シェーグレン症候群(SS)しぇーぐれんしょうこうぐん
シェーグレン症候群(SS)は、涙腺や唾液腺が自分の免疫に攻撃され、目や口が強く乾く自己免疫疾患です。中年女性に多く、関節痛や全身のだるさ、肺・腎臓・神経など全身の合併症を伴うこともありますが、早期診断と継続した治療により、症状を和らげながら生活していくことが可能です。
目次
⚫︎シェーグレン症候群(SS)とは
シェーグレン症候群は、涙腺(なみだをつくる場所)や唾液腺(唾液をつくる場所)に、自分の免疫細胞が入り込んで炎症を起こし、「目の乾き(ドライアイ)」と「口の乾き(ドライマウス)」を中心とした症状が出る病気です。
乾燥症状だけでなく、関節痛・皮疹・肺や腎臓・神経の障害など、全身にさまざまな症状が出ることもあります。膠原病の一つとして扱われ、同じ膠原病(関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど)と一緒にみられる「二次性シェーグレン症候群」と、それらを伴わない「一次性シェーグレン症候群」に分けられます。
中年の女性に多く、男女比はおおよそ1:10〜1:14とされ、日本では潜在的な患者さんを含めると数十万人規模と推定されています。
⚫︎シェーグレン症候群(SS)の原因
- 自己免疫の異常
本来はウイルスや細菌を攻撃する免疫が、自分の涙腺や唾液腺を「異物」と間違えて攻撃してしまいます。その結果、腺にリンパ球という白血球が集まり、腺が傷んで涙や唾液が出にくくなります。 - 遺伝的な素因
家族性に起こることは多くありませんが、「自己免疫が起こりやすい体質」が背景にあると考えられています。ただし、「必ず遺伝する病気」というわけではありません。 - 環境要因
ウイルス感染、ホルモンの変化(特に女性ホルモン)、ストレス、喫煙など、さまざまな外的要因がきっかけとなり、免疫バランスが崩れることが発症に関与すると考えられています。 - 一次性と二次性
単独で起きる一次性シェーグレン症候群と、関節リウマチなど他の膠原病に重なって出る二次性シェーグレン症候群があり、後者では関節症状など他の病気の特徴が強く出ることもあります。
⚫︎シェーグレン症候群(SS)の症状は?
典型的には、「目の乾き」と「口の乾き」が中心ですが、それ以外の症状も少なくありません。
- 目の乾き(ドライアイ)
目がゴロゴロする・しみる・かすむ・目が疲れやすい・コンタクトレンズが痛いなどの症状が出ます。ひどい場合は角膜(黒目)に傷がつき、視力低下の原因になることもあります。 - 口の乾き(ドライマウス)
唾液が減ることで、口の中がネバネバする・パンなどパサつくものが食べにくい・しゃべると口が渇いて話しづらい、といった困りごとが出てきます。虫歯や歯周病・口内炎が増え、夜間に何度も水を飲みに起きる方もいます。 - 唾液腺・涙腺の腫れ
耳下腺(耳の前〜下のあたり)や顎の下の腺が、繰り返し腫れて痛むことがあります。 - 全身症状
関節痛・関節の腫れ・筋肉痛・全身のだるさ・微熱・皮膚の乾燥・レイノー現象(指先の血のめぐりが悪くなり白〜紫〜赤に変色する)など、全身に広がる症状がみられることもあります。
乾燥症状がはっきり出るまでに時間がかかることもあり、「なんとなくだるい」「関節が痛い」など、あいまいな症状から始まることもあります。
⚫︎受診の目安
次のような症状が続く場合は、一度医療機関での相談をおすすめします。
- 3か月以上続く目の乾き・目のゴロゴロ感・かすみ目
- 水やお茶がないと食事がしづらいほどの口の乾き
- 虫歯や口内炎が急に増えた・夜間何度も水を飲みに起きる
- 耳の前や顎の下が繰り返し腫れる・痛む
- 原因不明の関節痛・だるさ・微熱が長く続く
- 息切れ・乾いた咳・手足のしびれなどが同時にみられる
最初は眼科や歯科、耳鼻咽喉科を受診される方も多いですが、シェーグレン症候群の診断や全身評価にはリウマチ膠原病内科などの専門科が関わることが多くなります。気になる症状が重なっている場合は、「シェーグレン症候群が心配」と一言添えて受診すると診察がスムーズです。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
診断は、「症状」「涙・唾液の検査」「血液検査」「必要に応じて組織検査」を組み合わせて行います。
治療は、大きく「乾燥症状に対するケア」と「全身の炎症や合併症に対する治療」に分かれます。目・口の乾燥には点眼や口腔ケア製品などを使い、全身症状が強い場合には免疫の働きをおさえる薬(ステロイド、免疫抑制薬、生物学的製剤など)を用います。
⚫︎シェーグレン症候群(SS)の診断
- 問診・診察
目や口の乾きの程度や期間・飲み込みにくさ・唾液腺の腫れ・関節痛・だるさ・レイノー現象の有無などを詳しく確認します。
目の表面や口の中・関節・皮膚・リンパ節などを診察して、乾燥や炎症の状態を評価します。 - 涙の検査(眼科)
シルマーテスト:細い紙をまぶたの下にはさんで、数分間でどれだけ涙がしみ込むかを測り、涙の量を評価します。
フルオレセインなどの色素を使って、角膜や結膜の傷つき具合を調べることもあります。 - 唾液の検査・画像検査
一定時間に出る唾液の量を測る検査(ガムテストなど)を行います。
唾液腺造影や超音波検査で、耳下腺や顎下腺の形や炎症の有無を確認します。 - 血液検査
自己抗体:抗SS-A(Ro)抗体・抗SS-B(La)抗体・抗核抗体などを調べます。
炎症反応や免疫グロブリン(IgG)の値・血球の数などを評価し、病気の活動性や合併症を確認します。 - 唾液腺の組織検査(口唇小唾液腺生検)
下唇の内側を小さく切開し、小さな唾液腺を取り出して顕微鏡で調べる検査です。リンパ球がまとまって入り込んでいるかどうかを確認します。必ず必要というわけではありませんが、診断や病気の程度を判断するうえで重要な情報が得られます。
これらの結果を総合して、厚生労働省の診断基準などに沿って、シェーグレン症候群かどうかを判断します。
⚫︎シェーグレン症候群(SS)の治療
A. 乾燥症状に対する治療・ケア
- 目の乾燥(ドライアイ)
人工涙液やヒアルロン酸点眼液でうるおいを補い、必要に応じて涙の分泌を促す点眼薬を使います。涙の出口(涙点)を小さなプラグでふさぐ治療を行うこともあり、重症例では自分の血清を使った点眼(自己血清点眼)を行う場合もあります。 - 口の乾燥(ドライマウス)
唾液を増やす薬(ムスカリン作動薬など)や、人工唾液・保湿ジェルなどを用います。こまめな水分摂取・よく噛む習慣・唾液腺マッサージも有効です。虫歯・歯周病予防のため、定期的な歯科受診も大切です。
B. 全身症状・合併症に対する治療
- 関節痛や全身の炎症
必要に応じて消炎鎮痛薬・少量のステロイド・免疫抑制薬(メトトレキサートなど)を用いることがあります。 - 臓器の障害(肺・腎臓・神経・血液など)
ステロイドや免疫抑制薬を組み合わせた治療を行い、重い症例では生物学的製剤などの新しい薬を検討する場合もあります。治療は病状に応じて個別に決めていきます。
C. 生活習慣の工夫
- 禁煙:喫煙は口・目の乾燥を悪化させ、血管への負担も大きくなります。
- 乾燥対策:加湿器の使用・エアコンの風を直接当てない・パソコン作業の合間にまばたきを意識的に増やすなど。
- 休養とストレスケア:疲労やストレスは症状の悪化につながることがあり、十分な睡眠と休養が大切です。
⚫︎シェーグレン症候群(SS)の予後
シェーグレン症候群は慢性的に続く病気ですが、適切な治療とセルフケアにより、多くの方は日常生活や仕事を続けながら付き合っていくことが可能です。
ただし、肺・腎臓・神経など全身の臓器を巻き込むタイプや、悪性リンパ腫を合併するタイプでは、慎重な経過観察が必要です。特に、急に体重が減る、リンパ節が固く腫れる、長く続く発熱などが出た場合は、早めの受診が重要です。
病気を完全に「治す」というより、「悪化を防ぎながら長く安定した状態を保つ」ことを目標に、定期的な通院・検査と生活の工夫を続けていきます。
⚫︎シェーグレン症候群(SS)の予防
発症そのものを確実に防ぐ方法は分かっていませんが、次のような工夫が、悪化の予防や合併症のリスク低減につながります。
- 禁煙:乾燥症状や血管への負担を減らすため、とても重要です。
- 口腔ケアの徹底:フッ素入り歯磨き剤の使用、定期歯科受診で虫歯・歯周病を予防します。
- 目の環境整備:乾燥しやすい職場では加湿や休憩、パソコン作業中は意識的にまばたきを増やすなどの工夫をします。
- 感染予防:体調管理・手洗い・必要なワクチン接種などで全身状態を保つことも大切です。
⚫︎シェーグレン症候群(SS)に関連する病気や合併症
- 関節リウマチ・全身性エリテマトーデス・全身性強皮症・多発性筋炎/皮膚筋炎・混合性結合組織病など、他の自己免疫疾患を合併することがあります(二次性シェーグレン症候群)
- ドライアイ/ドライマウス関連のトラブル
- 角膜びらん・角膜潰瘍・視力障害・虫歯・歯周病・口臭・嚥下障害(飲み込みにくさ)など。
- 臓器障害:間質性肺炎・間質性腎炎・肝障害・末梢神経障害・脊髄炎など、多彩な合併症が報告されています。
- 悪性リンパ腫:長期経過のなかで、一般の方よりも悪性リンパ腫を発症しやすいことが知られており、リンパ節腫大や原因不明の発熱・体重減少には注意が必要です。
⚫︎受診の目安(まとめ)
シェーグレン症候群(SS)は、目と口の強い乾燥を特徴としながら、全身にもさまざまな影響を及ぼす自己免疫疾患です。乾燥症状は「年齢のせい」と思われがちですが、長く続く場合や全身症状を伴う場合は、専門的な評価が必要になります。
治療は、乾燥に対するケアと、全身の炎症・合併症のコントロールを組み合わせて進めていきます。
主治医と相談しながら定期通院と生活の工夫を続けることで、病気と付き合いながら自分らしい生活を目指すことができます。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- 病気がみえる vol.6 免疫・膠原病・感染症(メディックメディア)
(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39860574/) - 難病情報センター「シェーグレン症候群(指定難病53)」
(https://www.nanbyou.or.jp/entry/267?utm_source=chatgpt.com)
■ この記事を監修した医師
赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2026/03/09
- 更新日:2026/03/09
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