若年性血管線維腫じゃくねんせいけっかんせんいしゅ

若年性血管線維腫は、思春期前後の男児・青年に多い鼻の奥(鼻咽腔)にできる良性腫瘍です。血流が非常に豊富で、片側の鼻づまりや頻回の鼻出血が代表的な症状です。組織学的には良性ですが、周囲の骨や頭蓋内へ広がることもあるため、画像検査にもとづく早期診断と手術治療が重要です。

⚫︎若年性血管線維腫とは?

若年性血管線維腫は、主に鼻の奥(鼻咽腔:びいんくう)に発生する、血管と線維性の組織からなる腫瘍です。
組織学的には「良性腫瘍」に分類されますが、血流が非常に豊富で出血しやすく、また周囲の骨を押し広げながら成長し、鼻腔・副鼻腔・眼窩・頭蓋底(頭の骨の内側)へ広がることがあるため、「局所的には攻撃的(局所浸潤性)」な性格をもつ腫瘍です。

患者さんの多くは思春期前後の男児・青年で、頭頸部腫瘍の中でも非常にまれな病気です。片側の鼻づまりと、繰り返す・量の多い鼻出血が典型的な症状で、「成長期の男の子で、一側性の鼻出血・鼻閉が続くときにはこの病気も考える」とされています。

⚫︎若年性血管線維腫の原因

若年性血管線維腫がなぜ発生するのかは、まだ完全には解明されていませんが、次のような特徴・考え方があります。

思春期男性に多い

患者のほとんどが思春期前後の男児・青年男性で、女性や高齢者での発症はまれです。このことから、男性ホルモン(アンドロゲン)などのホルモン環境が関係しているのではないかと考えられています。

鼻咽腔の特定部位から発生

鼻の奥と副鼻腔をつなぐ部分(蝶口蓋孔付近)や、鼻咽腔側壁の血管が豊富な部分から生じるとされます。これらの部位は血管が多く、腫瘍が大きくなると周囲の骨を押し広げて進展します。

遺伝・環境との関係

明らかな遺伝性疾患として知られているわけではなく、「家族だから必ずなる」という病気ではありません。一方で、腫瘍内部の遺伝子の変化(シグナル伝達の異常など)が報告されており、体質や細胞レベルの異常が関わっている可能性があります。

生活習慣や食事内容、けが・外傷など、患者さん自身の行動が直接の原因になる病気ではありません。

⚫︎若年性血管線維腫の症状は?

代表的な症状は次の通りです。

片側の鼻づまり(鼻閉)

最も多い症状で、「いつも同じ側だけ詰まっている」「市販薬でもスッキリしない」といった訴えが特徴です。腫瘍が鼻の通り道をふさいでしまうために起こります。

繰り返す鼻出血(しばしば大量)

血管が非常に多い腫瘍のため、少しの刺激でも出血しやすく、時に大量の鼻血となって救急受診が必要になることもあります。片側からの鼻血が続く場合は注意が必要です。

頭痛・顔面の痛み・違和感

腫瘍が大きくなると、副鼻腔(頬の骨の中の空洞)や頭蓋底へ広がり、頭痛や顔面の圧迫感を生じることがあります。

顔の腫れや変形、眼の症状

さらに進行すると、頬がふくらんだり、眼球が前に押し出される(眼球突出)、二重に見える(複視)などの症状が出ることがあります。

⚫︎受診の目安

次のような場合は、一度耳鼻咽喉科(できれば頭頸部腫瘍を扱う施設)への受診を検討してください。

  • 思春期前後の男児・青年で、片側の鼻づまりが長く続いている
  • 同じ側からの鼻出血を繰り返す、出血量が多い
  • 鼻づまりに加え、頭痛・顔面の腫れ・片側のほおのふくらみがある
  • 鼻の奥に赤っぽいしこり・腫れが見えると指摘された
  • 原因不明の貧血(立ちくらみ・だるさ)があり、鼻出血もある

とくに、

  • 止まりにくい大量の鼻出血
  • 意識がぼんやりする、ふらつきが強い
  • 視力低下や強い頭痛、顔の変形

などを認める場合は、救急受診も含め早めの対応が重要です。

⚫︎診断方法と治療方法(全体像)

若年性血管線維腫は、非常に血流が豊富で、安易な生検(組織を一部とって調べる検査)を行うと大量出血の危険があるため、「画像検査と症状から診断し、手術で一括切除して病理診断を確定する」という流れが基本です。

診断には、問診・診察に加えて、CT・MRI・血管造影(カテーテル検査)などが用いられます。治療の中心は手術で、最近は鼻の穴から内視鏡で行う手術が多くなっていますが、進行例では外側からのアプローチを組み合わせることもあります。出血を抑えるため、手術前に腫瘍へ流れる血管を塞ぐ「血管塞栓術(けっかんそくせんじゅつ)」が行われることが一般的です。

完全切除が難しい場合や再発時などには、放射線治療が追加されることもあります。

▶︎若年性血管線維腫の診断

1)問診・診察

鼻づまりや鼻出血の期間・回数・片側か両側か、頭痛や顔面の腫れ、視力・耳の症状などを確認します。思春期男性であるかどうかも重要な手がかりです。鼻鏡や内視鏡を用いて、鼻の奥(鼻咽腔)を観察し、赤色〜暗赤色の腫瘤を確認します。ただし、生検は出血の危険が高いため、通常は行いません。

2)画像検査(CT・MRI)

CT検査では、腫瘍の存在や、周囲の骨の変形・破壊の程度がわかります。MRI検査では、腫瘍の広がり(鼻腔・副鼻腔・眼窩・頭蓋内への進展)や内部の血流の豊富さなどが評価されます。これらを組み合わせて、病変の範囲と病期を判断します。

3)血管造影(カテーテル検査)

手術前に血管造影を行い、腫瘍を栄養している血管(主に顎動脈の枝など)を特定します。その場で、塞栓物質を注入して血流を減らす「選択的血管塞栓術」を行い、手術中の出血を減らす工夫がなされます。

4)病理組織学的診断

最終的な確定診断は、手術で摘出した腫瘍を病理医が顕微鏡で詳しく評価することで行われます。血管成分と線維性の間質からなり、特徴的な像を示します。

▶︎若年性血管線維腫の治療

A. 手術療法(基本となる治療)

内視鏡下経鼻手術

腫瘍が鼻咽腔や鼻腔、副鼻腔に限局している場合は、鼻の穴から内視鏡と器具を挿入して切除する方法が主流となっています。顔面に大きな傷を残さずに、腫瘍の完全切除を目指すことができます。

外切開アプローチ

腫瘍が大きく、翼口蓋窩・側頭下窩・眼窩・頭蓋内へ広がっている場合は、鼻の外側や顔面を切開する手術(鼻側切開、midfacial degloving、頭蓋底アプローチなど)が選択されることがあります。内視鏡手術と組み合わせて行うケースもあります。

いずれの場合も、手術前に血管塞栓術を行うことで出血量を減らし、安全な切除を目指します。

B. 放射線治療

完全切除が困難な症例や、再発例・手術不能例などでは、放射線治療が選択されることがあります。単独での根治性には限界があり、再発や放射線の長期的な影響(誘発腫瘍など)も考慮する必要がありますが、腫瘍の縮小や症状のコントロールには有効な場合があります。

C. その他の治療

ホルモン療法や分子標的薬、血管新生阻害薬などについては、症例報告や研究段階のものが多く、標準治療として確立しているわけではありませんが、将来的な選択肢として検討されている領域です。

⚫︎若年性血管線維腫の予後

若年性血管線維腫は「良性腫瘍」であり、遠隔転移(肺などへの転移)は非常にまれです。一方で、局所的には骨を破壊しながら広がることがあり、治療が遅れると手術が大掛かりになることがあります。

適切なタイミングで手術を行えば、多くの症例で良好なコントロールが得られますが、腫瘍の広がりが大きい場合や、完全切除が難しかった場合には、再発率がやや高くなると報告されています。そのため、治療後も数年間は定期的な画像検査によるフォローが推奨されます。

⚫︎若年性血管線維腫の予防

現時点で、若年性血管線維腫を確実に予防する方法はわかっていません。

  • 生活習慣や食事で直接予防できる病気ではない
  • 「何かをしたから発症した/予防できた」と言い切れるものではない

という性質の腫瘍です。

そのため、もっとも大切なのは「早期発見・早期治療」です。
思春期の男児・青年で、片側の鼻づまりや鼻出血が続く場合は、「花粉症や副鼻腔炎だろう」と自己判断せず、一度耳鼻咽喉科で画像検査も含めた評価を受けることが重要です。

⚫︎若年性血管線維腫に関連する病気や合併症

若年性血管線維腫と紛らわしい、あるいは関連して考えられる病気には次のようなものがあります。

鼻・副鼻腔の良性腫瘍

鼻ポリープ、血管腫、乳頭腫など。いずれも鼻づまりや鼻出血を起こしますが、画像所見や発生部位が異なります。

悪性腫瘍

鼻・副鼻腔がん、上咽頭がん、リンパ腫など。これらは悪性腫瘍であり、治療方針や予後が大きく異なるため、画像と病理診断による鑑別が重要です。

貧血

繰り返す鼻出血により、貧血(立ちくらみ・息切れ・顔色不良)が進むことがあります。

眼や脳の合併症

高度に進展した症例では、眼球突出や視覚障害、頭蓋内への進展による神経症状が出ることがあり、脳神経外科との連携が必要となることもあります。

⚫︎まとめ

若年性血管線維腫は、思春期の男の子に多い、鼻の奥にできる血流の豊富な良性腫瘍です。

片側の鼻づまりと繰り返す鼻出血が代表的なサインで、進行すると頭痛や顔の腫れ、眼の症状を伴うこともあります。

診断は主に画像検査で行い、手術による腫瘍の切除が基本ですが、手術前の血管塞栓術などで安全性を高める工夫がされています。

「鼻炎だろう」と決めつけず、気になる症状が続くときは早めに耳鼻咽喉科で相談し、必要な検査・治療につなげることが安心への第一歩です。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック

大阪大学 医学部 卒

東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。

患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。

  • 公開日:2026/03/31
  • 更新日:2026/03/31

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