アナフィラキシーショックあなふぃらきしーしょっく

アナフィラキシーショックは、アレルギー反応の中でも最も重篤な症状で、血圧低下や意識障害、呼吸困難を急速に引き起こします。食物や薬物、昆虫毒が主な原因で、迅速なアドレナリン投与と救急対応が命を守る鍵となります。

アナフィラキシーショック

アナフィラキシーショックとは?

アナフィラキシーショックとは、アナフィラキシーと呼ばれる全身性の急性アレルギー反応の中でも、特に血圧の低下や意識障害などを伴う重篤な状態を指します。原因となるアレルゲン(抗原)に曝露されることで免疫系が過剰に反応し、体中にさまざまな症状が急激に出現します。

アナフィラキシーは、アレルゲンが体内に入ってから数分から数十分以内に発症することが多く、ショック症状が現れた場合には、迅速な救命処置が必要です。一般に、皮膚、呼吸器、消化器、神経、循環器など複数の臓器に症状が同時に出現するのが特徴です。

アナフィラキシーショックは医療緊急事態であり、処置の遅れが致命的な結果につながることがあります。主な原因には食物、薬物、蜂などの昆虫刺傷、造影剤、運動などが含まれます。

初期対応としては、まずアドレナリンの筋肉内注射が最も重要です。患者や家族が自己注射薬(エピペン)を携帯している場合は、速やかに使用する必要があります。さらに、救急搬送と継続的な観察が求められます。

原因

アナフィラキシーショックは、特定のアレルゲンに対して免疫系が異常な反応を示すことによって発症します。アレルゲンはさまざまな物質に存在し、以下のように分類されます。

食物による原因(特に小児に多い)

  • 鶏卵、牛乳、小麦、そば、ピーナッツ、ナッツ類、甲殻類(エビ・カニ)など
  • 加工食品に含まれる微量のアレルゲンが原因となることもある
  • 小児期には成長とともに耐性を獲得することもある

薬物による原因(成人に多い)

  • 抗菌薬(ペニシリン、セフェム系など)
  • 解熱鎮痛薬(NSAIDs)
  • 筋弛緩薬、造影剤、麻酔薬など
  • サプリメントや漢方薬などによる例も報告されている

昆虫による原因

  • 蜂(スズメバチ、アシナガバチ、ミツバチなど)の毒
  • 刺された経験がある人は再曝露時に強い反応を起こすことがある

その他の原因

  • 運動誘発性アナフィラキシー(特定の食物摂取後に運動することで発症)
  • ラテックス(医療用手袋、風船など)
  • アレルゲンの吸入(花粉、ダニなど)

アナフィラキシーは、過去に同じアレルゲンに曝露されていた場合に、免疫系が記憶していた情報をもとに強く反応する「即時型アレルギー反応(Ⅰ型)」で発症します。原因不明で発症する「特発性アナフィラキシー」も存在します。

症状

アナフィラキシーショックの症状は、複数の臓器系に急速に出現するのが特徴であり、症状の進行は非常に早いため、迅速な評価と対応が求められます。

皮膚症状(最も多い初期症状)

  • 全身のじんましん
  • かゆみ、紅潮、腫脹(特に顔や手足)
  • 口唇、眼瞼、舌の腫れ(血管浮腫)

呼吸器症状

  • のどの違和感、締めつけ感(上気道浮腫)
  • 嗄声、咳、喘鳴
  • 呼吸困難(肺の気道収縮)
  • 気道閉塞による窒息のリスクもあり

消化器症状

  • 腹痛、吐き気、嘔吐、下痢
  • 腹部膨満感、不快感
  • 特に食物アレルギーに伴いやすい

循環器・神経症状(ショックの兆候)

  • 動悸、めまい
  • 血圧低下、顔面蒼白
  • 意識障害(傾眠、錯乱、失神)
  • 四股冷感、冷汗、虚脱感

重症例で見られる症状

  • 急激な血圧低下によるショック
  • 脳低酸素による痙攣、意識消失
  • 多臓器不全(循環障害が長時間持続した場合)

症状の出現タイミング

  • アレルゲン曝露後数分~30分以内に出現することが多い
  • 2相性反応として、数時間後に再発することもある

アナフィラキシーの症状は個人差があり、初発症状が軽度でも急激に進行することがあるため、すべての症状を網羅的に観察することが重要です。

診断方法と治療方法

診断

  1. 臨床診断が基本
    ・血圧低下や呼吸困難、皮膚症状など複数の臓器症状が急速に出現するかを確認
    ・原因となるアレルゲンの曝露歴が重要
  2. 血液検査(補助診断)
    ・トリプターゼ:肥満細胞から放出される物質で、発症後2〜3時間以内に上昇
    ・ヒスタミン:急性期の反応に関与。半減期が短いため早期採血が必要
  3. アレルゲン特定のための検査(回復後)
    ・特異的IgE抗体検査
    ・皮膚プリックテスト、経口負荷試験(専門施設で実施)

治療

  1. アドレナリンの筋肉内注射(最重要)
    ・大腿前外側に迅速に注射(0.3mgが成人の標準)
    ・作用:気道の拡張、血圧上昇、肥満細胞からの化学物質放出抑制
    ・使用後も必ず医療機関を受診
  2. 酸素投与
    ・SpO₂の低下がある場合に速やかに実施(高流量)
  3. 点滴による循環支持
    ・乳酸リンゲル液などで血圧の維持を図る
  4. 抗ヒスタミン薬・副腎皮質ステロイド
    ・じんましんやかゆみの緩和に使用
    ・再発(2相性反応)予防の目的でステロイドが投与されることもある
  5. β2刺激薬(吸入薬)
    ・喘鳴や気管支収縮に対してサルブタモールなどを使用
  6. 気道管理
    ・重度の上気道浮腫には気管挿管や気管切開が必要となることもある
  7. 観察と再発防止
    ・最低4~6時間の院内観察が推奨される
    ・2相性反応に注意(数時間~24時間以内に再発することあり)

治療は時間との勝負であり、症状が進行する前にアドレナリンを投与することが最も重要です。

予後

アナフィラキシーショックは迅速かつ適切に治療されれば、多くの症例で回復が期待できます。しかし、治療が遅れると生命を脅かす重大な結果を招く可能性があります。

予後良好の条件

  • アドレナリンを速やかに筋注できた場合
  • 原因アレルゲンの特定と再曝露の回避ができた場合
  • 2相性反応が起きなかった場合

予後不良のリスク因子

  • アドレナリン投与の遅れ
  • 気道浮腫や気管支収縮が著明な場合
  • 既往に重篤なアナフィラキシーがある患者
  • 心肺疾患のある高齢者
  • β遮断薬、ACE阻害薬の内服患者

死亡例の特徴

  • 発症後30分以内に致死的経過をたどることが多い
  • 気道閉塞による窒息、またはショックによる心停止が主な原因

再発のリスク

  • 同じアレルゲンへの再曝露で再発しやすい
  • 予後改善にはエピペンの携帯と適切な使用指導が不可欠

患者や家族への教育、緊急対応体制の整備が、予後の改善に直結します。

予防

アナフィラキシーショックは、予防可能な疾患であり、アレルゲンの回避と発症時の対応体制の整備が鍵を握ります。

一次予防(アレルゲンの回避)

  • 特定されたアレルゲンの摂取・接触を避ける
  • 食物表示の確認、外食時の情報共有
  • 医療機関での造影剤や薬剤使用歴の確認と記録
  • 昆虫が多い環境での活動を避け、防護服の着用

二次予防(早期対応体制)

  • エピペンの処方と携帯(重症既往がある人)
  • 本人と周囲(家族、学校、職場)への使用方法の指導
  • エピペンは「症状が出る前に」ではなく「出始めたらすぐに」使用が原則

運動誘発性への対応

  • 発症歴がある場合は、該当する食物摂取後の運動を避ける
  • 運動中の異変を見逃さない体制づくり

医療現場での予防

  • 初回投与薬へのアレルギー歴の確認
  • 造影剤使用時の前処置(プレメディケーション)

アナフィラキシーは未然の対策と早期対応によって、防げる重篤疾患です。

関連する病気や合併症

アナフィラキシーショックは単独でも致命的になり得る疾患ですが、さまざまな疾患や薬剤、環境因子と関連しています。

アレルギー疾患との関連

  • 気管支喘息:既往があると呼吸器症状が重篤化しやすい
  • アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎:アレルギー体質の指標として関連
  • 食物アレルギー:特に乳幼児での発症例が多い

薬剤アレルギーとの関連

  • NSAIDs、抗菌薬、造影剤:アナフィラキシー発症率が高い
  • ワクチン接種:ごく稀に重篤なアレルギー反応が報告されている

その他の疾患との関係

  • 心疾患、高血圧、喘息:合併があると重篤化のリスクが高まる
  • マスト細胞活性化症候群:頻回にアナフィラキシーを起こす

合併症

  • 2相性アナフィラキシー:再び症状が現れる
  • 肺水腫:ショックに伴う循環不全でまれに起こる
  • 多臓器不全:低血圧が長時間持続した場合

アナフィラキシーのリスクを持つ患者は、周囲の理解と迅速な対応体制の整備が不可欠です。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2025/07/16
  • 更新日:2025/07/16

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