喉頭乳頭腫こうとうにゅうとうしゅ
喉頭乳頭腫は、ヒトパピローマウイルス(HPV)などが関わり、声帯や気道に「いぼ」のようなできものが多発する良性腫瘍です。声がれや息苦しさの原因となり、再発しやすいのが特徴です。基本は手術で取り除き、必要に応じて薬物療法を併用しながら長期的に経過をみていきます。
目次
⚫︎喉頭乳頭腫とは?
喉頭乳頭腫は、喉頭(こうとう:のどぼとけのあたり)やその周囲の気道に「乳頭(にゅうとう)状」と呼ばれる、イボのような小さな隆起が多数できる病気です。主な発生部位は声帯とその周辺ですが、気管や気管支など、さらに奥まで広がることもあります。
多くは良性腫瘍で、いきなりがんになるわけではありませんが
- 何度もくり返して出てくる(再発しやすい)
- 広い範囲に多発し、気道(空気の通り道)を狭くしてしまうことがある
といった点で、慎重な経過観察と治療が必要な病気です。
年齢によって「若年型(小児に多いタイプ)」と「成人型」に分けられ、若年型の方が再発をくり返しやすいと言われています。一方、多くの若年型は思春期を過ぎるころから落ち着いてくる例もあります。
⚫︎喉頭乳頭腫の原因
ヒトパピローマウイルス(HPV)感染
原因として重要なのが、HPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスです。特に「低リスク型」と呼ばれる6型・11型が関わることが多いとされています。子宮頸がんの原因として有名なHPVの仲間ですが、喉頭乳頭腫の場合は「いぼのような良性腫瘍」をつくるタイプが中心です。
若年型(小児)の発症メカニズム
正確な仕組みはまだ完全には分かっていませんが、分娩時などに母親から胎児へHPVが移行し、それが乳幼児期に喉頭乳頭腫として発症する可能性が指摘されています。
成人型の発症要因
成人では、性的接触など何らかの形でHPVに感染したのち、喉頭の粘膜にウイルスが定着し、時間をかけて乳頭腫を形成すると考えられています。喫煙や胃酸の逆流(逆流性食道炎)、喉の酷使など、喉頭粘膜へ慢性的な刺激が加わることも、発症や増悪に関係している可能性があります。
⚫︎喉頭乳頭腫の症状は?
症状は、乳頭腫のできる場所や広がりによって異なりますが、代表的なものは次の通りです。
声がかれる(嗄声:させい)
最も多い症状です。声帯に乳頭腫ができることで声帯の振動が妨げられ、ガラガラ・ハスキー・弱々しい声になります。風邪が治っても声だけ戻らない、と感じる方もいます。
声が出しにくい、声量が落ちる
特に長く話したり大きな声を出したりすると、声が続かない・息が続かないと感じることがあります。
咳やのどの異物感
のどに何かが付いているような違和感や、軽い咳が続くこともあります。
息苦しさ、呼吸音の変化
乳頭腫が大きくなったり、声帯より下の気道(喉頭・気管)まで広がったりすると、空気の通り道が狭くなる
⚫︎受診の目安
次のような症状がある場合は、耳鼻咽喉科(可能なら音声外来・頭頸部外来)を受診してください。
- 声のかすれが1か月以上続いている
- 風邪が治っても、声だけ戻らない
- 話すとすぐに息切れし、声が続かない
- のどに何か引っかかる感じ、咳が続く
特に
- 安静時でも息苦しい
- ヒューヒュー、ゼーゼーと目立つ呼吸音がする
- 顔色が悪い、唇が紫っぽい
といった場合は、気道がかなり狭くなっている可能性があり、救急受診を含めた早急な対応が必要です。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
診断は
- 問診(声の変化・呼吸の状態・発症年齢など)
- 喉頭内視鏡検査(のどに細いカメラを入れて直接観察)
- 必要に応じた病理検査(組織を顕微鏡で調べる検査)
を組み合わせて行います。
治療の中心は、全身麻酔下での手術(内視鏡手術)で、乳頭腫をできるだけ丁寧に取り除きます。ただし、再発しやすい病気のため、手術は「一度で終わり」とは限りません。再発頻度や広がりに応じて、薬による補助療法(アジュバント療法)が検討されることもあります。
⚫︎喉頭乳頭腫の治療
A. 手術治療(内視鏡的切除)
- 全身麻酔をかけ、口から専用の器具(喉頭鏡)を入れて、顕微鏡や内視鏡で拡大しながら乳頭腫を取り除きます。
- マイクロデブリッダー、レーザー(CO₂レーザーなど)を用いて、できるだけ正常な粘膜や声帯の振動層を温存しながら、腫瘍を削り取ります。
B. 補助療法(アジュバント療法)
再発をくり返す症例や、広範囲に病変がある場合には、手術に加えて次のような治療が検討されることがあります。
抗ウイルス薬(シドフォビルなど)の局所注射
手術の際に乳頭腫の部位へ薬を注射し、再発を抑えることを目指します。
分子標的薬(ベバシズマブなど)の投与
進行例や気道・肺に広がった重症例では、血管新生を抑える薬(ベバシズマブ)を静脈投与して症状が改善した報告も増えています。ただし、まだ「標準治療」とまでは言えず、専門施設で症例を選んで行われます。
インターフェロン療法、ワクチン療法など
インターフェロンの投与や、HPVワクチン(ガーダシルなど)を用いた再発抑制の試みも報告されていますが、効果や適応については研究段階の要素も多く、ケースバイケースで判断されます。
C. 気道確保が必要な場合
乳頭腫が大きく、気道が著しく狭くなっている場合には、緊急で気管切開(首の前から気管に穴をあけて呼吸の道を作る手術)が必要になることもあります。
いずれの場合も、「一度の治療で完全に終わる」と考えるより、「うまく付き合いながら再発をコントロールしていく長期的な病気」とイメージしていただくとよいかもしれません。
⚫︎喉頭乳頭腫の予後
- 多くの例では、丁寧な手術と定期的なフォローにより、日常生活が送れる程度まで症状をコントロールすることができます。
- 若年型では再発をくり返しやすいものの、思春期以降に自然と活動性が落ち着いてくるケースも少なくありません。
一方で
- 何度も手術を繰り返すことで声帯に瘢痕(きずあと)が残り、声がれが後遺症として続く場合があります。
- ごく一部ですが、長期経過の中で乳頭腫の一部ががん化する(悪性化)例も報告されており、定期的な観察が重要です。
重症度には個人差が大きく、「数回の手術で落ち着く方」から「生涯にわたり多数回の治療が必要な方」まで、幅があります。治療方針は、専門医とよく相談しながら、一緒に決めていくことが大切です。
⚫︎喉頭乳頭腫の予防
完全に防ぐ方法はまだ確立されていませんが、次のような点が予防・再発抑制に役立つ可能性があります。
HPVワクチン接種
HPVワクチンは主に子宮頸がんなどの予防目的で用いられていますが、原因となるHPV6・11型にも効果を持つワクチン(4価・9価ワクチン)があり、喉頭乳頭腫の発症・再発を減らす可能性が示されています。ただし、「喉頭乳頭腫の予防」を目的とした正式な適応ではない点に注意が必要です。
禁煙・節煙
成人型では喫煙が病状を悪化させる可能性があるため、禁煙は重要です。喉頭がんなど他の病気の予防にもつながります。
かぜやのどの炎症をこじらせない
のどの炎症が続くと声帯粘膜が荒れ、乳頭腫の症状が悪化しやすくなります。長引くのどの症状は早めに耳鼻咽喉科で相談しましょう。
⚫︎喉頭乳頭腫に関連する病気や合併症
再発性呼吸器乳頭腫症
喉頭だけでなく、気管・気管支・肺まで乳頭腫が広がる病態で、再発をくり返し、呼吸機能に大きな影響を与えることがあります。
喉頭がん
喉頭乳頭腫そのものは良性ですが、長期経過の中で一部ががん化する可能性が指摘されています。また、喫煙など共通の危険因子のため、喉頭がんのリスクも高くなります。
声帯瘢痕・慢性嗄声
繰り返しの手術や炎症により、声帯に瘢痕が残り、声のかすれや出しにくさが慢性的に続くことがあります。
呼吸障害・睡眠時無呼吸
気道が狭くなると、昼間の息切れだけでなく、夜間のいびきや無呼吸の原因になることがあります。
⚫︎まとめ
喉頭乳頭腫は、主にヒトパピローマウイルス(HPV)6型・11型の感染を背景とした、喉頭粘膜の良性腫瘍です。腫瘍の増大に伴い、嗄声(させい)や気道狭窄による呼吸困難を呈するのが特徴です。
本症は外科的切除後も高い再発率を示すため、低侵襲な手術(レーザー焼灼等)の反復や、症例に応じた補助療法の検討など、長期的かつ戦略的な管理が求められます。また、禁煙の徹底や音声衛生の改善も、喉頭環境の維持に寄与します。
遷延する嗄声や労作時喘鳴(ぜんめい)を認める際は、速やかに喉頭内視鏡検査等の精査を推奨いたします。専門医との連携により、音声QOLの保持と安全な呼吸管理の両立を目指してください。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- 病気がみえる vol.13 耳鼻咽喉科(喉頭・気道疾患:喉頭乳頭腫/再発性呼吸器乳頭腫症 など)
(https://www.byomie.com/products/vol13/ J-STAGE+1) - 家庭の医学+「喉頭乳頭腫」
(https://kateinoigaku.jp/disease/1251)
■ この記事を監修した医師
岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック
大阪大学 医学部 卒
東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。
患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。
- 公開日:2026/03/31
- 更新日:2026/03/31
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