ウイルス性脳炎ういるすせいのうえん

ウイルス性脳炎は、ウイルスが脳に入り炎症を起こす重い病気です。発熱・頭痛に続き、意識がぼんやりする、けいれん、異常行動などが急に現れます。命にかかわることもあり、早期の受診と入院・抗ウイルス薬などの治療がとても大切です。

⚫︎ウイルス性脳炎とは?

ウイルス性脳炎は、ウイルスが脳の中に入り込み、脳そのものが炎症を起こした状態を指します。多くは急に発症し、発熱・頭痛に加えて、意識がはっきりしない、けいれん、性格や行動の変化など「脳の働きの異常」が目立つのが特徴です。

脳炎には大きく分けて

  • ウイルスなどの病原体が直接脳に感染して起こる「感染性脳炎」
  • 免疫の異常反応によって起こる「自己免疫性脳炎」

がありますが、ここでは主にウイルスが原因となる「ウイルス性脳炎」について説明します。

なお、熱と意識障害などはあるものの、脳自体に明らかな炎症が見られない場合は「脳症」と呼び、原因や治療方針が少し異なります。

⚫︎ウイルス性脳炎の原因

ウイルス性脳炎の原因となるウイルスはさまざまですが、代表的なものは次の通りです。

単純ヘルペスウイルス(ヘルペス脳炎)

口唇ヘルペスなどを起こすウイルスが、何らかのきっかけで脳内に入り炎症を起こします。成人の急性ウイルス性脳炎では最も頻度が高く、重症化しやすいタイプです。

日本脳炎ウイルス

ブタの体内で増えたウイルスを吸った蚊がヒトを刺すことで感染します。症状が出る人は少ないものの、発症すると死亡や重い後遺症のリスクが高い病気です。

その他のウイルス

水痘・帯状疱疹ウイルス、はしか・おたふくかぜ・風しんなどのウイルス、ウェストナイルウイルスやダニ媒介脳炎ウイルスなどの「節足動物媒介(蚊・ダニなど)」のウイルスなどが、脳炎を起こすことがあります。

⚫︎ウイルス性脳炎の症状は?

典型的には、風邪に似た症状から始まり、徐々に「脳の症状」が目立ってきます。

よくみられる症状

  • 発熱(高い熱が続くことが多い)
  • 強い頭痛
  • 吐き気・嘔吐
  • 意識がぼんやりする、呼びかけに反応しづらい

乳幼児では

  • 機嫌が悪い、泣き止まない
  • 母乳やミルクを飲まない
  • ぐったりしている

「頭痛と発熱だけの状態」から「意識障害・けいれん」まで、短時間で急に悪化することがあり、早めの受診が非常に重要な病気です。

⚫︎受診の目安

次のような場合は、すぐに医療機関の受診を考えてください。

  • 高い熱と強い頭痛が続き、「いつもと違う」感じがする
  • 意識がぼんやりしている、呼びかけに反応しづらい
  • 意味の通らない会話や異常行動が急に出てきた
  • けいれんが起こった、または何度も繰り返している
  • まっすぐ歩けない、片側の手足が動かしにくい・しびれる

平日の日中で症状が軽い場合でも、内科・小児科・脳神経内科など、すぐに相談できる医療機関を受診してください。

⚫︎診断方法と治療方法(全体像)

ウイルス性脳炎が疑われるときは、基本的に入院での精査と治療が必要になります。

診断の流れ

  • 問診・診察で症状の経過や神経の異常を確認
  • 血液検査で炎症や他の原因の有無をチェック
  • 頭部CT・MRIで脳の腫れや出血、腫瘍の有無を確認

治療の全体像

  • 入院のうえで、呼吸・血圧・水分や電解質バランスなどの全身管理
  • ヘルペス脳炎が疑われる場合は、確定診断を待たずに抗ウイルス薬(アシクロビルなど)の点滴を開始
  • けいれんがあれば、抗けいれん薬でコントロール

⚫︎ウイルス性脳炎の診断

1)問診・診察

  • いつからどのような症状が出ているか
  • 発熱の有無、けいれんがあったか
  • 最近の感染症(風邪・胃腸炎・帯状疱疹など)の有無

2)画像検査(CT・MRI)

  • 頭部CT:短時間で行え、脳出血や大きな脳梗塞など他の病気の除外に有用です。
  • 頭部MRI:脳炎の病変をとらえやすく、特にヘルペス脳炎では側頭葉の異常などが特徴的です。

3)腰椎穿刺・髄液検査

  • 腰のあたりから細い針を刺して、少量の髄液を採取する検査です。
  • 髄液中の細胞数(リンパ球が増えることが多い)、タンパク、糖などを測定し、細菌性との違いを見分けます。

4)その他の検査

  • 血液検査(炎症反応、肝機能・腎機能、ウイルス抗体など)
  • 脳波検査(けいれんや脳機能の状態を評価)

⚫︎ウイルス性脳炎の治療

A. 初期対応(まず行うこと)

  • 入院のうえで、呼吸・循環・意識レベルをしっかりとモニタリング
  • 脱水を避けるための点滴、発熱や頭痛を和らげる解熱鎮痛薬の使用
  • けいれんがあれば、抗けいれん薬で速やかに抑える

B. 抗ウイルス薬による治療

  • ヘルペス脳炎など、抗ウイルス薬が有効とされるタイプでは、アシクロビルなどの抗ウイルス薬を点滴で投与します。
  • ヘルペス脳炎は頻度が高く重症化しやすいため、「疑った時点で」治療を開始することが推奨されています。

C. 免疫を抑える治療(自己免疫性脳炎など)

ウイルスではなく免疫の異常が原因と考えられる場合には、ステロイド、免疫グロブリン、血漿交換などで免疫反応を落ち着かせる治療を検討します。

D. 支持療法(症状を和らげる治療)

  • 脳の腫れやけいれんをコントロールしながら、呼吸・栄養・水分・排泄など全身状態を整える治療が続きます。
  • 日本脳炎など、一部のウイルス性脳炎では、特効薬がなく対症療法が中心となる場合もあります。

治療の期間は原因や重症度によりますが、数週間~それ以上かかることも珍しくありません。退院後もしばらくは外来での経過観察が必要です。

⚫︎ウイルス性脳炎の予後

ウイルス性脳炎の予後は、原因となるウイルス・治療開始までの速さ・年齢や持病などによって大きく変わります。

単純ヘルペス脳炎

抗ウイルス薬により助かる方は増えましたが、記憶障害や性格変化などの後遺症が残ることも少なくありません。

日本脳炎

発症すると致死率や重い後遺症のリスクが高く、「罹らないようにすること(ワクチン)」が特に重要な病気です。

全体として、早期に診断・治療できたかどうかが予後を左右します。回復後も、記憶力や注意力の低下、てんかん発作、ふらつきなどが続く場合があり、リハビリや外来フォローで長期的にサポートしていきます。

⚫︎ウイルス性脳炎の予防

ウイルス性脳炎全体を完全に防ぐことはできませんが、次のような対策でリスクを減らすことができます。

ワクチン接種

はしか(麻しん)、風しん、おたふくかぜ、水ぼうそう、日本脳炎などは、ウイルス性脳炎を合併することがあるため、定期接種や推奨されているワクチンを適切な時期に受けることが重要です。

蚊・ダニ対策

日本脳炎やダニ媒介脳炎など、蚊やダニを介するウイルスに対しては、虫よけ剤の使用、長袖・長ズボンの着用、野外活動後のシャワーなど基本的な対策が有効です。

一般的な感染対策

手洗い・うがい、咳エチケット、体調不良時の無理を避ける、十分な睡眠やバランスのよい食事で免疫力を保つことは、多くの感染症予防に役立ちます。

⚫︎ウイルス性脳炎に関連する病気や合併症

髄膜炎

脳を包む膜(髄膜)の炎症です。脳炎と同時に起こると「髄膜脳炎」と呼ばれ、強い頭痛や首の硬さ、発熱に加え、意識障害やけいれんを伴うことがあります。

てんかん

脳炎後の傷ついた脳が原因で、慢性的にけいれん発作を繰り返す「てんかん」を発症することがあります。適切な薬物治療や生活指導が必要です。

認知機能低下・高次脳機能障害

記憶力、集中力、判断力の低下や性格変化などが残ることがあり、学校生活や仕事・家事に影響する場合があります。

運動失調・まひ

小脳や運動を司る部分が障害されると、ふらつき、手足のぎこちなさ、片側のまひなどが長期に続くことがあります。

⚫︎まとめ

ウイルス性脳炎は、ウイルス感染によって脳に炎症が及ぶ、非常に重篤な疾患です。
特徴的な症状として、発熱や頭痛に加えて、意識障害やけいれん、異常行動といった「脳機能の障害」が挙げられます。これらの兆候は緊急性が高いため、少しでも異変を感じた際は速やかに医療機関を受診してください。

診断には画像診断や髄液検査などの専門的な検査が不可欠であり、治療は抗ウイルス薬や免疫治療、集中治療などを組み合わせて行われます。予防にはワクチン接種や蚊・ダニ対策が有効ですが、何よりも早期の診断と治療が、重症化や後遺症のリスクを減らす最善の策となります。

 

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2026/03/10
  • 更新日:2026/03/10

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