真菌しんきん

真菌は、いわゆる「カビ」や「酵母」の仲間で、人の皮膚や口の中から肺・血液まで、さまざまな感染症を起こします。多くは水虫などの軽い病気ですが、免疫力が低い方では命に関わる深い感染になることもあり、早めの受診と治療が大切です。

⚫︎真菌とは?

真菌は、カビや酵母などの仲間で、自然界の土や空気中、食べ物、私たちの皮膚・口・腸の中など、身の回りのあらゆる場所に存在しています。

人に病気を起こす真菌は、大きく次のように分けられます。

  • 皮膚や爪・髪など浅い場所に感染するもの(白癬、水虫、爪白癬などの「皮膚真菌症」
  • 口の中や膣などの粘膜に感染するもの(カンジダ症など)
  • 肺や血液、脳など体の深いところに入り込むもの(深在性真菌症、侵襲性真菌感染症)

健康な方では、浅い皮膚・粘膜の感染が多く、命に関わることはまれです。一方で、免疫力が低下している方(抗がん剤、ステロイド、臓器移植後、糖尿病、HIV感染など)では、真菌が肺や血液に広がり、重症になることがあります。

⚫︎真菌の原因

真菌そのものは、もともと自然界や人の体の中に普通に存在しており、そのすべてが悪者というわけではありません。ただし、次のような条件がそろうと、真菌が増えすぎて感染症を起こします。

  • 皮膚がじめじめしている(足の指の間、股、脇など)
  • 長時間の汗・ムレ、きつい靴やストッキング
  • 免疫力が低下している

 – 抗がん剤・ステロイド・免疫抑制薬を使用中
 – 臓器移植後
 – コントロール不良の糖尿病

といったパターンがあり、「外から来るもの」と「内側から増えるもの」の両方があります。

⚫︎真菌の症状は?

症状は、「どこに真菌が増えているか」で大きく変わります。

皮膚・爪・髪など浅い場所の真菌感染(皮膚真菌症)

  • かゆみを伴う赤い斑点やうろこ状の皮むけ
  • 輪っか状・地図状に広がる発疹(体部白癬)
  • 足の指の間のふやけ・ひび割れ・かゆみ(水虫:足白癬)

粘膜の真菌感染(カンジダ症など)

  • 口の中:白い苔のようなもの(舌や頬の内側)、しみる、痛い(口腔カンジダ症)
  • 膣:かゆみ、ポロポロとした白いおりもの、ヒリヒリ感(膣カンジダ症)
  • おむつかぶれが長引き、赤くただれたところの周りに小さな発疹(乳児のおむつ部カンジダ症)

体の深い部分の真菌感染(深在性真菌症)

  • 肺:長引く発熱、咳、痰、息苦しさ、血の混じった痰
  • 血液:高熱、血圧低下、意識がもうろうとする(敗血症)
  • 脳・中枢神経:頭痛、吐き気、意識障害、しびれ・けいれん

⚫︎受診の目安

次のような場合は、医療機関の受診をおすすめします。

  • 水虫と思って市販薬を塗っても、数週間以上よくならない、むしろ広がっている
  • 爪の変色・変形が増えてきて、他の爪にも広がってきた
  • 口の中や舌に白い苔のようなものがくり返し出る
  • 膣の強いかゆみや白いおりものが何度も再発する

皮膚症状が中心なら皮膚科、口の中なら歯科・口腔外科や耳鼻咽喉科、膣の症状なら婦人科、深い感染が疑われるときは内科・呼吸器内科・感染症科などが受診先の目安になります。

⚫︎診断方法と治療方法(全体像)

診断は

  • 症状の出ている部位の観察
  • 顕微鏡検査や培養(真菌を実際に見る・育てる)
  • 必要に応じて血液検査やレントゲン・CTなどの画像検査

を組み合わせて行います。

治療の基本は「抗真菌薬」を使うことで

  • 皮膚や粘膜の軽い感染:塗り薬が中心
  • 広がりが大きい、深い場所の感染:飲み薬・点滴の抗真菌薬

を使い分けます。同時に、免疫力低下やムレなどの原因をできる範囲で整えることも重要です。

⚫︎真菌の診断

1)問診・診察

  • いつから、どの部位に、どのような症状が出ているか(かゆみ、発疹、爪の変化、咳・発熱など)
  • 市販薬や他の薬をどれくらい使ったか
  • 持病(糖尿病、がん、膠原病など)や内服中の薬(ステロイド、免疫抑制薬など)

2)局所検査(皮膚・爪・粘膜)

  • 皮膚の鱗屑(皮がむけた部分)や爪のかけらを採取し、顕微鏡で真菌を確認する
  • 培養して、どの真菌か特定し、薬の効きやすさを調べる

3)血液検査・画像検査

  • 白血球や炎症反応、臓器の機能をチェック
  • 胸部X線、CTなどで肺の影を確認
  • 必要に応じて、真菌特異抗原や抗体検査など

4)深い感染が疑われる場合

  • 喀痰(痰)や気管支鏡検査で採取した材料の培養
  • 血液培養
  • 場合によっては組織の一部を取って病理検査を行うこともあります。

⚫︎真菌の治療

A. 皮膚・粘膜の真菌感染(浅い感染)の治療

抗真菌薬の塗り薬

– 水虫や体の白癬では、症状がよくなっても医師の指示通り、一定期間塗り続けることが再発予防に大切です

内服薬

– 爪白癬や広範囲の白癬では、飲み薬の抗真菌薬を使うことがあります

併せて行うケア

– 足を清潔かつ乾いた状態に保つ

– 靴や靴下を通気性のよいものにする

B. 深在性真菌症(体の深い場所の感染)の治療

  • 静脈注射や内服による抗真菌薬(アゾール系、エキノカンジン系、ポリエン系など)
  • 必要に応じて、外科的なドレナージ(膿を出す処置)や感染源となるカテーテルの抜去
  • 免疫力低下の原因の調整(可能な範囲でステロイド減量・糖尿病のコントロールなど)

C. 再発予防と生活の支援

  • 再発しやすい方では、一定期間の予防的な抗真菌薬投与を検討することがあります。
  • 免疫不全が長期に続く場合、感染症全般に配慮した生活指導(口腔ケア、手指衛生、環境整備など)も重要です。

⚫︎真菌の予後

  • 水虫や爪白癬、軽いカンジダ症など、皮膚や粘膜に限局した真菌感染は、適切な治療を行えば多くが改善します。ただし、治療中断や自己判断での市販薬使用で、長引いたり再発をくり返したりすることがあります。
  • 深在性真菌症は、肺や血液、脳などを侵し、特に免疫力が低い方では命に関わることがあります。早期発見・早期治療と、基礎疾患の適切な管理が予後を左右します。

また、くり返す口腔・膣のカンジダ症や、なかなか治らない皮膚真菌症は、糖尿病や免疫不全など、背景の病気のサインであることもあり、全身のチェックが役立つ場合もあります。

⚫︎真菌の予防

日常生活で、次のような工夫が真菌感染症の予防に役立ちます。

  • 足や股、脇など汗をかきやすい部分を清潔・乾燥させる
  • 靴下は吸湿性のよいものを選び、こまめに交換する
  • スポーツジムや共同浴場では、スリッパ・サンダルを利用する
  • 抗生物質やステロイドは、自己判断で長期間使わず、医師の指示を守る

⚫︎真菌に関連する病気や合併症

真菌が関わる主な病気には、次のようなものがあります。

  • 皮膚真菌症:水虫(足白癬)、爪白癬、体部白癬、股部白癬、頭部白癬など
  • カンジダ症:口腔カンジダ症、膣カンジダ症、食道カンジダ症、カンジダ血症
  • アスペルギルス症:肺アスペルギルス症、アレルギー性気道疾患など
  • クリプトコックス症:クリプトコックス髄膜炎などの中枢神経感染
  • ムコール症などの接合菌症:糖尿病や免疫不全の方で重症になりやすい真菌症

合併症として、誤嚥性肺炎、敗血症、多臓器不全、慢性の呼吸機能低下などが起こることもあり、特に深在性真菌症では集中治療が必要になる場合があります。

⚫︎まとめ

真菌は、身の回りに普通に存在する「カビ・酵母」の仲間ですが、条件がそろうと皮膚や粘膜、肺や血液まで、さまざまな感染症を起こします。水虫などの浅い感染は治療でよくなることが多い一方、免疫力が低い方では命に関わる深い感染になることがあり、早期発見が重要です。

また、長引く皮膚トラブルやくり返すカンジダ症、免疫不全に伴う発熱・咳などは、真菌感染のサインであることがあります。自己判断で様子を見すぎず、気になるときは早めに医療機関へ相談し、原因を確認しながら適切な治療と予防策を一緒に考えていきましょう。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2026/03/10
  • 更新日:2026/03/17

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