レジオネラ症れじおねらしょう
レジオネラ症は、レジオネラ属菌が原因の感染症で、重い肺炎を起こす「レジオネラ肺炎」と、自然に治る軽い「ポンティアック熱」があります。汚れた循環式浴槽や加湿器などから出る細かい水しぶきを吸い込むことで感染し、高熱・咳・息苦しさに加え、下痢や意識障害などを伴うことがあります。早期受診と適切な抗菌薬治療が重要です。
目次
⚫︎レジオネラ症とは?
原因となる菌
レジオネラ属菌は、もともと川・湖・温泉・土壌など自然界に広く存在する環境細菌です。特に20〜50℃くらいのぬるい水の中で増えやすく、人工的な水の設備の中で数が増えると、感染の原因になります。
感染経路
主な感染経路は、「菌に汚染された水の細かいしぶき(エアロゾル)を吸い込むこと」です。
レジオネラ属菌が増えやすい場所の例
- 循環式浴槽(24時間風呂、追い焚き機能付き風呂、温泉・スーパー銭湯など)
- 建物の冷却塔(ビルの空調設備)
- 加湿器(特に超音波式など、水を加熱せず霧状にして出すタイプ)
- 噴水やジャグジー、施設のシャワー設備 など
ヒトからヒトへ直接うつることは、現時点では「基本的にない」とされています(ごく稀な可能性についての報告はありますが、一般的な場面では気にしなくてよいレベルです)。
- かかりやすい人(リスクが高い人)
- 高齢者(特に50歳以上)
- 喫煙習慣がある人、大量飲酒を続けている人
- 糖尿病・慢性肺疾患・腎臓病などの持病がある人
- ステロイドや免疫抑制薬を使用中の人、透析中・臓器移植後の人
- 入院中・施設入所中で、全身状態が弱っている人
⚫︎レジオネラ症の症状は?
レジオネラ症の潜伏期間(感染してから症状が出るまで)は、病型によって少し異なります。
- レジオネラ肺炎:2〜10日(多くは4〜5日)
- ポンティアック熱:1〜2日(平均1.5日程度)
レジオネラ肺炎(在郷軍人病)
次のような「全身症状+肺炎の症状+消化器・神経症状」が組み合わさることが多いです。
- 高熱(38℃以上)、悪寒、強いだるさ
- 咳(から咳、または痰を伴う咳)、息苦しさ、胸の痛み
- 頭痛、筋肉痛、食欲低下
- 下痢や腹痛、吐き気
一般的な肺炎と比べて、「高熱が続くわりに、咳や痰がそれほど目立たない」「肺以外の症状(下痢、意識障害など)が強い」ことがレジオネラ肺炎の特徴とされています。適切な治療がされないと、急速に呼吸不全や多臓器不全に進行し、命に関わることもあります。
ポンティアック熱
- 突然の発熱、悪寒
- 頭痛、筋肉痛、全身のだるさ
- 咳などの呼吸器症状は比較的軽い
インフルエンザや普通のかぜに似た症状で、数日以内に自然に治ることが多く、肺炎までは進行しません。ただし、高齢者や持病のある方では、ほかの病気との見分けがつきにくいこともあります。
⚫︎受診の目安
次のような場合は、早めに医療機関の受診を考えてください。
- 38℃以上の高熱が続き、強いだるさや頭痛がある
- 息苦しさ、胸の痛み、咳がだんだん強くなっている
- 下痢や吐き気が続き、水分がとれない
- 意識がはっきりしない、会話がおかしい、ふらつきが強い
- 温泉・スーパー銭湯・24時間風呂・加湿器・ジャグジーなどを利用した数日後から体調が悪い
救急受診・入院を急いだほうがよい目安
- 高熱とともに、呼吸が苦しくて会話が続けられない
- 胸の痛みが強い、急にぐったりして呼びかけに反応しにくい
- 血圧が低い、立てないほどのめまい、尿が極端に少ない
`→ 内科・呼吸器内科・救急外来などで早めに相談してください。温泉や循環式浴槽、加湿器などの使用歴があれば、必ず医師に伝えましょう。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
診断
症状や経過、温泉・風呂・加湿器などの使用歴からレジオネラ症を疑い、胸部レントゲンや採血、レジオネラ菌特有の検査(尿中抗原検査、遺伝子検査、培養など)を組み合わせて診断します。
治療
治療の柱は「早期の抗菌薬治療」と「呼吸状態・全身状態のサポート」です。レジオネラは細胞の中で増えるタイプの細菌のため、細胞内にしっかり入り込める抗菌薬(マクロライド系・フルオロキノロン系など)を選んで投与します。
ポンティアック熱は自然に軽快することが多く、重症化しにくい病型ですが、診断がつくまでは肺炎型との区別が難しいため、症状や全身状態に応じて入院や抗菌薬治療を検討します。
⚫︎レジオネラ症の診断
1)問診・診察
発熱・咳・呼吸困難・下痢・意識状態などの症状を詳しく聞きます。
- 直近2週間ほどの温泉・公衆浴場・24時間風呂・循環式浴槽・加湿器・噴水・ジャグジーなどの使用歴を確認します。
- 高齢、喫煙、持病、免疫抑制薬の使用など、重症化リスクの有無を確認します。
2)血液検査
- 炎症反応(白血球数、CRP)、電解質(ナトリウムなど)、肝機能・腎機能を評価します。
- レジオネラ肺炎では、低ナトリウム血症や肝機能異常がみられることがあり、診断のヒントになります。
3)画像検査
胸部レントゲンやCTで、肺炎の有無や広がりを確認します。一般の肺炎と区別がつきにくいことも多く、画像だけで診断を確定することは困難です。
4)レジオネラ特異的な検査
- 尿中抗原検査:尿に含まれるレジオネラ菌の成分を調べる検査で、結果が早く出るため、診断に広く利用されています。
- 遺伝子検査(PCR):痰や気管支洗浄液などから、レジオネラ菌の遺伝子を検出します。
培養検査:特殊な培地を使って菌を増やし、種類や性質を詳しく調べます。感染源調査にも重要です。
⚫︎レジオネラ症の治療
A. 初期対応(まずやること/基本方針)
- 酸素投与:息苦しさや低酸素状態があれば、酸素マスクなどで酸素を補います。
- 点滴:脱水や電解質異常を整えるため、点滴で水分や電解質を補正します。
- 発熱・痛みのコントロール:アセトアミノフェンなどでつらい症状を和らげます(持病によって使える薬は異なります)。
B. 抗菌薬治療
- レジオネラ肺炎の治療では、マクロライド系(アジスロマイシンなど)やフルオロキノロン系(レボフロキサシンなど)が第一選択とされています。
- 軽症例では内服薬で治療できることもありますが、多くは入院のうえ点滴治療が行われます。
- 重症例や免疫不全のある患者さんでは、治療期間が2〜3週間に延びることがあります。
C. ポンティアック熱の治療
- 多くは自然に改善するため、安静と水分・栄養補給などの対症療法が中心です。
- 高齢者や持病のある方では、ほかの肺炎や重い感染症との区別が必要なため、医師の判断で検査や入院を行うことがあります
D. 重症例・集中治療が必要な場合
重い呼吸不全、多臓器不全、意識障害などを伴う場合は、集中治療室(ICU)での管理が必要になります。人工呼吸器管理や昇圧剤の使用など、集中的な治療が行われます。
⚫︎レジオネラ症の予後
適切な抗菌薬治療を早期に開始できれば、多くの方は回復しますが、レジオネラ肺炎は一般的な肺炎より重症化しやすく、致死率も高いとされています。
- 高齢者・喫煙者・大量飲酒者・慢性肺疾患や腎疾患のある方、免疫が低下している方では、とくに注意が必要です。
- ポンティアック熱は数日〜1週間程度で自然に軽快することが多く、後遺症はほとんどありません。
重症のレジオネラ肺炎では、呼吸不全や多臓器不全が長引き、その後もしばらく息切れや体力低下が続くことがあります。退院後も、主治医の指示に従い、定期的な受診やリハビリテーションが大切です。
⚫︎レジオネラ症の予防
1)家庭での予防
加湿器の管理
水を毎日入れ替え、タンクやフィルターをこまめに洗浄・乾燥させましょう。超音波式加湿器で水を加熱せずに霧状にして出すタイプは、とくに清掃が重要です。
家庭用風呂・循環式浴槽の掃除
追い焚き機能付き風呂や24時間風呂を使う場合は、浴槽・配管・フィルターなどに「ぬめり(バイオフィルム)」がたまらないよう、取扱説明書に従って定期的に掃除・消毒を行いましょう。
シャワーヘッド・蛇口の掃除
長期間使っていないシャワーや蛇口は、最初にしばらく水を流してから使うなど、水回りを清潔に保つことが大切です。
2)施設・事業所での予防
- 温泉・公衆浴場・ホテルの大浴場などでは、循環ろ過装置・配管・貯湯槽などの衛生管理が重要です。定期的な清掃・消毒・水質検査により、レジオネラ属菌の増殖を防ぎます。
- ビルの冷却塔や噴水設備なども、適切な維持管理が求められています。
3)個人レベルでできる工夫
- 高齢者や基礎疾患のある方は、施設の衛生管理がしっかりしている温泉・入浴施設を選ぶ
- 体調がすぐれないときは長時間の入浴やサウナを控え、無理をしない
- 喫煙を控え、肥満・糖尿病など生活習慣病の管理を行うことで、重症化リスクを減らす
⚫︎レジオネラ症に関連する病気や合併症
重症肺炎・急性呼吸促迫症候群(ARDS)
肺全体に強い炎症が広がり、酸素を取り込みにくくなる状態です。人工呼吸器による管理が必要になることがあります。
多臓器不全
重症のレジオネラ肺炎では、腎臓・肝臓・心臓・中枢神経など複数の臓器が同時に悪くなる多臓器不全に進行することがあり、致命的になる場合もあります。
ナトリウム低下・肝機能障害・腎障害
レジオネラ肺炎では、血中ナトリウム値の低下(低ナトリウム血症)、肝機能異常、腎機能障害などが合併しやすいことが知られています。
心筋炎・神経合併症
まれに心筋炎(心臓の筋肉の炎症)、意識障害やけいれんなどの神経合併症を起こすことがあります。
⚫︎まとめ
レジオネラ症は、レジオネラ属菌に汚染された湿潤環境から発生する微細な飛沫を吸入することで発症する感染症です。臨床病型は、致死率が高い重症肺炎型と、予後良好なポンティアック熱(一過性のインフルエンザ様症状)に大別されますが、高齢者や免疫機能が低下している方においては重篤化の懸念があります。
持続する高熱や呼吸器症状のほか、消化器症状や神経症状を伴う場合は本症を疑い、温泉施設や加湿器の利用歴を添えて迅速に医療機関を受診してください。予防には、人工水系施設の適切な清掃・消毒と、循環式浴槽や加湿器の衛生管理指針の遵守が極めて有効です。個々の体調やリスクに合わせた適切な対応を、医師のアドバイスのもと進めていくことが重要です。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- 厚生労働省 健康・医療 レジオネラ対策のページ
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000124204.html) - 国立感染症研究所 レジオネラ症
(https://id-info.jihs.go.jp/diseases/ra/legionella/)
■ この記事を監修した医師
赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2026/03/06
- 更新日:2026/03/06
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