リケッチア感染症りけっちあかんせんしょう
リケッチア感染症は、リケッチアという小さな細菌がマダニやツツガムシに刺されてうつる病気の総称です。ツツガ虫病や日本紅斑熱が代表で、高熱・頭痛・発疹・刺し口が特徴です。治療が遅れると重症化することがありますが、早期に適切な抗菌薬を使えば改善が期待できます。
目次
⚫︎リケッチア感染症とは?
リケッチア感染症は、「リケッチア」という細菌の仲間が原因となる感染症の総称です。リケッチアは自分だけでは増えられず、人や動物の細胞の中に入り込んで増える特殊な細菌です。
日本でよくみられるリケッチア感染症には
- ツツガ虫病(Orientia tsutsugamushi による)
- 日本紅斑熱(Rickettsia japonica による)
があります。どちらも野山や草むらなどにいるダニ・ツツガムシに刺されることでうつり、高熱・発疹・刺し口(小さなかさぶた)が3つの代表的な症状です。
⚫︎リケッチア感染症の原因
リケッチア感染症の直接の原因は、リケッチアという細菌です。
どこにいる細菌か
- 自然界では、マダニ、ツツガムシ、ノミ、シラミなどの体の中に住みついています
- これらの虫が野生動物や人の血を吸う時に、唾液などを通じて細菌が体内に入り、感染が起こります
人から人へうつるか
- 通常は人から人へ直接うつることはありません
- そのため、家族内での「隔離」が必要な病気ではなく、「ダニやツツガムシに刺されないこと」が予防のポイントになります
かかりやすい状況
- 山歩きやキャンプ、畑仕事などで草むらに入る
- 野生動物が多い地域での作業
- 春〜秋にかけて、ダニが活動しやすい季節
刺された場所は、ベルトの内側・脇の下・足の付け根・陰部など衣服のゴムが当たるところによく見られます。
⚫︎リケッチア感染症の症状は?
典型的には、ダニやツツガムシに刺されてから数日〜2週間の潜伏期間の後、次のような症状が出てきます
初期症状
- 突然の38度以上の高熱
- 強い頭痛
- 全身のだるさ(倦怠感)
- 筋肉痛・関節痛
その後に出てくる特徴的な症状
- 全身(特に手足や体幹)に赤い発疹が出る
- 刺された場所に黒いかさぶたのような「刺し口」ができていることが多い
- 悪寒、食欲低下、吐き気、下痢などの消化器症状を伴うこともあります
注意ポイント
- 「高熱+発疹+草むらに行った+虫に刺されたあと」がそろう場合は、リケッチア感染症を強く疑います
- 放置すると、血圧低下、意識障害、呼吸困難などの重い状態に進行し、命に関わることがあります
⚫︎受診の目安
次のような場合には、早めの受診をおすすめします。
- 山や畑、草むらに入った数日〜2週間後に高熱が続く
- 発熱とともに全身に発疹が出ている
- 虫に刺された覚えがあり、その周りに黒いかさぶた状の刺し口がある
- 熱と発疹に加え、強い頭痛やだるさ、食欲低下が続く
- 顔色が悪い、息が荒い、意識がもうろうとする
これらが当てはまる場合は、「様子を見る」よりも、一般内科や感染症内科、皮膚科などを早めに受診してください。重症化が疑われる場合や、ぐったりしている場合は、救急外来の受診も検討が必要です。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
リケッチア感染症は
- どこに行ったか(野山・畑・草むらなど)
- どのような症状がいつから出ているか
- 皮膚の刺し口や発疹の有無
を総合的に判断し、必要な検査を組み合わせて診断します。
確定診断には、血液や皮膚の検体を使った抗体検査やDNA検査(PCR)などが用いられます。ただし、検査結果を待ってから治療を開始していると遅くなることがあるため、「強く疑う場合は、診断を待たずに治療を始める」ことが重要です。
治療の中心は、リケッチアに効果のある抗菌薬(テトラサイクリン系薬)を早期に使うことです。セフェム系など一般的な肺炎の薬では効かないため、薬の選び方がとても大切です。
⚫︎リケッチア感染症の診断
1)問診・診察
- いつから発熱・発疹・頭痛・倦怠感があるか
- 1〜2週間以内に、山・川・畑・草むらなどに行ったか
- ペットや野生動物との接触があったか
これらを確認し、全身の皮膚をよく観察して「刺し口」がないかをチェックします。
2)血液検査
- 炎症反応(CRP)、肝機能、腎機能、血小板などを確認し、全身の炎症の程度や臓器への影響を調べます。
- 血清抗体検査で、リケッチアに対する抗体の有無・増え方をみることで診断の助けにします(ペア血清といって、時間をおいて2回採血し、抗体価の上昇を確認することもあります)。
3)病原体検査
刺し口のかさぶたや発疹部の皮膚、血液からリケッチアのDNAをPCR検査で検出することがあります。
4)画像検査
状態に応じて、胸部レントゲンやCTで肺炎の有無、腹部エコーで肝臓や脾臓の状態などを調べることもあります。
⚫︎リケッチア感染症の治療
A. 初期対応(まずやること/基本方針)
- リケッチア感染症が疑われた段階で、できるだけ早くリケッチアに効く抗菌薬を開始します。
- 脱水を防ぐための点滴や、解熱鎮痛薬などで、全身状態を整えます。
B. 抗菌薬治療
- 第一選択はテトラサイクリン系抗菌薬(ドキシサイクリン、ミノサイクリンなど)です
- 多くの場合、薬を開始して24〜48時間以内に解熱し、全身状態が改善していきます
- 重症例や経口摂取が難しい場合は、点滴で投与することもあります
C. 入院治療が必要な場合
- 意識障害、血圧低下、呼吸困難などの重症例
- 高齢、基礎疾患(心臓・腎臓・肝臓の病気など)がある方
- 検査で多臓器不全やDIC(血が固まりやすく、同時に出血もしやすい状態)が疑われる場合
⚫︎リケッチア感染症の予後
- 適切な抗菌薬を早期に開始すれば、多くの方は後遺症なく回復が期待できます。
- 一方、治療が遅れると、DICや多臓器不全、肺炎、脳炎などを起こし、死亡率が高くなることが報告されています。
- 高齢者や基礎疾患がある方では、回復しても体力・筋力の低下が残り、リハビリが必要になる場合があります。
「山や畑での作業後の高熱と発疹」は、早めに受診することで予後が大きく変わるサインと考えてください。
⚫︎リケッチア感染症の予防
リケッチア感染症は、人から人へうつらないかわりに、「ダニやツツガムシに刺されないこと」が何よりの予防になります。
野山・草むらに入るとき
- 長袖・長ズボン、長い靴下、足首を覆う靴を着用し、肌の露出を減らす
- ズボンの裾を靴下や長靴の中に入れる
帰宅後のチェック
- すぐに入浴し、体をよく洗う
- 家族に背中などを見てもらいながら、虫に刺された跡や小さなかさぶたがないか確認する
- 衣類は屋外で叩いてから洗濯する
ペット
犬や猫が野山に行った後は、体にマダニが付いていないかチェックし、予防薬の使用について獣医師と相談しておきましょう。
⚫︎リケッチア感染症に関連する病気や合併症
ツツガ虫病
ツツガムシに刺されることで起こるリケッチア感染症で、日本各地で報告があります。高熱・発疹・刺し口が3大症状で、治療が遅れると重症化することがあります。
日本紅斑熱
マダニが媒介するリケッチア感染症で、発熱と全身の紅い発疹が特徴です。まれに脳炎などを合併することもあります。
DIC(播種性血管内凝固)・多臓器不全
重症例では、血が固まりやすくなりつつ出血もしやすい状態となり、腎臓や肝臓、肺など複数の臓器が障害されることがあります。
肺炎、心筋炎、脳炎など
全身の血管が傷つくことで、肺・心臓・脳などに炎症が広がり、命に関わる状態になることがあります。
⚫︎まとめ
リケッチア感染症は、ダニやツツガムシに刺されてうつる、高熱と発疹を特徴とする病気です。
日本ではツツガ虫病と日本紅斑熱が代表で、どちらも早期診断と適切な抗菌薬治療により予後の改善が期待できます。
「野山に行ったあとに熱と発疹が出た」「刺し口がある」と感じたら、自己判断せず速やかに受診することが重要です。
日頃から服装や虫よけでダニに刺されない工夫をし、自分と家族の健康を守っていきましょう。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- 東京逓信病院「リケッチア症~つつが虫病と日本紅斑熱」
(https://www.hospital.japanpost.jp/tokyo/shinryo/kansen/rickettsia.html) - 国立感染症研究所 IASR「つつが虫病・日本紅斑熱」
(https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/tsutsugamushi-m/tsutsugamushi-iasrtpc/7324-448t.html)
■ この記事を監修した医師
赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2026/03/06
- 更新日:2026/03/06
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