気道・消化管異物きどう・しょうかかんいぶつ
気道・消化管異物とは、食べ物や小さなおもちゃ、コインなどの「異物」が、空気の通り道(気道)や食べ物の通り道(消化管)につまってしまう状態です。特に子どもや高齢者では命に関わることもあるため、早めの受診と適切な対応がとても重要です。
目次
⚫︎気道・消化管異物とは?
気道・消化管異物は、通常そこにあってはいけない物が、気道(喉・気管・気管支など)や消化管(食道・胃・腸など)に入ってしまった状態を指します。
気道異物
食べ物や小さな物が、誤って空気の通り道に入り込み、咳き込みや呼吸困難、窒息を起こす状態です。乳幼児・高齢者に多く、ピーナッツなどの豆類、ブドウ・ミニトマト、飴、玩具の部品などが代表的です。
消化管異物
インやボタン電池、マグネット、おもちゃの部品、魚骨などを誤って飲み込み、食道や胃、腸にとどまった状態です。多くは自然に便と一緒に出てきますが、鋭い物やボタン電池、複数の磁石などは、緊急での対応が必要になります。
子どもの誤飲・誤嚥、高齢者の飲み込み機能の低下、認知症のある方などでは、特に注意が必要な病気です。
⚫︎気道・消化管異物の原因
気道・消化管異物の主な原因は「誤飲・誤嚥(ごいん・ごえん)」です。
乳幼児
何でも口に入れて確かめる時期であり、手に届く小物や食べ物が原因になります。
例)ピーナッツ・あめ・ブドウ・ミニトマト・ソーセージ・白玉団子・おもちゃの細かい部品・ボタン電池・マグネット など。
学童〜若年成人
食事中の不注意や笑いながらの飲食、飲酒後の食事などで、魚の骨や肉片、歯科治療中の器具などが気道や消化管に入ることがあります。
高齢者
嚥下機能(飲み込む力)の低下や、入れ歯の不具合、脳卒中後の後遺症、パーキンソン病などにより、食物や入れ歯が気道に入りやすくなります。
ボタン電池・磁石などの危険物
ボタン電池は短時間で粘膜を焼けただれさせ、穴(穿孔)を開けることがあります。複数の磁石は腸管同士をはさみ込んで壊死(えし)させることがあり、緊急の対応が必要です。
⚫︎気道・消化管異物の症状は?
気道異物と消化管異物では、症状の出方が少し異なります。
気道異物の症状
- 突然の激しい咳き込み、むせ
- 声が出しづらい、声がかすれる
- ヒューヒュー・ゼーゼーする呼吸音(喘鳴)
完全につまると、声も咳も出せなくなり、短時間で意識を失うこともあります。
消化管異物の症状
- 胸のつかえ感、喉や胸の違和感
- よだれが多くなる、飲み込みにくい
- 胸やみぞおちの痛み
小さな異物の場合、症状がほとんどなく、レントゲンで偶然見つかることもあります。
⚫︎受診の目安
次のような場合は、ためらわずに受診・救急要請を検討してください。
すぐに救急車(119番通報)が必要な状況
- 咳も声も出ず、明らかに息が苦しそう
- 顔色が急に悪くなった、唇が紫色
- 意識がもうろうとしている、ぐったりして反応が乏しい
できるだけ早めに受診した方がよい状況
- 食べ物や小物を飲み込んだあと、胸の違和感や痛みが続く
- よだれが多く、飲み込みづらそうにしている
- 咳やゼーゼーが長く続く、片側の肺の音が弱い
基本的には、救急外来、小児科、耳鼻咽喉科、消化器内科などが対応窓口になります。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
気道・消化管異物が疑われるときには
- いつ・何を・どのくらい飲み込んだ(吸い込んだ)かを確認する
- 診察と画像検査(レントゲン、CTなど)で場所と形を調べる
- 必要に応じて、内視鏡(気管支鏡・胃カメラなど)で異物を確認し、そのまま取り除く
という流れで診断と治療が行われます。
気道異物は「窒息の危険」があるため、より緊急度が高く、全身麻酔下での気管支鏡による摘出が行われることが多いです。
消化管異物は、物の種類や位置・時間経過に応じて、「経過観察で様子を見るか」「早期に内視鏡で取り出すか」を判断します。
⚫︎気道・消化管異物の診断
1)問診・診察
- いつ、どんな状況で症状が始まったか
- 何を口にした可能性があるか(食品・玩具・電池・磁石など)
- 持病や服用中の薬、嚥下障害の有無
これらを確認し、聴診(胸の音を聞く)、喉や口の中の観察、腹部の診察を行います。
2)画像検査
X線検査(レントゲン)
コインや金属、ボタン電池、骨など、写りやすい物は場所を確認できます。胸部X線では気道異物、腹部X線では食道・胃・腸内の異物の位置を追跡します。
CT検査
レントゲンでよく分からない場合や、穿孔(穴)・肺炎・縦隔炎などの合併症が疑われる場合に行います。
3)内視鏡検査
気管支鏡
気道異物が疑われる場合、喉頭〜気管・気管支を直接観察し、異物の確認と同時に摘出を行います。小児では全身麻酔下で行うことが多いです。
上部消化管内視鏡(胃カメラ)
食道や胃の異物を確認し、専用の鉗子や網籠(バスケット)などを用いて取り出します。
4)その他
ボタン電池や磁石など、飲み込んだ物が明らかな場合は、時間経過や症状に応じて、画像検査を省略して内視鏡処置を優先することもあります。
⚫︎気道・消化管異物の治療
A. 初期対応(その場での対処)
周囲の大人が行う応急手当として、背部叩打法や腹部突き上げ法(ハイムリック法)がありますが、誤った方法は危険なこともあるため、講習を受けた人がガイドラインに沿って行うことが大切です。
意識がない場合は、ただちに119番通報し、可能であれば心肺蘇生(CPR)を開始します。
家庭では、「無理に口の奥をかき回す」「指を突っ込んでかき出そうとする」と、かえって奥に押し込んでしまうことがあるため、注意が必要です。
B. 医療機関での治療
気道異物
- 酸素投与、吸入などで呼吸状態を安定させる
- 必要に応じて気管挿管や気管切開で気道を確保する
- 全身麻酔下で、硬性または軟性の気管支鏡を用いて異物を摘出する
消化管異物
- ボタン電池:特に食道に停滞している場合は緊急内視鏡で摘出(できるだけ数時間以内)
- 鋭い物(釘・爪楊枝・魚骨など)や複数の磁石:早期の内視鏡摘出や手術が検討されます。
- 小さくて丸い物(コインなど)で症状がなく、胃より先に進んでいる場合は、数日〜1週間程度、便と一緒に自然に出るか経過観察とすることもあります。
C. 合併症への対応
肺炎・無気肺・消化管穿孔・出血などが起きている場合には、抗菌薬投与、入院管理、必要に応じた手術など、状態に合わせた治療が行われます。
⚫︎気道・消化管異物の予後
気道・消化管異物は
- 早期に気づいて適切に対応できれば、多くは後遺症なく回復が期待できる
- 気道異物は対応が遅れると、窒息・低酸素による脳障害など、命に関わる状態になりうる
- 消化管異物も、ボタン電池・鋭い物・磁石などでは、短時間で粘膜の損傷や穿孔を起こし、命に関わることがある
という「時間との勝負」の側面があります。
特に子どもの場合、症状が落ち着いて見えても、肺炎や無気肺が後から分かることもあるため、医師の指示に従って数日~数週間の経過観察を行うことが大切です。
⚫︎気道・消化管異物の予防
完全に防ぐことは難しいですが、次のような工夫でリスクを大きく減らせます。
乳幼児への対応
- ピーナッツなどの豆類、あめ、ブドウやミニトマト、白玉団子など、丸くてつるっとした物は、少なくとも5歳頃までは避けるか、十分に小さく切って与える
- 食事中は座らせ、歩きながら・遊びながら食べさせない
学童〜成人
- 食事中の「ながら行動」(笑いながら、大声を出しながら、走りながら食べるなど)を避ける
- 魚の骨や固い肉を食べるときは、よく噛んで少しずつ飲み込む
高齢者
- 入れ歯のフィット感を定期的に歯科でチェックする
- 飲み込みにくさがある場合は、嚥下リハビリや食形態(きざみ食・とろみなど)の相談を行う
家庭内の危険物の管理
- ボタン電池を使うリモコンや玩具はフタが簡単に開かないか確認する
- 使用済みボタン電池はすぐに回収し、子どもの手の届かない場所に保管・廃棄する
⚫︎気道・消化管異物に関連する病気や合併症
- 窒息・呼吸停止
- 誤嚥性肺炎、無気肺、肺膿瘍
- 気管・気管支の狭窄
- 消化管穿孔、腹膜炎、縦隔炎
- 食道狭窄(瘢痕による狭くなり)
- 化学物質による腐食性食道炎(強い薬液や洗剤などを誤飲した場合)
これらの合併症は、早期に異物を除去しても起こりうるため、医師の指示に沿ったフォローアップが重要です。
⚫︎まとめ
気道・消化管異物は、誰にでも起こりうる身近な事故ですが、特に子どもと高齢者では命に関わることがあります。気道異物は「突然の咳き込み・呼吸苦」、消化管異物は「胸のつかえ・腹痛・嘔吐」といった症状が手がかりになります。
ボタン電池、複数の磁石、鋭い異物を飲み込んだ場合は、時間との勝負であり、緊急の医療機関受診が必要です。日ごろから食べ物や小さな物の管理、食べさせ方・食べ方に注意し、「おかしい」と感じたら早めに専門医に相談することが、重い合併症を防ぐ一番の近道です。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- Clinical Sup JP「消化管内異物」
(https://clinicalsup.jp/jpoc/contentpage.aspx?diseaseid=273) - 日本小児科学会「食品による窒息 子どもを守るためにできること」(https://www.jpeds.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=123)
■ この記事を監修した医師
岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック
大阪大学 医学部 卒
東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。
患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。
- 公開日:2026/03/31
- 更新日:2026/03/31
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