結核性リンパ節炎けっかくせいりんぱせつえん

結核性リンパ節炎は、結核菌がリンパ節に感染して起こる病気で、首のリンパ節がゆっくり腫れてくることが多いです。痛みが少なく長く続く「しこり」として見つかり、放置すると膿がたまってやぶれたり、結核が他の臓器に広がることもあるため、早めの専門的な検査と治療が大切です。

⚫︎結核性リンパ節炎とは?

結核性リンパ節炎は、結核菌(けっかくきん)という細菌がリンパ節に感染して炎症を起こす病気です。肺以外の場所に起こる結核(肺外結核)の中で、もっとも頻度が高いタイプのひとつとされています。

特に多いのは首(頸部)のリンパ節で、耳の下・あごの下・首すじ・鎖骨の上あたりのリンパ節が、片側または両側でゆっくり腫れてきます。初期は痛みが少なく「そのうち引くだろう」と放置されやすいのですが、進行すると内部がくずれて膿(うみ)がたまり、皮膚が赤くやわらかくなり、やぶれて膿が出てくることもあります。

結核性リンパ節炎の方の中には、胸部レントゲンで肺にも結核が見つかる人と、リンパ節だけに病変がある人の両方がいます。いずれの場合も、結核としてきちんと診断し、内服薬による治療を続けることが重要です。
呼吸困難や飲み込みにくさ、首のはれなどが同時にみられることが特徴です。

⚫︎結核性リンパ節炎の原因

結核性リンパ節炎の原因は、結核菌という細菌による感染です。

結核菌とは

主に肺に感染して「肺結核」を起こす細菌ですが、血液やリンパの流れに乗って全身の臓器に広がることもあり、その一部がリンパ節にとどまって炎症を起こします。

感染の入り口

多くの場合、最初の感染場所は肺や気道と考えられています。そこで結核菌に感染し、その後リンパの流れを通じて首などのリンパ節に届き、慢性的な炎症を起こします。必ずしも「肺結核の症状がはっきりある」とは限らず、胸部レントゲンで古い痕だけが見つかる人もいます。

発症しやすい背景

結核性リンパ節炎は、若い女性に多いとされる報告もありますが、どの年代でも起こりえます。糖尿病・腎不全・ステロイド内服・抗がん剤治療中などで免疫力が落ちている場合、結核全般が発症・再燃しやすくなります。

結核菌そのものの感染経路(飛沫感染など)は、一般的な肺結核と同じで、結核性リンパ節炎だけが特別なうつり方をするわけではありません。

⚫︎結核性リンパ節炎の症状は?

結核性リンパ節炎の主な症状は、次のようなものです。

首などのリンパ節の腫れ

耳の下・あごの下・首すじ・鎖骨上などに、徐々に大きくなる「しこり」ができます。はじめはゴムのようにやや硬く、痛みが少ないことが多いです。いくつかのリンパ節がくっついて、少しデコボコしたかたまりのように触れることもあります。

痛みや赤み、膿が出る

進行すると内部がくずれて「冷膿瘍(れいのうよう)」という膿のたまりをつくり、次第に皮膚が赤くやわらかくなって、やがて皮膚がやぶれて膿が外に出ることがあります(瘻孔:ろうこう)

全身症状

微熱〜発熱、体重減少、寝汗(汗で寝間着を替えたくなるほどの汗)、だるさなど、いわゆる「結核らしい」症状を伴うこともあれば、ほとんど自覚がないこともあります。

その他の症状

肺にも結核がある場合は、咳・痰・血痰・息切れなどが出ることがあります。

「痛みが弱く長く続く首のしこり」が、風邪や一般的なリンパ節炎と違う特徴です。

⚫︎受診の目安

次のようなときは、一度医療機関で相談することをおすすめします。

  • 首やわきの下などのリンパ節の腫れが、数週間〜数か月続いている
  • 一般的な抗生剤(風邪やリンパ節炎で出される薬)を飲んでも、しこりが引かない
  • しこりの一部がやわらかくなったり、赤く腫れてきたりしている
  • 微熱や寝汗、体重減少、だるさが続いている
  • 過去に結核にかかったことがある、家族や身近な人に結核の人がいる

まずは一般内科、呼吸器内科、感染症内科、耳鼻咽喉科、皮膚科などを受診し、必要に応じて結核専門の医療機関に紹介されます。

⚫︎診断方法と治療方法(全体像)

結核性リンパ節炎が疑われた場合

  1. 問診・診察と画像検査で「結核かどうか」「悪性腫瘍ではないか」を見極める
  2. リンパ節から細胞や組織を採取して、結核かどうかを確定する(できる限り)
  3. 内服の結核治療薬(抗結核薬)を、数か月〜半年以上しっかり続ける

という流れで診断と治療が行われます。

手術だけで治す病気ではなく、「内服薬による結核治療が基本」である点が大きな特徴です。

⚫︎結核性リンパ節炎の診断

結核性リンパ節炎の診断には、いくつかの検査を組み合わせます。

1)問診・診察

  • リンパ節の腫れがいつからあるか、痛みの有無・増え方
  • 過去の結核歴、結核患者との接触歴、海外渡航歴
  • 体重減少、寝汗、長引く咳などの有無

を詳しく確認します。首のリンパ節の大きさや硬さ、皮膚とのくっつき具合などを丁寧に触れてチェックします。

2)血液検査・結核関連検査

  • 一般的な炎症反応(CRP、赤沈など)は、やや高い程度〜正常のこともあります。
  • IGRA(Tスポット・クォンティフェロンなどの結核感染検査)やツベルクリン反応を行い、「結核に感染している可能性が高いかどうか」をみます。

3)画像検査

超音波検査(エコー)

リンパ節の形・内部の状態(壊死しているかどうか)などを確認します。特徴的な所見から、結核を疑うきっかけになることがあります。

CT検査

首のリンパ節の広がりや、胸の中(肺・縦隔リンパ節)に結核らしい影がないかを評価します。

4)細胞診・組織検査(確定診断の中心)

リンパ節に細い針を刺して細胞を吸い取る「穿刺吸引細胞診」や、リンパ節の一部または全部を切除する「リンパ節生検」を行い、顕微鏡で「乾酪壊死(かんらくえし)を伴う類上皮肉芽腫(るいじょうひにくげしゅ)」といった、結核に特徴的な所見を探します。

同時に、結核菌の培養やPCR検査(結核菌の遺伝子を調べる検査)を行い、できるだけ「結核菌あり」と証明できるようにします。

⚫︎結核性リンパ節炎の治療

A. 基本となる治療(抗結核薬による内服治療)

結核性リンパ節炎の治療の中心は、抗結核薬の内服です。

代表的な薬

リファンピシン(RFP)、イソニアジド(INH)、ピラジナミド(PZA)、エタンブトール(EB)などを組み合わせて使用します。

標準的な治療期間

多くの場合、最初の2か月程度は4剤を併用し、その後2剤に減らして合計6か月程度内服を続けます。病状によっては9〜12か月に延長されることもあります。

通院と副作用チェック

肝機能障害や発疹、視力障害などの副作用が出ないかを定期的に血液検査・診察で確認しながら、治療を継続します。自己判断で中断すると再発や薬剤耐性化の原因になるため、医師の指示どおり飲み続けることがとても大切です。

B. 手術・処置が必要になる場合

診断のためのリンパ節生検

診断がつかない場合や悪性腫瘍との区別が必要な場合には、外科的にリンパ節を切除して詳しく調べます。

膿の排出

膿が大きくたまり皮膚が薄くなっている場合などには、切開して膿を出したり、ドレーン(細い管)を入れて一時的に排膿することがあります。ただし、手術だけでは結核そのものは治らないため、必ず抗結核薬とセットで行います。

C. 日常生活での注意

  1. 日常生活での注意
  • 主治医の指示に従い、通院と服薬をきちんと続ける
  • だるさが強い時期は無理をせず、徐々に活動量を増やす

⚫︎結核性リンパ節炎の予後

適切な時期に診断されて、十分な期間抗結核薬を内服すれば、多くの方は治癒が期待できます。リンパ節のしこりは治療の途中で一時的に大きくなったり、硬いしこりとしてしばらく残ることもありますが、徐々に小さくなっていくことが多いです。

一方で

  • 治療を途中で中断した
  • 薬が効きにくい耐性結核菌だった
  • 糖尿病や免疫低下などの背景がある

といった場合には、再発や慢性化のリスクが高くなります。また、肺や骨・中枢神経など、他の臓器にも結核が広がっている場合は、その部位に応じた追加治療が必要です。

⚫︎結核性リンパ節炎の予防

結核性リンパ節炎を完全に防ぐことは難しいですが、次の点が大切です。

結核全体の予防

BCG接種(乳幼児期のワクチン)や、結核患者さんの早期発見・早期治療がおもな予防策です。

周囲に結核患者がいる場合

長時間同じ部屋で過ごすなど、濃厚接触があった場合は、保健所や医療機関の指示に従って胸部レントゲンや結核感染検査(IGRAなど)を受けます。

自身が結核と診断された場合

治医の指示どおりきちんと内服を続けることで、再発や薬剤耐性化、周囲への感染リスクを減らすことができます。

生活習慣病や免疫低下の管理

糖尿病、腎臓病、ステロイド・免疫抑制薬の治療中などの場合は、主治医のもとでコントロールをよくすることで結核全般のリスクを下げられます。

⚫︎結核性リンパ節炎に関連する病気や合併症

肺結核

結核性リンパ節炎と同時に、または前後して肺結核が見つかることがあります。咳・痰・血痰などの症状や胸部レントゲンでチェックします。

他の肺外結核

 骨・関節、腎臓、脳・脊髄(結核性髄膜炎)など、他の臓器に結核が広がることもあります。頭痛や腰痛、血尿など、気になる症状があれば早めに主治医へ相談してください。

膿瘍(のうよう)・瘻孔(ろうこう)

リンパ節がくずれて膿がたまったり、皮膚に穴があいて膿が出続ける状態です。瘢痕(きずあと)が残ることもあります。

薬剤耐性結核

途中で薬をやめてしまったり、もともと耐性を持つ菌に感染していた場合には、通常の薬が効かない「多剤耐性結核」になることがあり、治療が長期・複雑になります。

⚫︎まとめ

結核性リンパ節炎は、結核菌がリンパ節に感染して起こる肺外結核で、首のしこりとして見つかることが多い病気です。初期は痛みが少なく長く続くため、風邪やふつうのリンパ節炎と思って放置されがちですが、放置すると膿がたまったり、皮膚がやぶれてしまうこともあります。

診断にはリンパ節の細胞・組織検査が重要で、治療は抗結核薬の内服を数か月以上続けることが基本になります。「長引く首のしこり」と「結核の既往・接触歴」があれば、早めに医療機関で検査を受け、自己判断で様子を見すぎないことが大切です。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック

大阪大学 医学部 卒

東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。

患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。

  • 公開日:2026/03/31
  • 更新日:2026/03/31

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