プリオン病ぷりおんびょう

プリオン病は、異常な「プリオン蛋白」が脳にたまり、急速に進む認知症や運動障害を起こすまれで重い神経の病気です。多くは数か月〜数年で進行するため、もの忘れや歩きにくさが短期間で悪化する場合は、早めに神経内科などでの評価が大切です。

⚫︎プリオン病とは?

脳の細胞が傷ついていくと、認知症(もの忘れや判断力の低下)、動きのぎこちなさ、けいれんのようなピクッとした動き(ミオクローヌス)など、さまざまな神経症状が急速に現れます。脳の組織がスポンジ状にスカスカになることから、「伝達性海綿状脳症」とも呼ばれます。

ヒトのプリオン病は、代表的なものとして以下のような病型があります。

  • 孤発性プリオン病:原因がはっきりせず自然に起こるタイプ(多くは孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病:sCJD)
  • 遺伝性プリオン病:プリオン蛋白の遺伝子に変化(変異)があり、家族内で発症するタイプ(家族性CJD、GSS病、致死性家族性不眠症など)
  • 獲得性プリオン病:医療行為(硬膜移植、角膜移植、汚染された手術器具など)や、牛海綿状脳症(BSE)由来の異常プリオンを体内に取り込むことで起こるタイプ(医原性CJD、変異型CJD:vCJDなど)

発症頻度は非常に低く、ヒトのプリオン病全体で年間約100万人に1〜2人とされています。日本でもサーベイランス(全国調査)が行われています。

⚫︎プリオン病の原因

プリオン病の直接の原因は、「正常なプリオン蛋白」が「異常プリオン蛋白」に変化し、それが連鎖的に増えて脳にたまることです。

主なタイプと原因は次のとおりです。

孤発性プリオン病

特別なきっかけが分からず自然に起こるタイプで、全体の大部分を占めます。

遺伝性プリオン病

プリオン蛋白をつくるPRNP遺伝子に変化(変異)があり、家族内で似た病気の人が複数みられることがあります。

獲得性プリオン病

過去には、硬膜移植や角膜移植、ヒト由来ホルモン製剤、汚染された手術器具などを介した「医原性CJD」が報告されています。また、海外ではBSEに汚染された食品を通じ、変異型CJD(vCJD)が問題となりましたが、日本国内ではvCJD患者の報告はありません。

⚫︎プリオン病の症状は?

病型によって細かい違いはありますが、共通するのは「数週間〜数か月で悪化する認知症・運動障害」です。代表的な孤発性CJDでは、次のような症状がみられます。

  • 急に進む物忘れ、判断力の低下、混乱
  • 性格や行動の変化(ぼんやりする、興奮しやすいなど)
  • 歩行のふらつき、手足の震えやつっぱり(運動失調・筋強剛)
  • 体がピクッと動くミオクローヌス(不随意な筋収縮)
  • 言葉が出にくい、呂律が回らない

遺伝性プリオン病では、めまい・ふらつきが目立つタイプや、重い不眠が主な症状になるタイプなどもあります。

⚫︎受診の目安

プリオン病そのものはまれですが、次のようなときは早めの受診をおすすめします。

  • 数週間〜数か月のあいだに、物忘れや判断力低下・性格変化が急にはっきりしてきた
  • 歩きにくさ、ふらつき、転びやすさが短期間で悪化している
  • けいれんやピクッとした動きが増え、意識がはっきりしない状態が続く
  • 家族にプリオン病(CJDなど)がいて、自分にも似た症状が出てきた

まずは一般内科、もの忘れ外来、神経内科などで相談し、必要に応じてプリオン病の診療経験のある施設を紹介してもらうのがよいでしょう。

⚫︎診断方法と治療方法(全体像)

プリオン病が疑われる場合、神経内科医が中心となって、問診・診察に加え、MRI、脳波、脳脊髄液検査などを組み合わせて診断します。確定診断には脳組織の検査(病理診断)が必要ですが、生前には検査結果の総合判断で診療方針を決めることが多いです。
現時点で、プリオン病そのものを根本的に治す薬はありません。症状を和らげる薬、リハビリ、栄養管理や感染症予防などの「支える医療(支持療法)」が治療の中心となります。

⚫︎プリオン病の診断

1)問診・診察

  • 症状の出方(いつから、どのくらいの速さで悪化しているか)
  • 家族歴(似た病気の人がいるか)
  • 脳外科手術や移植、海外渡航歴などを確認します。

2)画像検査(MRI)

大脳皮質や基底核などに特徴的な高信号がみられることがあり、診断の助けになります。

3)脳波検査

周期性鋭波複合と呼ばれる特徴的な波形がみられることがあります。

4)脳脊髄液検査

髄液中の特定の蛋白(14-3-3蛋白、タウ蛋白など)や、RT-QuIC法による異常プリオン蛋白の検出が診断の参考になります。

5)遺伝子検査

家族歴がある場合などには、PRNP遺伝子変異の有無を調べることがあります。

⚫︎プリオン病の治療

A. 病気そのものへの治療

  • 一般診療で使える「病気を止める薬」は現時点ではありません。
  • 国内外で治療薬の研究・治験が続けられています。

B. 症状を和らげる治療(対症療法)

  • けいれんやミオクローヌス:抗てんかん薬などでコントロールを目指します。
  • 不安・幻覚・興奮など:必要に応じて向精神薬を使用します。
  • 睡眠障害や痛みがあれば、それぞれに合わせた薬を検討します。

C. 生活の質を保つ支援

  • リハビリテーションで、なるべく長く自力で動ける時間を保つことを目標にします。
  • 飲み込みが悪くなった場合は、食事形態の工夫や嚥下訓練で誤嚥性肺炎を予防します。
  • 病状が進んだ段階では、栄養管理や褥瘡予防、感染症予防などを行いながら、苦痛をできるだけ軽くする「緩和ケア」が重要になります。

⚫︎プリオン病の予後

プリオン病は、残念ながら進行性で致死的な病気とされています。

  • 孤発性CJDでは、多くの方が発症から数か月〜1〜2年で寝たきりになり、その後、肺炎などをきっかけに亡くなられることが多いとされています。
  • 日本では、栄養管理や感染予防などの全身管理により、海外に比べて生存期間がやや長いという報告もあります。

一方で、発症年齢や病型、全身状態によって経過はさまざまです。早期から医療・介護・福祉サービスとつながっておくことで、本人と家族の負担を軽減しながら経過を見守ることができます。

⚫︎プリオン病の予防

個人レベルで完全に発症を防ぐ方法はありませんが、社会全体として次のような対策が取られています。

  • 牛の脳・脊髄など、BSEリスクの高い部位を食用にしない
  • 牛の飼料管理など、BSE発生を防ぐ仕組み
  • 脳外科手術や移植に使う器具・材料の厳格な管理と、プリオンに対応した消毒手順の徹底

家族や周囲の日常生活(会話、食事、スキンシップ)でうつることはなく、家庭内で過度な隔離を行う必要はありません。不安が強い場合は、主治医や保健所などに相談し、最新の情報に基づいて説明を受けると安心につながります。

⚫︎プリオン病に関連する病気や合併症

主なプリオン病のタイプ

  • 孤発性CJD(最も多い)
  • 家族性CJD、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病(GSS)
  • 致死性家族性不眠症(FFI)
  • 変異型CJD(vCJD:主に海外で報告、日本では患者報告なし)

病気の進行に伴う合併症

  • 誤嚥性肺炎
  • 褥瘡(床ずれ)
  • 尿路感染症

これらが生命予後に大きく影響するため、早期からの全身管理・介護体制づくりが重要です。

⚫︎まとめ

プリオン病は、異常なプリオンたんぱくが脳にたまることで、短期間のうちに進む認知症や運動障害を引き起こす、とてもまれで重い神経の病気です。
現時点では、発症を完全に防いだり、病気そのものを根本から治したりする治療法は確立していません。ただ、症状を和らげる治療や全身状態の管理、生活面の支援を組み合わせることで、できるだけ苦痛を減らし、安心して過ごせるよう支えることは可能です。

日常生活での接触によって家族や周囲の人にうつる心配はほとんどありません。医療や食品の分野でも、感染予防のための対策が取られています。
もし「短期間で進む物忘れ」や「歩きにくさ」などが気になる場合は、早めに医療機関へ相談することが大切です。本人と家族が必要な情報や支援を得ながら、無理なく一緒に向き合っていける体制を整えていきましょう。

 

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2026/03/10
  • 更新日:2026/03/10

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