細菌性赤痢さいきんせいせきり
細菌性赤痢は、赤痢菌という細菌が腸に感染して起こる病気で、発熱・腹痛・下痢や血便が特徴です。少ない菌でも感染し、脱水やけいれんなど重症化することもあるため、血便や激しい腹痛がある場合は早めの受診が大切です。
目次
⚫︎細菌性赤痢とは?
細菌性赤痢は、「赤痢菌(しげりきん)」という細菌が口から体内に入り、主に大腸に炎症を起こす急性の腸の感染症です。赤痢菌には、志賀赤痢菌・フレクスナー赤痢菌・ボイド赤痢菌・ソンネ赤痢菌の4つのグループがあり、世界中でみられます。
衛生環境が悪い地域で多い病気ですが、日本でも海外渡航先で感染した方や、まれに国内での集団発生が報告されています。非常に少ない菌の数(10〜100個程度)でも感染し、家族内や保育園・高齢者施設などの共同生活の場で、うつりやすいことが特徴です。
⚫︎細菌性赤痢の原因
原因となるのは、赤痢菌(Shigella)という細菌です。赤痢菌は人の腸の中で増え、便の中にたくさん含まれます。そこから次のような経路で口に入ることで感染します。
汚染された水や食べ物
- 十分に消毒されていない水(井戸水など)
- 赤痢菌が付着した食材を使った料理
- 不衛生な環境で作られた食品や屋台の食品 など
手指や調理器具を介した感染
- トイレのあと十分に手洗いをしない
- 便で汚染された手で調理や配膳をする
- 汚れたまな板や包丁を使い回す
人から人への感染(二次感染)
- オムツ交換時や介護で便に触れたあと、手洗いが不十分な場合
- 家族や施設内で、汚染された手や物を介してうつる
性的接触
- 肛門と口が接触する性行為(いわゆるオーラル・アナル接触)で、便を介して感染することも報告されています。
赤痢菌は感染力が強く、少量でも発症しやすいので、「一人の患者さんから周囲に広がりやすい」ことが特徴です。
⚫︎細菌性赤痢の症状は?
菌が体に入ってから症状が出るまでの潜伏期は、通常1〜5日(多くは1〜3日)です。
典型的な症状は次の通りです。
- 発熱(多くは38℃前後の熱)
- お腹の痛み(けいれんするような差し込む痛み)
- 下痢(1日に何度もトイレに行く)
- 膿や粘液と血が混じった便(膿粘血便)
- しぶり腹(テネスムス):トイレに行ってもすっきりせず、すぐまた便意がくる状態
重症例では、1日に10回以上トイレに行くこともあり、少量ずつ粘液と血だけが出るような便になることもあります。強い腹痛と血便が同時にみられるのが、細菌性赤痢の特徴の一つです。
一方で、ソンネ菌(D群)など一部の赤痢菌では、症状が比較的軽く、軟便と軽い発熱のみで経過したり、ほとんど症状が出ない「不顕性」の感染で終わることもあります。
注意したい症状
- 強い脱水:口の中が乾く、尿が少ない・濃い、めまい、ぐったりする
- けいれん・意識障害:特に乳幼児では、高熱や脱水によりけいれんを起こすことがあります。
⚫︎受診の目安
次のような場合は、早めに医療機関を受診してください。
- 発熱と腹痛、下痢が数日続いている
- 血便(赤い便、ゼリー状の血が混じる便)が出る
- 1日に何度もトイレに行き、少量の便や粘液・血だけが出る
- 吐き気・嘔吐が強く、水分がほとんど取れない
- ぐったりしている、眠りがちで反応が鈍い
- 尿の量が明らかに少ない・半日以上ほとんど出ていない
特に、血便や激しい腹痛がある場合、乳幼児・高齢者・基礎疾患(腎臓病・心疾患など)がある方では、重症化しやすいため、救急外来の受診も含めて早めの対応が重要です。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
診断は、症状や発症までの経過、食事・渡航歴の聞き取りと、便の検査(培養検査)を組み合わせて行います。赤痢菌の種類(志賀菌、フレクスナー菌など)や、どのような抗菌薬が効くかを調べます。
治療の柱は、
- 脱水を防ぐための水分・電解質補給(経口補水液や点滴)
- 状態に応じた抗菌薬(抗生物質)治療
- 発熱や腹痛などを和らげる対症療法
です。重症の場合は入院が必要になります
⚫︎細菌性赤痢の診断
1)問診・診察
- いつから発熱・腹痛・下痢・血便が出ているか
- 1日の下痢の回数、便の性状(粘液、血の有無)
- 国内外の旅行歴、特に衛生状態が良くない地域への渡航歴
- 生ものや屋台の食事、井戸水などを摂取していないか
- 家族や周囲に似た症状の人がいないか
2)検査
- 便培養検査:便を採取し、赤痢菌がいるかどうかを培養して調べます。菌が見つかれば、どの血清型(A〜D群)かを同定します。
- 血液検査:脱水の程度、腎機能、電解質のバランス、炎症の程度を確認します。重症例では白血球増加、腎機能障害などがみられることがあります。
3)重症度の評価
意識状態、血圧、脈拍、呼吸、尿量などから、脱水やショックの有無を確認します。必要に応じて、腹部エコーやCT検査で、腸の状態や他の病気との鑑別を行うこともあります。
⚫︎細菌性赤痢の治療
A. 初期対応(まずやること/基本方針)
安静と水分補給
- 水やお茶だけでなく、経口補水液(電解質を含む飲料)を少量ずつこまめに飲みます。
- 嘔吐が強く飲めない場合は、点滴で水分を補います。
食事
急性期は無理に食べず、おかゆ・うどん・バナナなど消化に良いものから少しずつ再開します。
B. 抗菌薬治療・入院が必要な場合
- 赤痢菌には抗菌薬が有効であり、症状の期間や保菌期間(便に菌が出続ける期間)を短くすることが期待できます。どの薬をどのくらい使うかは、年齢や症状の重さ、菌の種類や薬剤耐性の有無をふまえて医師が判断します。
- 強い脱水、頻回の下痢や嘔吐、意識障害、けいれんなどがある場合は、入院して点滴・抗菌薬投与・全身管理を行います。
自己判断で市販の整腸剤や家に残っている抗生物質を飲むのは避け、必ず医師の指示に従ってください。
C. 回復期の管理と再感染予防
- 症状が落ち着いても、しばらくのあいだ便の中に菌が残っていることがあります。保育園児や食品を扱う仕事の方などは、保健所や主治医の指示に従い、便検査で陰性が確認されるまで登園や業務に制限がかかることがあります。
- 回復後も、トイレ後の手洗いや調理時の衛生管理を続けることで、家族や周囲への拡大を防ぐことができます。
⚫︎細菌性赤痢の予後
健康な成人では、適切な水分補給と治療により、多くは4〜7日ほどで症状が改善し、後遺症なく回復します。軽症例では、数回の下痢と軽い発熱だけで終わることもあります。
一方で、乳幼児・高齢者・基礎疾患のある方では、
- 強い脱水
- 急性腎障害
- けいれん・意識障害
などの重い経過をとることがあり、場合によっては命に関わることもあります。世界的には、衛生状態の悪い地域で、多くの小児が細菌性赤痢で命を落としている現状があります。
早期に医療機関を受診し、脱水の予防・治療や適切な抗菌薬治療を行うことで、予後は大きく改善します。
⚫︎細菌性赤痢の予防
細菌性赤痢を防ぐには、「口から入る便由来の菌をできるだけ遮断する」ことが基本です。
手洗いの徹底
トイレの後、おむつ交換の後、調理前後、食事前には、せっけんと流水で30秒程度ていねいに手を洗います。
食品と水への注意
- 海外渡航中は、生水・氷・生野菜・生の魚介類や肉類などを避け、十分に加熱された食品を選びます。
- 衛生状態が不明な屋台や露店での飲食は控えます。
調理環境の衛生管理
- 生肉用と野菜用でまな板・包丁を分ける、またはよく洗浄・消毒してから使う
- 使用後の調理器具・食器はしっかり洗って乾燥させる
- 共用のタオルはこまめに交換し、できればペーパータオルを使用する
家庭・施設内での二次感染予防
- オムツ交換時は手袋を使い、処理後は丁寧に手洗いをする
- 汚れた下着や寝具は、塩素系漂白剤などで消毒したうえで洗濯する
- 患者さんとタオルや食器を共用しない
ワクチンについて
現在、一般的に使用されている細菌性赤痢の予防ワクチンはありません。したがって、日常の衛生管理が最も重要な予防策です
⚫︎細菌性赤痢に関連する病気や合併症
脱水・急性腎障害
頻回の下痢や嘔吐で水分と電解質を失うと、腎臓の働きが低下し、尿が出にくくなることがあります。
けいれん・意識障害
高熱や脱水、電解質バランスの乱れにより、特に小児でけいれんや意識障害を起こすことがあります。
中毒性巨結腸症
重い腸炎で腸の動きが麻痺し、大腸が異常に拡張してしまう状態です。まれですが、命に関わることがあり、緊急の治療が必要です。
他の細菌性腸炎との鑑別
サルモネラ、病原性大腸菌、カンピロバクターなど、他の細菌による腸炎でも、腹痛・下痢・血便がみられます。症状だけでは区別がつかないため、便培養検査が重要です。
⚫︎まとめ
細菌性赤痢は、赤痢菌(Shigella)の経口感染によって発症する急性の消化器感染症です。主要な臨床症状として、発熱、腹痛、テネスムス(しぶり腹)、膿血便などが挙げられます。
本疾患は、10〜100個程度の極めて少量の菌量で発症するため、家庭内や集団施設における二次感染のリスクが非常に高いのが特徴です。そのため、手指衛生の徹底や排泄物の適切な処理が公衆衛生上の鍵となります。
多くは適切な抗菌薬療法と輸液管理により予後良好ですが、乳幼児や高齢者等のハイリスクグループにおいては重症化の懸念があります。膿血便等の特異的な症状を認める場合は、安易な自己判断を避け、速やかに専門医の診察を受けることが強く推奨されます。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- 厚生労働省 感染症情報「細菌性赤痢」(厚生労働省)
- 国立感染症研究所「細菌性赤痢」「IASR 細菌性赤痢 2010〜2021年」(感染症情報提供サイト+1)
■ この記事を監修した医師
赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2026/03/03
- 更新日:2026/03/03
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