腎盂腎炎じんうじんえん

腎盂腎炎は、腎臓の腎盂と腎実質に細菌感染が起こる尿路感染症の一種です。高熱や腰痛、排尿異常などの症状を伴い、進行すると腎機能障害や敗血症を引き起こすこともあります。早期の診断と抗菌薬による治療が重要です。

腎盂腎炎とは?

腎盂腎炎は、尿路感染症のひとつで、膀胱や尿道から逆行性に細菌が腎臓へ侵入し、腎盂および腎実質に炎症を引き起こす病気です。急性と慢性に分類され、急性腎盂腎炎は突然の発熱や腰痛を伴い、慢性腎盂腎炎は繰り返す感染により腎臓の構造が障害され、長期的に腎機能が低下していきます。

女性に多く見られるのは、尿道が短く、細菌が膀胱から腎臓まで達しやすいためです。また、高齢者、糖尿病患者、妊娠中の女性では重症化のリスクが高くなります。

原因菌としては大腸菌が最も多く、医療機関における尿検査や培養検査で診断が行われます。早期の抗菌薬投与により多くの場合は治癒可能ですが、放置すると腎機能障害や敗血症を来すことがあるため注意が必要です。

原因

腎盂腎炎の多くは、腸内細菌(特に大腸菌)が尿道から膀胱に入り、尿管を通って腎盂まで逆行感染することで起こります。膀胱炎が進行して腎盂腎炎に至るケースが多く、解剖学的、機能的な異常や生活習慣が発症の引き金となります。

主な原因と誘因

  • 尿路の構造異常(尿管の狭窄、膀胱尿管逆流)
  • 尿閉(前立腺肥大、神経因性膀胱)
  • 性行為(女性でのリスク因子)
  • 妊娠(子宮の圧迫による尿の流れの停滞)
  • 糖尿病(免疫力低下による感染リスク増大)
  • カテーテル留置(外来からの細菌侵入)

原因菌

  • 大腸菌(80〜90%)
  • クレブシエラ、プロテウス、腸球菌など
  • 耐性菌(ESBL産生菌など)による感染も近年増加傾向

清潔な排尿習慣や水分摂取が予防に役立つとされています。

症状

腎盂腎炎は急激な全身症状と局所症状が組み合わさって現れます。特に発熱と腰痛が同時に現れるのが特徴で、膀胱炎との鑑別点となります。慢性腎盂腎炎では、無症状または軽度の症状が繰り返され、次第に腎機能が低下していきます。

急性腎盂腎炎の症状

  • 高熱(38〜40℃台)、悪寒、発汗
  • 腰痛、側腹部痛(腎臓のある背部)
  • 排尿時痛、頻尿、残尿感などの膀胱刺激症状
  • 尿の混濁、血尿
  • 全身倦怠感、食欲不振、吐き気、嘔吐

慢性腎盂腎炎の症状

  • 無症状〜軽度の腰部不快感
  • 慢性的な倦怠感
  • 腎機能障害によるむくみや貧血
  • 尿の異常(蛋白尿、血尿)

症状が急激に悪化する場合は、敗血症のリスクがあるため緊急の医療介入が必要です。

診断方法と治療方法

診断

  • 問診:症状の経過、既往歴、性別や年齢、基礎疾患の有無など
  • 身体診察:背部叩打痛(腎臓を軽くたたいたときの痛み)
  • 尿検査
    - 尿沈渣で白血球、細菌、赤血球の確認
    - 尿培養検査で原因菌の同定と薬剤感受性の確認
  • 血液検査
    - 白血球増加、CRP上昇、腎機能(クレアチニン、BUN)の確認
  • 画像検査(必要時)
    - 腎エコー、CT:腎膿瘍、尿路閉塞、結石の確認

治療

  • 抗菌薬療法
    - 経口または点滴抗菌薬(セフェム系、ニューキノロン、カルバペネムなど)
    - 重症例では入院・点滴治療が必要
  • 対症療法
    - 解熱鎮痛薬、水分補給、安静
  • 尿路異常がある場合
    - 原因の治療(結石除去、カテーテル調整など)を行う

治療期間は通常7〜14日間で、再発予防のためにも指示された期間の服薬継続が大切です。

予後

腎盂腎炎の予後は、早期診断と適切な治療により多くの場合良好ですが、治療が遅れたり、基礎疾患がある場合には重症化することがあります。慢性腎盂腎炎では、腎臓の機能が徐々に損なわれ、慢性腎不全に至ることもあります。

良好な予後が期待できるケース

  • 初期段階で抗菌薬治療が開始された
  • 若年女性で、構造的異常がない単純性腎盂腎炎の場合
  • 再発が少なく、腎機能に障害が残らなかった場合

注意すべきケース

  • 高齢者や糖尿病患者では敗血症や腎膿瘍への進行リスクあり
  • 慢性腎盂腎炎:長期的な腎機能低下や腎萎縮のリスク
  • 耐性菌による感染や、治療不完全による再発

再発や重症化を防ぐため、完治後の尿検査フォローや基礎疾患管理が必要です。

予防

腎盂腎炎は、生活習慣の改善と尿路管理によって予防可能な感染症です。特に膀胱炎の段階での早期対応が重要であり、再発予防のためには個人の体質や既往歴に応じた対策が求められます。

予防のポイント

  • 十分な水分摂取:尿の量を増やして排菌を促進
  • 排尿習慣の改善:尿意を我慢しない、残尿を避ける
  • 排便後の拭き方:前から後ろへ(特に女性)
  • 性行為後の排尿:感染リスクの低下に効果的
  • 陰部の清潔保持:過度な洗浄や石鹸使用は避け、刺激を抑える

再発性の場合

  • 泌尿器科での評価(膀胱尿管逆流、結石などの評価)
  • 低用量抗菌薬の予防投与(医師の指導下)
  • 糖尿病や免疫低下状態の管理

日常生活の中で尿路の健康を意識することが最大の予防策です。

関連する病気や合併症

腎盂腎炎は尿路感染症の一部として発症することが多く、他の泌尿器系疾患や全身疾患と深く関連します。また、重症化すると全身性の合併症を招くおそれがあります。

関連疾患

  • 膀胱炎:腎盂腎炎の前段階としてよく見られる
  • 尿道炎:性感染症に関連して発症することも
  • 尿路結石:尿の流れが妨げられ、感染の温床となる
  • 前立腺肥大症:男性での尿閉や残尿によるリスク増加
  • 神経因性膀胱:排尿障害による再発性腎盂腎炎の要因

合併症

  • 腎膿瘍:感染が腎臓内部に限局した膿瘍を形成
  • 敗血症:菌血症を経て多臓器不全に進行する可能性
  • 慢性腎盂腎炎:腎萎縮や慢性腎不全の原因
  • 腎周囲膿瘍、腎乳頭壊死(糖尿病患者に多い)

感染症であっても軽視せず、全身の状態を見ながら治療を進めることが求められます。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

厚生労働省e-ヘルスネット「尿路感染症」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)

日本腎臓学会「腎盂腎炎の診療指針」(https://www.jsn.or.jp/)

日本内科学会「内科学 第11版」

国立国際医療研究センター「腎・泌尿器感染症の管理」(https://www.ncgm.go.jp/)

■ この記事を監修した医師

住谷 昴一医師

  • 公開日:2025/07/16
  • 更新日:2026/02/19

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