反回神経麻痺はんかいしんけいまひ

反回神経麻痺は、声帯を動かす神経が障害されることで起こる病気です。声がれや声の出しにくさ、むせやすさ、息苦しさなどがみられます。手術やがんが原因のこともあるため、声のかすれが2週間以上続くときは耳鼻咽喉科を受診しましょう。

⚫︎反回神経麻痺とは?

反回神経麻痺は、声帯を動かす「反回神経」という神経が傷ついたり、うまく働かなくなることで、声帯が十分に動かなくなる状態です。

声帯は、息を吸うときには開き、声を出すときや飲み込むときには閉じて働きます。この動きを反回神経がコントロールしているため、神経にトラブルが起こると

  • 声がかすれる
  • 息が漏れるような声になる
  • 飲み込むときにむせやすい
  • 両側が麻痺すると息苦しさが強くなる

といった症状が出てきます。

麻痺が片側だけか両側か、原因が手術なのか腫瘍(がんなど)なのか、ウイルスなどなのかによって、経過や治療方針が変わります。

⚫︎反回神経麻痺の原因

代表的な原因は次のようなものです。いくつかが重なっていることもあります。

首や胸の手術による神経の損傷

甲状腺の手術、食道・肺の手術、心臓や大動脈瘤の手術、縦隔リンパ節郭清などで、反回神経が近くを通るため、切ったり強く圧迫されたりして麻痺が起こることがあります。

腫瘍(がん・しこり)による圧迫

喉頭がん、下咽頭がん、甲状腺がん、食道がん、肺がん、縦隔腫瘍(胸の中央の腫瘍)、胸部大動脈瘤などが、反回神経を押したり巻き込んだりして麻痺を起こすことがあります。

全身麻酔時の気管挿管

手術中の気管チューブの位置や圧迫がきっかけで、神経が傷つき、麻痺が生じることがあります。

ウイルス感染や神経炎

かぜ・上気道炎の後に、神経に炎症(神経炎)が起こり、はっきりした手術や腫瘍がなくても麻痺が出ることがあります。多くは「特発性(原因不明)」とまとめて呼ばれます。

⚫︎反回神経麻痺の症状は?

典型的には、ある日を境に声が急に変わる、または手術後から声がおかしいと感じることが多いです。次のような症状がみられます。

声のかすれ(嗄声)、高い声が出ない

息が漏れるような「スースーした声」になり、電話や会話が聞き取りにくくなります。長く話すとすぐに声が疲れるのも特徴です。

声が出しにくい/大きな声が出ない

声帯がしっかり閉じられないため、声量が落ちてしまい、人混みや職場で不便を感じやすくなります。

飲み込み時のむせ、誤嚥

飲み物が気管側に入りやすくなり、水やお茶でむせる、食べ物が飲み込みにくいと感じます。これが続くと誤嚥性肺炎のリスクが高まります。

⚫︎受診の目安

次のような場合は、耳鼻咽喉科(できれば音声外来のある施設)への受診を検討してください。

  • 声のかすれ・声の出しにくさが2週間以上続く
  • 突然声が変わり、そのまま良くならない
  • 水やお茶でよくむせる、飲み込みにくい
  • 首や胸の手術後から声がおかしい、息がしにくい
  • 安静時にも息苦しさや、吸うときのヒューヒュー音がある

胸の痛み・強い息苦しさ・意識が遠のく感じなどがある場合は、救急での受診が必要です。迷ったときは早めに医療機関に相談しましょう。

⚫︎診断方法と治療方法(全体像)

反回神経麻痺では

  • 声帯が本当に麻痺しているかどうか
  • どこに原因(腫瘍・手術の影響・神経炎など)があるか
  • 声・飲み込み・呼吸のどの症状をどこまで改善したいか

を整理しながら、検査と治療を組み立てていきます。

治療の基本は

  • 原因となる病気への対処(腫瘍や大動脈瘤など)
  • 声や飲み込みを改善するリハビリ・手術
  • 必要に応じた薬物療法や栄養管理

の組み合わせです。

多くの例では、発症から数か月間は自然回復の様子を見ながら、音声訓練などの保存的治療を行い、その後も症状が残る場合に手術を検討します。

⚫︎反回神経麻痺の診断

1)問診・診察

  • いつから声がれが続いているか
  • 首や胸の手術歴、全身麻酔の有無
  • むせやすい・食事形態・体重減少の有無
  • 胸の痛み、しびれ、神経の症状の有無

などを詳しくうかがい、耳鼻咽喉科医が喉や首を診察します。

2)喉頭内視鏡検査(ファイバー)

鼻や口から細いカメラを入れて、声帯の動きや閉じ方を直接確認します。

  • 片側だけ動かないのか
  • 両側とも動きが悪いのか
  • 腫瘍やポリープなど他の器質的な病変がないか

をチェックし、麻痺の程度や固定位置を評価します。

3)画像検査

反回神経は、脳から首を通り胸の中を回って再び喉に戻る、長い経路をたどります。その途中に原因となる腫瘍などがないかを調べるため

  • 頸部〜縦隔(胸の中央)のCT
  • 必要に応じて、頭部MRIや胸部CT

などを行います。

4)その他の検査

  • 血液検査:炎症や甲状腺機能、腫瘍マーカーなど
  • 神経・筋電図検査:神経のダメージの程度を詳しく評価する場合があります。

原因が特定できない場合でも、一定期間は内視鏡で回復状況を追いながら治療方針を調整します。

⚫︎反回神経麻痺の治療

A. 保存療法(まず行う基本的な治療)

音声治療(リハビリ)

言語聴覚士などの指導で、声の出し方や呼吸法を工夫し、健側の声帯がしっかり動くようにトレーニングします。声門が閉じやすくなり、声のかすれや疲れやすさの改善が期待できます。

薬物療法

末梢神経の回復を助けるビタミンB12などが使われることがあります(劇的な効果をねらう薬ではなく、「回復を支える補助」のイメージです)

B. 声や飲み込みを改善する手術

発症から数か月たっても声のかすれや誤嚥が強く、日常生活や仕事に支障が大きい場合に検討します。

声帯内注入術

麻痺した側の声帯に、ヒアルロン酸などの材料を注入し、声帯を少し膨らませて健側に近づけます。これにより、声帯同士が閉じやすくなり、声のかすれやむせが改善しやすくなります。効果は数ヶ月〜数年で、必要に応じて繰り返します。

甲状軟骨形成術Ⅰ型(声帯内方移動術)

首の皮膚から甲状軟骨(喉仏の骨)に小さな窓を開け、プレートなどで麻痺側の声帯を内側に押し出す手術です。より長期的に声の改善をめざします。

C. 回復期のフォローと再発予防

  • 経過に応じて内視鏡で声帯の動きを確認し、音声訓練や手術後の声の使い方を調整します。
  • むせやすい方では、嚥下リハビリや食事形態の工夫(とろみ付けなど)を並行して行い、誤嚥性肺炎を予防します。

⚫︎反回神経麻痺の予後

発症から3〜6か月程度で自然に改善してくる例も少なくありません。手術後の一時的な麻痺では、半年ほどかけて徐々に回復するケースが多いとされています。
一方で、腫瘍による神経の切断や高度な圧迫、長期間たった麻痺では、完全な回復が難しい場合があります。その場合も、声帯内注入術や甲状軟骨形成術などで、声や飲み込みを改善し、生活の質(QOL)を高めることが治療の目標になります。
両側麻痺で呼吸困難が強い場合には、気管切開や気道を広げる手術などが必要になることがありますが、適切な治療とリハビリで社会生活を続けている方も多くいます。

⚫︎反回神経麻痺の予防

完全に防ぐことは難しい病気ですが、次の点に気をつけることで、早期発見やリスク低減につながります。

  • 首や胸の手術を受ける前に、反回神経麻痺のリスクについて医師から説明を聞き、不安な点は事前に相談しておく
  • 手術後に声が急に変わった、むせやすくなったと感じたら「そのうち治るだろう」と放置せず、早めに耳鼻咽喉科で相談する
  • 長引くせき・血痰・体重減少など、がんを疑う症状がある場合は、放置せずに受診する
  • 日頃からのどを酷使しすぎないよう、適度な声の休息を取る

原因を完全にコントロールすることは困難ですが、「声の変化に早く気づいて受診する」ことが、重い合併症を防ぐうえでとても大切です。

⚫︎反回神経麻痺に関連する病気や合併症

喉頭がん・下咽頭がん

のど周囲のがんが反回神経を侵したり圧迫することで麻痺が生じることがあります。声の変化はがんの初期サインのひとつです。

甲状腺がん・甲状腺手術後の麻痺

甲状腺の中や近くを反回神経が走行しており、腫瘍や手術の影響で麻痺が起こることがあります。

食道がん・肺がん・縦隔腫瘍・胸部大動脈瘤

反回神経は胸の奥を大きく迂回して走っているため、その途中にできた腫瘍や瘤が神経を圧迫し、嗄声や呼吸困難の原因になることがあります。

嚥下障害・誤嚥性肺炎

声帯がしっかり閉じないと、飲み物や食べ物が気管に入りやすくなります。これが続くと誤嚥性肺炎を繰り返し、入退院を繰り返す原因になることがあります。

⚫︎まとめ

反回神経麻痺は、迷走神経の分枝である反回神経の走行経路上(頸部から胸部)における圧迫、浸潤、あるいは術後損傷等により、声帯可動性が消失した状態を指します。

臨床的には嗄声(させい)や誤嚥(ごえん)を主訴としますが、その背景には甲状腺腫瘍、食道癌、肺癌、大動脈瘤などの重篤な疾患が潜伏している可能性があり、速やかな原因検索が不可欠です。

機能面においては、言語聴覚士による音声訓練や嚥下指導、あるいは声帯内注入術や喉頭枠組み手術等の外科的介入により、音声QOLおよび嚥下機能の著明な改善が期待できます。「発声時の息漏れ感」や「反復する誤嚥」を認める際は、早期に耳鼻咽喉科専門医を受診し、適切な精査・加療を計画してください。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック

大阪大学 医学部 卒

東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。

患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。

  • 公開日:2026/03/31
  • 更新日:2026/03/31

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