甲状腺中毒症・甲状腺機能亢進症こうじょうせんちゅうどくしょう・こうじょうせんきのうこうしんしょう

甲状腺中毒症・甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、代謝が異常に高まる状態を指します。動悸や体重減少、発汗、精神不安などの症状が現れ、主な原因はバセドウ病です。適切な治療により多くはコントロール可能です。

甲状腺中毒症・甲状腺機能亢進症とは?

甲状腺中毒症・甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが必要以上に体内に存在することによって、全身の代謝が過剰に活性化された状態を指します。厳密には、「甲状腺機能亢進症」は甲状腺自体がホルモンを過剰産生している状態で、「甲状腺中毒症」は何らかの理由で血中のホルモン量が増加している広い概念を含みます。

主な原因は、自己免疫性疾患であるバセドウ病で、日本では甲状腺機能亢進症の約90%を占めます。そのほか、甲状腺炎(亜急性・無痛性)、ホルモン剤の過剰摂取、甲状腺腫瘍なども原因になります。

甲状腺ホルモンが過剰になると、心臓、筋肉、神経系、消化管など多くの臓器に影響が及び、放置すれば重篤な合併症を引き起こすこともあります。

原因

甲状腺中毒症および甲状腺機能亢進症の原因は複数あり、それぞれ病態や治療方針が異なります。原因の特定が診断と治療の出発点となります。

主な原因

  • バセドウ病:自己免疫によって甲状腺刺激ホルモン受容体抗体(TRAb)が産生され、甲状腺を刺激し続ける
  • 亜急性甲状腺炎:ウイルス感染後に炎症が起こり、一時的にホルモンが漏れ出る
  • 無痛性甲状腺炎:出産後や自己免疫異常により一過性にホルモンが漏れる
  • プランマー病(機能性結節性甲状腺腫):自律的にホルモンを産生する結節
  • ホルモン製剤の過剰摂取:レボチロキシンの内服量過多など
  • TSH産生下垂体腫瘍:下垂体からの刺激が持続する稀な原因

それぞれに特徴的な臨床像や経過があり、血液検査と画像診断で鑑別が必要です。

症状

甲状腺ホルモンが過剰になると、代謝が亢進し、全身にさまざまな症状が現れます。特にバセドウ病によるものは、典型的な一連の症候群を呈します。

代表的な全身症状

  • 動悸、息切れ、頻脈(心拍数の増加)
  • 体重減少(食欲は保たれているか増加していることが多い)
  • 発汗過多、暑がり
  • 手指の震え(振戦)
  • 不安感、イライラ、集中力低下
  • 不眠、疲労感
  • 筋力低下(特に大腿四頭筋など)

消化器・その他の症状

  • 下痢、軟便
  • 頻尿
  • 月経不順、不妊
  • 眼球突出、眼痛、複視(バセドウ病眼症)

高齢者では典型的な症状が現れにくく、「食欲低下」「倦怠感」「抑うつ」などが中心になることもあります(無症候性甲状腺中毒症)。

診断方法と治療方法

診断

  • 問診と身体診察:動悸、発汗、体重変化、甲状腺の腫れや眼球突出などを評価
  • 血液検査
    - 甲状腺ホルモン(FT3、FT4)の上昇
    - TSHの低下(TSH抑制)
    - TRAb、TSAb(バセドウ病の抗体)の測定
  • 超音波検査:甲状腺の形状や血流を確認
  • 甲状腺シンチグラフィー:原因疾患の鑑別に有用(亜急性甲状腺炎とバセドウ病の鑑別など)

治療

  • 抗甲状腺薬(メチマゾール、プロピルチオウラシル):甲状腺ホルモンの合成を抑制
  • 放射性ヨウ素治療:甲状腺組織を選択的に破壊(主にバセドウ病に対して)
  • 手術療法:腫瘍や巨大な甲状腺腫瘍に対して適応されることがある
  • 対症療法
    - β遮断薬(動悸、震えの改善)
    - ステロイド(眼症や甲状腺炎に対して)

病型に応じて治療選択が異なり、長期的な経過観察も重要です。

予後

甲状腺中毒症・甲状腺機能亢進症の予後は、原因疾患とその治療方針、治療への反応によって異なります。多くの場合、適切な治療により良好にコントロール可能です。

予後が良好な場合

  • バセドウ病で抗甲状腺薬が効果的に働いている
  • 放射性ヨウ素治療や手術でホルモンバランスが安定している
  • 甲状腺炎が一過性で自然に軽快している

再発や慢性化の可能性があるケース

  • バセドウ病での再発率は30~50%程度あり、再治療が必要なことがある
  • 眼球突出や心房細動などの合併症が長引く場合もある
  • 治療後に甲状腺機能低下症へ移行することもある(特に放射性ヨウ素後)

治療後も定期的な血液検査と診察により、病状の安定を確認することが大切です。

予防

明確な予防法はないものの、自己免疫反応や甲状腺刺激のきっかけとなる因子を避けること、早期発見によって重症化を防ぐことが重要です。

予防的な工夫

  • ストレスを溜めすぎない
  • 無理なダイエットや栄養の偏りを避ける
  • 過剰なヨウ素摂取に注意(昆布や海藻の摂りすぎ)
  • バセドウ病の家族歴がある場合、症状の自己観察を行う

早期発見のために

  • 動悸や手の震え、体重減少などに気づいたら内科や内分泌科を受診
  • 健康診断や婦人科検診での異常(TSHの低下など)を見逃さない
  • 治療中の人は医師の指示に従い、服薬と通院を継続する

再発防止にも、生活習慣の見直しと医療との連携が重要です。

関連する病気や合併症

甲状腺ホルモンの過剰状態は、全身に多くの合併症を引き起こすリスクがあります。特に心血管系や精神神経系への影響は見逃せません。

主な合併症

  • 心房細動、不整脈:動悸や脈の乱れが持続し、脳梗塞のリスクが上がる
  • 高血圧、心肥大:心臓への負担が増す
  • 骨粗鬆症:ホルモン過剰による骨代謝異常
  • 筋力低下:四肢の筋萎縮や筋肉痛
  • バセドウ病眼症:眼球突出、複視、視力障害など
  • 精神症状:不安障害、抑うつ、不眠
  • 糖耐性異常:インスリン抵抗性が進行する場合もある

これらの合併症を予防するためにも、病態の早期発見と適切な治療が不可欠です。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

厚生労働省e-ヘルスネット「甲状腺機能亢進症」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)

日本甲状腺学会「バセドウ病と甲状腺中毒症」(https://www.japanthyroid.jp/)

日本内科学会「内科学 第11版」

国立国際医療研究センター「甲状腺疾患の診断と治療」(https://www.ncgm.go.jp/)

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2025/07/16
  • 更新日:2025/07/16

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