カンピロバクター感染症かんぴろばくたーかんせんしょう

カンピロバクター感染症は、主に加熱不十分な鶏肉などから感染する細菌性の胃腸炎です。1〜7日の潜伏期の後に、発熱・腹痛・水のような下痢・吐き気などが出ます。多くは1週間ほどで自然に軽快しますが、脱水やまれな神経の合併症(ギラン・バレー症候群)に注意が必要です。

⚫︎カンピロバクター感染症とは?

カンピロバクターという細菌(カンピロバクター・ジェジュニ/コリ など)が、口から体内に入ることで起こる感染性胃腸炎です。主に食中毒の一種としてみられ、加熱が不十分な鶏肉料理や、生肉を扱った調理器具からの二次汚染(まな板・包丁など)が原因になることが多いです。

潜伏期間(病原体が入ってから症状が出るまでの時間)はおおむね1〜7日(多くは2〜5日)と、他の食中毒に比べてやや長いのが特徴です。
日本では、かつて夏の細菌性食中毒の主要な原因の一つとされてきましたが、衛生管理の向上などにより発生件数は減少傾向です。それでも夏の生魚・海鮮をきっかけとした集団発生が今も報告されており、注意したい感染症です。

⚫︎カンピロバクター感染症の原因

加熱不十分な鶏肉・レバー

焼き鳥、鶏刺し、タタキ、鍋などで中まで十分加熱されていない肉が代表的な原因です。中心部までしっかり火を通していないと菌が生き残ります。

調理器具からの二次汚染

生の鶏肉を切った包丁・まな板・トングを洗わずに、サラダや他の食品に使うと、菌がうつってしまうことがあります。

汚染された水・未殺菌のミルクなど

井戸水や十分に消毒されていない水、未殺菌のミルクなどが原因になることもあります。

ペット(犬・猫・家畜)からの感染

動物が菌を腸の中に持っていることがあり、ふん便に触れた手でそのまま口や食べ物に触れると感染の原因になります。

人から人へ空気でうつるような感染はほとんどなく、主に「食べ物」「水」「ふん便を介した接触」が問題になります。

⚫︎カンピロバクター感染症の症状は?

多くの場合、1〜7日の潜伏期のあと、次のような症状が現れます。

下痢

水のような下痢が1日に何回も出ます。ときに血が混じる「血便」になることもあります。

腹痛

きりきり・しくしくとしたお腹の痛みが出ます。下痢よりも腹痛が目立つ方もいます。

発熱・悪寒

38℃前後の発熱や寒気を伴うことがあります。

吐き気・おう吐・食欲低下

気持ち悪さや、実際に吐いてしまう症状が出ることがあります。

頭痛・体のだるさ(倦怠感)

風邪のような全身症状が先に出て、その後に下痢・腹痛が続く場合もあります。

多くの方は1週間前後で回復し、命に関わることはまれですが、乳幼児・高齢者・基礎疾患のある方(心臓・腎臓・免疫の病気など)は脱水や重症化に注意が必要です。

⚫︎受診の目安

次のような場合は、早めに医療機関を受診してください。

  • 強い下痢やおう吐で水分がとれない、尿がほとんど出ない
  • 血便が続く、お腹の痛みが強くなる・我慢できない
  • 38℃以上の発熱が続き、体がぐったりしている
  • 乳幼児・高齢者・妊娠中の方・持病のある方で、いつもと様子が違う
  • 手足の力が入りにくい、しびれる、顔の片側が動かしにくいなどの神経症状が出てきた

救急受診を考える目安

  • 意識がもうろうとしている
  • 立てないほどのふらつき・冷や汗
  • 真っ黒な便・鮮やかな血便が大量に出る
  • 息苦しさ・胸の痛みを伴う

→ まずは一般内科・小児科・消化器内科などで相談してください。必要に応じて入院や専門科への紹介が検討されます。

⚫︎診断方法と治療方法(全体像)

診断は、いつから・どのような症状が出ているか、どのような食品を食べたかなどの問診と診察に加え、便や血液の検査で行います。
治療の基本は、脱水を防ぐための水分・電解質(塩分など)補給と、食事の調整、痛みや発熱をやわらげる対症療法です。多くは自然に軽快しますが、症状が強い場合や長引く場合、免疫の弱い方では抗菌薬(細菌に効く薬)を使用することがあります。
市販の下痢止めは、腸の動きを無理に止めることで菌の排出を妨げてしまう場合があるため、自己判断での使用は避け、医師の指示に従いましょう。

⚫︎カンピロバクター感染症の診断

1)問診・診察

  • 下痢の回数や性状(血便の有無)、腹痛の程度、発熱の有無を確認します。
  • 数日前〜1週間ほどの食事内容(鶏肉料理・バーベキュー・外食・未加熱の肉など)

を詳しく聞き取り、同じものを食べた家族・友人に似た症状が出ていないかを確認します。

2)便の検査

  • 便培養検査:便を培養して、カンピロバクターが増えるかどうかを調べる検査です。はっきり診断をつけるために行われますが、結果が出るまで数日かかります
  • 最近では、一部の医療機関で、複数の病原体をまとめて調べる迅速検査(PCRなど)が使われることもあります。

3)血液検査

  • 脱水の程度(腎機能・電解質バランス)、炎症の程度(白血球・CRPなど)を確認します。
  • 重症例や入院が必要な場合に行うことが多いです。

4)その他の検査

症状が重い、他の病気(炎症性腸疾患など)が疑われる場合には、腹部エコーやCT検査が検討されることもあります。

⚫︎カンピロバクター感染症の治療

A. 初期対応(まずやること/基本方針)

水分・電解質の補給

お茶や水だけでなく、経口補水液(スポーツドリンクより塩分が多めの飲料)などでこまめに少量ずつ補給します。吐き気が強いときは、氷片をなめるようにして少しずつ摂取します。

食事の調整

脂っこいもの・生もの・刺激物は避け、消化のよいおかゆ・うどん・バナナ・ヨーグルトなどからゆっくり再開します。

解熱鎮痛薬

つらい発熱や腹痛には、アセトアミノフェンなどを用いることがあります。持病や他の薬との関係があるため、自己判断ではなく医師や薬剤師に相談してください。

下痢止めの使用は医師と相談

サラサラの下痢は、体が菌を外に出そうとしているサインでもあります。自己判断で強い下痢止めを使うのは避け、医師に指示された場合のみ使用しましょう。

B. 抗菌薬が必要な場合の治療

  • 高熱・激しい腹痛・血便が続く場合
  • 高齢者・乳幼児・免疫が落ちている方(がん治療中、ステロイド内服中など)
  • 症状が長引いている場合

このようなケースでは、マクロライド系(エリスロマイシン・アジスロマイシンなど)といった抗菌薬を短期間使用することがあります。使用するかどうか、どの薬を使うかは、年齢・持病・症状の強さなどを総合的に判断して決めます。

C. 日常生活の注意点・入院の目安

  • 自宅で安静にし、トイレの後や調理の前後には必ず石けんで手洗いをします。
  • 自分や家族が食事を作るときは、下痢が落ち着くまで可能なら他の人に任せた方が安全です。
  • 強い脱水、繰り返すおう吐で水分がとれない、意識がもうろうとしている、といった場合は入院での点滴治療が必要になることがあります。

⚫︎カンピロバクター感染症の予後

多くの方は1週間前後で症状が改善し、後遺症なく回復します。ただし、乳幼児・高齢者・持病のある方では、脱水や電解質異常、腎機能の悪化などをきっかけに重症化することがあるため、早めの受診・適切な点滴治療が大切です。
ごくまれに、感染後1〜3週間ほどたってから、手足の筋力低下やしびれが出るギラン・バレー症候群(末しょう神経の病気)や、関節痛・関節炎(反応性関節炎)などを合併することがあります。

⚫︎カンピロバクター感染症の予防

完璧に防ぐことは難しいものの、次のような日常の工夫でリスクを大きく減らせます。

鶏肉は中心部までしっかり加熱

中までピンク色が残らないように、中心温度75℃で1分以上を目安に十分に火を通します。

生肉と他の食品を分けて扱う

生肉用とサラダ用で包丁・まな板・トングを分けるか、使用後はすぐに洗剤で十分洗浄します。肉の汁が他の食品に触れないようにしましょう。

手洗いの徹底

生肉を触った後、ペットの排泄物を処理した後、トイレの後、調理や食事の前には、石けんでしっかり手を洗います。

水や乳製品にも注意

井戸水や未殺菌のミルクは、煮沸や加熱を行うことで安全性が高まります。旅行先やキャンプ場などでは特に注意が必要です。

⚫︎カンピロバクター感染症に関連する病気や合併症

ギラン・バレー症候群

手足の筋力低下やしびれ、歩きにくさ、重症の場合は呼吸筋のまひを起こす神経の病気です。カンピロバクター感染がきっかけになることがあり、数千人に1人程度とまれですが重要な合併症です。

反応性関節炎

感染が落ち着いた後に、膝や足首などに痛み・腫れが出ることがあります。多くは一時的ですが、症状が強い場合は整形外科やリウマチ科での評価が必要です。

菌血症(きんけつしょう)

まれに菌が血液中に入り、高熱や全身状態の悪化を起こすことがあります。特に免疫の弱い方では注意が必要です。

他の食中毒との鑑別

ノロウイルス、サルモネラ菌、腸管出血性大腸菌など、ほかの食中毒でも似た症状が出ます。症状や検査結果を総合して診断します。

⚫︎まとめ

カンピロバクター感染症は、主に加熱が不十分な鶏肉などを食べることで起こる細菌性の胃腸炎です。多くは1週間ほどで自然に良くなっていきますが、激しい下痢による脱水や、ごくまれに起こる神経の合併症には注意が必要です。
もし「いつもと違う」「しんどくてつらい」と感じるようなときは、無理をせず早めに医療機関に相談しましょう。日ごろから丁寧に手を洗うこと、そしてお肉の中までしっかり火を通す習慣をつけることが、自分や家族を守る一番の予防になります。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2026/03/05
  • 更新日:2026/03/05

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