突発性難聴とっぱつせいなんちょう

突発性難聴は、前触れなく突然発症する原因不明の難聴で、多くは片耳に起こります。耳鳴りやめまいを伴うこともあり、早期に治療を開始することで回復の可能性が高まります。発症からの時間が予後に大きく影響するため、迅速な受診が重要です。

突発性難聴

突発性難聴とは?

突発性難聴は、突然に、特に片側の耳に起こる感音性難聴の一種で、原因が明らかではないものを指します。多くは朝起きたときや、ふとした瞬間に自覚され、数時間から1日以内に進行します。発症時には、耳が詰まったような感覚(耳閉感)や耳鳴り、めまいを伴うこともあります。

医学的には「72時間以内に明らかな原因なく急に発症した感音難聴で、30dB以上の聴力低下が3つ以上の周波数で認められる」ものと定義されます。

年間発症率は人口10万人あたり20〜30人とされ、男女差はなく、30〜60代に多く見られます。放置すれば聴力の回復が難しくなるため、早期の診断と治療が重要です。

原因

突発性難聴の正確な原因は不明とされていますが、いくつかの要因が発症に関与していると考えられています。現在は主にウイルス感染や内耳の循環障害、ストレスなどが仮説として挙げられています。

【発症に関与すると考えられている要因】

  • ウイルス感染(風邪や帯状疱疹ウイルスなど)による内耳の炎症
  • 内耳の血流障害:内耳を栄養する血管は非常に細く、わずかな循環障害でも聴覚に影響を及ぼす
  • 自己免疫反応:自己抗体が内耳を攻撃することで炎症を引き起こす可能性
  • ストレスや過労:自律神経のバランスが崩れ、内耳の代謝や血流に悪影響を与える
  • 頚椎症や顎関節症など、周辺器官の影響による神経圧迫

ただし、多くの症例で明確な原因が特定されないため、突発性難聴は「原因不明の感音難聴」として扱われます。

症状

突発性難聴の主な症状は、突然の片耳の聴力低下です。症状は程度や併発症により多彩で、軽度から重度まで幅があります。周囲の音がこもって聞こえたり、全く聞こえなくなることもあります。

【主な症状】

  • 突然の片側性難聴(両耳に起こることはまれ)
  • 耳が詰まった感じ(耳閉感)
  • 耳鳴り(高音性が多い)
  • めまい、ふらつき(約3〜4割の患者にみられる)
  • 音のひずみ(音が割れて聞こえる)
  • 方向感覚の異常
  • 話し声の聞き取りにくさやこもり感

めまいや吐き気が強い場合は、メニエール病など他の病気との鑑別が必要となります。特に症状が急激で強いほど、早期の医療介入が求められます。

診断方法と治療方法

診断

突発性難聴の診断は、症状の経過と聴力検査をもとに行います。他の原因による難聴(騒音性難聴、中耳炎、聴神経腫瘍など)との鑑別も重要です。

  • 問診:発症時期、症状の経過、既往歴や生活習慣など
  • 聴力検査:純音聴力検査で30dB以上の低下があるかを評価
  • ティンパノメトリー:中耳に異常がないか確認
  • 平衡機能検査:めまいの有無がある場合に実施
  • MRI検査:必要に応じて聴神経腫瘍や脳血管障害を除外

 

治療

  • ステロイド薬:内耳の炎症や浮腫を抑えるため、早期の内服または点滴治療が基本
  • 循環改善薬:内耳の血流を改善する薬剤を併用
  • ビタミン剤、ATP製剤、代謝改善薬などの補助療法
  • 高気圧酸素療法:一部の施設で行われることがある
  • 安静とストレス軽減:再発防止や回復促進のために重要

治療は発症から1週間以内に開始することが回復の可能性を高めるとされています。

予後

突発性難聴の予後は、発症から治療開始までの時間、聴力低下の程度、めまいの有無などによって大きく左右されます。早期に治療を受けた場合は、3分の1〜半数の患者でほぼ完全に聴力が回復すると報告されています。

【予後が良好なケース】

  • 発症から48時間以内に治療を開始した
  • 軽度〜中等度の聴力低下で、めまいを伴わない
  • 若年で基礎疾患がない

【注意が必要なケース】

  • 治療開始が1週間以上遅れた
  • 重度の難聴で、聴力がほとんど残っていない
  • めまいや吐き気を強く伴う
  • 糖尿病や高血圧などの循環器疾患を合併している

一度失われた聴力は完全には戻らないこともあり、再発は少ないものの片耳失聴が固定化することもあります。

予防

突発性難聴は明確な予防法が確立されていないものの、発症のリスクを下げるためには、日常生活での体調管理やストレスコントロールが重要とされています。

【予防のために意識すべき生活習慣】

  • 十分な睡眠と休息を取る
  • ストレスを溜めすぎない
  • 疲労を感じたときは無理をせず休む
  • バランスの取れた食事を心がける
  • 過度な飲酒や喫煙を控える
  • 風邪やウイルス感染を早めに治療する
  • 血圧や血糖値のコントロール(循環障害の予防)

また、耳の違和感や軽度の聞こえにくさを感じた時点で、すぐに耳鼻咽喉科を受診することが予防的な対応につながります。

関連する病気や合併症

突発性難聴は耳の病気として単独で発症することが多いものの、他の疾患や全身状態とも関連することがあります。とくに鑑別診断や再発予防の観点から、以下の疾患や合併症への理解が重要です。

【関連する疾患や合併症】

  • メニエール病:反復性のめまいを伴う難聴で、症状が似ていることがある
  • 聴神経腫瘍:良性腫瘍による片側性難聴の代表
  • 騒音性難聴:慢性的な音刺激による内耳障害
  • 中耳炎:中耳の炎症に伴う伝音難聴との鑑別が必要
  • 自律神経失調症:内耳の循環異常と関連があるとされる

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

厚生労働省 e-ヘルスネット(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/)

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「突発性難聴 診療ガイドライン」(https://www.jibika.or.jp/)

日本内科学会「内科学 第11版」国立国際医療研究センター「耳・聴力の病気」(https://www.ncgm.go.jp/)

■ この記事を監修した医師

岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック

大阪大学 医学部 卒

東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。

患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。

  • 公開日:2025/06/26
  • 更新日:2025/06/26

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