クリプトコックス症くりぷとこっくすしょう
クリプトコックス症は、環境中のカビ(クリプトコッカス属)を吸い込むことで起こる感染症です。肺の病気として始まり、免疫力が低い方では髄膜炎(ずいまくえん)など重い合併症を起こすことがあります。早期の受診と抗真菌薬による治療が大切です。
目次
⚫︎クリプトコックス症とは?
クリプトコックス症は、「クリプトコッカス(Cryptococcus)属」というカビ(真菌)による感染症です。特にCryptococcus neoformans(クリプトコックス・ネオフォルマンス)やCryptococcus gattii(クリプトコックス・ガッティ)が原因になります。
このカビは、土壌やハトなど鳥の糞、樹木のまわりなど自然環境に広く存在し、ふだん私たちは少量を吸い込んで暮らしています。しかし、免疫(体を守る力)がしっかりしている多くの人では、感染しても症状が出ないか、ごく軽く済みます。
一方、免疫力が下がっている方(HIV感染症・血液腫瘍・臓器移植後・ステロイドや免疫抑制薬を長期使用中の方、糖尿病など)では、肺や脳・脊髄を包む膜(髄膜)に感染が広がり、重い肺炎や髄膜炎を起こすことがあります。
⚫︎クリプトコックス症の原因
原因となるカビ
原因はCryptococcus属の真菌で、特にC. neoformansとC. gattiiが重要です。C. neoformansは世界中の土壌や鳥の糞に広く存在し、C. gattiiは主に熱帯・亜熱帯の樹木周辺などで問題となります。
感染経路
主な感染経路は「吸い込み(吸入)」です。
- 土やほこり、鳥の糞が乾燥して舞い上がった粉じんを長期間吸い込む
- ハトなどの鳥が集まる場所に頻繁に出入りする]]
といった状況で、肺にカビが入り込みます。人から人へうつることは、通常はないとされています。
⚫︎クリプトコックス症の症状は?
症状は、感染した場所によって大きく変わります。
肺クリプトコックス症
- 無症状(健診のレントゲンで初めて見つかることもあります)
- 長引く発熱
- 微熱
これらは一般的な肺炎や結核、肺がんなどでも見られるため、画像と検査での見きわめが重要になります
クリプトコックス髄膜炎
カビが血液を通じて脳や脊髄を包む膜(髄膜)に広がると、髄膜炎を起こします。
- 強い、または持続する頭痛
- 発熱
- 吐き気・嘔吐
進行すると命にかかわる状態になることもあり、特にHIV感染症などで免疫が弱っている方では、早期発見・早期治療が非常に重要です。
3)播種性クリプトコックス症
肺から全身に広がった場合、次のような症状が出ることもあります。
- 皮膚の発疹やしこり、潰瘍
- 骨の痛み
注意ポイント
- 「長引く咳や微熱」だけで始まり、ゆっくり進行することもあります
- 「頭痛や吐き気が続き、徐々に意識がぼんやりしてくる」場合は、クリプトコックス髄膜炎を含め、緊急性の高い病気の可能性があります
⚫︎受診の目安
次のような場合には、早めに医療機関への受診を検討してください。
- 咳や発熱が数週間以上続き、原因がはっきりしない
- 胸の痛みや息切れ、体重減少・強い倦怠感が続いている
- 強い頭痛・吐き気・意識がぼんやりする・けいれんなどが出てきた
- HIV感染症、がん治療中、ステロイド・免疫抑制薬内服中で、上記のような症状がある
受診先としては、まず一般内科で相談し、必要に応じて呼吸器内科・脳神経内科・感染症内科など専門科に紹介されることが多いです。髄膜炎が疑われる場合は、救急外来での対応が必要となることもあります。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
クリプトコックス症の診断は
症状とこれまでの病歴
- レントゲン・CTなどの画像検査
- 血液・髄液(ずいえき:脳と脊髄を流れる液)の検査
- カビそのものを調べる検査(培養・染色・抗原検査)
などを組み合わせて行います。
治療の基本は、「抗真菌薬(こうしんきんやく:カビを抑える薬)」です。
- 肺だけに限局していて症状が軽い場合:フルコナゾールなどの内服薬が中心
- 髄膜炎や重症例:アムホテリシンB点滴+フルシトシン内服などの強い治療を一定期間行い、その後フルコナゾールで長期の維持療法を行うことが一般的です
治療期間は数か月以上に及ぶこともあり、定期的な血液検査や画像検査で、効果と副作用を確認しながら続けていきます。
⚫︎クリプトコックス症の診断
1)問診・診察
- いつから、どのような症状があるか(咳・発熱・頭痛・吐き気・意識の変化など
- HIV感染症、がん、糖尿病、自己免疫疾患などの有無
- ステロイドや免疫抑制薬、抗がん剤を使っているか
2)画像検査
- 胸部X線や胸部CTで、結節影やすりガラス影、空洞(うつろな部分)などを確認します。
- 髄膜炎が疑われる場合には、頭部CTやMRIで脳の腫れや病変の有無を調べます。
3)血液検査
- 炎症の程度、肝臓・腎臓の機能、電解質などを確認します。
- クリプトコックス抗原検査(血液中のカビの成分を調べる検査)は、診断や治療効果の判断に役立ちます。
⚫︎クリプトコックス症の治療
A. 初期対応(まずやること/基本方針)
- 病型(肺だけか、髄膜炎を起こしているか、全身に広がっているか)と全身状態を評価し、入院の要否を判断します。
- 免疫力が大きく低下している場合は、治療の遅れが命に関わるため、疑いの段階から専門科(感染症内科・呼吸器内科・脳神経内科など)で集中的に対応します。
B. 抗真菌薬による治療
肺クリプトコックス症(軽症~中等症)
フルコナゾールなどのアゾール系抗真菌薬を内服で数か月以上続けます。
クリプトコックス髄膜炎や重症例
アムホテリシンBの点滴+フルシトシン内服による「導入療法」を2週間前後行い、その後フルコナゾールによる「地固め・維持療法」を長期に続ける治療が推奨されています。
C. 髄膜炎・頭蓋内圧亢進への対応
- 髄膜炎では、頭蓋内圧(頭の中の圧)が上がりやすく、頭痛や嘔吐、意識障害の原因になります。
- 必要に応じて、くり返しの髄液穿刺で圧を下げたり、集中治療室での管理が行われることがあります。
⚫︎クリプトコックス症の予後
クリプトコックス症の予後(病気の経過)は
- 肺だけの限局病変か、髄膜炎や播種性か
- 免疫力がどれくらい保たれているか
- 治療開始までにどれだけ時間がかかったか
によって大きく変わります。 - 基礎疾患のない肺クリプトコックス症
適切な抗真菌薬治療により、良好な経過をたどることが多いとされています。
他の感染症を合併しやすく、重症化や再発のリスクが高いため、慎重な経過観察が必要です。
⚫︎クリプトコックス症の予防
完全に防ぐことは難しいですが、次の点に気をつけることでリスクを下げられる場合があります。
日常生活での工夫
- 免疫が弱っている方は、ハトの糞が多い場所やほこりっぽい環境に長時間いることを避ける
- 土いじりや庭仕事をする場合は、マスク・手袋を着用し、作業後の手洗いを徹底する
基礎疾患の管理
- クリプトコックス髄膜炎糖尿病や腎疾患、膠原病などは、主治医と相談しながらコントロールを整える
- ステロイド薬や免疫抑制薬は、必要最小限の量・期間で使用する
⚫︎クリプトコックス症に関連する病気や合併症
クリプトコックス症に関連して、次のような病気や合併症がみられることがあります。
クリプトコックス髄膜炎
クリプトコックス症で最も重要な合併症の一つです。頭痛・発熱・意識障害などを伴い、放置すると脳浮腫や脳ヘルニアなど命にかかわる状態になることがあります。
脳内病変・水頭症
脳の中に結節状の病変(クリプトコッカス腫)をつくったり、脳脊髄液の流れが悪くなって水頭症を起こすことがあります。
肺炎・呼吸不全
肺クリプトコックス症が進行すると、広い範囲で肺炎を起こし、酸素が足りなくなる呼吸不全につながることがあります。
皮膚・骨・その他の臓器病変
発疹・結節・潰瘍性皮膚病変や、骨の痛み・変形などを起こすことがあります。播種性クリプトコックス症では、全身さまざまな臓器に病変が出る可能性があります。
⚫︎まとめ
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- 国立感染症研究所「クリプトコックス症の概要」
(https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/5993-dj4281.html) - 東京都健康安全研究センター「播種性クリプトコックス症」
(https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/cryptococcosis/)
⚫︎クリプトコックス症とは?
■ この記事を監修した医師
赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2026/03/10
- 更新日:2026/03/10
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