顔面骨骨折がんめんこつこっせつ
顔面骨骨折は、鼻・頬・上あご・下あご・眼のまわりなど、顔の骨が強い衝撃で折れるけがです。見た目の変形だけでなく、かみ合わせの異常、物が二重に見える、しびれ、口が開きにくいなど日常生活に大きな影響が出ることがあり、早期の診断と治療が重要です。
目次
⚫︎顔面骨骨折とは?
顔面は、前頭骨(ひたい)、鼻骨、頬骨(きょうこつ)、上顎骨(うわあご)、下顎骨(したあご)、眼窩(がんか:眼球を入れるくぼみ)など、多くの骨が組み合わさって立体的に形づくられています。
転倒や交通事故、スポーツ外傷などで顔を強く打つと、これらの骨の一部が折れることがあり、これをまとめて「顔面骨骨折」と呼びます。鼻だけ、頬だけといった限局した骨折から、複数の骨が同時に折れる「多発顔面骨骨折」まで、さまざまなタイプがあります。
顔面骨骨折では
- 顔の変形(へこみ・ゆがみ)
- 物が二重に見える
- しびれや感覚低下
- 口が開きにくい・かみにくい
といった症状が出るほか、外見の変化が心理的な負担になることも少なくありません。
⚫︎顔面骨骨折の原因
顔面骨骨折は、次のような「強い外力」が加わったときに起こりやすいです。
交通事故
自動車・バイク・自転車の衝突、歩行者がはねられる事故などで、ハンドルやダッシュボード、地面に顔をぶつけたときに起こります。
転倒・転落
階段や段差での転倒、脚立や自転車、スキー・スノーボードなどからの転落で、顔面から地面や硬い物に衝突した場合です。高齢者は、家の中での転倒でも骨折することがあります。
スポーツ外傷
サッカー・ラグビー・格闘技などのコンタクトスポーツでは、相手のひじや頭、ボールが顔に当たって骨折することがあります。特に野球ボールや肘が眼窩付近に当たると、眼窩底骨折(がんかていこっせつ)を起こすことがあります。
暴力・殴打・物の落下
殴られたり、物が顔に落ちてきたりしたときも、ピンポイントの強い力で骨折することがあります。
⚫︎顔面骨骨折の症状は?
骨折する部位によって症状は少しずつ異なりますが、代表的なものは次の通りです。
顔の変形・腫れ
頬がへこんで見える、鼻筋が曲がる、片方だけ腫れが強いなど、見た目の左右差や変形が出ます。
物が二重に見える(複視)・眼の位置の異常
眼のまわり(眼窩)の骨折では、眼球を支える骨が変形し、眼球の位置が下がる・奥に入り込む、物が二重に見える、目を特定の方向に動かしにくいなどの症状が出ます。
口が開きにくい・かみ合わせの異常
頬骨や上顎骨、下顎骨が折れると、口が開かない・開くと痛い・奥歯が浮いた感じがする・上下の歯のかみ合わせがずれる、などの症状が出ることがあります。
しびれ・感覚低下
頬や上くちびる、歯ぐきの感覚を担当する神経の通り道が骨折部にあるため、頬から上くちびるにかけてのしびれ・感覚が鈍い感じが残ることがあります。
⚫︎受診の目安
次のような症状がある場合は、「様子を見る」よりも早めの受診をおすすめします。
- 顔を強く打ったあとに、顔の左右差や変形、へこみがはっきり分かる
- 物が二重に見える、目をある方向に動かすと痛い・動かない
- 頬や唇、歯茎のしびれ・感覚低下がある
- 口が開きにくい、かみ合わせがおかしい、歯がうまく当たらない
- 強い腫れや痛みが引かない、目や鼻のまわりのあざが目立つ
特に
- 激しい頭痛・吐き気・意識がもうろうとする
- 急激な視力低下、視界の一部が見えにくい
といった症状がある場合は、頭蓋内出血や眼の重い合併症の可能性もあるため、救急外来の受診や救急車の利用も検討してください。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
顔面骨骨折が疑われるときは、まず外傷の経緯や症状を詳しくうかがい、顔の腫れ・変形・眼の動き・かみ合わせなどを診察します。
そのうえで、骨折部位とずれの程度を確認するためにCT検査(コンピュータ断層撮影)が行われることが多いです。複雑な骨の形を立体的に評価できる3D-CTが治療計画に役立つ場合もあります。
治療方針は
- 骨のずれが軽く、見た目や機能(視力・かみ合わせなど)の問題が少ない場合 → 安静・経過観察が中心
- 顔の変形が目立つ、物が二重に見える、かみ合わせ障害が強い場合 → 手術で骨を元の位置に戻して固定(整復固定術)
といった形で決められます。
⚫︎顔面骨骨折の診断
1)問診・診察
- どのような状況で受傷したか(転倒、高所からの転落、スポーツ中の衝突など)
- 視力の変化、物が二重に見えるかどうか
- 口の開けやすさ、かみ合わせの違和感
顔の見た目、腫れ、眼の位置や動き、口の開き具合、歯のかみ合わせなどを丁寧に診察します。
2)画像検査
- CT検査:顔面骨骨折の診断の中心となる検査です。複数方向からの画像を組み合わせて、骨折の位置やずれの方向、周囲の構造との関係を確認します。
- レントゲン検査:簡便ですが、顔面骨の細かい骨折は見逃されることもあるため、CTが併用されることが多いです。
3)眼科的検査
眼窩骨折が疑われる場合には、視力検査、眼球運動検査(ヘステストなど)、眼底検査などを行い、視機能への影響を確認します。
4)その他の検査
必要に応じて、咬合(かみ合わせ)の評価、歯科・口腔外科でのレントゲン・CT評価などを行い、顎関節や歯列の状態も確認します。
⚫︎顔面骨骨折の治療
A. 初期対応(まずやること/基本方針)
腫れや痛みのコントロール
冷却や鎮痛薬で腫れと痛みを抑えます。ただし長時間の強い冷却は避け、指示に従って行います。
感染予防・創部のケア
外から傷が開いている場合は、洗浄・縫合など適切な処置を行い、感染予防のために抗菌薬が使われることもあります。
B. 保存的治療(手術を行わない場合)
次のようなケースでは、手術を行わずに自然な骨癒合を待つ方針になることがあります。
- 骨折のずれが軽く、見た目の変形が目立たない
- 視力や眼球運動に問題がない
- かみ合わせの異常が軽度で、日常生活に大きな支障がない
C. 手術治療(整復固定術など)
次のような場合には、全身麻酔下で骨を元の位置に戻し、プレートやねじで固定する手術が検討されます。
- 頬のへこみや顔のゆがみが目立つ
- 物が二重に見える、眼の位置が明らかにずれている
- 口が開かない、かみ合わせが大きくずれている
- 神経の圧迫による強いしびれ・痛みがある
⚫︎顔面骨骨折の予後
- 多くの症例では、適切な時期に治療を行うことで、日常生活に支障の少ない状態まで回復が期待できます。
- 一方で、手術のタイミングが遅れたり、骨折のずれが大きかったりすると、頬のへこみ、顔の非対称、物が二重に見える症状、しびれなどが残ることがあります。
- 骨折自体は数か月で癒合しますが、神経の回復や見た目の改善には長い時間がかかることもあり、半年〜1年以上かけてゆっくり変化していく場合もあります。
- 心理的な負担(外見の変化に伴うストレス・自信低下)も生じやすいため、必要に応じて医療者と相談しながらケアしていくことが大切です。
⚫︎顔面骨骨折の予防
完全に防ぐことは難しいものの、次のような対策でリスクを減らすことができます。
シートベルト・チャイルドシートの着用
車では全席でシートベルトを着用し、子どもには年齢・体格に合ったチャイルドシートやジュニアシートを使用します。
ヘルメットの着用
自転車・バイク・スキー・スノーボードなどではヘルメットを着用し、転倒時の頭部・顔面への衝撃を軽減します。
スポーツ時の安全対策
ルールやマナーを守り、必要に応じてマウスピースやフェイスガードなどの防具を利用します。
高齢者の転倒予防
家の段差を減らす、手すりをつける、滑りにくい靴を履く、必要に応じて杖を使用するなど、日常生活の環境を整えることが大切です。
⚫︎顔面骨骨折に関連する病気や合併症
眼窩底骨折(がんかていこっせつ)
眼の下の薄い骨が抜けるように折れるタイプで、物が二重に見える、眼球が下がる・奥に引っ込む、目を動かすと痛むなどの症状が出ます。
頬骨骨折・頬骨弓骨折
頬の骨が折れるタイプで、頬のへこみ、口が開かない、頬や上くちびるのしびれなどを生じます。
上顎骨骨折・下顎骨骨折
かみ合わせのずれ、奥歯が浮いた感じ、口が開けにくい・閉じにくい、歯の揺れなどが出ます。歯列や顎関節の長期的な問題につながることもあります。
外見の変形
頬の平坦化、鼻の曲がり、顔面の左右差などが残ると、機能面だけでなく心理面の負担になることがあります。必要に応じて二期的な手術や形成外科的治療が検討されます。
⚫︎まとめ
顔面骨骨折は、転倒や交通事故、スポーツ外傷などで顔を強く打ったときに起こるけがで、見た目の変形だけでなく、視力・かみ合わせ・しびれなど、生活の質に大きく関わる症状が出ることがあります。
CT検査などによる正確な診断と、腫れや全身状態を見ながら適切なタイミングで治療方針(経過観察か手術か)を決めることが大切です。
早期に専門医と相談することで、将来的な変形や機能障害のリスクを減らせる可能性があります。
「顔を強く打ったあとに変形や見え方・かみ合わせの違和感がある」と感じた場合には、自己判断せず、救急外来や形成外科・口腔外科・耳鼻咽喉科などにご相談ください。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- 一般社団法人 日本頭蓋顎顔面外科学会「顔面骨骨折」
(https://jscmfs.org/general/disease06.html) - 東京大学医学部附属病院 形成外科「顔面骨骨折とは」
(https://plastic.m.u-tokyo.ac.jp/clinical/779)
■ この記事を監修した医師
岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック
大阪大学 医学部 卒
東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。
患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。
- 公開日:2026/03/31
- 更新日:2026/03/31
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