慢性リンパ節炎まんせいりんぱせつえん

慢性リンパ節炎は、リンパ節の腫れが数週間以上にわたり持続する状態で、圧痛のないしこりとして気づかれることが多いです。感染症や免疫反応、結核、腫瘍との関連もあるため、原因精査と経過観察が重要です。

慢性リンパ節炎とは?

慢性リンパ節炎とは、体内の免疫器官であるリンパ節が慢性的に腫脹する状態を指します。通常、感染などによって一時的にリンパ節が腫れることはありますが、慢性リンパ節炎ではこの腫れが数週間以上持続し、原因が明らかでないこともあります。

リンパ節は頸部、腋窩、鼠径部などに多く存在しており、腫脹は多くの場合しこりとして自覚されます。急性のリンパ節炎とは異なり、強い痛みや発熱などの炎症所見は乏しく、圧痛のない腫れが特徴です。

原因は多岐にわたり、ウイルスや細菌、結核、自己免疫疾患、まれに悪性腫瘍(リンパ腫など)との関連があるため、慢性化したリンパ節腫脹がみられた場合には、医療機関での精密検査が推奨されます。

原因

慢性リンパ節炎の原因は多様で、感染性、非感染性、腫瘍性に分類されます。なかでも反応性に腫れる場合が多く、特定の病原体に対する免疫反応や、持続的な炎症の影響で腫脹が長引くことがあります。

主な原因分類

  • 感染症
     - ウイルス性(EBウイルス、サイトメガロウイルス、HIVなど)
     - 細菌性(トキソプラズマ、ブドウ球菌など)
     - 結核菌(結核性リンパ節炎)
     - 猫ひっかき病などの特殊感染症
  • 非感染性
     - サルコイドーシスなどの肉芽腫性疾患
     - シェーグレン症候群や全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫性疾患
     - 薬剤による過敏反応
  • 腫瘍性
     - 悪性リンパ腫
     - 白血病
     - 転移性がん(乳がん、頭頸部がんなど)

原因により治療方針が大きく異なるため、慢性の経過をたどるリンパ節腫脹では原因検索が不可欠です。

症状

慢性リンパ節炎では、急性の炎症に見られるような強い痛みや発熱は少なく、比較的軽い症状が長期間続くのが特徴です。以下のような症状が見られます。

局所症状

  • 頸部、腋窩、鼠径部などのリンパ節の腫れ
  • しこりのように触れる腫脹(数cm程度)
  • 圧痛がない、または軽度の痛みのみ
  • 可動性のあるしこりが多いが、結核などでは癒着して動きにくくなることも

全身症状

  • 微熱が続く
  • 倦怠感
  • 体重減少(特に結核や腫瘍性疾患を伴う場合)
  • 寝汗
  • 皮膚の発赤や膿瘍形成(まれ)

症状は数週間から数か月にわたって持続することがあり、単なる疲労や風邪の名残と思って見過ごされることもあります。大きさの変化や痛みの有無、全身症状の有無は、鑑別診断において重要なポイントになります。

診断方法と治療方法

診断

診断は、視診・触診によるリンパ節の評価と、血液検査、画像検査、必要に応じてリンパ節の生検(組織検査)などを組み合わせて行います。

  • 身体診察:腫脹の大きさ、硬さ、可動性、圧痛の有無を評価
  • 血液検査:炎症反応(CRP、白血球数)、感染症マーカー、自己抗体の有無
  • 画像検査
     - 超音波検査:腫瘤の内部構造を確認
     - CTまたはMRI:周囲への浸潤や他のリンパ節との関係を把握
  • 感染症検査:ツベルクリン反応、結核菌PCR、HIV抗体検査など
  • リンパ節生検:診断がつかない場合や腫瘍性疾患が疑われる場合に実施

治療

  • 感染性:抗菌薬や抗結核薬の投与
  • 非感染性:原因疾患に応じた免疫抑制療法やステロイド治療
  • 腫瘍性:がんに準じた化学療法や放射線治療

原因不明の場合でも、経過観察により自然軽快することがありますが、長期にわたる場合や悪化する場合は再検査が必要です。

予後

慢性リンパ節炎の予後は、原因や治療の開始時期によって異なります。感染性や反応性のリンパ節炎では、多くの場合で適切な治療により改善が期待できます。

予後が良好な場合

  • ウイルス性や反応性で、自然に縮小する経過をたどる場合
  • 抗菌薬によって症状が速やかに改善した場合
  • 結核性リンパ節炎に対して抗結核薬が有効に作用した場合

注意が必要な場合

  • 腫瘍性(悪性リンパ腫など)が原因である場合
  • 免疫抑制状態での感染によるもの
  • 原因が特定できず、経過中に腫瘍へ進行する例

慢性リンパ節炎では、長期的な経過観察が必要になることもあります。リンパ節が持続的に腫れている、または大きさが増している場合、繰り返し検査を行って経過を丁寧に追うことが、予後改善につながります。

予防

慢性リンパ節炎の予防は、直接的な方法があるわけではありませんが、原因となる疾患の予防や早期治療が重要です。

予防のポイント

  • 感染症(風邪、インフルエンザ、猫ひっかき病など)を予防し、早期に治療する
  • 口腔内の衛生を保ち、歯周病や口内炎などを放置しない
  • 疲労やストレスを溜めず、免疫力を保つ生活を心がける
  • 結核に関しては、検診やワクチン接種を適切に受ける
  • 自己免疫疾患を有する場合は、再燃の兆候を早期に把握する

また、リンパ節の腫れに気づいたら自己判断で様子を見ず、医療機関を受診することが、重篤な原因疾患の早期発見につながります。

関連する病気や合併症

慢性リンパ節炎は、さまざまな疾患に関連して起こることがあり、原疾患の早期発見や合併症の予防が重要になります。

関連する病気

  • 結核性リンパ節炎:頸部に多く、ゆっくりと腫れるのが特徴
  • 感染性単核球症(EBウイルス):若年層に多く、咽頭痛とリンパ節腫脹がみられる
  • 猫ひっかき病:バルトネラ菌による、リンパ節の腫れを伴う局所感染
  • 悪性リンパ腫:長期にわたる無痛性リンパ節腫脹で疑われる
  • 自己免疫疾患(SLE、サルコイドーシスなど)

合併症

  • 膿瘍形成:慢性炎症により膿がたまることがある
  • 瘢痕形成:炎症の繰り返しにより、硬く残る場合がある
  • 全身症状の悪化(発熱、体重減少、寝汗など)

関連疾患を見逃さないためにも、長引くリンパ節腫脹には注意が必要です。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

日本感染症学会(https://www.kansensho.or.jp/)

日本内科学会「内科学 第11版」

厚生労働省 e-ヘルスネット(https://kennet.mhlw.go.jp/home)

国立国際医療研究センター(https://www.ncgm.go.jp/)

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2025/07/16
  • 更新日:2025/07/16

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