サルモネラ症さるもねらしょう

サルモネラ症は、サルモネラ菌に汚染された卵や肉・水などからうつる食中毒の一種です。感染後半日〜2日ほどで発熱・腹痛・水っぽい下痢・嘔吐が出現し、多くは数日で自然に治りますが、乳幼児や高齢者では脱水や重症化に注意が必要です。

⚫︎サルモネラ症とは?

サルモネラ症は、「サルモネラ属菌」という細菌が腸に入り、主に急な下痢や腹痛、発熱を起こす食中毒です。多くは腸炎(腸の炎症)が中心の病気で、いわゆる「細菌性胃腸炎」の一つです。
原因となる菌は動物の腸の中に住んでおり、鶏卵(生卵・卵料理)、鶏肉・豚肉・牛肉、十分に加熱されていない肉料理、汚染された水、生のスプラウトや未殺菌乳などを介して人にうつります。

通常は数日で良くなることが多いものの、乳幼児・高齢者・基礎疾患のある方・免疫が弱っている方では、重い脱水や菌血症(菌が血液に入り全身に広がる状態)を起こし、入院が必要になることもあります。

⚫︎サルモネラ症の原因

主な原因は、サルモネラ菌に汚染された食品や水を口にすることです。

原因となりやすい食品

  • 生卵・半熟卵、卵を十分に加熱していない料理(自家製マヨネーズ、ティラミスなど)
  • 生肉や加熱不足の肉料理(鶏刺し・レアの鶏肉料理・ハンバーグなど)
  • 汚染された水や氷
  • 生のスプラウト(かいわれなど)や未殺菌乳製品 など

人から人への感染

トイレの後にきちんと手を洗わなかったり、おむつ交換後の手洗いが不十分だったりすると、手を介して家族や周囲の人へうつることがあります。特に乳幼児や高齢者施設では注意が必要です。

動物からうつる場合

爬虫類(カメ・ヘビ・トカゲ)や一部の鳥類・ペット動物はサルモネラ菌を持っていることがあり、糞便やケージを触った手から口に入ることで感染することがあります。ペットに触れた後の手洗いも大切です。

⚫︎サルモネラ症の症状は?

汚染された食品などを口にしてから、通常8〜48時間(およそ半日〜2日)、長くても3〜4日ほどの潜伏期を経て症状が出てきます。

代表的な症状は次の通りです。

  • 水っぽい下痢(1日に数回〜十数回)
  • 強い腹痛・腹部のけいれん様の痛み
  • 発熱(ときに38〜39℃以上の高熱)
  • 吐き気・嘔吐
  • 頭痛、全身のだるさ、食欲低下

多くの場合、下痢は3〜4日程度でおさまり、発熱も数日で引いていきますが、ときに1週間以上症状が続くこともあります。

注意が必要な症状として

  • ぐったりして水分がとれない
  • 尿の量が極端に減った、まったく出ない
  • 血の混じった便
  • 意識がぼんやりする、呼びかけに反応が悪い

などが挙げられます。これらは脱水や重症化のサインで、早急な受診が必要です。

⚫︎受診の目安

まず受診したほうがよいとき

  • 下痢や嘔吐が丸1日以上続く
  • 38℃以上の発熱+強い腹痛・だるさがある
  • 水のような下痢が何度も出る、血便が出る

とくに早めの受診が必要な人

  • 乳幼児・高齢者・妊娠中の方
  • 糖尿病・腎臓病・心臓病などの持病がある
  • 免疫を抑える薬を飲んでいる

救急受診・救急車を考えるサイン

  • ぐったりして反応が弱い、意識があいまい
  • ほとんど水分が飲めない、半日以上尿が出ない

迷ったときは、地域の救急相談窓口やかかりつけ医に電話で相談しましょう。

⚫︎診断方法と治療方法(全体像)

診断は

  • 診断は、問診・診察に加え、必要に応じて血液検査や便培養検査(便の中の菌を調べる検査)などを組み合わせて行います。原因となる菌を特定することで、治療方針や感染対策の目安になります。
  • 治療の基本は、脱水を防ぐための水分・電解質補給などの対症療法(症状を和らげる治療)です。ほとんどの方は、数日〜1週間ほどで自然に回復します。
  • 一方で、乳幼児・高齢者・基礎疾患や免疫低下のある方、重い症状がある方では、入院のうえ点滴や抗菌薬(細菌に効く薬)を用いることがあります。

⚫︎サルモネラ症の診断

1)問診・診察

  • いつから、どのような下痢・嘔吐・発熱が続いているか
  • 最近食べたもの(生卵・生肉・外食・お弁当・旅行先での食事など)
  • 同じものを食べた人に同様の症状が出ていないか
  • ペットや動物との接触歴、海外渡航歴 などを詳しく確認します

2)血液検査

  • 脱水の程度(腎機能・電解質)
  • 炎症反応(白血球数・CRP)
  • 重症例では菌血症の確認のために血液培養を行うこともあります

3)便の検査

  • 便培養検査でサルモネラ菌が検出されると診断の裏付けになります
  • 集団食中毒が疑われる場合には、保健所での検査や原因食品の調査が行われます

4)その他の検査

症状が長引く、血便がひどい、別の病気も疑われる場合には、腹部エコーやCTなどの画像検査が行われることがあります。

⚫︎サルモネラ症の治療

A. 自宅での基本的な対応(軽症〜中等症の場合)

水分・電解質補給

水やお茶だけでなく、経口補水液やスポーツドリンク(薄めて使用)などでこまめに水分と塩分を補います。少量ずつ頻回に飲むのがポイントです。

食事

強い下痢・嘔吐がある間は無理に食べず、落ち着いてきたらおかゆ・うどん・バナナ・リンゴのすりおろしなど胃腸に負担の少ないものから少しずつ再開します。油っこいもの・生もの・アルコールは回復するまで控えます。

市販薬について

整腸薬(乳酸菌製剤など)は補助的に使われることがありますが、自己判断で強い下痢止め(腸の動きを止めるタイプ)を使用すると、菌や毒素が腸内にとどまり悪化する可能性があるため、使用前に医師・薬剤師に相談してください。

B. 医療機関で行う治療(中等症〜重症、ハイリスク例)

点滴による水分・電解質補給

吐き気が強く飲めない場合や脱水が進んでいる場合は、点滴で補います。

抗菌薬治療

サルモネラ腸炎は多くが自然に治るため、健康な成人では必ずしも抗菌薬は必要ではありません。抗菌薬を使うと、かえって便から菌が出る期間が長くなることもあるためです。

一方で、乳幼児・高齢者・免疫が低下している方・重い全身症状や菌血症が疑われる方では、第三世代セフェム系やキノロン系、マクロライド系などの抗菌薬を用いることがあります(薬剤の選択は年齢・重症度・耐性状況により医師が判断します)

入院の目安

  • 水分がほとんどとれない、または意識障害がある
  • 重い脱水、ショック症状が疑われる
  • 基礎疾患があり、外来での経過観察が難しい場合

これらでは入院での集中的な管理を検討します。

⚫︎サルモネラ症の予後

多くの方では、適切な水分補給と安静により、数日〜1週間以内に自然に回復します。後遺症を残すことはまれです。
ただし、次のような場合には重症化リスクが高くなります。

  • 乳幼児や高齢者
  • がん、糖尿病、腎臓病などの基礎疾患がある
  • 免疫抑制薬を使用中、HIV感染症などで免疫が低下している
  • 人工関節・人工弁・血管グラフトなどを体内に入れている

これらの方では、腸炎だけでなく菌血症や敗血症、骨・関節・血管などへの波及(局所感染)を起こすことがあり、長期間の抗菌薬治療や手術を要することもあります。

⚫︎サルモネラ症の予防

完全に防ぐことは難しいものの、日常の工夫でリスクを大きく下げることができます。

食品の扱い・調理のポイント

  • 肉や卵は冷蔵庫で保管し、十分に加熱する(中心温度75℃で1分以上を目安)
  • 卵を割ったらすぐに調理し、割った卵を室温で長時間放置しない
  • お肉やレバーなどは「しっかり中まで」火を通す(生やレア状態は避ける)
  • 生肉や生卵を扱った包丁・まな板・手指はすぐに洗浄・消毒する
  • 生食用ではない卵や肉の生食は避ける

家庭での衛生習慣

  • 調理前、トイレの後、おむつ交換やペットの世話の後は、石けんと流水でしっかり手洗い
  • 生肉・生魚とサラダなど生で食べる食品は切る器具や置き場所を分ける
  • 調理済みの食品は室温に長時間放置せず、早めに冷蔵庫に入れる

ペットとの関わり

  • 爬虫類や小鳥などを飼う場合、フンやケージに触れた後は必ず手洗い
  • 乳幼児に爬虫類を直接触らせる時は特に注意し、触った後は大人が一緒に手洗いを行う

このような「加熱する」「分ける」「手を洗う」の3つを徹底することが、サルモネラ症を含む食中毒予防の基本です。

⚫︎サルモネラ症に関連する病気や合併症

重い脱水症・急性腎障害

激しい下痢・嘔吐で水分と電解質を失うと、血圧低下や腎臓の機能低下を起こすことがあります。

菌血症・敗血症

腸から血液中に菌が入り、全身に広がった状態です。高熱・意識障害・血圧低下など、命に関わることもあり、早期の診断と抗菌薬治療が必要です。

局所感染(骨髄炎・関節炎・動脈瘤感染など)

人工関節・人工弁・血管グラフトなど体内に異物がある場合や、動脈硬化の強い血管では、サルモネラ菌がそこにくっついて炎症を起こすことがあります。長期の抗菌薬や手術が必要になることもあります。

反応性関節炎

腸炎が治った後しばらくして、膝や足首などの関節痛・腫れが出ることがあり、「反応性関節炎」と呼ばれます。多くは一時的なものですが、症状が強い場合は整形外科やリウマチ専門医での評価が必要です。

⚫︎まとめ

サルモネラ症は、汚染された畜産物(特に鶏卵、鶏肉)の摂取により発症する急性の胃腸炎です。主症状は腹痛、下痢、発熱であり、通常は数日で軽快しますが、乳幼児や高齢者等のハイリスク群においては菌血症や重篤な脱水を呈する恐れがあります。

予防には、食品の十分な加熱処理(中心部 75℃・1分間以上)および二次汚染の防止、手指衛生の徹底が極めて有効です。

なお、本解説は一般的な情報提供を目的としています。実際の診断および治療方針の決定に際しては、個々の臨床症状に基づき、速やかに医師の診察を受けるようにしてください。

 

 

 

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2026/03/03
  • 更新日:2026/03/03

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