鉄欠乏性貧血とは?原因・症状・治療・予防を医師監修で解説てつけつぼうせいひんけつ
鉄欠乏性貧血は、体内の鉄分が不足することで赤血球中のヘモグロビンが十分につくられなくなり、全身へ酸素を運ぶ力が低下する病気です。特に月経のある女性や妊娠中の方に多くみられますが、男性や高齢者でも消化管からの出血や病気が原因で発症することがあります。 初期は疲れやすさやだるさなどの症状だけで気付きにくい一方、進行すると動悸や息切れ、めまい、頭痛、爪や髪の変化、氷を無性に食べたくなる異食症など、さまざまな症状が現れることがあります。 鉄欠乏性貧血は、鉄剤や食事療法によって改善が期待できる病気ですが、単なる鉄不足ではなく、背景に子宮筋腫や消化管疾患などが隠れていることも少なくありません。そのため、原因を調べたうえで適切な治療を受けることが大切です。 この記事では、鉄欠乏性貧血の原因や症状、診断方法、治療法、予防法、受診の目安まで詳しく解説します。
鉄欠乏性貧血とは?
鉄欠乏性貧血とは、体内の鉄分が不足し、赤血球に含まれるヘモグロビンが十分につくられなくなることで起こる貧血です。
ヘモグロビンは、肺で取り込んだ酸素を全身へ運ぶ役割を担っています。そのため、鉄分が不足すると酸素を十分に届けられなくなり、疲れやすさや息切れ、めまいなど、さまざまな症状が現れます。
貧血にはいくつか種類がありますが、鉄欠乏性貧血は最も多くみられるタイプです。特に月経のある女性や妊娠中・授乳中の方、成長期の子どもに多くみられます。
一方で、男性や閉経後の女性が鉄欠乏性貧血になった場合は、胃や大腸などの消化管から慢性的に出血している可能性もあるため、原因を詳しく調べることが重要です。
鉄欠乏性貧血は、鉄分を補うだけで改善するケースもありますが、背景に病気が隠れていることも少なくありません。症状が続く場合は自己判断せず、医療機関を受診して適切な診断・治療を受けましょう。
鉄欠乏性貧血とはどんな病気?
鉄欠乏性貧血は、体内の鉄分が不足することで、正常な赤血球を十分につくれなくなる病気です。
赤血球の中にあるヘモグロビンは鉄を材料としてつくられています。そのため、鉄分が不足するとヘモグロビンの量が減少し、全身へ酸素を運ぶ力が低下します。
初期は自覚症状がほとんどないこともありますが、鉄不足が進行すると疲れやすい、立ちくらみがする、動悸がするなど、日常生活に支障をきたす症状が現れることがあります。
鉄不足で貧血になる仕組み
私たちの体は、食事から摂取した鉄分を利用してヘモグロビンをつくっています。
しかし、月経や出血による鉄分の喪失、偏った食生活による摂取不足、胃や腸の病気による吸収障害などが続くと、体内に蓄えられている鉄(貯蔵鉄)が減少します。
貯蔵鉄が不足するとヘモグロビンを十分につくれなくなり、赤血球の数や働きが低下して鉄欠乏性貧血を発症します。
そのため、単に鉄分を補給するだけでなく、「なぜ鉄不足になったのか」という原因を明らかにすることが再発予防につながります。
女性に多い理由
鉄欠乏性貧血は、男性よりも女性に多い病気です。
最も大きな理由は、毎月の月経によって定期的に鉄分が失われるためです。月経量が多い方や子宮筋腫、子宮腺筋症などの婦人科疾患がある方では、さらに鉄不足になりやすくなります。
また、妊娠中や授乳中は、お母さんだけでなく赤ちゃんの成長にも鉄分が必要になるため、通常より多くの鉄が消費されます。十分な鉄分を補給できないと、鉄欠乏性貧血を発症するリスクが高まります。
女性はライフステージによって鉄分の必要量が変化するため、バランスのよい食事を心がけるとともに、疲れやすさやめまいなどの症状がある場合は早めに医療機関へ相談することが大切です。
鉄欠乏性貧血の原因
鉄欠乏性貧血は、体内の鉄分が不足することで起こります。しかし、鉄不足になる原因は一つではありません。
鉄分が体外へ失われる量が増えたり、食事から十分に摂取できなかったり、体内へうまく吸収されなかったりすると、鉄欠乏性貧血を発症することがあります。また、妊娠や成長期など、通常より多くの鉄分が必要になる時期も注意が必要です。
ここでは、鉄欠乏性貧血の主な原因について解説します。
月経や出血による鉄の喪失
鉄欠乏性貧血の原因として最も多いのが、慢性的な出血による鉄分の喪失です。
特に月経のある女性では、毎月の月経によって鉄分が失われます。月経量が多い「過多月経」の方や、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症などの婦人科疾患がある場合は、さらに鉄不足になりやすくなります。
一方、男性や閉経後の女性では、胃潰瘍や胃がん、大腸ポリープ、大腸がんなど、消化管からの出血が原因となることがあります。便に血が混じっていなくても少量の出血が続いているケースもあるため、原因を詳しく調べることが大切です。
食事からの鉄分不足
食事から摂取する鉄分が不足すると、体内に蓄えられた鉄が徐々に減少し、鉄欠乏性貧血につながることがあります。
過度なダイエットや偏った食生活、朝食を抜く習慣などが続くと、必要な鉄分を十分に補えません。また、肉や魚をあまり食べない方では、吸収率の高いヘム鉄が不足しやすくなるため注意が必要です。
鉄分は体内でつくることができないため、毎日の食事から継続的に摂取する必要があります。鉄分を多く含む食品をバランスよく取り入れ、必要に応じてビタミンCを含む食品と組み合わせることで、鉄の吸収率を高めることができます。
胃や腸の病気による吸収障害
食事から十分な鉄分を摂取していても、胃や腸の病気によって鉄がうまく吸収されないことがあります。
胃の切除後や萎縮性胃炎、炎症性腸疾患、セリアック病などでは、鉄分の吸収が低下し、鉄欠乏性貧血を発症することがあります。
また、胃酸には鉄分の吸収を助ける働きがあります。そのため、胃酸を抑える薬を長期間服用している場合は、鉄不足を起こしやすくなることもあります。
妊娠・授乳・成長期で鉄の需要が増える
妊娠中や授乳中、成長期は、通常より多くの鉄分が必要になります。
妊娠中は母体の血液量が増えるだけでなく、胎児や胎盤の発育にも鉄分が使われます。そのため、十分な鉄分を補給できないと鉄欠乏性貧血を発症しやすくなります。
また、乳幼児や思春期は体の成長が活発な時期です。赤血球をつくるために必要な鉄分も増えるため、食事からの摂取量が不足すると貧血につながることがあります。特に思春期の女子は、月経が始まることで鉄不足になりやすい傾向があります。
消化管からの慢性的な出血
胃や大腸などの消化管から少量の出血が長期間続くことも、鉄欠乏性貧血の原因の一つです。
原因となる病気には、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん、大腸ポリープ、大腸がん、痔などがあります。出血量が少ない場合は自覚症状がほとんどなく、気付かないうちに鉄不足が進行しているケースも少なくありません。
特に男性や閉経後の女性で鉄欠乏性貧血と診断された場合は、背景に消化管の病気が隠れている可能性があります。原因を特定するために、胃カメラや大腸カメラなどの検査が行われることもあります。
鉄欠乏性貧血の症状
鉄欠乏性貧血では、体内の鉄分が不足することでヘモグロビンが減少し、全身へ十分な酸素を運べなくなります。そのため、全身のさまざまな部位に症状が現れます。
初期は症状がほとんどないこともありますが、貧血が進行すると日常生活に支障をきたすこともあります。また、鉄不足そのものが原因で現れる特徴的な症状もあるため、気になる症状が続く場合は医療機関を受診しましょう。
疲れやすい・だるい
鉄欠乏性貧血で最も多くみられる症状が、疲れやすさや体のだるさです。
ヘモグロビンが減少すると、筋肉や脳へ十分な酸素が届かなくなり、少し動いただけでも疲れやすくなります。
十分な睡眠をとっても疲れが取れない、仕事や家事を以前より負担に感じるといった症状が続く場合は、鉄欠乏性貧血が関係している可能性があります。
めまい・立ちくらみ
鉄欠乏性貧血では、めまいや立ちくらみが起こることがあります。
脳へ運ばれる酸素が不足すると、一時的に血流が追いつかず、立ち上がった際にふらつきを感じることがあります。特に急に立ち上がったときや長時間立ち続けたあとに症状が現れやすい傾向があります。
症状が頻繁に起こる場合や、転倒するほど強いめまいがある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
動悸・息切れ
階段を上ったり少し歩いたりしただけで動悸や息切れを感じることもあります。
これは、酸素不足を補おうとして心臓が通常より多く血液を送り出そうとするためです。貧血が進行すると、これまで問題なくできていた運動や家事でも息が上がりやすくなることがあります。
胸の痛みや強い息苦しさを伴う場合は、ほかの病気が隠れている可能性もあるため、速やかに医療機関を受診してください。
頭痛
鉄欠乏性貧血では、頭痛が起こることもあります。
脳への酸素供給が不足することで血管が拡張し、頭痛を引き起こすと考えられています。集中力の低下や眠気を伴うこともあり、仕事や勉強に影響することがあります。
頭痛が長く続く場合や、市販の鎮痛薬を飲んでも改善しない場合は、貧血以外の原因も考えられるため医師に相談しましょう。
顔色が悪くなる
鉄欠乏性貧血では、顔色が青白く見えることがあります。
ヘモグロビンが減少すると皮膚や粘膜の赤みが少なくなり、顔色だけでなく唇やまぶたの裏側が白っぽく見えることがあります。
家族や周囲の人から「顔色が悪い」と指摘されたことをきっかけに、鉄欠乏性貧血が見つかるケースも少なくありません。
爪が割れる・スプーン爪
鉄不足が続くと、爪にも変化が現れることがあります。
爪が薄くなって割れやすくなったり、中央がくぼんでスプーンのような形になる「スプーン爪(匙状爪)」がみられたりすることがあります。
こうした症状は、長期間にわたる鉄不足のサインである可能性があります。
髪が抜ける
鉄欠乏性貧血では、抜け毛や髪のハリ・コシの低下がみられることがあります。
髪の毛の成長にも鉄分が必要なため、鉄不足が続くと毛髪の成長サイクルが乱れ、一時的に抜け毛が増えることがあります。
抜け毛の原因はさまざまですが、疲れやすさや月経量の多さなどほかの症状もある場合は、鉄欠乏性貧血が関係している可能性があります。
異食症(氷を食べたくなるなど)
鉄欠乏性貧血の特徴的な症状として、「異食症」があります。
異食症とは、本来食べ物ではないものや特定のものを無性に食べたくなる状態です。特に鉄欠乏性貧血では、氷を大量に食べたくなる「氷食症」がよく知られています。
はっきりとした原因は解明されていませんが、鉄不足との関連が指摘されており、鉄欠乏性貧血の治療によって改善するケースもあります。
「氷を毎日大量に食べてしまう」「食べないと落ち着かない」といった症状がある場合は、鉄欠乏性貧血の可能性も考えられるため、一度医療機関で相談するとよいでしょう。
鉄欠乏性貧血の診断方法
鉄欠乏性貧血が疑われる場合は、問診や診察に加え、血液検査を中心に診断が行われます。
貧血があるかどうかだけでなく、鉄不足が原因なのか、ほかの病気による貧血なのかを見極めることが重要です。また、男性や閉経後の女性では、消化管からの出血など背景に病気が隠れている可能性もあるため、必要に応じて詳しい検査が行われます。
血液検査
鉄欠乏性貧血の診断では、まず血液検査を行います。
血液検査では、ヘモグロビン値や赤血球数、ヘマトクリット値などを測定し、貧血の有無や程度を確認します。また、赤血球の大きさを示す平均赤血球容積(MCV)や、赤血球1個あたりのヘモグロビン量(MCH)なども調べます。
鉄欠乏性貧血では、赤血球が通常より小さく、ヘモグロビン量も少ない「小球性低色素性貧血」と呼ばれる特徴がみられることが一般的です。
血液検査は、貧血の診断だけでなく、治療効果を確認するためにも定期的に行われます。
フェリチン値とは?
フェリチンは、体内に蓄えられている鉄(貯蔵鉄)の量を反映する指標です。
鉄欠乏性貧血では、ヘモグロビン値が低下する前からフェリチン値が減少することがあります。そのため、フェリチン値を測定することで、体内の鉄不足を早い段階で把握できる場合があります。
一方で、フェリチンは炎症や感染症、肝臓の病気などでも高くなることがあるため、フェリチン値だけで診断するのではなく、血液検査の結果や症状を総合的に判断します。
鉄欠乏性貧血の診断や治療方針を決めるうえで、フェリチン値は重要な検査項目の一つです。
必要に応じて行う検査
鉄欠乏性貧血と診断された場合は、鉄不足の原因を調べるために追加の検査を行うことがあります。
例えば、月経量が多い女性では婦人科で子宮筋腫や子宮内膜症などの有無を確認することがあります。また、男性や閉経後の女性では、胃がんや大腸がん、胃潰瘍など消化管の病気が隠れていないか調べるため、胃カメラや大腸カメラが勧められることがあります。
そのほか、便潜血検査や腹部超音波検査などを行い、出血や病気の原因を詳しく調べることもあります。
鉄欠乏性貧血は、鉄剤を服用するだけでは根本的な解決にならないケースも少なくありません。再発を防ぐためにも、鉄不足を引き起こした原因を明らかにし、適切な治療につなげることが大切です。
鉄欠乏性貧血の治療方法
鉄欠乏性貧血の治療では、不足している鉄分を補うだけでなく、鉄不足の原因となっている病気や生活習慣を改善することが大切です。
多くの場合は鉄剤の服用から治療を開始しますが、症状や原因によっては点滴による鉄補充や、出血の原因となる病気の治療が必要になることもあります。
自己判断で鉄剤の服用を中止すると再発することがあるため、医師の指示に従って治療を継続しましょう。
鉄剤による治療
鉄欠乏性貧血の基本的な治療は、鉄剤を服用して不足した鉄分を補うことです。
鉄剤を服用すると、まずヘモグロビン値が改善し、その後、体内に蓄えられる鉄(貯蔵鉄)が徐々に回復します。そのため、症状が改善したからといって自己判断で服用を中止すると、体内の鉄が十分に回復しておらず再発することがあります。
一般的には、ヘモグロビン値が正常になったあとも数か月間は服用を続け、体内の鉄を十分に補充します。治療期間は貧血の程度や原因によって異なるため、医師の指示に従うことが大切です。
鉄剤の副作用と飲み方
鉄剤は効果的な治療薬ですが、副作用が現れることがあります。
代表的な副作用として、吐き気や胃の不快感、腹痛、便秘、下痢などが挙げられます。また、便が黒くなることがありますが、これは鉄剤による変化であり、多くの場合は心配ありません。
鉄剤は空腹時のほうが吸収されやすいとされていますが、胃腸症状が強い場合は食後に服用するなど、医師の指示に従って服用方法を調整することがあります。
また、お茶やコーヒーに含まれるタンニンは鉄の吸収を妨げるため、鉄剤を服用する前後はできるだけ避けるようにしましょう。一方、ビタミンCは鉄の吸収を助けるため、果物やジュースなどと一緒に摂ることが勧められる場合もあります。
食事療法
鉄剤による治療とあわせて、食事の見直しも重要です。
鉄分を多く含む食品には、レバー、赤身の肉、かつお、まぐろ、あさりなどがあります。これらに含まれる「ヘム鉄」は体内に吸収されやすいことが特徴です。
一方、ほうれん草や小松菜、大豆製品、ひじきなどに含まれる「非ヘム鉄」は、ビタミンCを含む野菜や果物と一緒に摂ることで吸収率が高まります。
ただし、食事だけで重度の鉄欠乏性貧血を改善することは難しいため、医師から鉄剤を処方されている場合は、自己判断で中止せず治療を継続しましょう。
原因となる病気の治療
鉄欠乏性貧血では、鉄不足を引き起こしている原因を治療することも重要です。
例えば、月経量が多い場合は婦人科疾患の治療を行い、胃潰瘍や大腸ポリープなど消化管からの出血が原因であれば、その病気に対する治療を進めます。
原因を改善しないまま鉄剤だけを服用しても、鉄不足を繰り返す可能性があります。再発を防ぐためには、鉄欠乏性貧血の背景にある病気を見つけ、適切に治療することが大切です。
点滴による鉄補充が必要な場合
内服の鉄剤で十分な効果が得られない場合や、副作用が強く服用を続けられない場合は、点滴で鉄分を補充することがあります。
また、消化器の病気などで鉄の吸収が著しく低下している方や、重度の鉄欠乏性貧血で早期の改善が必要な場合にも、点滴治療が選択されることがあります。
点滴は短期間で鉄分を補充できるメリットがありますが、すべての方に必要な治療ではありません。医師が症状や検査結果を踏まえて、内服治療と点滴治療のどちらが適しているかを判断します。
鉄欠乏性貧血の食事・予防法
鉄欠乏性貧血を予防するためには、毎日の食事で十分な鉄分を摂取することが大切です。また、鉄は摂取量だけでなく吸収率も重要であるため、食べ合わせや生活習慣にも気を配る必要があります。
特に月経のある女性や妊娠中・授乳中の方、成長期の子どもは鉄分が不足しやすいため、意識的に鉄分を補給しましょう。
鉄分を多く含む食品
鉄分は、動物性食品に含まれる「ヘム鉄」と植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」の2種類に分けられます。
ヘム鉄は体内への吸収率が高く、効率よく鉄分を補給できることが特徴です。一方、非ヘム鉄は吸収率が低いものの、食べ合わせを工夫することで吸収率を高められます。
代表的な食品は次のとおりです。
|
項目 |
主な食品 |
|
ヘム鉄(吸収率が高い) |
レバー、赤身の牛肉、かつお、まぐろ、あさり |
|
非ヘム鉄(吸収率はやや低い) |
小松菜、ほうれん草、大豆・納豆、豆腐、ひじき |
さまざまな食品を組み合わせ、偏りのない食事を心がけることが大切です。
鉄の吸収を高める栄養素
鉄分を効率よく吸収するためには、ビタミンCを一緒に摂取することがおすすめです。
ビタミンCには非ヘム鉄の吸収を助ける働きがあるため、野菜や果物を組み合わせることで、鉄分をより効率的に取り込めます。
ビタミンCを多く含む食品には、以下のようなものがあります。
- ブロッコリー
- パプリカ
- キャベツ
- キウイフルーツ
- いちご
- オレンジ
例えば、ほうれん草のおひたしにレモンをかけたり、食後に果物を食べたりするだけでも、鉄の吸収率を高める効果が期待できます。
鉄の吸収を妨げる食品
鉄分を摂取していても、一緒に食べるものによっては吸収が妨げられることがあります。
特に、お茶やコーヒー、紅茶に含まれるタンニンは鉄と結合し、吸収を低下させるとされています。また、カルシウムを多く含む食品やサプリメントも、一度に大量に摂取すると鉄の吸収に影響することがあります。
そのため、鉄剤を服用している場合や鉄分を多く含む食事をとる際は、お茶やコーヒーを控え、時間をずらして飲むとよいでしょう。
日常生活で気を付けること
鉄欠乏性貧血を予防するためには、食事だけでなく生活習慣を見直すことも重要です。
過度なダイエットや欠食は鉄不足の原因となるため、1日3食を基本に栄養バランスのよい食事を心がけましょう。また、疲れやすさやめまいなどの症状があるにもかかわらず自己判断で放置すると、貧血が進行することがあります。
月経量が多い方や妊娠中・授乳中の方、過去に鉄欠乏性貧血と診断されたことがある方は、定期的な健康診断や血液検査を受けることも大切です。
食生活を改善しても症状が続く場合は、鉄不足だけでなく別の病気が隠れている可能性もあるため、早めに医療機関を受診しましょう。
鉄欠乏性貧血は何科を受診すればいい?
鉄欠乏性貧血が疑われる場合は、症状や原因に応じた診療科を受診することが大切です。
疲れやすさやめまいなどの症状だけでは原因を特定できないため、まずは血液検査で貧血の有無を確認し、必要に応じて専門の診療科で詳しい検査を受けます。
内科
疲れやすさや息切れ、めまいなどの症状がある場合は、まず内科を受診するとよいでしょう。
内科では、血液検査でヘモグロビン値やフェリチン値などを調べ、鉄欠乏性貧血かどうかを診断します。また、貧血以外の病気が原因となっていないかもあわせて確認します。
原因が明らかでない場合や、さらに詳しい検査が必要と判断された場合は、適切な診療科を紹介してもらえます。
婦人科
月経量が多い方や生理が長引く方、不正出血がある方は、婦人科の受診も検討しましょう。
女性の鉄欠乏性貧血は、過多月経や子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症などが原因となることがあります。これらの病気によって慢性的に出血が続くと、鉄剤で一時的に改善しても再発を繰り返す可能性があります。
婦人科では、超音波検査などを行い、貧血の原因となる婦人科疾患がないかを確認します。
消化器内科
男性や閉経後の女性で鉄欠乏性貧血と診断された場合は、消化器内科での検査が勧められることがあります。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍、大腸ポリープ、胃がん、大腸がんなどによる慢性的な出血が原因となっていることがあるためです。
消化器内科では、必要に応じて胃カメラや大腸カメラ、便潜血検査などを行い、消化管からの出血や病気がないかを詳しく調べます。
鉄欠乏性貧血は、原因によって治療方法が異なります。鉄剤を服用するだけでなく、原因となる病気を早期に発見・治療することが、再発予防につながります。
鉄欠乏性貧血に関連する病気
鉄欠乏性貧血は、鉄分不足だけが原因とは限りません。背景に病気が隠れていることも多く、原因を特定することが重要です。
特に、男性や閉経後の女性では、消化器の病気が原因となっている場合があります。また、月経量が多い女性では婦人科疾患が関係しているケースも少なくありません。
鉄欠乏性貧血と診断された場合は、必要に応じて原因となる病気がないか詳しく調べることが大切です。
子宮筋腫・過多月経
女性の鉄欠乏性貧血では、子宮筋腫や過多月経などの婦人科疾患が原因となることがあります。
月経量が多い状態が続くと、毎月の出血によって体内の鉄分が失われ、鉄欠乏性貧血を発症しやすくなります。鉄剤を服用しても改善と再発を繰り返す場合は、背景に婦人科疾患が隠れている可能性があります。
月経量が急に増えた、レバー状の血の塊が多く出る、生理が長引くなどの症状がある場合は、婦人科の受診を検討しましょう。
胃潰瘍・胃がん・大腸がん
男性や閉経後の女性で鉄欠乏性貧血が見つかった場合は、胃や大腸の病気による慢性的な出血が原因となっていることがあります。
代表的な病気には、胃潰瘍、胃がん、大腸ポリープ、大腸がんなどがあります。少量の出血が長期間続いていても、自覚症状がほとんどないことは珍しくありません。
そのため、医師が必要と判断した場合は、胃カメラや大腸カメラなどの検査を受け、出血の原因を確認することが大切です。
炎症性腸疾患
炎症性腸疾患も、鉄欠乏性貧血を引き起こす原因の一つです。
炎症性腸疾患には、潰瘍性大腸炎やクローン病などがあります。腸の炎症による出血や、鉄分の吸収低下によって鉄不足が起こりやすくなります。
下痢や腹痛、血便などの症状が続いている場合は、鉄欠乏性貧血だけでなく炎症性腸疾患の可能性も考えられます。
セリアック病など吸収障害
鉄分を十分に摂取していても、小腸でうまく吸収できなければ鉄欠乏性貧血になることがあります。
代表的な病気がセリアック病です。セリアック病では、小麦などに含まれるグルテンに対する免疫反応によって小腸の粘膜が傷つき、鉄分をはじめとする栄養素の吸収が低下します。
また、胃の切除後や萎縮性胃炎なども鉄の吸収を妨げる原因になります。食事や鉄剤による治療を続けても改善しない場合は、吸収障害がないか詳しく調べることが重要です。
鉄欠乏性貧血についてのよくある質問
鉄欠乏性貧血は自然に治りますか?
軽度の鉄不足であれば、食生活の改善によって回復することもあります。しかし、鉄欠乏性貧血まで進行している場合は、自然に治ることは少なく、多くは鉄剤による治療が必要です。
また、子宮筋腫や消化管の病気などが原因となっている場合は、鉄分を補うだけでは改善しません。症状が続く場合は、医療機関で原因を調べてもらうことが大切です。
鉄剤はいつまで飲み続ける必要がありますか?
鉄剤は、ヘモグロビン値が正常になったあとも、数か月間は服用を続けることが一般的です。
これは、貧血が改善しても体内に蓄えられた鉄(貯蔵鉄)が十分に回復していないためです。自己判断で服用を中止すると再発することがあるため、医師の指示に従って服用しましょう。
食事だけで鉄欠乏性貧血は改善しますか?
軽度の鉄不足であれば、鉄分を多く含む食品を積極的に摂ることで改善が期待できる場合があります。
一方、鉄欠乏性貧血と診断された場合は、食事だけで十分な鉄分を補うことは難しく、鉄剤による治療が必要になることが少なくありません。
食事は治療を補助する役割と考え、医師から処方された鉄剤は自己判断で中止しないようにしましょう。
サプリメントで鉄分を補ってもよいですか?
鉄分を補う目的でサプリメントを利用することはできますが、鉄欠乏性貧血の治療を自己判断でサプリメントだけに置き換えることはおすすめできません。
サプリメントは鉄剤より含有量が少ない製品も多く、貧血の改善に十分な量を補えない場合があります。また、鉄不足の背景に病気が隠れている可能性もあるため、症状がある場合は医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
鉄欠乏性貧血は再発しやすい病気ですか?
鉄欠乏性貧血は、原因が改善されていない場合に再発することがあります。
例えば、過多月経や消化管からの慢性的な出血が続いている場合や、食事からの鉄分摂取が不足している場合は、治療後も再び鉄不足になる可能性があります。
再発を防ぐためには、原因となる病気を適切に治療するとともに、バランスのよい食事や定期的な健康診断を心がけることが大切です。
鉄欠乏性貧血は原因を調べて適切に治療しよう
鉄欠乏性貧血は、体内の鉄分が不足することで起こる最も一般的な貧血です。疲れやすさやめまい、動悸などの症状は日常の疲労と勘違いされやすいため、発見が遅れることも少なくありません。
しかし、背景には子宮筋腫や過多月経、胃潰瘍、大腸がんなどの病気が隠れていることもあります。そのため、鉄剤で鉄分を補うだけでなく、鉄不足の原因を明らかにすることが重要です。
疲れやすさや息切れ、立ちくらみなどの症状が続く場合は、自己判断で様子を見続けず、早めに医療機関を受診しましょう。適切な診断と治療を受けることで、多くの場合は改善が期待でき、再発予防にもつながります。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
日本内科学会「鉄欠乏性貧血診療ガイドライン」
(https://www.naika.or.jp/)
MSDマニュアル プロフェッショナル版「鉄欠乏性貧血」
(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional)
厚生労働省 e-ヘルスネット「鉄欠乏性貧血」
(https://kennet.mhlw.go.jp/home)
■ この記事を監修した医師
赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2025/07/16
- 更新日:2026/08/06
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