鼻副鼻腔腫瘍 びふくびくうしゅよう

鼻副鼻腔腫瘍は、鼻の中やその周囲の空洞(副鼻腔)にできる「しこり」の総称で、良性と悪性(がん)があります。初期は鼻づまりや副鼻腔炎に似た症状ですが、片側だけの鼻づまり・血の混じる鼻水・顔面の腫れや痛み・歯のしびれ・視力の変化などが続くときは注意が必要です。CTや内視鏡、組織検査で診断し、手術・放射線・抗がん剤を組み合わせて治療します。

⚫︎鼻副鼻腔腫瘍とは?

「鼻副鼻腔腫瘍」とは、

  • 鼻の中(鼻腔)
  • 鼻のまわりの空洞(副鼻腔:上顎洞・篩骨洞・前頭洞・蝶形骨洞)

にできる「できもの(腫瘍)」の総称です。良性のもの(増殖はするが周囲に広がりにくい)と、悪性のもの(いわゆる「がん」)の両方が含まれます。

鼻腔には良性腫瘍も多くみられますが、副鼻腔にできる腫瘍は悪性である割合が高いと報告されています。悪性腫瘍の多くは扁平上皮がんですが、悪性リンパ腫・悪性黒色腫・嗅神経芽細胞腫など、種類は非常に多彩です。

初期の症状は副鼻腔炎(ちくのう症)やアレルギー性鼻炎に似ているため、発見が遅れやすいことが問題とされています。片側だけの鼻症状や、いつもと違う顔面の痛み・腫れなどが続くときは、腫瘍の可能性も含めてチェックすることが大切です。

⚫︎鼻副鼻腔腫瘍の原因

鼻・副鼻腔腫瘍のはっきりした原因は、まだ分かっていない部分も多いですが、次のような要因が関わると考えられています。

長期の刺激・職業曝露

木工・家具製造、革製品加工、ニッケル・クロムなどの金属粉じん、粉塵の多い職場などでは、副鼻腔がんのリスクが高まるとされています。

喫煙・アルコール

頭頸部がん全体のリスクを高める要因として知られています。

ウイルス感染

鼻咽頭にできる一部のがんではEBウイルスとの関連が、上咽頭がんの一部でHPVとの関連が報告されていますが、鼻・副鼻腔腫瘍全体の中では一部と考えられます。

多くの場合、これらの要因が複合的に関わると考えられており、「これをしたから必ず腫瘍になる」というものではありません。

⚫︎鼻副鼻腔腫瘍の症状は?

腫瘍が小さいうちは、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎と似た症状だけのこともあり、自覚しにくいのが特徴です。進行や進展する方向によって、次のような症状が出てきます。

鼻副鼻腔の症状

  • 片側だけの鼻づまり(いつも同じ側が詰まる)
  • 片側だけの鼻水、特に血が混じる・血の塊が出る(血性鼻汁)
  • 膿のような、においの強い鼻水が続く
  • 繰り返す鼻血

顔面の症状

  • 片側の頬や目の下の痛み・しびれ・腫れ
  • ほほの皮膚が盛り上がる、顔の形が変わってきた

眼の症状

  • 物が二重に見える(複視)
  • 視力低下、視野が欠ける

⚫︎受診の目安

次のような症状があれば、早めに耳鼻咽喉科・頭頸部外科の受診をおすすめします。

  • 片側だけの鼻づまり・鼻水・鼻血が続く
  • 片側の頬や目の下が痛い・しびれる・腫れている
  • 半年以上続く副鼻腔炎と言われているが、片側だけ改善しない
  • 物が二重に見える、片目の視力が落ちてきた
  • 顔の形が変わってきたように感じる

特に、「片側だけの症状」「血が混じる鼻水」「顔面の変形やしびれ」、これらは鼻副鼻腔腫瘍の重要なヒントであり、受診を急ぐサインです。

⚫︎診断方法と治療方法(全体像)

鼻副鼻腔腫瘍は、

  • 良性か悪性か
  • どの部位から発生しているか
  • どこまで広がっているか(眼・頭蓋底・口腔などへの進展の有無)

によって、治療法や見通しが大きく変わります。そのため、まずは「正確な診断と病期(ステージ)の把握」がとても重要です。

治療の柱は、

  • 手術(腫瘍の切除)
  • 放射線治療
  • 化学療法(抗がん剤治療)

で、腫瘍のタイプと進行度に応じて組み合わせて行います。早期の一部の腫瘍は手術単独で治療できることもありますが、進行した悪性腫瘍では手術と放射線・抗がん剤を組み合わせることが一般的です。

▶︎鼻副鼻腔腫瘍の診断

1)問診・診察

  • 症状が始まった時期と経過
  • 片側か両側か
  • 職業歴(粉じん・化学物質への曝露)
  • 喫煙歴、既往歴

などを確認し、鼻鏡・内視鏡を用いて鼻腔・鼻咽腔を詳しく観察します。出血しやすい腫瘤や、粘膜の不整な盛り上がりなどを確認します。

2)画像検査

CT(コンピュータ断層撮影)

骨の破壊の有無(上顎骨・眼窩・頭蓋底など)や、腫瘍の広がりを評価します。

MRI

腫瘍と周囲軟部組織(眼・脳・筋肉・脂肪など)との境界を詳しく調べます。

必要に応じて、頸部リンパ節や胸部CTなどで転移の有無を調べます。

3)病理検査(生検)

  • 局所麻酔下に、腫瘍の一部を採取し、顕微鏡で「どのような種類の腫瘍か(扁平上皮がん、腺がん、悪性リンパ腫など)」を判定します
  • 解剖学的に深い場所では、生検が難しいこともあり、画像や臨床所見と組み合わせて診断します

4)ステージ(病期)の決定

腫瘍の大きさ・浸潤の範囲・リンパ節や遠隔臓器への転移の有無から、TNM分類に基づいて病期を決め、治療方針の検討材料とします。

▶︎鼻副鼻腔腫瘍の治療

A. 良性腫瘍の場合

  • 乳頭腫・血管腫・線維性腫瘍など良性の腫瘍は、症状や大きさに応じて内視鏡手術で摘出することが多いです。
  • 放置すると大きくなって周囲を圧迫したり、まれに悪性化のリスクが議論される腫瘍もあるため、専門医と相談して方針を決めます。

B. 悪性腫瘍(がん)の場合

手術

腫瘍とその周囲の正常組織を、安全なマージン(縁)を確保して切除します。小さく限局したがんであれば、内視鏡手術での切除が可能な場合もありますが、周囲の骨・眼窩・頭蓋底・口腔などに広がっている場合は、顔面皮膚切開や開頭を伴う拡大手術が必要になることがあります。

放射線治療

手術前後に腫瘍のコントロールを高める目的で行われるほか、手術が難しい部位の腫瘍に対して主体的に用いられることもあります。近年は、正常組織へのダメージを抑えつつ、腫瘍に集中的に照射する方法も使われています。

化学療法(抗がん剤)

放射線との併用(化学放射線療法)や、手術前後の補助療法として用いられます。最近では、腫瘍に栄養を送る血管にカテーテルを入れて、そこに高濃度の薬を流す「動注化学療法」と放射線を組み合わせる方法も行われています。

これらの治療は、耳鼻咽喉科・頭頸部外科だけでなく、脳神経外科・形成外科・眼科・歯科口腔外科・放射線治療科・腫瘍内科など、多職種がチームで連携して行うことが一般的です。

⚫︎鼻副鼻腔腫瘍の予後

予後(病気の経過・見通し)は、

  • 良性か悪性か
  • 悪性の場合は、発見された時点の病期(ステージ)
  • 腫瘍の種類(扁平上皮がん、腺がん、悪性リンパ腫など)
  • 年齢や全身状態

によって大きく異なります。

一般的には、

  • 早期の小さい腫瘍 → 手術や放射線で根治(完治)を目指せることが多い
  • 周囲の骨・眼・頭蓋底・脳に進展した進行がん → 病状コントロールや再発・転移の抑制をめざした治療となることが多い

とされています。

治療後は、画像検査や内視鏡で定期的に再発や新たな腫瘍がないかをチェックし、必要に応じて追加治療やリハビリテーション(嚥下・発音・見た目・義歯など)を行います。

⚫︎鼻副鼻腔腫瘍の予防

鼻副鼻腔腫瘍を完全に防ぐ方法は確立されていませんが、リスクを下げるために次のような点が勧められています。

  • 喫煙を控える、禁煙する
  • 職業上、木粉・革粉・金属粉などを扱う場合は、防塵マスクや換気設備をしっかり利用する
  • 慢性副鼻腔炎や歯性上顎洞炎を放置せず、適切に治療する
  • 片側だけの鼻症状や顔面の違和感が続く場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診する

「早期発見・早期治療」が結果的に最も大きな予防(重症化の防止)につながります。

⚫︎鼻副鼻腔腫瘍に関連する病気や合併症

慢性副鼻腔炎・鼻茸(鼻ポリープ)

腫瘍と見分けがつきにくいことがあり、片側だけの副鼻腔炎やポリープは特に注意が必要です。

歯性上顎洞炎

上顎洞がんや腫瘍が歯や上顎骨を巻き込むと、歯性上顎洞炎と似た症状を示すことがあります。

眼や脳への進展

腫瘍が眼窩や頭蓋底に広がると、視力障害や複視、頭痛・けいれんなど神経症状を起こすことがあります。

リンパ節・遠隔転移

頸部リンパ節への転移や、まれに肺・骨などへの転移がみられることがあります。

治療に伴う合併症

手術・放射線・化学療法により、外見の変化、口の渇き、味覚・嗅覚の低下、嚥下(飲み込み)や発音の障害などが生じることがありますが、再建手術やリハビリにより改善を目指します。

⚫︎まとめ

鼻副鼻腔腫瘍は、良性から悪性(がん)までさまざまなタイプがあり、初期は副鼻腔炎に似た症状のため気づかれにくい病気です。
一方で、片側だけの鼻症状や顔面の痛み・腫れ・鼻血・視力の変化など、注意すべきサインもはっきりしています。

CTや内視鏡、病理検査などでしっかり診断し、手術・放射線・抗がん剤治療を組み合わせることで、根治や長期的な病状コントロールを目指すことが可能です。
「いつもの鼻炎と違うかも?」と感じたら、一人で抱え込まず、早めに専門医へ相談してみてください。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック

大阪大学 医学部 卒

東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。

患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。

  • 公開日:2026/03/31
  • 更新日:2026/03/31

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