グラム陰性菌ぐらむいんせいきん
グラム陰性菌は、尿路感染症や肺炎、敗血症などさまざまな感染症の原因になる細菌のグループです。発熱や咳、排尿時の痛み、意識低下などの症状が出ることがあり、重症化すると命に関わることもあるため、早めの受診と適切な抗菌薬治療が大切です。
目次
⚫︎グラム陰性菌とは?
グラム陰性菌は、「グラム染色」という染色法で赤〜ピンク色に染まる細菌の総称です。細胞の外側に「外膜」と呼ばれる膜を持ち、細胞壁の構造がグラム陽性菌と異なるため、染まり方が違います。
代表的なグラム陰性菌には、次のようなものがあります。
- 大腸菌(尿路感染症、腸炎などの原因)
- サルモネラ菌・赤痢菌・コレラ菌(食中毒・腸炎の原因)
- 緑膿菌・アシネトバクター(主に病院内で問題となる感染症の原因)
- インフルエンザ菌、百日咳菌、髄膜炎菌(呼吸器感染症や髄膜炎の原因)
これらの細菌は、腸の中、皮膚、環境中の水回りなど、私たちの身の回りに広く存在します。健康なときは問題なくても、体の抵抗力が落ちたり、カテーテル・手術などで体内に入り込んだりすると、尿路感染症、肺炎、お腹の感染症、血液の感染症(敗血症)など、さまざまな病気を引き起こします。
⚫︎グラム陰性菌の原因
グラム陰性菌そのものは「原因」ではなく、「原因となる細菌のグループ」です。どこに、どのような形で入り込むかによって、起こる病気が変わります。
尿道から膀胱・腎臓に入り込む
→ 膀胱炎・腎盂腎炎などの尿路感染症の原因になります。特に女性、高齢者、カテーテル留置中の方で多く、大腸菌などのグラム陰性桿菌が主体です。
肺に入り込む
→ 誤嚥(食べ物や唾液が気道に入る)や人工呼吸器の使用などをきっかけに、グラム陰性菌による肺炎・院内肺炎を起こすことがあります。
腸管・腹腔内に広がる
→ 虫垂炎や胆のう炎、腸穿孔などをきっかけに、腸内のグラム陰性菌が腹腔内に広がり、腹膜炎や腹腔内膿瘍を起こします。
⚫︎グラム陰性菌の症状は?
症状は「どの臓器に感染したか」で大きく変わりますが、共通するのは「発熱」「だるさ」「食欲低下」などの全身症状です。代表的なパターンを挙げます。
尿路感染症(膀胱炎・腎盂腎炎など)
- 排尿時の痛み、しみる感じ
- 頻尿(トイレの回数が増える)
- 尿の濁り、においの変化
肺炎・気道感染症
- 咳・痰、痰に膿や血が混じる
- 息切れ、呼吸が苦しい
- 高熱、悪寒、胸の痛み
腹腔内感染症(腹膜炎、胆のう炎など)
- 強い腹痛、圧迫での痛みの増強
- 吐き気・嘔吐
- 高熱、冷や汗、ぐったりした状態
注意ポイント
- 高齢の方や免疫が弱っている方では、はっきりした発熱や痛みが出ないまま、意識がもうろうとする・食欲が急に落ちるといった症状だけで重い感染症が進んでいることもあります。
- グラム陰性菌による敗血症は、短時間で急速に悪化し、命に関わることがあります。「いつもと様子が違う」「急にぼんやりしている」「息苦しそう」と感じたら、救急受診も含めて早めの対応が必要です。
⚫︎受診の目安
次のようなときは、なるべく早めに受診してください。
- 38度前後の発熱や悪寒が続き、市販の解熱薬を飲んでもよくならない
- 排尿時にしみる・痛い、トイレが異常に近い、尿が濁る・においが強い
- 腰や背中の片側の痛みと発熱がある(腎盂腎炎などの可能性)
- 咳や痰が増えてきた、息苦しさや胸の痛みを伴う
- 強い腹痛、吐き気・嘔吐、冷や汗、ぐったりしている
こうした症状があるときは、一般内科(状況により泌尿器科・呼吸器内科・消化器内科など)を受診してください。
特に「意識がいつもと違う」「息苦しい」「立てないほどしんどい」「激しい腹痛がある」といった場合は、救急外来や救急車の利用も検討しましょう。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
診断は、「どこに感染があるか」と「どんな菌が原因か」を探すことが基本です。問診と診察に加え、血液検査・尿検査・レントゲンやCTなどの画像検査を行い、必要に応じて尿・痰・血液などを採って「グラム染色」「培養検査」でグラム陰性菌かどうか、どの抗菌薬が効くかを調べます。
治療の中心は抗菌薬(いわゆる「抗生物質」)です。重症度や感染部位によって、点滴で使う薬・飲み薬・局所投与の薬などを組み合わせます。最近は、複数の薬が効きにくい「耐性菌」のグラム陰性菌も増えているため、検査結果をもとに、できるだけ適切で必要最小限の抗菌薬を選ぶことが重要です。
また、膿がたまっている場合は排膿(膿を出す処置)、不要なカテーテルの抜去・交換、感染源となっている壊死組織の除去など、「感染源を取り除く治療(ドレナージや手術)」が必要になることもあります。
⚫︎グラム陰性菌の診断
1)問診・診察
- 発熱、咳、排尿時痛、腹痛、意識状態の変化などの症状の有無
- いつから、どのように症状が出てきたか
- 最近の入院・手術歴、カテーテルの有無、基礎疾患、海外渡航歴、動物との接触などを確認します。
2)血液・尿などの検査
- 血液検査:白血球やCRPなど炎症の程度、腎機能・肝機能、電解質などを確認します。
- 尿検査:白血球や細菌の有無を調べ、尿路感染症が疑われるかを評価します。
3)グラム染色と培養検査
- 尿、痰、血液、髄液、膿などを採取し、顕微鏡でグラム染色を行うことで、「グラム陰性菌か」「桿菌か球菌か」などの目安を迅速に把握します。
- 同時に培養検査を行い、どの菌が増えているか、どの抗菌薬が効くか(薬剤感受性試験)を確認します。
4)画像検査
- 胸部レントゲン・CT:肺炎や胸水の有無を評価します。
- 腹部エコー・CT:胆のう炎、腎盂腎炎、腹膜炎など腹腔内感染を調べます。
- 必要に応じて心エコー、眼科検査などを追加し、感染の広がりや合併症を確認します。
⚫︎グラム陰性菌の治療
A. 初期対応(まずやること/基本方針)
- 全身状態の評価:血圧・脈拍・呼吸・意識レベルを確認し、敗血症やショックの有無を評価します。
- 抗菌薬の早期投与:重症例では、可能な限り早く(検体採取後速やかに)グラム陰性菌をカバーできる抗菌薬を点滴で開始し、その後培養結果を見て調整します。
B. 合併症リスクがある場合の医療介入(重症度対応)
- 集中治療(ICU)管理:ショック状態や多臓器不全の危険がある場合は、昇圧薬(血圧を支える薬)や人工呼吸管理などが必要になることがあります。
- 感染源コントロール:膿瘍(膿だまり)のドレナージ、壊死した組織の切除、感染したカテーテル・人工物の交換・抜去など、原因となる部位をできるだけ取り除きます。
C. 回復期の管理と再発・耐性菌予防
- 抗菌薬の適正使用:症状や検査値の改善に合わせて、抗菌薬を「やめるタイミング」や「飲み薬への切り替え」を調整し、必要以上に長く使い続けないようにします。
- 基礎疾患のコントロール:糖尿病、心不全、腎機能障害などがある場合は、その管理を整えることで再発リスクを減らします。
⚫︎グラム陰性菌の予後
- グラム陰性菌による軽い尿路感染症や一部の腸炎などは、適切な抗菌薬治療で多くが数日〜1週間程度で改善します。
- 一方で、腎盂腎炎、重い肺炎、腹膜炎、敗血症などに進展した場合や、高齢者・基礎疾患を持つ方では、命に関わる重症感染症になることがあります。特に、エンドトキシンによるショックや多臓器不全を起こした場合は、集中治療が必要となり、死亡率も高くなります。
- 早期に症状へ気づき、重症化する前に適切な治療を受けることで、予後(その後の経過)は大きく改善します。「少しおかしいかな」と感じた段階で受診しておくことが、重症化予防につながります。
⚫︎グラム陰性菌の予防
完全に防ぐことは難しいものの、次のような対策でグラム陰性菌による感染症のリスクを下げることができます。
日常生活での感染対策
- こまめな手洗い・手指消毒
- トイレ後やおむつ交換後の手洗いの徹底
- 生肉や生卵の取り扱いに注意し、十分な加熱調理を行う
尿路感染症の予防
- 水分をしっかりとる
- トイレを我慢しすぎない
医療機関での対策
- 手指衛生、器具の適切な消毒・滅菌
- 不要なカテーテル・点滴ラインをできるだけ早く抜去する
抗菌薬の適正使用
- 自己判断で市販の抗菌薬を使わない
- 処方された抗菌薬は、指示通りの期間・回数で内服し、余った薬をとっておいて別のときに使い回さない
「とりあえず抗生物質」ではなく、必要性を医師とよく相談することで、耐性菌の発生を抑えることができます。
⚫︎グラム陰性菌に関連する病気や合併症
- 尿路感染症:膀胱炎、腎盂腎炎など(大腸菌などのグラム陰性桿菌が主な原因)
- 肺炎・院内肺炎:人工呼吸器関連肺炎などで、緑膿菌やクレブシエラ属などが原因となることがあります。
- 腹腔内感染症:虫垂炎穿孔、胆のう炎、腸穿孔後の腹膜炎など
- 敗血症・エンドトキシンショック:血液中にグラム陰性菌が入り込み、急激な血圧低下や多臓器不全を起こす状態。
- 髄膜炎:髄膜炎菌やインフルエンザ菌などによる細菌性髄膜炎
⚫︎まとめ
グラム陰性菌は、身近な場所に存在しながら、尿路感染症から重い敗血症まで、さまざまな病気の原因となる細菌のグループです。発熱や排尿時の痛み、息苦しさ、意識の変化などが続くときは、「そのまま様子を見る」のではなく、早めに医療機関で検査を受けることが大切です。
適切なタイミングで抗菌薬治療や感染源の処置を行えば、多くの場合は回復が期待できますが、高齢の方や基礎疾患のある方では短時間で重症化することもあります。日ごろからの手洗い、食事やトイレの衛生管理、そして抗菌薬の正しい使い方を心がけることが、グラム陰性菌感染症からご自身や家族を守る第一歩になります。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- MSDマニュアル家庭版「グラム陰性細菌の概要」(MSD Manuals)
- 厚生労働省「グラム陰性桿菌による院内感染症の防止のための留意点」(厚生労働省)
■ この記事を監修した医師
赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2026/03/03
- 更新日:2026/03/03
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