチン歴(ヒブワクチンなど)、基礎疾患の有無
を確認します。
診察では
- 呼吸の速さ、胸や首のへこみ(陥没呼吸)の有無
- 顔色、意識状態
などを評価します。
2)喉頭ファイバー検査
局所麻酔をしたうえで、鼻または口から細いカメラ(喉頭ファイバー)を入れ、喉頭蓋や喉頭周囲を直接観察します。喉頭蓋が赤く、ソーセージのように腫れ上がっている所見が典型的です。
※重症で、少しの刺激でも気道がふさがりそうな場合には、ファイバー検査よりも先に気道確保(挿管など)を優先することがあります。
3)血液検査
- 炎症反応(白血球、CRPなど)
- 脱水の程度、腎機能・肝機能
- 必要に応じて血液培養(血液中の細菌の有無を調べる検査)
などを確認します。
4)画像検査(必要に応じて)
頸部のX線やCTで喉頭蓋の腫れを確認することもありますが、あくまで補助的な検査であり、状態が悪いときは無理に行いません。
⚫︎急性喉頭蓋炎の治療
A. 気道(空気の通り道)の確保・観察
酸素投与
息苦しさや酸素の低下がある場合は、マスクやチューブで酸素を投与します。
気管挿管・気管切開
喉頭蓋の腫れが強く、窒息の危険が高いと判断される場合は、全身麻酔や局所麻酔のもとで気管に管を入れる(気管挿管)、あるいは首の前から気管に穴を開けて空気の通り道を作る(気管切開)処置を行います。
B. 抗菌薬(抗生剤)の投与
- 原因となる細菌に対して、広い範囲をカバーできる抗菌薬を点滴で投与します。
- 喉頭蓋炎では重い細菌感染であることが多いため、内服だけで様子を見ることはほとんどなく、原則として入院・点滴治療が必要です。
C. ステロイド薬
- 喉頭蓋や周囲の粘膜の腫れを早く引かせる目的で、ステロイド薬の点滴や注射を行います。
- 適切な量・期間を守って使用し、腫れが落ち着いてきたら減量・中止します。
⚫︎急性喉頭蓋炎の予後
- 適切なタイミングで気道を確保し、抗菌薬・ステロイド治療を行えば、多くの方は数日〜1〜2週間程度で腫れが引き、元の生活に戻ることができます。
- 一方、診断や治療が遅れ、気道閉塞(窒息)を起こした場合には、命に関わる重篤な経過となることがあります。
特に注意が必要なのは
- 発症から短時間で急速に悪化することがある
- 見た目ののどの赤みが少なくても、喉頭蓋の奥で強い腫れが起きていることがある
という点です。
治療後も、しばらくは再燃(ぶり返し)がないか、呼吸状態やのどの違和感を観察する必要があります。
⚫︎急性喉頭蓋炎の予防
完全に防ぐことは難しいものの、次のような対策が、急性喉頭蓋炎を含む重い細菌感染症のリスクを減らすことにつながります。
ワクチン接種
ヒブワクチン(Hib)などの定期接種は、小児の重い喉頭蓋炎や髄膜炎を減らすことに役立ってきました。お子さんのワクチン接種歴を確認し、必要なワクチンは計画的に受けることが大切です。
かぜやのどの感染を軽く見ない
強いのどの痛みや高熱があるとき、特に「つばが飲みこめない」「呼吸が苦しい」といった症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。
生活習慣の見直し
禁煙・減煙、過度の飲酒を控える、バランスの良い食事と十分な休養で免疫力を保つことは、重い感染症の予防につながります。
⚫︎急性喉頭蓋炎に関連する病気や合併症
クループ症候群(急性喉頭気管気管支炎)
同じく上気道が狭くなる病気ですが、主にウイルスが原因で、犬が吠えるような咳が特徴です。急性喉頭蓋炎の方が、より急激で重篤な経過をとりやすく、見分けが重要です。
咽頭・喉頭のほかの重症感染症
後咽頭膿瘍、深頸部膿瘍など、首の奥に膿がたまる病気は、喉頭蓋炎と同様に気道閉塞や敗血症(細菌が全身に回る状態)を起こすことがあります。
肺炎・敗血症
炎症が広がったり、飲みこみの障害から誤嚥(ごえん)が起こると、肺炎や全身の感染症(敗血症)へと進むことがあります。
気管切開後のケア
気管切開で気道を確保した場合、一定期間はカニューレ(管)の管理や、言葉・嚥下のリハビリが必要となることがあります。
⚫︎まとめ
急性喉頭蓋炎は、気管の入口をふさぐ「ふた」の役割をする喉頭蓋が急に腫れ、短時間で呼吸ができなくなることもある危険な病気です。
「つばも飲み込めないほどのどが痛い」「よだれが垂れる」「息が苦しい」「声がこもる」といった症状がそろう場合は、救急受診を含めて早急な対応が必要になります。
治療は抗菌薬やステロイドを用い、状況によっては気道を確保する処置が行われます。適切に対応できれば回復が期待できますが、診断や治療が遅れると命に関わることがあります。
少しでも違和感があるときは無理をせず、「いつもと違うのどの痛み」と感じた段階で、早めに医療機関へ相談しましょう。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- 病気がみえる vol.13 耳鼻咽喉科(喉頭疾患:クループ症候群・急性喉頭蓋炎 など)(https://www.byomie.com/products/vol13/)
- 日本感染症学会雑誌「急性喉頭蓋炎の診断・治療における問題点と対策」(https://www.jsiao.umin.jp/infect-archive/pdf/39/39_209.pdf)
■ この記事を監修した医師
岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック
大阪大学 医学部 卒
東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。
患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。
- 公開日:2026/03/31
- 更新日:2026/03/31
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