ジフテリアじふてりあ
ジフテリアは、コリネバクテリウム・ジフテリアエという細菌がのどや鼻、皮膚に感染して起こる病気です。のどに灰色の膜(偽膜)ができて窒息したり、出す毒素で心臓や神経が障害され、命に関わることもありますが、ワクチン接種で多くは予防できます。
目次
⚫︎ジフテリアとは?
ジフテリアは、主に「コリネバクテリウム・ジフテリアエ」という細菌が、のどや鼻、まれに皮膚に感染して起こる病気です。この細菌の一部は「毒素(トキシン)」を作り、のどの粘膜を壊して灰白色の厚い膜(偽膜)をつくります。
偽膜が気道をふさいで息がしにくくなったり、吸収された毒素が心臓(心筋炎)や末梢神経(まひやしびれ)を傷めることで、重症化・死亡の原因になります。ワクチンが普及した国ではまれになりましたが、世界的には今も流行があり、輸入感染症として注意が必要な病気です。
⚫︎ジフテリアの原因
原因となるのは、毒素を産生するコリネバクテリウム・ジフテリアエなどの細菌です。感染している人の咳やくしゃみのしぶき(飛沫)を吸い込むことで、のどや鼻の粘膜に付着して増えます。密閉された空間や人が密集する場所では、周囲に広がりやすくなります。また、皮膚にできたジフテリア病変からの接触で、別の人の皮膚にうつることもあります。
ワクチン接種が不十分な子どもや大人、ワクチン歴が不明な人は重症化しやすいとされます。日本では定期接種(DPT/DPT-IPVなど)により発症はまれですが、海外での流行地域への渡航歴や、ワクチン未接種・接種から長期間たっている場合には注意が必要です。
⚫︎ジフテリアの症状は?
のど・鼻の症状
- のどの痛み、軽い〜高い発熱、強いだるさ
- 扁桃やのどにできる厚い灰白色の膜(偽膜)
- 鼻血まじりの鼻水、鼻声になることもあります。
PLL
- 首のリンパ節が腫れ、「太い首(ブルネック)」のように見えることがあります。
- 飲み込みにくさ、声がかすれる、息苦しさなどが出てきた場合は要注意です。
皮膚ジフテリア
すねや腕などに、かさぶたを伴う浅い潰瘍やただれが長く続きます。
毒素による合併症
数日〜数週間してから、動悸・胸の痛み・息切れ(心筋炎)や、手足のしびれ・まひ(末梢神経障害)などが出ることがあります。
⚫︎受診の目安
次のような場合は、早めに医療機関の受診を検討してください。
- のどの強い痛みや発熱が数日続き、飲み込みにくさがある
- のどの奥に灰色〜白っぽい膜のようなものが見える
- 首が腫れて太くなったように見える、首のリンパ節が痛い
- 息苦しさ、ヒューヒュー・ゼーゼーする呼吸、声がかすれる
- 原因不明の皮膚のただれや潰瘍が長く続いている
以下の症状があれば、救急受診が必要な緊急のサインです。
- 急な強い息苦しさ、唇や顔色が紫っぽい
- 意識がもうろうとしている、呼びかけに反応しにくい
- 脈が速い、胸の痛み、強い動悸がある
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
診断の考え方
- のどの強い痛み、偽膜、首の腫れなどの症状からジフテリアを疑います。
- 疑った時点で、確定を待たずに治療を始めることが重要です。
検査
- の病変から綿棒で検体を採取し、細菌培養や毒素産生の有無を調べます。
- 血液検査で炎症の程度や心臓・腎臓の状態を確認します。
治療の柱
ジフテリア抗毒素(DAT)をできるだけ早く投与して毒素の働きを中和します。
ペニシリン系やエリスロマイシンなどの抗菌薬を投与し、菌そのものを減らします。
気道確保や心臓・神経の合併症に対する全身管理も重要です。
⚫︎ジフテリアの診断
1)問診・診察
- いつからどのような症状があるか(のどの痛み、発熱、息苦しさ、皮膚の潰瘍など)
- ワクチン歴(DPT/DPT-IPVなど)や、最近の海外渡航歴、患者との接触歴を確認します。
- のどの中を観察し、灰白色の偽膜の有無や、首の腫れ・リンパ節の腫れを確認します。
2)検体検査
- `咽頭ぬぐい液や鼻汁、皮膚病変から検体を採取し、細菌培養・毒素産生の検査を行います。
- ただし、結果を待たずに臨床的にジフテリアを疑えば抗毒素と抗菌薬を開始します。
3)血液・画像検査
- 血液検査で炎症反応、心筋酵素、腎機能を確認します。
- 心電図や心エコーで心筋炎の有無、必要に応じて胸部レントゲンで肺炎や心拡大を評価します。
⚫︎ジフテリアの治療
A. 抗毒素療法
- ジフテリア抗毒素(DAT)は、毒素を中和するための薬(血清)で、発症早期ほど効果が高いとされます。
- アレルギー反応のリスクがあるため、投与前に少量でテストし、慎重に点滴投与します。
B. 抗菌薬治療
- ペニシリン系またはエリスロマイシンなどの抗菌薬を10〜14日間投与し、菌を排除します。
- 治療後に再度検体検査を行い、保菌状態が残っていないか確認することもあります。
C. 支持療法・合併症管理
- 重症例では集中治療室で、酸素、輸液、必要に応じて気管内挿管や人工呼吸管理を行います。
- 心筋炎や不整脈、末梢神経障害に対して、循環器内科・神経内科と連携して治療します。
⚫︎ジフテリアの予後
ワクチンと適切な治療により、先進国ではジフテリアによる死亡は大きく減っていますが、発症した場合の致死率は全体で5〜10%程度、乳幼児や高齢者、治療が遅れた場合ではさらに高いとされています。のどの偽膜による窒息、心筋炎による不整脈や心不全、末梢神経障害による嚥下障害や四肢のまひなどが主な重症合併症です。
これらは、初期ののどの症状が落ち着いてきた後に出現することもあるため、発症から数週間は慎重な経過観察が必要です。ワクチン未接種の人が多い地域や、紛争・災害時など医療体制が不安定な状況では、集団発生により死亡率が高くなることが報告されています。
⚫︎ジフテリアの予防
最も重要なのは「ワクチン(ジフテリアトキソイド)」による予防です。日本では、乳児期に四種混合ワクチン(DPT-IPV)として定期接種が行われ、その後に追加接種や二種混合ワクチン(DT)などで免疫を維持します。成人になってからも、前回の接種から10年以上たっている場合は、必要に応じて追加接種を検討します。
また、ジフテリアが流行している地域への渡航前には、ワクチン歴の確認とブースター接種が推奨されることがあります。患者さんと濃厚接触した家族や医療従事者には、予防的な抗菌薬やワクチン接種が勧められる場合があります。基本的な手洗い、咳エチケット、体調不良時の早めの受診も、周囲への広がりを防ぐうえで大切です。
⚫︎ジフテリアに関連する病気や合併症
主な合併症
- 上気道閉塞(偽膜や腫れによる窒息)
- 心筋炎、不整脈、心不全
- 末梢神経障害(嚥下障害、四肢の筋力低下・まひ)
- 腎障害
関連する病型
- 咽頭ジフテリア、喉頭ジフテリア、鼻ジフテリア
- 皮膚ジフテリア(慢性潰瘍性病変)
鑑別が必要な病気
- 溶連菌咽頭炎、伝染性単核症など、のどが赤く腫れる病気
- 他の偽膜性咽頭炎(薬剤性や真菌感染など)
いずれも、早期診断・早期治療により重症化を防ぎやすくなります。
⚫︎まとめ
ジフテリアは、のどや鼻、皮膚などに感染する細菌の病気です。一番の特徴は、のどの奥に「偽膜(ぎまく)」という厚い膜ができること。この菌が出す毒素が、心臓や神経に深刻な影響を与えることもあるため、油断できない病気です。
「のどが激しく痛む」「飲み込みにくい」「首が腫れて息苦しい」といった症状がある場合は、早めの受診が大切です。まずは母子手帳などで予防接種の記録を確認し、必要に応じて追加の接種を検討しましょう。それが、自分と大切な周囲の人を守ることにつながります。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「Diphtheria」
(https://www.msdmanuals.com/professional/infectious-diseases/gram-positive-bacilli/diphtheria) - MSDマニュアル家庭版「ジフテリア」
(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/16-)
■ この記事を監修した医師
赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2026/03/03
- 更新日:2026/03/03
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