先天性血小板機能異常症せんてんせいけっしょうばんきのういじょうしょう

生まれつき血小板が「はり付く・集まる・放出する」働きのどこかが弱く、鼻血やあざ、月経過多などの出血が続きやすい病気です。種類により治療は、止血薬・輸血・遺伝子に基づく個別対応などを組み合わせます。

⚫︎ 先天性血小板機能異常症とは?

 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は、血液中の「ADAMTS13(あだむてぃーえすじゅうさん)」という酵素の働きが落ちることで、血液を固めるタンパク質(フォン・ヴィレブランド因子:VWF)が大きな塊のまま残り、全身の細い血管に「血小板の小さな血栓(血のかたまり)」が次々できてしまう病気です。血栓ができると、脳や腎臓など大切な臓器に血液が行きにくくなり、多彩な症状が急に出ることがあります。一方で、血栓を作る際に血小板が大量に消費されるため、鼻血や皮下出血(紫斑)など「出血しやすい」状態にもなります。TTPはまれですが、放置すると命に関わることがあるため、早期の診断と治療が重要です。

TTPには、免疫のトラブルで起こる「後天性TTP」と、生まれつきADAMTS13の遺伝子に変化がある「先天性TTP(USS)」の2つがあります。いずれもADAMTS13活性が低下し、VWFの過剰な作用により血小板血栓が生じやすくなる点が共通です。

⚫︎血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の原因

原因は大きく2つに分かれます。

ひとつは「後天性TTP」で、体の免疫が自分自身のADAMTS13を敵と誤認し、働きを邪魔する自己抗体(インヒビター)を作ってしまうタイプです。もうひとつが「先天性TTP(USS)」で、ADAMTS13の遺伝子変化により、十分な酵素を作れない・働けないことで起きます。後天性は成人で突然発症することが多く、先天性は乳幼児期から繰り返す傾向があります。

ADAMTS13の働きが落ちると、通常は細かく切り分けられるはずのVWFが大きな塊のまま残り、血小板がそこに強くくっついて、全身の細い動脈で微小な血栓が多発します。これが臓器障害の主な原因です。

⚫︎ 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の症状は?

 TTPの症状は「出血」と「臓器の血流不足」によるものが混在します。代表的には次の通りです。。

出血しやすい・紫斑ができる

鼻血、歯ぐき出血、点状の皮下出血(紫斑)、月経量の増加など。血小板が少なくなる(血小板減少)のために起こります。

貧血症状

赤血球が血管内で壊れる「溶血」が起きるため、息切れ、動悸、だるさ、黄疸(皮膚や白目が黄色い)、発熱などがみられることがあります。

神経症状

頭痛、意識ぼやけ、混乱、けいれん、手足のしびれ・力が入りにくいなど。脳の微小血栓による一過性の症状から、重い神経障害まで幅があります。

腎臓の症状

尿が出にくい、むくみ、検査で腎機能の悪化が見つかるなど。腎臓の微小血栓による血流不足が原因です。

従来は「血小板減少・溶血性貧血・腎機能障害・発熱・精神神経症状」の5徴で診断されると言われていましたが、現在は特に「血小板減少」と「微小血管障害性溶血性貧血(MAHA)」の2点が重視され、これに臓器症状を加えて総合的に判断します。突然悪化することがあるため、疑ったら早急に医療機関で評価を受けてください。

⚫︎受診の目安(TTPが疑われるとき)

TTPは進行が早いことがあるため、「出血が増える」だけでなく「脳や腎臓のサイン」が重なったら早めの受診が重要です。

 早めに受診(できれば当日〜翌日)

  • 理由のはっきりしないあざ(紫斑)や点状出血が急に増えた
  • 鼻血、歯ぐき出血、月経量の増加など「止まりにくい出血」が続く
  • 強いだるさ、息切れ、動悸、顔色が悪いなど貧血が疑われる症状
  • 発熱や黄疸(白目が黄色い)、尿の色が濃い感じがある

すぐ救急受診(迷ったら救急相談)

  • 意識がぼんやりする、ろれつが回らない、けいれん、片側のしびれ・力が入らない
  • 尿が急に減る、強いむくみ、息苦しさがある
  • 頭痛が強く、普段と違う神経症状を伴う

すでにTTPの治療歴がある方

同じような出血(紫斑・鼻血)やだるさが出たら再発の可能性があるため、自己判断せず主治医へ早めに連絡してください。

 

⚫︎血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の診断

初期評価

採血で血小板減少と溶血の所見がそろえばTTPを強く疑い、同時に腎機能、凝固系、ビタミンB12欠乏など他の原因もチェックします。血液塗抹で破砕赤血球を確認することが大切です。

スコアとADAMTS13

臨床症状と検査を点数化してTTPの可能性を見積もるスコア(海外のPLASMICスコアなど)が利用されることがあります。決め手はADAMTS13活性の著明低下と阻害抗体の検出ですが、結果を待たずに治療を始めるのが原則です。

似た病気との鑑別

溶血性尿毒症症候群(HUS・aHUS)、播種性血管内凝固(DIC)、重症高血圧、膠原病関連の血栓性微小血管症なども似た所見を示します。腎障害が目立つ場合はHUSとの鑑別が重要で、臨床経過や補体系の検査、感染の有無なども参考にします。

⚫︎血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の治療

血漿交換(PE:プラズマフェレーシス)

強く疑った時点で直ちに開始します。患者さんの血漿を機械で入れ替え、ADAMTS13を含む新鮮凍結血漿(FFP)を補うと同時に、阻害抗体や超大型VWFを取り除きます。初期は毎日行い、血小板が安定して増えたら回数を減らします。後天性TTPでは、FFPの輸注だけでは不十分なことが多く、血漿交換が第一選択です。

免疫抑制療法

最初から副腎皮質ステロイド(プレドニゾロンなど)を併用し、自己抗体の産生を抑えます。さらに、難治例や再発例だけでなく、急性期からの併用で再発を減らす目的で抗CD20抗体のリツキシマブを用いることがあります。国内研究班・国際学会のガイドラインでも、急性期に血漿交換+ステロイドにリツキシマブを追加する戦略が推奨されています。

抗VWF薬(カプラシズマブ)

VWFに結合して血小板の凝集を抑える新しい仕組みの薬です。日本でも「後天性TTP」で承認されており、血漿交換・免疫抑制療法に加えて使用することで、血小板回復までの時間や入院期間の短縮、血漿交換回数の減少に寄与します。初日は血漿交換前に静脈内投与し、その後は1日1回の皮下投与を継続します(医師が状態により延長を判断)。

血小板輸血について

TTPでは、血小板輸血がかえって血栓形成を助長する可能性があるため、原則として予防的な血小板輸血は行いません。生命に関わる出血や手術前など、やむを得ない場面に限って慎重に実施します。

先天性TTP(USS)

定期的なFFP輸注でADAMTS13を補う治療が基本です。将来的には組換えADAMTS13製剤の普及が期待されています。

集中治療と合併症対策

急性期は集中治療管理となることが多く、臓器障害(脳・心・腎)や感染の予防、必要に応じた抗血栓・降圧管理など、全身を総合的に支えます。

⚫︎血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の予後

適切な治療の普及により、TTPの生存率は大きく改善しましたが、急性期は油断できません。後天性TTPは、発症後1年以内に約3人に1人が再発するとされ、寛解後もしばらくは定期通院と血液検査(血小板、ADAMTS13活性)のフォローが推奨されます。再発の個人差は大きく、生涯再発しない方もいれば、何度か再発する方もいます。

また、診断・治療が遅れると重い合併症や死亡に至ることがあり、早期診断・早期治療が予後を左右します。近年はカプラシズマブの併用により、血小板回復までの時間や入院期間の短縮が報告されています。

⚫︎血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の予防

 先天性TTPは遺伝学的背景によるため、根本的な発症予防はできません。後天性TTPも自己免疫の異常が関与し、一般的な生活習慣で確実に防ぐ方法はありません。大切なのは「早く気づくこと」と「再発サインを逃さないこと」です。治療後は、体調の変化(出血しやすい、強いだるさ、頭痛や意識の変化、尿量の減少など)に注意し、指示された間隔で採血やADAMTS13のチェックを受けましょう。

⚫︎原発性マクログロブリン血症に関連する病気や合併症

溶血性尿毒症症候群(HUS・aHUS)

 同じく微小血管障害性溶血性貧血と血小板減少を示す疾患群で、腎障害が目立つ点が共通します。補体の異常や感染が関わることが多く、治療方針がTTPと異なるため鑑別が重要です。

播種性血管内凝固(DIC)

感染症や悪性腫瘍などに伴い全身で血栓と出血が同時に進む病態。血小板減少や溶血が似ることがあります。

ITP(特発性血小板減少性紫斑病)

血小板減少による出血傾向は似ますが、ITPでは「溶血や全身の微小血栓による臓器障害」は基本的に生じません。違いを理解することで不必要な不安を減らせます。

臓器合併症

脳梗塞様症状や意識障害、腎不全、心筋障害など。急性期の慎重なモニタリングと再発時の早期受診が重要です。

⚫︎まとめ

TTP(血栓性血小板減少性紫斑病)は、ADAMTS13の働き低下により微小血栓が全身の細い血管にでき、臓器の血流が悪くなる病気です。血栓を作る過程で血小板が消費されるため、あざ(紫斑)や点状出血、鼻血、歯ぐき出血など出血しやすくなります。だるさや黄疸に加え、頭痛・意識の変化、尿量低下などが急に出ることもあります。進行が速いことがあるため、疑う段階で血漿交換などの治療を急ぎます。再発に備えた定期フォローも重要です。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2026/02/17
  • 更新日:2026/02/24

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