副甲状腺機能亢進症ふくこうじょうせんきのうこうしんしょう

副甲状腺機能亢進症は、副甲状腺ホルモン(PTH)の過剰分泌により、血中カルシウム濃度が上昇し、骨粗鬆症や腎結石、神経・消化器症状など多彩な障害を引き起こす疾患です。早期診断と適切な治療が重要です。

副甲状腺機能亢進症とは?

副甲状腺機能亢進症とは、副甲状腺から分泌される副甲状腺ホルモン(PTH)が過剰になることで、血中のカルシウム濃度が上昇し、全身にさまざまな影響を及ぼす病気です。PTHは、骨からのカルシウム放出、腎臓でのカルシウム再吸収促進、ビタミンD活性化による小腸での吸収促進などを通じて、体内のカルシウム濃度を調整しています。

PTHが過剰になると、血中カルシウム濃度が慢性的に高くなり、高カルシウム血症による症状や合併症(腎結石、骨粗鬆症、神経症状など)を引き起こします。副甲状腺機能亢進症は、原因により一次性、二次性、三次性の3つに分類されます。

診断には血液検査が有用で、PTHの高値と血清カルシウムの上昇が認められます。無症状でも、骨や腎臓への影響が進行することがあるため、早期診断と治療が重要です。

原因

副甲状腺機能亢進症は、原因に応じて一次性、二次性、三次性に分類され、それぞれに異なる発症メカニズムと治療方針があります。

一次性副甲状腺機能亢進症

  • 原因:副甲状腺腺腫(良性腫瘍)が最も多い(約80~90%)
  • まれに:副甲状腺過形成、副甲状腺癌

二次性副甲状腺機能亢進症

  • 原因:慢性腎不全により、カルシウムが低下し続けることでPTHが慢性的に過剰分泌される
  • ビタミンD不足、低カルシウム血症、リンの蓄積などが関与

三次性副甲状腺機能亢進症

二次性が長期間続いた結果、副甲状腺が自律的にホルモンを分泌するようになる状態

その他、リチウムなど一部の薬剤や遺伝的要因(MEN症候群など)も発症に関与することがあります。

症状

症状は副甲状腺ホルモンの過剰による高カルシウム血症に由来します。初期は無症状のこともありますが、進行すると全身に多彩な症状が現れます。

全身症状

  • 倦怠感、脱力感、集中力低下、抑うつ
  • 食欲不振、吐き気、便秘
  • 多尿、口渇、脱水傾向
  • 認知機能低下、記憶障害、不眠

骨関連症状

  • 骨痛、関節痛
  • 骨粗鬆症による骨折リスク増加
  • 手指や背骨の変形(進行例)

腎臓関連症状

  • 腎結石(尿路結石)
  • 腎機能低下(高カルシウム血症による)
  • 多尿による電解質異常

その他

  • 心電図異常(QT短縮)
  • まれに膵炎や胃潰瘍を合併

無症状でも、骨や腎臓に不可逆的な障害が進行していることがあり、注意が必要です。

診断方法と治療方法

診断

  • 血液検査
    - 血清カルシウム:高値
    - PTH(副甲状腺ホルモン):高値
    - リン:低値または正常
    - 骨代謝マーカー(TRACP-5b、BAPなど):骨吸収亢進の指標
  • 尿検査
    - 尿カルシウム排泄量の測定(高カルシウム尿)
  • 画像検査
    - 骨密度検査(DXA):骨粗鬆症の評価
    - 副甲状腺シンチグラフィー(MIBI):異常部位の特定
    - 頸部エコー:副甲状腺腫瘍の同定

治療

  • 一次性
    - 手術(副甲状腺腫瘍の摘出)が第一選択
    - 経過観察も選択肢(軽症例)
  • 二次性・三次性
    - 活性型ビタミンD製剤、カルシウム受容体作動薬(シナカルセト)
    - リン吸着薬、カルシウム制限
    - 重症例では副甲状腺切除術(PTX)を検討

患者の年齢、合併症、症状の有無に応じて治療法を選択します。

予後

副甲状腺機能亢進症の予後は、原因や治療介入のタイミングによって異なりますが、早期に診断され適切な治療が行われた場合、良好な経過が期待されます。

予後が良好なケース

  • 一次性で腺腫が手術により完全切除された場合
  • 骨密度の改善、血清カルシウムの正常化が得られる
  • 症状が軽度で経過観察でも安定している場合

注意が必要なケース

  • 診断が遅れ、長期にわたり骨や腎臓に障害が蓄積した場合
  • 再発や手術後の低カルシウム血症(ハングリー・ボーン症候群)
  • 二次性や三次性で薬剤治療が不十分な場合は、合併症が進行

定期的な血液検査や骨密度検査を通じた長期フォローが重要です。

予防

副甲状腺機能亢進症の明確な予防法はありませんが、発症リスクを下げるための生活習慣の見直しや基礎疾患の適切な管理が重要です。

予防のための工夫

  • 慢性腎不全の管理:透析患者では定期的なPTH、Ca、Pのチェックを行う
  • カルシウム・ビタミンDの過不足に注意:過剰摂取や不足を避ける
  • バランスの良い食生活:リンの多い加工食品を控える
  • 十分な日光浴と適度な運動:骨密度維持のため
  • 健康診断での血液検査の活用:血清CaやPTHの異常を早期発見

薬剤の注意

  • 利尿薬やサプリメント使用時はカルシウム濃度の変動に注意
  • ビタミンD製剤を使用中の患者は医師の指示を厳守

早期発見が合併症の予防につながります。

関連する病気や合併症

副甲状腺ホルモンの過剰は、さまざまな臓器に長期的な障害を与えるため、合併症の予防と管理が重要です。

主な合併症

  • 骨粗鬆症:PTHによる骨吸収の亢進で骨量が減少
  • 腎結石:尿中へのカルシウム排泄増加により形成されやすい
  • 腎機能障害:カルシウム沈着による間質性腎炎
  • 高カルシウム血症性クリーゼ:急激な意識障害、脱水、腎不全を招くことがある
  • 心血管系疾患:動脈硬化、心筋障害(重症例)
  • 精神神経症状:抑うつ、不安、不眠、記憶障害
  • 消化器症状:便秘、食欲低下、胃潰瘍、膵炎

適切なモニタリングと早期治療によって、多くの合併症は予防・改善が可能です。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

厚生労働省e-ヘルスネット「副甲状腺機能亢進症」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)

日本内分泌学会「副甲状腺疾患診療ガイドライン」(https://www.j-endo.jp/)

日本内科学会「内科学 第11版」

国立国際医療研究センター「副甲状腺の病気」(https://www.ncgm.go.jp/)

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2025/07/16
  • 更新日:2025/07/16

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