クループ症候群くるーぷしょうこうぐん
クループ症候群は、乳幼児に多いウイルス感染が原因で、喉頭(声帯のまわり)が腫れて犬が吠えるような咳やヒューヒューいう息づかいを起こす病気です。多くは数日で軽快しますが、急に呼吸が苦しくなることがあり、重症時は早急な受診が必要です。
目次
⚫︎クループ症候群とは?
クループ症候群は、主に乳幼児にみられる「上気道(じょうきどう:のど~気管の入口まで)」の病気の総称で、典型的には「犬が吠えるような咳(犬吠様咳嗽)」と「息を吸うときのヒューヒューという音(吸気性喘鳴)」が特徴です。
医療的には、代表的なものとして
- 急性喉頭気管気管支炎(一般に『クループ』と言うとこれを指すことが多い)
- 急性喉頭炎
などが含まれ、これらをまとめて「クループ症候群」と呼びます。喉頭(こうとう:声帯のある部分)から気管にかけての粘膜が腫れ、空気の通り道が狭くなることで、独特の咳と呼吸音が生じます。
多くはウイルスによるかぜの一種で、1〜5歳前後の子どもに多く、夜間や明け方に症状が悪化しやすいのが特徴です。見た目はとても苦しそうで心配になりますが、適切な観察と治療を行えば、数日でよくなることがほとんどです。
⚫︎クループ症候群の原因
クループ症候群の主な原因はウイルス感染です。
パラインフルエンザウイルス
最も多い原因ウイルスで、乳幼児のクループの多くに関わっています。
その他のウイルス
インフルエンザウイルス、RSウイルス、エンテロウイルス、アデノウイルス、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)など、さまざまなかぜウイルスが原因となることがあります。
まれな原因
細菌感染(細菌性喉頭気管炎)、アレルギー反応による声門周囲のむくみ、気道異物(何かを誤って飲みこんで詰まること)などでも、クループに似た症状を起こすことがあります。これらは命に関わることもあり、慎重な鑑別(見分け)が必要です。
小児は気道(空気の通り道)がもともと細いため、少しのむくみでも空気の通りが悪くなり、成人よりも症状が強く出やすいという特徴があります。
⚫︎クループ症候群の症状は?
典型的には、かぜのような症状(鼻水・軽い咳・微熱)が1〜2日続いたあと、次のような症状が夜間〜明け方にかけて急に目立ってきます。
- 犬が吠えるような、からからとした高い咳(犬吠様咳嗽)
- 息を吸うときのヒュー、ゼーといった音(吸気性喘鳴)
- 声がかすれる(嗄声:させい)、泣き声がかすれる
- 息苦しさ(胸や首のくぼみ・肋骨の間がペコペコへこむ「陥没呼吸」)
- 落ち着きがなくなる、不安そうな顔つき、ぐったりしている
軽症では、咳と少しのゼーゼーのみで、日中は比較的元気ということもあります。一方、中等症〜重症では
- 何もしていなくてもヒューヒュー音がする
- 呼吸の回数が多く、肩やお腹を大きく動かして息をしている
- 顔色が悪い、唇が紫っぽい(チアノーゼ)
などが見られ、緊急の対応が必要になります。
⚫︎受診の目安
次のような症状がある場合は、小児科・耳鼻咽喉科、あるいは救急外来の受診を検討してください。
- 犬が吠えるような咳とヒューヒューした息づかいが急に始まった
- 咳や息苦しさで夜眠れない、横になると苦しがる
- 胸や首のくぼみ・肋骨の間が息をするたびにへこむ
- 声がかすれて泣き声も弱く、ぐったりしている
- 顔色が悪い、唇や爪が紫色っぽく見える
とくに
「呼吸が明らかに苦しそう」「会話や泣き声が弱く、反応が悪い」「唇が紫色」
といった場合は、救急車を含めて速やかに医療機関を受診する必要があります。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
診断は、問診と診察で多くの場合つけることができます。典型的な犬吠様咳嗽と吸気性喘鳴、年齢、かぜ症状の有無などから総合的に判断します。必要に応じて酸素飽和度(SpO₂)を測定し、重症度を評価します。
治療の基本は
- 呼吸状態の観察と必要なときの酸素投与
- ステロイド薬による気道のむくみの改善
- 中等症以上ではアドレナリン吸入などの追加治療
- 脱水予防のための水分・点滴
などで、重症度に応じて外来管理か入院かを判断します。
⚫︎クループ症候群の診断
1)問診・診察
- いつから咳が出ているか、急に悪化したタイミングはいつか
- 犬が吠えるような咳かどうか、夜間や泣いたときに悪化するか
- 呼吸数、陥没呼吸、顔色、ぐったりしていないか
- ワクチン歴(インフルエンザ、百日せきなど)、基礎疾患の有無
聴診器で胸の音を聞き、喘鳴(ぜんめい:ゼーゼー音)や、気管・肺の状態を確認します。
2)酸素飽和度(SpO₂)の測定
指先などにセンサーをつけて、血液中の酸素の量を測定し、呼吸状態の重さを評価します。
3)画像検査(必要な場合)
典型的な軽症例では必ずしも必要ありませんが、異物や細菌性の重い病気(急性喉頭蓋炎など)が疑われる場合は、頸部X線検査や胸部X線検査を行うことがあります。専用のX線画像では、気道の狭窄が「鉛筆のように細く」見える「ペンシルサイン」と呼ばれる所見が現れることもあります。
4)鑑別診断
酷似した症状を示す病気(急性喉頭蓋炎、気道異物、細菌性気管炎、喘息発作など)と見分けることが重要です。高熱・よだれ・前かがみの姿勢などが目立つ場合は、急性喉頭蓋炎を強く疑い、緊急対応が必要となることがあります。
⚫︎クループ症候群の治療
A. 初期対応(まずやること/基本方針)
安静と姿勢
呼吸が楽になるよう、上体を少し起こした姿勢で安静にします。抱っこやおんぶで落ち着くお子さんも多く、泣きすぎると悪化するため、安心させてあげることが大切です。
酸素投与
呼吸が苦しく、酸素飽和度が低い場合は、マスクやチューブで酸素を投与します。
B. ステロイド薬(内服・吸入・注射)
クループ症候群では、短期間のステロイド(むくみを取る薬)が非常に有効です。デキサメタゾンなどのステロイドを内服・坐薬・注射で用いることで、喉頭周囲の腫れが引き、呼吸状態が改善しやすくなります。多くの場合、1回または数回の投与で十分です。
C. アドレナリン吸入
中等症以上で、呼吸困難が目立つ場合には、アドレナリン(エピネフリン)の吸入を行うことがあります。気道を一時的に広げ、呼吸を楽にする効果がありますが、切れると再び悪化することがあるため、効果の持続や再燃を観察しながら、必要な入院管理を行います。
⚫︎クループ症候群の予後
多くのクループ症候群は、適切な治療を行えば数日~1週間程度で軽快し、後遺症を残さずに治ります。ステロイドの短期投与により、夜間のつらい症状が1〜2晩で大きく改善することが多いと報告されています。
ただし、初期には軽く見えても、夜間に急に悪化して呼吸困難に陥ることがあるため、「軽く見えるから大丈夫」と自己判断せず、お子さんの様子をよく観察しておくことが大切です。
基礎疾患(早産児、心肺疾患、神経筋疾患など)がある場合や、非常に小さな乳児では、重症化しやすいとされており、慎重な経過観察と早めの受診が重要になります。
⚫︎クループ症候群の予防
クループ症候群そのものを完全に防ぐ方法はありませんが、多くがかぜウイルスによって起こるため、かぜやインフルエンザの予防と同じ対策が有効です。
- 手洗い・うがい・アルコール消毒を習慣にする
- 人混みではマスクの着用(年齢や状況に応じて)
- 十分な睡眠とバランスの良い食事で体力を保つ
- 室内の乾燥を避け、適度な湿度を保つ
- 家族内にかぜの人がいるときは、咳エチケットやタオル・食器の共有を避ける
インフルエンザやRSウイルスなど、一部の原因ウイルスにはワクチンや予防薬(シナジスなど)があり、それらが結果としてクループ症候群の発症リスクを下げることも期待されます(対象者・適応は医師とご相談ください)
⚫︎クループ症候群に関連する病気や合併症
急性喉頭蓋炎
細菌によって喉頭蓋(こうとうがい:のどのフタ)が急に腫れる病気で、高熱・よだれ・強いのどの痛みが特徴です。気道が急激にふさがる危険な病気で、クループと区別することが重要です。
気道異物
豆やナッツ、小さなおもちゃなどがのどや気管に詰まると、突然の咳や呼吸困難を起こし、クループに似た症状に見えることがあります。誤飲が疑われるときは救急対応となります。
細菌性気管炎・肺炎
ウイルス感染に引き続いて細菌感染が起こると、高熱や状態悪化、肺炎を合併することがあります。
喘息発作・細気管支炎
ゼーゼー・ヒューヒューという音は、下気道(気管支)から聞こえることもあり、喘息や細気管支炎との鑑別が必要です。
⚫︎まとめ
クループ症候群は、乳幼児に多いウイルス性の上気道感染で、犬が吠えるような咳とヒューヒューという呼吸音が特徴です。多くは数日でよくなりますが、夜間に急に悪化し、呼吸困難を起こすことがあるため、呼吸の様子や顔色をよく観察することが大切です。
ステロイド内服や吸入治療が有効で、適切なタイミングで治療を受ければ予後は良好です。
「いつもと違う咳」「息が苦しそう」と感じたときには、無理をさせず、早めに小児科・耳鼻咽喉科へ相談しましょう。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- 病気がみえる vol.13 耳鼻咽喉科/vol.15 小児科(クループ症候群、急性喉頭炎など) (https://www.byomie.com/products/vol13/)
(https://www.byomie.com/products/vol15/)
■ この記事を監修した医師
岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック
大阪大学 医学部 卒
東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。
患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。
- 公開日:2026/03/31
- 更新日:2026/03/31
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