播種性血管内凝固(DIC)はしゅせいけっかんないぎょうこ
DICは重い感染症や外傷、がん、産科合併症などをきっかけに、体の中で血が一斉に固まりやすくなり、同時に出血もしやすくなる緊急の病態です。 原因病気の治療に加え、血液の補充や抗凝固療法を状況に応じて行います。
目次
⚫︎播種性血管内凝固(DIC)とは?
先端から末端の細い血管で血の塊(血栓)がいっせいに生じると、臓器に酸素が届きにくくなり(臓器障害)、同時に血小板や凝固因子が大量に消費されるため出血もしやすくなります。この「血が固まる」と「出血する」が同時に進むのがDICの特徴で、命に関わることがあるため早期対応が必要です。
日本を含む各国の診療指針では、DICは“基礎疾患に引き続いて起こる全身性の止血異常”と整理されています
⚫︎播種性血管内凝固(DIC)の原因は?
引き金(基礎疾患)はさまざまです。代表的なのは
- 敗血症(重い感染症)
- 大きな外傷・熱傷、がん(特に白血病や固形がんの進行例)
- 産科合併症(常位胎盤早期剝離・羊水塞栓など)
- 手術後などです。これらの病気が起こす強い炎症反応や組織の損傷が、凝固系を全身で過剰に活性化させます
⚫︎播種性血管内凝固(DIC)の症状は?
出血による症状と、血栓による臓器障害の症状が混在します。皮膚のあざや点状出血
鼻血・歯ぐき出血、血尿、黒色便、抜歯や手術後の止血困難などがみられます。
一方で、呼吸苦や酸素低下(肺の微小血栓)、尿量低下やむくみ(腎障害)、意識がもうろうとする・けいれん(脳への影響)、四肢の冷感・痛み・変色(末梢循環不全)など、臓器機能低下のサインにも注意が必要です。
はじめは疲れやすさや発熱だけのこともあり、進行が速い場合は短時間で重症化します。
⚫︎受診の目安
全身の炎症や重い感染症、外傷、がんの治療中などの状況で、以下のような症状が続く場合は注意が必要です。
- 発熱、強い倦怠感、息切れが続く
- 原因不明のあざが増える、鼻血・歯ぐき出血・月経過多など出血が止まりにくい
- 皮膚に細かい点状出血がみられる
- 尿や便に血が混じる、黒っぽい便が出る
- 意識の低下、息苦しさ、手足の冷感などショック症状が疑われる
→ こうした場合は、すぐに内科または血液内科、状況によっては救急外来を受診し、血液検査や凝固系の精査を受けましょう。DICは進行が早く命に関わることがあり、早期診断と原因治療、適切な凝固異常の管理が予後を大きく左右します。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
- 診断は「DICの引き金となる病気の存在」と「出血・臓器障害の症状」、そして「採血での異常」を組み合わせて行います。
- 血小板減少、フィブリノゲン低下、FDPやDダイマー上昇、PT延長などを点数化する各種スコア(ISTH、JAAM、日本血栓止血学会JSTHなど)が用いられます。
- 治療は、第一に基礎疾患のコントロール(感染なら抗菌薬とドレナージ、産科なら胎盤剝離への対応、がんならがん治療等)を行い、並行して輸血や抗凝固療法などの全身管理を実施します。
⚫︎播種性血管内凝固(DIC)の診断
1)問診・診察
原因となりうる出来事(発熱や悪寒を伴う感染症、外傷・手術、がん・産科イベントなど)を確認し、出血傾向(鼻血、歯ぐき出血、皮下出血、黒色便、血尿)と臓器障害の兆候(息苦しさ、尿量減少、意識の混濁、四肢の冷感や斑状皮疹)を丁寧に評価します。バイタルサイン、皮膚・粘膜の出血、全身状態を系統的に診ます。
2)血液検査
血小板数の低下、PT/INR延長、APTT延長、フィブリノゲン低下、FDP・Dダイマー上昇、アンチトロンビン活性低下などを評価します。貧血の有無、腎・肝機能、乳酸、炎症反応(CRP・プロカルシトニン)も併せて確認し、経時的に追います。
3)スコアリング(判定基準)
ISTHスコア、JAAM DICスコア、日本血栓止血学会(JSTH)スコア等を活用し、検査値と臨床所見を点数化してDICの可能性と重症度を判定します。
早期拾い上げにはJAAMやSIC(敗血症性凝固異常)を、進行例の確定にはISTHを参考にします。
4)基礎疾患の同定
敗血症が疑われる場合は培養採取と感染源検索(胸部画像、腹部エコー/CT、尿検査など)を行い、外傷・術後・産科・がん関連などのトリガーを特定します。
基礎疾患の把握が治療方針に直結します。
5)画像・臓器評価
胸部X線やCTで肺うっ血・肺炎・塞栓の有無、腹部エコーやCTで肝腎機能低下の背景や出血源を確認します。
必要に応じて心エコー、頭部画像などを追加し、臓器障害の広がりを評価します。
6)鑑別と重症度層別化
肝不全、重篤な肝硬変、巨大血腫後の線溶亢進、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)などDIC様の検査異常を来す病態を鑑別します。
臨床的には「出血優位」か「血栓(臓器障害)優位」かを見極め、輸血・抗凝固・集中治療の強度を層別化します。
⚫︎播種性血管内凝固(DIC)の治療
治療は「原因のコントロール」「出血と血栓のバランス」「合併症予防」を柱に個別化します。
A. 支持療法
酸素投与や点滴で全身状態を安定させます。血圧と尿量を保ち、体温管理を行います。痛み・不安を和らげ、栄養も支えます。
腎機能が悪化すれば利尿薬や透析を検討します。呼吸・意識が悪い場合は集中治療で臓器を守ります。感染が疑わしければ培養を採り、速やかに抗菌薬を開始します。
B. 抗凝固・補充療法
出血と血栓の強さを見極めて方針を決めます。出血が強ければ赤血球・血小板・FFP・フィブリノゲンを補います。処置前後は計画的に輸血します。血栓優位なら未分画ヘパリンや低分子ヘパリンを検討します。
出血が増えたら減量や中止を判断します。抗線溶薬は特殊な状況でのみ慎重に使います。治療中は血小板、フィブリノゲン、PT/INR、Dダイマーを定期チェックします。
C. 原因に対する治療(根治を目指す部分)
DICは引き金疾患の治療が最優先です。敗血症では感染源の除去と適切な抗菌薬を行います。産科DICは止血や胎盤関連の処置を急ぎます。
外傷・熱傷では止血、デブリードマン、整復を進めます。がん関連では薬物・放射線・手術など腫瘍治療を検討します。原因が落ち着くほど、DICも改善しやすくなります。
D. その他の治療・局所治療
局所出血は圧迫・縫合・止血材で対応します。消化管出血は内視鏡、必要なら動脈塞栓を考えます。広い皮膚壊死や大血腫は外科的ドレナージを検討します。四肢虚血は血管外科やカテーテル治療を評価します。周術期や出産前後は多職種で計画を共有します。治療中は「出血優位か血栓優位か」を繰り返し見直し、用量と方針を機動的に調整します。
⚫︎播種性血管内凝固(DIC)の予後
DICそのものは重症で、基礎疾患の重さと治療開始の速さが予後を左右します。早期に原因治療を行い、支持療法と抗凝固・補充療法を適切に組み合わせることで、臓器障害の進行を抑えられる可能性が高まります。
慢性・がん関連DICは長期管理が必要な場合があり、外来での凝固マーカーの定期チェックや感染予防が役立ちます。
⚫︎播種性血管内凝固(DIC)の予防
MFそのものを確実に防ぐ方法は不明ですが、合併症の予防と生活の質の維持は可能です。
- 感染対策:手洗い・口腔ケア。ワクチン接種は主治医と時期・種類を相談
- 水分・休養:脱水を避け、十分な睡眠とバランスの良い食事
- 嗜好品:過度の飲酒を控え、禁煙を目指す
- 血栓対策:長時間同姿勢を避け、こまめに足を動かす(長距離移動は休憩や弾性ストッキング)
- 薬の注意:アスピリンや一部NSAIDsは自己判断で使わず、処置前は主治医・歯科へ病名を共有
- 受診の目安:発熱、息切れ、強い倦怠、出血・あざの増加、急な体重減少や腹部の張りを感じたら早めに受診
⚫︎播種性血管内凝固(DIC)に関連する病気や合併症
関連する病態としては
- 敗血症、重症外傷・熱傷、白血病
- 固形がん、産科合併症、大動脈瘤・大手術後など
合併症としては
- 多臓器不全(呼吸不全・腎不全・肝障害・意識障害など)
- 広範な皮膚壊死、四肢の虚血、重篤な出血(消化管・頭蓋内出血など)が挙げられます
⚫︎まとめ
DICは「血が固まりやすい」と「出血しやすい」が同時に起こる危険な病態です。強い感染症や外傷、手術・出産、がんの進行などがきっかけになります。
診断はスコアリングと採血所見を総合し、治療は原因病気の対処を最優先に、輸血や抗凝固療法、集中治療を組み合わせます。
体調の急変や出血・息苦しさ・尿量低下などの異変があれば、自己判断せずすぐに受診してください。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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(https://ubie.app/byoki_qa)
■ この記事を監修した医師
赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2026/02/20
- 更新日:2026/02/24
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