音響外傷/騒音性難聴おんきょうがいしょう/そうおんせいなんちょう

音響外傷/騒音性難聴は、大きな音にさらされることで耳の奥(内耳)の細胞が傷つき、聴力が下がる病気です。ライブや爆発音などの「急な強大音」と、工場騒音や大音量のヘッドホンなど「長期間の騒音」が原因となり、難聴や耳鳴りが出現します。放置すると回復しにくいため、早めの受診と、日頃の「音との付き合い方」の見直しがとても大切です。

目次

⚫︎音響外傷/騒音性難聴とは?

音響外傷/騒音性難聴は、「音」による耳の障害で起こる難聴です。
耳の奥には「内耳(ないじ)」と呼ばれる部分があり、その中の「蝸牛(かぎゅう)」には、音を感じるセンサー役の「有毛細胞(ゆうもうさいぼう)」が並んでいます。

  • 非常に大きな音を一度に浴びて起こるものを「音響外傷」
  • それほど極端ではない騒音を長期間浴びて徐々に進むものを「騒音性難聴」

と呼びます。

有毛細胞は一度壊れると基本的に再生しません。そのため、「一度の大きな音」「長年の騒音」のどちらが原因でも、放っておくと難聴が残ったり、ゆっくり進んでしまうことがあります。

⚫︎音響外傷/騒音性難聴の原因

急激な強大音

花火のすぐそば、爆発音、銃声、コンサート会場の大型スピーカーの近くなどで、一度にとても大きな音を浴びると、瞬間的に内耳が傷つきます。これが典型的な「音響外傷」です。

職場などでの長期的な騒音

工場・建設現場・機械室・空港・騒音の強い接客業などで、耳栓をせずに長年働いていると、少しずつ有毛細胞がダメージを受け、「騒音性難聴」が進行します。

ヘッドホン・イヤホンの大音量使用

スマートフォンで音楽や動画を大音量で長時間聞き続ける習慣は、若い世代の難聴の原因として問題になっています。特に、電車内や繁華街で周囲の騒音に負けないように音量を上げると、耳への負担が大きくなります。

趣味・娯楽での大きな音

ライブハウス、クラブ、カラオケ、バンド練習など、趣味として大音量の音に触れる機会が多い方も注意が必要です。

⚫︎音響外傷/騒音性難聴の症状は?

聞こえにくさ(難聴)

最初は高い音(電子音・鳥の声・子どもの声など)が聞き取りにくくなりやすく、「会話は何とか聞こえるけれど、雑音の多い場所だと相手の声が聞き取りにくい」と感じることが多いです。

耳鳴り

「キーン」「ジー」といった高い音が、片耳または両耳で鳴っているように感じることがあります。静かな場所や寝る前に気になりやすく、眠りにくさ・集中力低下につながることもあります。

耳がつまった感じ(耳閉感)

飛行機に乗った時のような「耳にふたをされた感じ」「膜が張った感じ」が続くことがあります。

音が割れて聞こえる・音の歪み

大きな音が「ビリビリ響く」「割れて聞こえる」と感じることがあり、音楽や人の声の質が変わったように感じる方もいます。

⚫︎受診の目安

次のような場合は、早めに耳鼻咽喉科の受診をおすすめします。

大きな音を聞いた直後から、片耳または両耳で

  • 「急に聞こえにくくなった」
  • 「耳鳴りが出た」
  • 「耳がつまった感じが続く」

仕事や趣味で大きな音に日常的にさらされていて

  • 最近、会話が聞き取りにくい
  • 家族から「テレビの音が大きい」と言われる
  • 片耳だけ聞こえが悪い気がする

耳鳴りが数日以上続いている、またはだんだん強くなっている

難聴や耳鳴りにめまい・ふらつき・吐き気を伴う

「そのうち治るだろう」と様子を見ている間に時間が経ってしまうと、元に戻る可能性が下がります。特に、急に起こった聞こえの変化は、早期受診が重要です。

⚫︎診断方法と治療方法(全体像)

診断は、

  • どんな音の環境にどのくらいの期間いたか(仕事・趣味・イベントなど)
  • 症状が出たタイミング・経過
  • 聴力検査の結果

を総合して行います。

治療は、

  • 音響外傷:できるだけ早期の治療と耳の安静
  • 騒音性難聴:これ以上悪化させない環境づくりと、補聴器などで聞こえを補う対策

が中心になります。どちらの場合も、「大きな音を避けること」が治療と予防を兼ねた大事なポイントです。

▶︎音響外傷/騒音性難聴の診断

1)問診・診察

  • いつからどのような症状が出たか
  • 直前にライブや花火大会、爆発音、工事現場などにいなかったか
  • どのような環境で働いているか(騒音の有無、耳栓の使用状況)

などを詳しく伺います。耳の中(外耳道・鼓膜)を診て、耳垢(みみあか)や中耳炎など、ほかの原因がないかも確認します。

2)聴力検査

純音聴力検査

さまざまな高さの「ピー」という音を聞き取り、その聞こえやすさをグラフにします。騒音性難聴では、特に高い音(4000Hz付近)から聞き取りにくくなることがよくあります。

語音聴力検査

実際の言葉の聞き取りやすさを調べる検査です。同じ音の大きさでも、言葉の理解がどの程度できているかを確認します。

3)必要に応じた検査

耳鳴り・めまいが強い場合

バランス機能を調べる検査、頭部や内耳の画像検査などを行い、メニエール病、聴神経腫瘍(ちょうしんけいしゅよう)など別の病気が隠れていないかを確認します。

▶︎音響外傷/騒音性難聴の治療

A. 音響外傷の場合(急性の強い音が原因)

早期受診

症状が出てから時間が経つほど、聴力が戻りにくいと考えられています。できれば「当日〜数日以内」に耳鼻咽喉科を受診することが望ましいです。

薬物療法

症状や重症度に応じて、内耳の炎症を抑えるステロイド薬、血流を改善する薬、ビタミン製剤などが用いられることがあります。ただし、必ず元の聞こえに戻るとは限りません。

耳を休める

治療中は、ライブや騒音の強い場所、ヘッドホン・イヤホンの使用を控え、耳をしっかり休ませることが大切です。

B. 騒音性難聴の場合(長期間の騒音が原因)

騒音環境の見直し

音の原因から距離をとる、作業時間を減らす、防音設備を整える、耳栓・防音ヘッドホンを使うなど、「これ以上悪くしない工夫」が治療の中心になります。

補聴器などの活用

日常生活に支障がある場合は、聴力検査の結果に合わせて補聴器を検討します。早めに適切な補聴器を使うことで、会話のストレスを減らし、社会生活や仕事の質を保ちやすくなります。

耳鳴りへの対応

耳鳴りがつらい場合は、

  • 騒音を避けつつ完全な無音は避ける(小さな環境音やBGMをつける)
  • 耳鳴り外来でのカウンセリングや音響療法(おとで耳鳴りを目立たなくする方法)

などが勧められることがあります。

⚫︎音響外傷/騒音性難聴の予後

音響外傷

発症から早期に治療を始めれば、ある程度改善が期待できるケースもありますが、完全に元に戻らないことも少なくありません。治療後も耳鳴りや高い音の聞こえにくさが残る場合があります。

騒音性難聴

徐々に進行し、一度傷ついた有毛細胞は戻らないため、「もとどおりに治す」というより「これ以上進ませない」「生活の工夫と補聴器などで困りごとを減らす」という考え方になります。

日常生活への影響

会話の聞き取りづらさは、仕事や人間関係にストレスを生みやすく、放置すると孤立感や気分の落ち込みにつながることもあります。早めに相談し、補聴器や生活調整を取り入れることで、生活の質を保ちやすくなります。

⚫︎音響外傷/騒音性難聴の予防

完全に防ぐことは難しくても、次のような工夫でリスクを大きく下げることができます。

大きな音を「長時間」浴びない

ライブやクラブ、カラオケなどでは、スピーカーから少し離れる、こまめに外に出て耳を休ませるなどの工夫をしましょう。

ヘッドホン・イヤホンの音量・時間を見直す

  • 周囲の人に聞これるほどの音量は大きすぎます
  • 「最大音量の半分以下」を目安にし、1日1〜2時間以内に抑える意識を持ちましょう
  • ノイズキャンセリング機能付きの機器を使うと、周囲の騒音に勝つために音量を上げすぎずにすむことがあります

職場での耳栓・防音具の活用

騒音のある職場では、耳栓や防音イヤーマフを習慣として使用し、休憩時間には静かな場所で耳を休ませることが大切です。

健康診断での聴力チェックを活用

定期健診の聴力検査を軽く考えず、「以前より聞こえが悪い」と言われた場合は、耳鼻咽喉科で精密検査を受けると安心です。

⚫︎音響外傷/騒音性難聴に関連する病気や合併症

加齢性難聴

年齢とともに内耳の細胞が減っていく難聴で、騒音によるダメージが重なると聞こえの悪化が早く進むことがあります。

メニエール病

難聴・耳鳴り・めまいを繰り返す内耳の病気で、騒音性難聴と症状が似ている部分もあるため、専門的な鑑別が必要です。

突発性難聴

ある日突然、片耳が聞こえにくくなる病気で、音響外傷と鑑別が必要になることがあります。

耳鳴りに伴う不眠・不安・抑うつ

耳鳴りが長く続くと、眠りにくさや不安感、気分の落ち込みにつながることがあります。つらい場合は、耳鼻咽喉科だけでなく、心のケアも含めて相談していくことが大切です。

⚫︎まとめ

音響外傷/騒音性難聴は、「大きな音」との付き合い方によって、大きくリスクを変えられる病気です。

一度傷ついた内耳の細胞は元に戻りにくいため、「おかしいな」と感じた時点で耳鼻咽喉科に相談することが大切です。

ヘッドホン・イヤホンの音量を見直す、耳栓を活用するなど、日々の小さな工夫が将来の聞こえを守ります。

不安なときは一人で悩まず、早めに医療機関へ相談してください。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック

大阪大学 医学部 卒

東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。

患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。

  • 公開日:2026/03/31
  • 更新日:2026/03/31

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