滲出性中耳炎しんしゅつせいちゅうじえん
滲出性中耳炎は、鼓膜の奥(中耳)に「水(液体)」がたまる病気です。強い痛みや高熱は少ない一方で、耳がつまった感じや聞こえにくさが続きます。特に子どもに多く、長引くとことばの発達や学習に影響するため、早めの受診と経過観察が大切です。
目次
⚫︎滲出性中耳炎とは?
滲出性中耳炎は、鼓膜の奥にある「中耳」という空間に、サラサラした液体(滲出液)がたまった状態をいいます。
急性中耳炎のような強い耳の痛みや高い熱は目立たず、「耳がつまった感じ」「聞こえが悪い」といった症状が中心です。
耳と鼻の奥は「耳管(じかん)」という細い管でつながっています。この耳管がうまく開かず、中耳の換気や排水ができなくなると、徐々に液体がたまり滲出性中耳炎になります。
子どもは耳管の構造がまだ未熟なため、大人よりもこの病気になりやすいとされています。
⚫︎滲出性中耳炎の原因
滲出性中耳炎の主な原因は、耳管の働きが悪くなることです。具体的には次のような要因があります。
- かぜや急性中耳炎のあと
かぜで鼻や喉が炎症を起こすと、耳管の入口も腫れて開きにくくなります。急性中耳炎が治ったあとに、液体だけが中耳に残って滲出性中耳炎に移行することもよくあります。 - アデノイド肥大
鼻の奥にあるリンパ組織(アデノイド)が大きいと、耳管の入口をふさぎやすく、換気が悪くなります。特に小児でよくみられる原因です。 - アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎(ちくのう症)
鼻水や鼻づまりが長く続くと、耳管の周りの粘膜も腫れ、耳管が詰まりやすくなります。 - 急な気圧の変化(飛行機・ダイビングなど)
耳抜きがうまくできないと、中耳の圧力調整ができず、液体がたまりやすくなります。 - 大人の場合の注意点
片側だけの滲出性中耳炎が長く続く場合、鼻の奥(上咽頭)にできものがあることが原因になっていることもあります。この場合は精密検査が必要です。
⚫︎滲出性中耳炎の症状は?
滲出性中耳炎では、次のような症状がみられます。
- 耳がつまった感じ(耳閉感)
「水の中にいるような感じ」「耳がぬれたような感じ」と表現されることが多いです。 - 聞こえにくい(難聴)
テレビの音を大きくする、呼んでも返事が遅い、学校や保育園で先生の声が聞き取りにくいなど、周囲の人が先に気づくこともあります。 - 自分の声がひびく感じ
自分の声だけやたら大きく聞こえる「自声強調」を自覚することがあります。 - 耳鳴り
「ジー」「ゴー」という低い音を感じることがあります。 - ふらつき感
強いめまいは少ないですが、なんとなくバランスが取りにくいと感じることもあります。
急性中耳炎と違い、「強い耳の痛み」や「高熱」がないため、特に小さなお子さんでは見逃されやすい病気です。
⚫︎受診の目安
次のような場合は、耳鼻咽喉科への受診をおすすめします。
- 耳がつまった感じや聞こえにくさが2週間以上続いている
- 子どもがテレビの音を大きくする、呼んでも振り向かない、聞き返しが多い
- 幼児でことばの発達が遅れている、名前を呼んでも反応が弱い
- 急性中耳炎が何度も再発している
- 片方の耳だけ聞こえにくい状態が続く(特に大人)
- 飛行機搭乗後やダイビング後から耳のつまった感じが続いている
耳の痛みや高熱を伴う場合は、滲出性中耳炎ではなく急性中耳炎などの可能性もあり、より早めの受診が望まれます。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
診断は、耳鼻咽喉科で鼓膜を観察したり、音の伝わり方を測定する検査を行って総合的に判断します。鼓膜が白っぽく濁っていたり、内側に水面のような線や気泡が見えると、滲出性中耳炎が疑われます。
治療は、
- 自然に治る経過を見守ること
- 鼻やのどの病気など、原因となる状態を整えること
- 必要に応じて鼓膜に小さなチューブを入れて換気をよくすること
が柱になります。
多くは数か月以内に自然に改善しますが、長く続く場合や聞こえの低下が強い場合には、手術的な治療も検討します。
●滲出性中耳炎の診断
問診・診察
- いつ頃から聞こえにくいか、かぜや中耳炎のあとかどうか、飛行機やダイビングとの関連がないかを確認します。
- お子さんの場合は、テレビの音量、呼びかけへの反応、ことばの発達状況などもあわせて評価します。
耳の診察(耳鏡・顕微鏡検査)
- 鼓膜の色や形を観察します。白っぽく濁っていたり、内側に水がたまっている様子(液面・気泡)が見えることがあります。
- 鼓膜が内側に引き込まれている(陥凹している)場合もあり、慢性的な耳管の障害が疑われます。
鼓膜の動きや中耳の圧力を調べる検査(ティンパノメトリー)
- 耳に小さなプローブを当てて、鼓膜の動きと中耳の圧を測る検査です。
- 滲出性中耳炎では、鼓膜の動きが悪くなり、典型的な波形(B型)を示すことが多いです。
聴力検査
- 大きな音・小さな音を聞き分ける検査で、どの程度聞こえが下がっているかを調べます。
- 子どもの場合は、年齢に応じた方法(遊戯聴力検査など)で無理のない範囲で行います。
●滲出性中耳炎の治療
- 問診・診察
・いつ頃から聞こえにくいか、かぜや中耳炎のあとかどうか、飛行機やダイビングとの関連がないかを確認します。
・お子さんの場合は、テレビの音量、呼びかけへの反応、ことばの発達状況などもあわせて評価します。 - 耳の診察(耳鏡・顕微鏡検査)
・鼓膜の色や形を観察します。白っぽく濁っていたり、内側に水がたまっている様子(液面・気泡)が見えることがあります。
・鼓膜が内側に引き込まれている(陥凹している)場合もあり、慢性的な耳管の障害が疑われます。 - 鼓膜の動きや中耳の圧力を調べる検査(ティンパノメトリー)
・耳に小さなプローブを当てて、鼓膜の動きと中耳の圧を測る検査です。
・滲出性中耳炎では、鼓膜の動きが悪くなり、典型的な波形(B型)を示すことが多いです。 - 聴力検査
・大きな音・小さな音を聞き分ける検査で、どの程度聞こえが下がっているかを調べます。
・子どもの場合は、年齢に応じた方法(遊戯聴力検査など)で無理のない範囲で行います。
●滲出性中耳炎の治療
初期対応(まずやること/基本方針)
- 経過観察
痛みや高熱がなく、軽度の難聴であれば、まずは数か月の経過観察が基本になります。自然に液体が吸収されて治ることも少なくありません。 - 鼻やのどの治療
かぜ、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などがあれば、飲み薬や点鼻薬で炎症を抑え、鼻の通りをよくすることで耳管の働きを助けます。 - 耳管通気などの処置
耳鼻科で専用の器具を使い、中耳に空気を送る処置を行うことがあります。
生活上の工夫
- 鼻は強く一気にかまず、片側ずつゆっくりかむ
- 受動喫煙(たばこの煙)を避ける
- 飛行機や高地への外出は、症状が強い時期は念のため主治医と相談
- 学校や園では、聞こえにくさに合わせて前の席にしてもらうなど、環境調整を行うと安心です。
手術的治療を検討する場合
- 症状が3か月以上続き、聴力低下がはっきりしている
- ことばの発達や学習に影響が出ている
なお、滲出性中耳炎は細菌感染が主体の病気ではないため、抗生物質だけで根本的に治すことは難しく、必要以上の抗生物質使用は通常おすすめされません。
⚫︎滲出性中耳炎の予後
- 子どもの滲出性中耳炎の多くは、数か月〜半年ほどで自然に改善していきます。
- ただし何度も再発する場合や、長く続く場合もあり、その場合はチューブ留置などの治療が必要になることがあります。
- 適切に管理すれば、聴力は多くのケースで改善しますが、長期間放置すると鼓膜が薄く伸びてしまったり、慢性中耳炎・真珠腫性中耳炎(しんじゅしゅせいちゅうじえん)などに進行することもあります。
- ことばの発達や学習・コミュニケーションに影響が出る前に気づいて対応することが大切です。
⚫︎滲出性中耳炎の予防
滲出性中耳炎を完全に防ぐことは難しいものの、次のような工夫でリスクを減らすことができます。
- かぜ・インフルエンザの予防
手洗い・うがい、人混みでのマスクなど基本的な感染対策を心がけましょう。 - 鼻と耳にやさしい生活
強く鼻をかみすぎない、鼻づまりを放置しない、アレルギー性鼻炎がある場合は早めに治療を受けることが大切です。 - 受動喫煙を避ける
たばこの煙は鼻や耳の粘膜を刺激し、滲出性中耳炎のリスクを高めます。家庭内禁煙を意識しましょう。 - 乳児の授乳姿勢
赤ちゃんにミルクをあげるときは、寝かせたままではなく、頭を少し起こした姿勢にすると、耳への逆流のリスクが下がるとされています。
再発しやすいお子さんの場合は、主治医と相談しながら、季節や体調に応じた予防・フォローアップの計画を立てていきます。
⚫︎滲出性中耳炎に関連する病気や合併症
- 急性中耳炎
かぜや感染症に伴い急性中耳炎を繰り返すと、その後に滲出性中耳炎へ移行することがあります。 - 慢性中耳炎
長期間、鼓膜に穴があいた状態が続く病気で、滲出性中耳炎の経過中に移行する場合があります。 - 真珠腫性中耳炎
鼓膜が内側に引き込まれた部分に皮膚がたまり、塊(真珠腫)を作る病気です。聞こえの低下だけでなく、周囲の骨を溶かすなど重い合併症につながることがあります。 - ことばの発達の遅れ・学習面の問題
聞こえにくさが長く続くと、音やことばを覚える力に影響が出ることがあり、早めの気づきと支援が重要です。 - 耳管機能障害
アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、アデノイド肥大など耳管の働きを悪くする病気は、滲出性中耳炎の背景にあることが多く、併せて管理が必要です。
⚫︎まとめ
滲出性中耳炎は、痛みや熱が目立たない一方で、「聞こえにくさ」が静かに続く病気です。
特に子どもでは、ことばや学習への影響につながることがあるため、まわりの大人が変化に気づいてあげることが大切です。
多くは自然に良くなりますが、長引く場合にはチューブ治療などで聴力の回復を目指すことができます。
耳の症状や聞こえに不安があるときは、自己判断で様子を見過ぎず、早めに耳鼻咽喉科で相談しましょう。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- バイオミ診療ガイド 耳・鼻・のどの病気
(https://www.byomie.com/products/vol1/) - Ubie 症状チェック・病気事典(滲出性中耳炎関連ページなど)
(https://ubie.app/byoki_qa)
■ この記事を監修した医師
岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック
大阪大学 医学部 卒
東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。
患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。
- 公開日:2026/03/31
- 更新日:2026/03/31
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