百日咳ひゃくにちぜき

百日咳は百日咳菌による急性の気道感染症で、けいれんするような発作的な咳が長く続くことが特徴です。乳児では無呼吸や肺炎、脳症など重症化することがあり注意が必要です。ワクチンである程度予防できますが、免疫は年数とともに弱まるため、子どもだけでなく大人でも長引く咳の原因になります。

⚫︎百日咳とは?

百日咳は、百日咳菌(ボルデテラ・パータシス)という細菌がのどや気道に感染して起こる病気です。強い発作的な咳が何週間も続き、全経過が2〜3か月に及ぶことがあり、そのため「百日咳」と呼ばれます。

小児に多い病気ですが、ワクチン接種から時間がたって免疫が弱くなった思春期〜大人、高齢者でもかかります。特に生後6か月未満の赤ちゃんでは、典型的な「コンコンコン…ヒュー」という咳ではなく、息が止まる無呼吸発作やチアノーゼ(顔色が紫になる)で始まり、命に関わることもあるため、早期の受診がとても大切です。
潜伏期間(菌が体に入ってから症状が出るまで)は通常7〜10日(長いと3週間程度)で、初めはかぜに似た軽い症状から始まり、次第に特有の咳へと変わっていきます。

⚫︎百日咳の原因

原因となる病原体

百日咳菌(Bordetella pertussis)という細菌が主な原因です。近い仲間のパラ百日咳菌も軽い百日咳様の症状を引き起こすことがありますが、日本で感染症法の届出対象になっているのは百日咳菌によるものです。

感染経路

主な感染経路は、次の2つです。

  • 飛沫感染:咳やくしゃみのしぶきの中に含まれる菌を吸い込んでうつります。
  • 接触感染:咳で汚れた手すりや机、手などを介して、口や鼻を触ることでうつることがあります。

感染力が強く、学校や職場、家庭内で集団感染を起こしやすい病気です。

  • かかりやすい人
  • ワクチン未接種の新生児・乳児
  • 定期接種から年数がたって免疫が弱くなった小中学生〜大人
  • 妊婦や基礎疾患のある方、高齢者

大人では「長引くかぜ」として見過ごされることも多く、その大人から赤ちゃんへうつって重症化するケースが問題になっています。

⚫︎百日咳の症状は?

百日咳の経過は、一般的に次の3つの時期に分けられます。

1)カタル期(約1〜2週間)

  • 鼻水、くしゃみ、軽い咳、微熱など、普通のかぜにそっくりな症状から始まります。
  • この時期が最も周りへの感染力が強いとされています。
  • まだ百日咳らしい特徴が乏しいため、見逃されやすい時期です。

2)痙咳期(けいがいき:約2〜6週間)

  • 次第に「コンコンコンコンコン…」と連続して咳き込む、発作的な強い咳になります。
  • 咳き込みのあとに、息を吸い込むとき「ヒュー」「ヒュー」という笛を吹くような音(吸気性笛声)が出ることがあります。
  • 咳の発作のあとに、吐いてしまうこと(嘔吐)もよくあります。
  • 夜間に咳発作が増え、眠れないほど続くことがあります。
  • 乳児では典型的な咳を示さず、いきなり無呼吸発作やチアノーゼ、けいれんを起こすこともあり、とても危険です。

3)回復期(約2〜3週間〜)

  • 徐々に発作の回数や強さが減っていきます。
  • ただし、軽い咳は数週間〜数か月続くことがあり、「いつまでも咳だけ残る」印象の病気です。

大人やワクチン接種歴のある方では、典型的な「ヒュー」という音が出ないことも多く、単に「3週間以上続くしつこい咳」として現れる場合があります。このため、本人も周囲も百日咳と気づかずに生活を続け、知らないうちに乳児へ感染させてしまうことがあります。

⚫︎受診の目安

次のような場合は、早めに医療機関の受診を検討してください。

  • 2週間以上、咳だけが続いている(特に夜や発作的な咳)
  • 咳き込みのあと、「ヒュー」という音がする、顔が真っ赤になる、吐いてしまう
  • 乳児で、顔色が紫になる、息が止まるように見える、授乳がうまくできない
  • 高齢者や心臓・肺の病気がある方で、咳が長引き、息苦しさが強い
  • 家族や職場・学校で百日咳と診断された人がいて、自分も咳が出ている

救急受診・入院を急いだほうがよい目安

  • 赤ちゃんがぐったりしている、ミルクをほとんど飲めない
  • 無呼吸発作、真っ青になるようなチアノーゼ、けいれんがある
  • 呼吸が速く、肩で息をしている、ゼーゼーして苦しそう

→ 小児は小児科、大人は内科・呼吸器内科を受診し、必要に応じて入院や専門的な治療が検討されます。

⚫︎診断方法と治療方法(全体像)

診断

病歴(いつからどんな咳か、ワクチン歴、周囲の患者)と診察所見から百日咳を疑い、必要に応じて検査(鼻咽頭ぬぐい液のPCR・培養、血液検査、抗体検査など)を組み合わせて診断します。特にカタル期〜痙咳期の早い段階で検査を行うと、原因菌を見つけやすくなります。

治療

治療の基本は、マクロライド系と呼ばれる抗菌薬(クラリスロマイシン、アジスロマイシン、エリスロマイシンなど)を適切な期間内服し、周囲への感染拡大を防ぐことです。カタル期や痙咳期の早い時期に抗菌薬を開始すると、咳の期間は完全には短くならないこともありますが、排菌期間(ほかの人にうつす期間)を短くできます。

症状が重い乳児や基礎疾患のある方では、呼吸状態や栄養状態を管理するために入院が必要になることがあります。酸素投与や点滴、けいれん予防など、全身状態に応じた治療が行われます。

⚫︎百日咳の診断

1)問診・診察

  • 2週間以上続く咳、特に夜間の発作的な咳や「ヒュー」という音の有無、嘔吐の有無を確認します。
  • 周囲に百日咳患者がいないか、ワクチン接種状況、年齢(乳児かどうか)なども重要な手がかりになります。

2)検体検査(鼻・のどの検査)

  • 鼻咽頭ぬぐい液から百日咳菌を培養したり、PCR検査で菌の遺伝子を調べたりします。
  • 発症後早い時期(おおよそ2〜3週間以内)ほど陽性になりやすいとされています。

3)血液検査

  • 白血球数が増え、その多くがリンパ球というタイプである(リンパ球優位の白血球増多)所見が百日咳でよく見られます。
  • 炎症反応(CRPなど)はそれほど高くならないこともあり、他の細菌感染と少し性格が違う点です。

4)抗体検査

発症から時間がたった成人などでは、血液中の百日咳菌に対する抗体値を測定して診断の参考にすることがあります。

5)画像検査

肺炎などの合併症を疑う場合には、胸部X線検査を行います。

⚫︎百日咳の治療

A. 初期対応(まずやること/基本方針)

安静と十分な水分・栄養

乳児では授乳回数を増やして少量ずつ与え、大人も一度にたくさん飲まず、こまめな水分補給を心がけます。

環境調整

咳発作は、泣く・笑う・運動する・刺激の強いにおいなどで誘発されやすいため、静かで落ち着いた環境を整えます。

解熱鎮痛薬

つらい発熱や頭痛にはアセトアミノフェンなどを使うことがありますが、年齢や持病により使える薬が異なるため、自己判断ではなく医師・薬剤師に相談してください。

B. 抗菌薬による治療

  • マクロライド系抗菌薬が第一選択とされています。
  • 発症から3週間以内に開始すると、特に周囲への感染力を下げる効果が期待できます。
  • 近年、マクロライドが効きにくい耐性菌も一部で報告されており、その場合は他の種類の抗菌薬を検討します。

C. 入院治療が必要な場合

  • 生後3か月未満の乳児
  • 無呼吸発作、チアノーゼ、けいれんなどを認める場合
  • 肺炎や脳症などの合併症が疑われる場合
  • 家での看病が難しい場合

このようなケースでは、酸素や点滴、場合によっては集中治療室での管理が必要になることがあります。

D. 周囲への対応(家族・集団生活)

  • 同居家族や濃厚接触者(同じクラスの児童など)に対して、予防的に抗菌薬を内服することが勧められる場合があります。特に乳児や妊婦が同居している場合は重要です。
  • 学校保健安全法上、百日咳は「第2種学校感染症」に分類されており、特有の咳がなくなり、または適切な抗菌薬治療を5日間行うまでは出席停止とされます。

⚫︎百日咳の予後

適切な治療と経過観察により、多くの方は後遺症なく回復しますが、咳そのものは数週間以上続くことが少なくありません。乳児、とくに生後6か月未満では、無呼吸、肺炎、脳症などにより重症化し、まれに死亡することもあります。
強い咳が続くことで、肋骨骨折や鼠径ヘルニア、失禁などを起こすことがあります。
一度かかったあともしばらく免疫はつきますが、生涯続くものではなく、年数とともに再感染の可能性が出てきます。

⚫︎百日咳の予防

ワクチン接種

  • 日本では、ジフテリア・百日咳・破傷風・不活化ポリオの四種混合ワクチン(DPT-IPV)が、生後3か月から定期接種として行われています。
  • 決められたスケジュールで3回+追加接種を受けることで、乳幼児期の重症化を大幅に減らすことができます。
  • ただし、ワクチンによる免疫は5〜10年ほどで弱まっていくため、小中学生や大人でも百日咳にかかることがあります。近年は、海外を中心に思春期・成人への追加接種が推奨されています。

日常生活での感染対策

  • 咳やくしゃみが出るときはマスクを着用し、ティッシュや袖で口と鼻を覆う「咳エチケット」を心がけます。
  • 石けんでの手洗いをこまめに行います。
  • 長引く咳がある人は、乳児に近づきすぎない・抱っこを控えるなどの配慮が必要です。

家庭・学校でのポイント

  • 家族の中に百日咳と診断された人がいる場合、他の家族も咳や発熱などに注意し、早めに受診します。
  • 学校や園では、長引く咳のある児童・生徒に対して、受診の勧奨や出席停止の判断が重要になります。

⚫︎百日咳に関連する病気や合併症

肺炎

百日咳菌自身や、他の細菌・ウイルスの二次感染により肺炎を起こすことがあります。乳児に多く、入院が必要になることも少なくありません。

無呼吸発作・チアノーゼ

特に乳児では、激しい咳がないのに突然呼吸が止まったり、顔が真っ青になることがあります。非常に危険なサインです。

脳症・けいれん

低酸素(酸素不足)や炎症により脳症やけいれんを起こすことがあり、後遺症が残ることもあります。

中耳炎、無気肺など

強い咳や感染の影響で、中耳炎や無気肺(肺の一部がつぶれてしまう状態)を合併することがあります。

激しい咳に伴う合併症

肋骨骨折、気胸(肺に穴があく)、ヘルニア(いきみで臓器が飛び出す)などが起こることがあります。

⚫︎まとめ

百日咳は、その名の通り激しい咳の発作が長く続く感染症です。特に抵抗力の弱い赤ちゃんが感染すると、命に関わるほど重症化することがあります。
大人の場合は「なかなか治らない風邪だな」と見過ごされてしまうことも多く、知らないうちに赤ちゃんへうつしてしまうことが大きな問題となっています。

大切なのは、ワクチン接種で免疫をつけておくことと、長引く咳があるときは早めに受診することです。「いつもと違う咳が続くな」と感じたら、自分自身と周りの大切な人を守るために、我慢せず医療機関で相談しましょう。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2026/03/05
  • 更新日:2026/03/05

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