胃下垂とは?原因・症状・診断・治療・改善法を医師監修で解説いかすい
「健康診断で胃下垂と言われたけれど、治療が必要なの?」「胃下垂だから太らないのでは?」と疑問に思ったことはありませんか。 胃下垂とは、本来あるべき位置よりも胃が下がっている状態を指します。やせ型の方に多くみられますが、胃下垂そのものは病気ではなく、自覚症状がないまま過ごしている方も少なくありません。一方で、胃もたれや腹部の張り、食欲不振などの症状が現れる場合や、胃の動きが低下した「胃アトニー(胃無力症)」を伴うこともあります。 この記事では、胃下垂とはどのような状態なのかをはじめ、原因や症状、検査・診断方法、治療法についてわかりやすく解説します。また、食事や運動などの改善方法、「胃下垂でも太らないのか」といった疑問や受診の目安についても紹介しますので、胃下垂について正しく理解したい方はぜひ参考にしてください。
胃下垂とは?
胃下垂とは、本来みぞおち付近にある胃が、正常な位置よりも下へ垂れ下がっている状態を指します。
やせ型の方や腹筋が少ない方に多くみられますが、胃下垂そのものは病気ではなく、症状がなければ治療が必要ない場合もあります。一方で、胃の動きが低下すると、胃もたれや腹部の張り、便秘などの症状が現れることがあり、日常生活に支障をきたすケースもあります。
ここでは、胃下垂とはどのような状態なのか、病気との違いや胃アトニーとの関係について解説します。
胃下垂とはどのような状態?
胃下垂とは、胃が正常な位置よりも下方へ垂れ下がっている状態です。
一般的には、立った状態で胃の下端が骨盤付近まで下がっている状態を胃下垂といいます。
胃の位置が低くなっていても、胃の消化機能が正常であれば症状が現れないことも少なくありません。そのため、健康診断やバリウム検査で初めて胃下垂を指摘される方も多くいます。
一方で、胃が下がることで胃の内容物が停滞しやすくなったり、胃の動きが低下したりすると、胃もたれや腹部膨満感などの症状が現れることがあります。
胃下垂は病気なの?
胃下垂そのものは、病気ではなく体の特徴の一つと考えられています。
胃の位置が低いだけで、胃の働きに問題がなければ治療は必要ありません。また、自覚症状がなく、日常生活にも支障がなければ経過観察となることがほとんどです。
一方で、胃もたれや食欲不振、便秘などの症状が続く場合は、胃下垂だけでなく、ほかの消化器疾患や胃アトニーなどが関係している可能性もあります。
症状が続く場合や悪化している場合は、自己判断せず医療機関を受診することが大切です。
胃アトニーとの違い
胃下垂とよく混同される病気に、「胃アトニー(胃無力症)」があります。
胃下垂は胃の位置が下がっている状態を指しますが、胃アトニーは胃の筋肉の働きが低下し、食べ物を送り出す力が弱くなった状態です。
両者の違いは次のとおりです。
|
項目 |
胃下垂 |
胃アトニー(胃無力症) |
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状態 |
胃の位置が下がっている |
胃の動きが低下している |
|
胃の働き |
正常なことが多い |
低下している |
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主な症状 |
無症状の場合も多い |
胃もたれ、腹部膨満感、吐き気など |
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治療 |
症状がなければ不要 |
症状に応じた治療が必要 |
胃下垂の方すべてに胃アトニーがあるわけではありません。しかし、胃下垂に胃アトニーを合併すると、食後の不快感や消化不良などの症状が強く現れることがあります。
胃下垂の原因
胃下垂は、一つの原因だけで起こるものではありません。
生まれつきの体質に加え、腹筋や体幹の筋力低下、姿勢の乱れなど、さまざまな要因が重なることで胃を支える力が弱くなり、胃が正常な位置より下がると考えられています。
ここでは、胃下垂の主な原因について解説します。
生まれつきの体質
胃下垂は、生まれつきの体質が関係していることがあります。
特に、やせ型で身長が高く、筋肉や皮下脂肪が少ない方は、胃を支える組織が弱く、胃が下がりやすい傾向があります。
また、胃や腸を支える靱帯(じんたい)がもともと緩い体質の方も、胃下垂になりやすいと考えられています。
このような体質による胃下垂は珍しいものではなく、症状がなければ治療が必要ない場合も少なくありません。
筋力や腹筋の低下
腹筋や体幹の筋力が低下すると、胃を支える力が弱くなり、胃下垂につながることがあります。
例えば、次のような方では筋力低下が起こりやすくなります。
- 運動不足が続いている
- 急激に体重が減少した
- 長期間寝たきりの状態が続いた
- 加齢により筋力が低下した
腹筋や体幹の筋肉は、胃や腸などの内臓を支える役割も担っています。そのため、筋力が低下すると胃が下垂しやすくなると考えられています。
やせ型との関係
胃下垂は、やせ型の方に多いことで知られています。
これは、体脂肪や筋肉量が少ないことで、胃を支える力が弱くなりやすいためです。
一方で、「胃下垂だから太らない」と考えられることがありますが、医学的に胃下垂そのものが太りにくさの原因になるという明確な根拠はありません。
やせ型の方に胃下垂が多いことから、そのようなイメージが広まったと考えられています。
姿勢や生活習慣
日頃の姿勢や生活習慣も、胃下垂に影響すると考えられています。
例えば、次のような習慣は腹筋や体幹の筋力低下につながる可能性があります。
- 猫背の姿勢が続いている
- 長時間座ったまま過ごすことが多い
- 運動不足
- 無理なダイエットを繰り返している
これらの習慣だけで胃下垂になるわけではありませんが、体質に加えて生活習慣が重なることで、胃を支える力が低下することがあります。
胃下垂の改善や予防のためには、適度な運動や正しい姿勢を意識し、健康的な生活習慣を心掛けることが大切です。
胃下垂の症状
胃下垂の方すべてに症状が現れるわけではありません。
胃の位置が下がっていても、胃の働きが正常であれば自覚症状がないことも多く、健康診断などで偶然見つかるケースもあります。一方で、胃の動きが低下した「胃アトニー(胃無力症)」を伴う場合には、胃もたれや腹部膨満感など、さまざまな消化器症状が現れることがあります。
ここでは、胃下垂でみられる主な症状について解説します。
胃もたれ・消化不良
胃下垂では、食後に胃もたれや消化不良を感じることがあります。
胃が通常より低い位置にあることで、食べ物が胃の中に長くとどまりやすくなり、胃の動きが低下すると消化が遅れることがあるためです。
特に、一度にたくさん食べたときや脂っこい食事の後に症状が現れやすくなります。
「食べたものがなかなか消化されない」「食後も胃が重たい」と感じる場合は、胃下垂や胃アトニーが関係している可能性があります。
食後の膨満感
食後にお腹が張るような感覚(腹部膨満感)も、胃下垂でよくみられる症状の一つです。
食べ物が胃に長くとどまることで、胃が膨らんだ状態が続き、食後に不快感を覚えることがあります。
また、「少し食べただけですぐ満腹になる」「食後に動くのがつらい」と感じる方もいます。
症状が続く場合は、一度に多く食べるのではなく、1回の食事量を減らし、回数を分けることで負担を軽減できる場合があります。
便秘
胃下垂の方では、便秘を伴うことがあります。
胃の位置が下がることで腸の動きにも影響し、便が腸内に長くとどまりやすくなることが一因と考えられています。
また、運動不足や食事量の減少、水分不足なども便秘を悪化させる要因になります。
便秘が続くと腹部膨満感が強くなることもあるため、十分な水分補給や適度な運動を心掛けることが大切です。
吐き気・食欲不振
胃の働きが低下すると、吐き気や食欲不振が現れることがあります。
特に胃アトニーを合併している場合は、胃の内容物が停滞しやすくなるため、「食べたい気持ちはあるのに食べられない」「少量で気持ち悪くなる」といった症状がみられることがあります。
症状が強い場合は、胃下垂だけでなく、ほかの消化器疾患が隠れている可能性もあるため、医療機関で相談しましょう。
無症状の場合もある
胃下垂であっても、自覚症状がまったくない方は少なくありません。
健康診断のバリウム検査や胃カメラ検査で偶然指摘されることも多く、症状がなければ特別な治療は必要ない場合がほとんどです。
一方で、胃もたれや腹部膨満感、食欲不振などが続く場合は、胃アトニーや機能性ディスペプシアなど、ほかの病気が関係している可能性もあります。
気になる症状が続く場合は、自己判断せず消化器内科を受診し、原因を確認することが大切です。
胃下垂セルフチェック
「食後にいつも胃がもたれる」「健康診断で胃下垂と言われたけれど、自分にも症状があるのだろうか」と気になる方もいるでしょう。
セルフチェックは、自分の症状や生活習慣を振り返るきっかけになります。ただし、セルフチェックだけで胃下垂かどうかを判断することはできません。胃もたれや腹部膨満感などは、ほかの消化器疾患でもみられる症状のため、気になる場合は医療機関で検査を受けることが大切です。
ここでは、胃下垂でみられやすい症状を確認できるセルフチェックを紹介します。
セルフチェックで確認できること
次の項目に当てはまるものがないか確認してみましょう。
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該当する |
チェック項目 |
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□ |
食後に胃もたれを感じることが多い |
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□ |
少量の食事でもお腹が張りやすい |
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□ |
食後に胃が下へ引っ張られるような感覚がある |
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□ |
食欲はあるのに食べると苦しくなる |
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□ |
便秘になりやすい |
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□ |
やせ型である |
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□ |
健康診断で胃下垂を指摘されたことがある |
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□ |
猫背や姿勢の悪さを指摘されることが多い |
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□ |
腹筋や体幹の筋力に自信がない |
複数の項目に当てはまる場合は、胃下垂の可能性があります。
ただし、胃下垂があっても症状がない方も多く、反対に胃もたれなどの症状があっても、原因が胃下垂とは限りません。
セルフチェックだけでは診断できない
胃下垂かどうかは、セルフチェックだけでは判断できません。
胃もたれや腹部膨満感、食欲不振などは、次のような病気でもみられることがあります。
- 機能性ディスペプシア
- 胃アトニー(胃無力症)
- 胃潰瘍
- 十二指腸潰瘍
- 胃がん
そのため、医療機関では問診に加え、バリウム検査や胃カメラ検査などを行い、症状の原因を詳しく調べます。
特に、体重減少や強い腹痛、繰り返すおう吐などを伴う場合は、ほかの病気が隠れている可能性もあるため注意が必要です。
気になる場合は医療機関へ相談を
セルフチェックで複数の項目に当てはまる場合や、胃もたれや食欲不振などの症状が続いている場合は、消化器内科を受診しましょう。
特に、次のような場合は早めの受診をおすすめします。
- 胃もたれや腹部膨満感が長く続いている
- 食事が十分に食べられない
- 体重が減少している
- 強い腹痛やおう吐を繰り返す
- 市販薬を飲んでも改善しない
胃下垂そのものは病気ではありませんが、症状がある場合や日常生活に支障が出ている場合は、適切な診断と治療を受けることで症状の改善が期待できます。
胃下垂の検査・診断
胃下垂が疑われる場合は、症状や体質、生活習慣などを確認したうえで、画像検査を行い診断します。
胃もたれや腹部膨満感などは、胃潰瘍や機能性ディスペプシア、胃がんなどでもみられる症状です。そのため、胃下垂だけでなく、ほかの病気が隠れていないかを確認することも重要になります。
ここでは、胃下垂の主な検査・診断方法について解説します。
問診と診察
診断では、まず問診と身体診察が行われます。
医師は、次のような内容を詳しく確認します。
- どのような症状があるか
- 症状はいつから続いているか
- 食事との関係
- 便秘や体重減少の有無
- 過去の病歴や服用中の薬
- 食生活や運動習慣
また、体格や腹部の状態を確認し、胃下垂以外の病気が疑われないかもあわせて診察します。
問診だけで胃下垂と診断することはできないため、必要に応じて画像検査へ進みます。
胃X線検査(バリウム検査)
胃下垂の診断では、**胃X線検査(バリウム検査)**が代表的な検査です。
バリウムを飲んで立った状態でX線撮影を行うことで、胃の形や位置を確認できます。
胃下垂では、胃の下端が正常よりも下がり、骨盤付近まで垂れ下がっている様子が確認されます。
また、胃の形や胃から十二指腸への食べ物の流れも観察できるため、胃の機能を評価するうえでも有用な検査です。
胃カメラ・CT検査
症状によっては、胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)やCT検査が行われることがあります。
胃カメラでは、胃の粘膜を直接観察し、胃炎や胃潰瘍、胃がんなど、胃もたれの原因となる病気がないかを確認します。
一方、CT検査では胃や周囲の臓器の状態を確認し、ほかの病気との鑑別に役立てます。
これらの検査は、胃下垂そのものを診断することよりも、症状の原因となるほかの病気を除外する目的で行われることが多くあります。
検査結果や症状を総合的に判断し、胃下垂による症状なのか、それとも別の病気が原因なのかを診断します。
胃下垂の治療方法
胃下垂と診断されても、症状がなければ治療が必要ない場合がほとんどです。
一方で、胃もたれや腹部膨満感、食欲不振などの症状がある場合は、生活習慣の改善を基本とし、必要に応じて薬物療法を行います。重症で日常生活に大きな支障がある場合には、まれに手術が検討されることもあります。
ここでは、胃下垂の主な治療方法について解説します。
生活習慣の改善
胃下垂の治療では、生活習慣の改善が基本となります。
胃への負担を減らし、胃の働きを保つためには、次のような生活習慣を心掛けることが大切です。
- 一度にたくさん食べず、少量ずつ回数を分けて食べる
- 消化の良い食事を意識する
- 食後すぐに激しい運動をしない
- 十分な睡眠と休養を取る
- 適度な運動を習慣にする
また、腹筋や体幹を鍛えることで、胃を支える力の改善が期待できる場合もあります。
症状が軽い方では、こうした生活習慣の見直しだけで症状が和らぐことも少なくありません。
薬物療法
胃もたれや吐き気などの症状が強い場合は、薬物療法が行われることがあります。
症状に応じて、次のような薬が使用されます。
|
薬の種類 |
主な目的 |
|
消化管運動機能改善薬 |
胃の動きを促し、胃もたれを改善する |
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消化酵素薬 |
消化を助ける |
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制酸薬・胃酸分泌抑制薬 |
胃酸による症状を和らげる |
これらの薬は、胃下垂そのものを治すものではなく、胃もたれや消化不良などの症状を軽減することが目的です。
薬が必要かどうかは症状によって異なるため、自己判断で服用せず、医師の指示に従いましょう。
手術が行われるケース
胃下垂に対して手術が行われることは、ほとんどありません。
多くは生活習慣の改善や薬物療法で症状がコントロールできるためです。
ただし、重度の胃下垂により胃のねじれ(胃軸捻転)を繰り返す場合や、強い症状が続き日常生活に大きな支障がある場合など、ごく限られたケースでは手術が検討されることがあります。
手術が必要になるかどうかは、症状や検査結果を総合的に判断して決定されます。
胃下垂の改善方法
胃下垂そのものを完全に元の位置へ戻す治療法は確立されていません。しかし、食事や運動、姿勢などの生活習慣を見直すことで、胃もたれや腹部膨満感などの症状が改善することがあります。
特に、胃を支える筋肉を鍛えたり、胃への負担を減らしたりすることは、症状の軽減につながると考えられています。
ここでは、日常生活で取り組める胃下垂の改善方法について解説します。
食事の工夫
胃下垂による症状がある場合は、胃に負担をかけない食事を心掛けることが大切です。
一度に大量の食事を摂ると胃がさらに下がりやすくなり、胃もたれや腹部膨満感が悪化することがあります。
食事では、次のような点を意識しましょう。
- 一度に食べる量を減らし、1日4〜5回に分けて食べる
- よく噛んでゆっくり食べる
- 消化の良い食品を選ぶ
- 脂っこい料理や刺激物を摂り過ぎない
- 食後すぐに横にならない
また、栄養バランスの良い食事を続け、極端なダイエットを避けることも大切です。
腹筋・体幹トレーニング
腹筋や体幹を鍛えることで、胃を支える筋肉の維持・強化が期待できます。
特に、腹横筋や腹直筋などの体幹の筋肉は、胃や腸などの内臓を支える役割も担っています。
例えば、次のような運動を無理のない範囲で取り入れるとよいでしょう。
- ウォーキング
- プランク
- ドローイン(腹式呼吸を使った体幹トレーニング)
- 軽い腹筋運動
ただし、症状が強いときや食後すぐの運動は胃に負担をかけることがあるため、体調に合わせて行うことが大切です。
姿勢を改善する
猫背などの悪い姿勢は、腹筋や体幹の筋肉が十分に使われず、胃への負担につながることがあります。
日頃から、次のような姿勢を意識しましょう。
- 背筋を自然に伸ばす
- あごを引き、目線を前に向ける
- 長時間同じ姿勢を続けない
- デスクワーク中は定期的に立ち上がる
姿勢を改善することで、お腹周りの筋肉が働きやすくなり、胃への負担軽減につながる可能性があります。
十分な睡眠と生活リズム
規則正しい生活も、胃の働きを整えるために大切です。
睡眠不足や過度なストレスは、自律神経のバランスを乱し、胃の運動機能に影響を与えることがあります。
胃の不調を改善するためにも、次のような生活を心掛けましょう。
- 毎日できるだけ同じ時間に起床・就寝する
- 十分な睡眠時間を確保する
- ストレスをため込み過ぎない
- 適度に休息を取る
生活習慣を見直しても症状が改善しない場合は、胃下垂だけでなく、胃アトニーや機能性ディスペプシアなどほかの病気が関係している可能性もあります。症状が続く場合は、医療機関へ相談しましょう。
胃下垂でも太らないのは本当?
「胃下垂の人は太らない」とよくいわれますが、医学的に胃下垂そのものが太りにくさの原因になるという明確な根拠はありません。
実際には、胃下垂の方でも体重が増える方はいますし、反対に痩せている方でも胃下垂ではない場合があります。
ここでは、胃下垂と体型の関係や、「太らない」といわれる理由について解説します。
胃下垂と体型の関係
胃下垂は、やせ型の方に多くみられる傾向があります。
これは、腹筋や体幹の筋肉、皮下脂肪が少ないことで、胃を支える力が弱くなりやすいためです。
そのため、「胃下垂の人は細い」というイメージがありますが、胃下垂だから必ず痩せているというわけではありません。
体格や筋肉量には個人差があり、標準体型や肥満の方でも胃下垂になることがあります。
太りにくいといわれる理由
胃下垂の方が太りにくいといわれる背景には、いくつかの理由が考えられます。
例えば、胃もたれや腹部膨満感がある場合は、一度に多くの食事を摂ることが難しくなり、食事量が自然と少なくなることがあります。
また、胃アトニーを合併している場合には、食後の不快感から食欲が低下し、体重が増えにくくなることもあります。
一方で、症状がなく食事量も十分な方では、胃下垂であっても体重は通常どおり増減します。
医学的な考え方
現在のところ、胃下垂そのものが太りにくさの原因になるという医学的根拠は十分ではありません。
やせ型の方に胃下垂が多いことから、「胃下垂だから太らない」というイメージが広まったと考えられています。
そのため、「太らない原因は胃下垂だ」と自己判断することはおすすめできません。
体重が増えない原因には、食事量や運動量だけでなく、甲状腺疾患や糖尿病、消化器疾患などが関係していることもあります。
体重減少が続く場合や、食欲不振などの症状を伴う場合は、胃下垂だけでなく、ほかの病気が隠れていないか確認するためにも医療機関を受診しましょう。
胃下垂で受診する目安
胃下垂そのものは病気ではないため、症状がなければ治療が必要ない場合がほとんどです。
しかし、胃もたれや食欲不振などの症状が続く場合や、日常生活に支障が出ている場合は、胃下垂だけでなく、ほかの消化器疾患が隠れている可能性もあります。
ここでは、受診を検討したほうがよい症状や、注意が必要なケースについて解説します。
早めに受診したほうがよい症状
次のような症状が続く場合は、消化器内科の受診を検討しましょう。
- 胃もたれが続いている
- 食後に強い腹部膨満感がある
- 食欲が低下している
- 吐き気を繰り返す
- 便秘が長く続いている
- 症状によって日常生活に支障が出ている
これらの症状は、胃アトニーや機能性ディスペプシアなど、ほかの病気が原因となっていることもあります。
市販薬を服用しても改善しない場合は、医療機関で原因を確認することが大切です。
ほかの病気が隠れているケース
胃もたれや食欲不振があるからといって、原因が胃下垂とは限りません。
例えば、次のような病気でも似た症状が現れることがあります。
- 胃潰瘍
- 十二指腸潰瘍
- 胃がん
- 機能性ディスペプシア
- 胃アトニー(胃無力症)
特に、急激な体重減少、黒色便、繰り返すおう吐、強い腹痛、貧血などを伴う場合は、重大な病気が隠れている可能性もあります。
このような症状がある場合は、自己判断せず、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。
胃下垂に関連する病気
胃下垂そのものは病気ではありませんが、胃もたれや腹部膨満感などの症状がある場合は、ほかの消化器疾患が関係していることがあります。
また、胃下垂と似た症状を示す病気も多く、症状だけで区別することは困難です。そのため、症状が続く場合は医療機関で適切な検査を受けることが大切です。
ここでは、胃下垂と関連の深い病気について解説します。
胃アトニー(胃無力症)
胃アトニー(胃無力症)は、胃の筋肉の働きが低下し、食べ物を胃から十二指腸へ送り出す力が弱くなる病気です。
胃下垂と混同されることがありますが、胃下垂が「胃の位置」の異常であるのに対し、胃アトニーは「胃の動き」の異常です。
胃アトニーでは、次のような症状がみられます。
- 胃もたれ
- 腹部膨満感
- 吐き気
- 食欲不振
- 少量の食事でも満腹になる
胃下垂に胃アトニーを合併すると、消化不良などの症状が強く現れることがあります。
機能性ディスペプシア
機能性ディスペプシアは、胃カメラなどの検査で異常が見つからないにもかかわらず、胃の不快な症状が続く病気です。
主な症状には、次のようなものがあります。
- 食後の胃もたれ
- みぞおちの痛み
- 少量で満腹になる
- 胃の張り
これらは胃下垂とよく似ているため、症状だけで区別することはできません。
検査でほかの病気がないことを確認したうえで診断されます。
胃食道逆流症(GERD)
胃食道逆流症(GERD)は、胃酸が食道へ逆流することで、さまざまな症状を引き起こす病気です。
代表的な症状は次のとおりです。
- 胸やけ
- 呑酸(酸っぱい液が上がってくる感じ)
- のどの違和感
- 慢性的な咳
胃もたれや食後の不快感を伴うこともあり、胃下垂による症状と似ている場合があります。
症状が長く続く場合は、胃下垂だけでなくGERDの可能性も考慮して検査が行われます。
胃下垂についてのよくある質問
胃下垂は自然に治りますか?
胃下垂そのものが自然に元の位置へ戻ることはあまりありません。
ただし、症状が軽い場合は、食事や運動、姿勢などの生活習慣を見直すことで、胃もたれや腹部膨満感などが改善することがあります。
症状が続く場合は、胃下垂だけでなく、ほかの病気が隠れている可能性もあるため、医療機関へ相談しましょう。
胃下垂は太らないって本当ですか?
胃下垂だから太らないという医学的な根拠はありません。
やせ型の方に胃下垂が多いことから、そのようなイメージが広まったと考えられています。
胃下垂であっても食事量や運動量によって体重は増減するため、「太れない原因は胃下垂」と自己判断せず、気になる場合は医療機関へ相談することが大切です。
胃下垂は食事で改善できますか?
食事だけで胃の位置を元に戻すことはできません。
しかし、一度に食べる量を減らして食事回数を増やしたり、消化の良い食事を心掛けたりすることで、胃もたれや腹部膨満感などの症状が改善することがあります。
胃下垂は運動で改善できますか?
適度な運動や腹筋・体幹トレーニングは、胃を支える筋肉の維持・強化につながるため、症状の改善が期待できる場合があります。
ただし、胃下垂そのものを治すことは難しいため、無理のない範囲で継続することが大切です。
胃下垂は手術が必要ですか?
胃下垂で手術が必要になることはほとんどありません。
多くの場合は、生活習慣の改善や必要に応じた薬物療法によって症状のコントロールが可能です。
ただし、胃軸捻転などの重い合併症がある場合や、日常生活に大きな支障をきたす重症例では、まれに手術が検討されることがあります。
胃下垂を正しく理解して症状とうまく付き合おう
胃下垂は、本来より胃の位置が下がっている状態を指しますが、それ自体は病気ではなく、症状がなければ治療が必要ない場合がほとんどです。
一方で、胃もたれや腹部膨満感、食欲不振などの症状が続く場合は、胃アトニーや機能性ディスペプシアなど、ほかの病気が関係している可能性もあります。
症状がある場合は、食事内容や食べ方を工夫したり、腹筋や体幹を鍛えたりすることで改善が期待できることもあります。気になる症状が続く場合や日常生活に支障がある場合は、自己判断せず消化器内科を受診し、適切な診断と治療を受けましょう。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
日本消化器病学会「機能性消化管障害の診療指針」(https://www.jsge.or.jp/)
厚生労働省e-ヘルスネット「胃下垂とは」(https://kennet.mhlw.go.jp/home)
国立国際医療研究センター「胃の働きと構造異常」(https://www.ncgm.go.jp/)
順天堂大学医学部附属順天堂医院 消化器内科「胃下垂」(https://www.juntendo.ac.jp/hospital/clinic/shokaki/)
■ この記事を監修した医師
赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2025/07/08
- 更新日:2026/08/07
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