急性腎炎きゅうせいじんえん
急性腎炎は、腎臓に急激な炎症が生じる疾患で、血尿、むくみ、発熱、高血圧などの症状を引き起こします。多くは感染後に発症し、小児に多くみられます。早期の診断と適切な安静・対症療法により、多くは自然回復しますが、重症化例では入院管理が必要です。
急性腎炎とは?
急性腎炎とは、腎臓に急性の炎症が起こることで、尿の異常(血尿、蛋白尿)や身体のむくみ(浮腫)、高血圧、尿量の減少などの症状を呈する疾患群の総称です。特に「急性糸球体腎炎(AGN: acute glomerulonephritis)」が最も一般的で、腎臓の糸球体と呼ばれる濾過機能を持つ構造が炎症を起こします。
急性腎炎は小児に多く、なかでも「溶連菌感染後急性糸球体腎炎」が代表的です。咽頭炎や皮膚感染の1~2週間後に発症し、血尿やむくみなどの症状を伴います。成人にも発症することがありますが、小児よりも経過が重くなることがあります。
多くの場合、安静と対症療法によって自然に治癒する予後良好な疾患ですが、一部では急速進行性糸球体腎炎や急性腎不全に移行することもあるため、早期の診断と経過観察が重要です。
原因
急性腎炎の原因は多様ですが、最も頻度が高いのは感染後の免疫反応によるものです。特に小児に多いのが「溶連菌感染後急性糸球体腎炎(PSAGN)」で、A群β溶血性連鎖球菌による咽頭炎や皮膚炎の数日〜数週間後に発症します。
これは、感染に対する免疫応答が過剰に働き、腎臓の糸球体に免疫複合体が沈着して炎症を引き起こすと考えられています。その他にも、肺炎、腸炎、膀胱炎などさまざまな感染症後に発症することがあります。
まれに、ウイルス感染(B型肝炎、C型肝炎、EBウイルスなど)や原虫感染、真菌感染が関与することもあります。また、自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス、IgA腎症など)が急性増悪することによって急性腎炎の様相を呈することもあります。
薬剤アレルギーによる間質性腎炎や、血管炎(ANCA関連血管炎)などが原因となることもあり、原因の特定は治療方針決定に不可欠です。
症状
急性腎炎では、腎臓の炎症によって以下のような症状が現れます。代表的な「溶連菌感染後急性糸球体腎炎」の例を中心に説明します。
血尿
「コーラ色」「紅茶色」と表現される茶褐色の尿が特徴的です。見た目ではわからない「顕微鏡的血尿」もありますが、多くは目に見える血尿(肉眼的血尿)として現れます。
蛋白尿
軽度~中等度の蛋白尿がみられます。ネフローゼ症候群のような大量ではありませんが、浮腫の原因となることがあります。
むくみ(浮腫)
特に顔やまぶた、足にむくみが生じます。腎機能の低下により、体内の水分が適切に排出されないことが原因です。
尿量減少
腎機能が一時的に低下することで、尿の量が減少します(乏尿)。
高血圧
水分・塩分の貯留によって血圧が上昇しやすくなります。小児でも一過性の高血圧が見られることがあります。
全身症状
倦怠感、頭痛、発熱、食欲不振、吐き気、腹痛、背部痛など、全身の不調がみられることもあります。溶連菌感染後の経過で発熱とともに症状が出現することが多いです。
これらの症状は急激に出現し、数日~数週間で自然に軽快することが多いですが、重症例では急性腎不全や心不全、脳症(高血圧性)に至ることもあるため注意が必要です。
診断方法と治療方法
診断
診断は、症状の確認とともに、血液・尿検査が中心となります。
尿検査
- 血尿:赤血球が多数含まれる
- 蛋白尿:軽~中等度の蛋白が検出
- 円柱:赤血球円柱がみられることがあり、糸球体病変を示唆
血液検査
- クレアチニン、BUN(尿素窒素)など腎機能の指標
- 補体価(C3、CH50など):低下していると免疫複合体関連腎炎を示唆
- ASO(抗ストレプトリジンO)値:溶連菌感染の既往を示す
- 白血球増加、CRP上昇など炎症反応
画像検査
- 腎臓の形態評価や他の腎疾患との鑑別のため、腹部エコーやCTが行われることもある
必要に応じて腎生検
- 典型的でない経過や重症例では、腎生検により組織診断を行い、治療方針の判断材料とする
治療
治療は主に支持療法(対症療法)が中心となります。具体的には以下の通りです。
- 安静:軽症例では外来フォロー可、発熱や高血圧が強い場合は入院が必要
- 塩分・水分制限:むくみや高血圧のある場合には食事調整
- 利尿薬:尿量が少ないときや浮腫が強いときに使用
- 降圧薬:高血圧が持続する場合に使用
- 抗菌薬:溶連菌感染の急性期にはペニシリン系抗生物質を使用し、感染を制御する
ステロイドや免疫抑制薬は、自己免疫性や急速進行型糸球体腎炎が疑われる例で用いられます。多くの急性腎炎は数週間で回復しますが、腎機能が正常化するまでの経過観察が重要です。
予後
急性腎炎の予後は、原因や重症度によって異なります。代表的な溶連菌感染後腎炎では、小児においては多くが完全に回復し、後遺症を残すことはほとんどありません。適切な安静と対症療法によって、1~2週間以内に症状が軽快し、数か月で尿異常も改善します。
一方、成人や高齢者では、病状が重くなる傾向があり、慢性腎炎や腎機能の後遺障害を残す可能性があります。また、基礎疾患を持つ患者や自己免疫性疾患による腎炎では、進行性の腎障害や慢性腎不全に移行することもあります。
急速進行性糸球体腎炎やネフローゼ症候群を伴う例では、入院管理が必要となり、免疫抑制療法の導入が必要になることもあります。
予後を良好に保つためには、早期発見・早期治療と、完治までの適切なフォローアップが重要です。
予防
急性腎炎の予防には、原因となる感染症を早期に発見・治療することが重要です。とくに溶連菌による咽頭炎や皮膚感染に対しては、早期に抗菌薬を投与することで合併症の発生リスクを抑えることができます。
予防対策
- 咽頭痛や発熱がある場合は早めに受診し、溶連菌感染が疑われる場合は迅速検査と適切な治療
- 皮膚の衛生管理(とくに湿疹やかきむしり)
- 手洗い・うがいの励行
- 家族や園・学校内での感染対策
また、慢性疾患や免疫異常のある人では、日常的な体調管理と感染予防が重要です。ワクチン接種(インフルエンザ、肺炎球菌など)による全身感染の予防も有効です。
再発や慢性化を防ぐためには、尿異常の継続的なモニタリングが必要であり、症状が軽快しても医療機関での定期的な経過観察が推奨されます。
関連する病気や合併症
急性腎炎に関連する代表的な疾患は、糸球体腎炎を主体とする腎疾患や、自己免疫疾患です。特に以下のような病態が関連します。
IgA腎症
最も頻度の高い慢性糸球体腎炎で、急性腎炎様の発症をすることがあります。血尿と蛋白尿が持続し、慢性化することが多く、定期フォローが必要です。
ループス腎炎
全身性エリテマトーデス(SLE)に合併する腎炎で、ステロイドや免疫抑制薬による治療が必要です。
急速進行性糸球体腎炎(RPGN)
進行が非常に速く、早期治療を怠ると短期間で腎不全に至る危険性があります。抗GBM抗体病やANCA関連血管炎が含まれます。
ネフローゼ症候群
大量の蛋白尿、低アルブミン血症、浮腫を呈し、感染や血栓症などの合併症に注意が必要です。
また、急性腎炎が重症化すると、腎不全、電解質異常、心不全、高血圧性脳症などを引き起こす可能性があり、特に高齢者や基礎疾患のある人では重篤化しやすいため、注意が必要です。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
日本腎臓学会「急性腎炎の診断と治療」(https://www.jsn.or.jp/)
MSDマニュアル プロフェッショナル版「急性腎炎」(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional)
日本小児科学会「小児の急性糸球体腎炎」(https://www.jpeds.or.jp/)
- 公開日:2025/07/16
- 更新日:2026/02/19
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