副鼻腔囊胞ふくびくうのうほう

副鼻腔囊胞は、上顎洞などの副鼻腔の中に、水分を含んだ袋(嚢胞)ができる病気です。多くは副鼻腔手術や外傷・歯科治療の数年後に見つかり、顔の腫れ・頬や目の痛み・歯の痛み・視力の異常などを起こすことがあります。CTやMRIで診断し、症状が強い場合は内視鏡手術で嚢胞を開放・摘出します。

⚫︎副鼻腔囊胞とは?

副鼻腔囊胞は、上顎洞(じょうがくどう)・篩骨洞(しこつどう)・前頭洞・蝶形骨洞などの「副鼻腔」と呼ばれる空洞の中に、液体をためた袋状の病変(のう胞)ができた状態です。がんではなく、良性の病気です。

のう胞の中には、透明〜黄色の液体ややや粘り気のある液体がたまっています。大きさやできる場所によっては、

  • 顔の片側の痛みや重さ
  • 頬の腫れ、歯の痛み
  • 目の周りの痛みや、ものが二重に見える(複視)、視力低下

などを引き起こすことがあります。

多くはゆっくりと大きくなり、一部は検診や別の病気で撮ったCT・MRIで偶然見つかります。

⚫︎副鼻腔囊胞の原因

副鼻腔囊胞は、大きく「自然にできるタイプ」と「手術や外傷などのあとにできるタイプ」に分けて考えると分かりやすいです。

原発性(自然にできるタイプ)

  • 副鼻腔の粘膜が慢性的に炎症を起こし、粘膜の中にある「粘液を出す線(腺)」の出口がつまります
  • その部分が風船のようにふくらみ、液体がたまって嚢胞になります
  • 慢性副鼻腔炎やアレルギー体質が背景にあることが多いとされています

続発性(手術や外傷などのあとにできるタイプ)

術後性上顎嚢胞

昔の副鼻腔手術(上顎洞根本術など)の数年〜数十年後に、手術した側の上顎洞に嚢胞ができるタイプです。洞の中の粘膜が閉じ込められて袋状にふくらむと考えられています。

顔面外傷後

交通事故や転倒などで顔面骨折をしたあと、骨のずれや瘢痕(きずあと)がきっかけで嚢胞ができることがあります。

歯科治療後

歯ぐきの切開や上顎洞に近い奥歯の治療のあと、数年後になって嚢胞が見つかることがあります。

⚫︎副鼻腔囊胞の症状は?

嚢胞の大きさ・場所・進み方によって症状はさまざまです。小さいうちは症状がほとんどなく、画像検査で偶然見つかることもあります。

嚢胞が大きくなったり、感染(ばい菌が入って膿む)を起こしたりすると、次のような症状がみられます。

  • 頭痛
  • 頬(ほお)や目の下、額の痛み・重さ
  • 顔面の腫れや違和感
  • 歯の痛み(上の奥歯)
  • 片側の鼻づまり、鼻水

嚢胞が目の周りの副鼻腔(篩骨洞・蝶形骨洞)にできて大きくなった場合は、

  • ものが二重に見える(複視)
  • 視力が落ちる
  • 眼球が押し出されたように前に出る

などの「眼の症状」が出ることがあり、早急な治療が必要です。

⚫︎受診の目安

次のような症状がある場合は、早めに耳鼻咽喉科の受診をおすすめします。

  • 顔の片側の痛みや重さが続く、押すと痛い
  • 頬や目の下がなんとなく腫れている気がする
  • 鼻づまりや鼻水が一側に偏っている
  • 上の奥歯の痛みと、同じ側の頬の違和感が続く
  • 視界がぼやける、ものが二重に見える

また、過去に副鼻腔の手術や顔面外傷・歯科治療(特に上あごの奥歯の歯ぐき切開など)を受けたことがある方で、数年後に上記のような症状が出てきた場合も、副鼻腔囊胞が隠れていないかチェックが必要です。

⚫︎診断方法と治療方法(全体像)

診断は、問診と診察に加え、画像検査が重要です。副鼻腔囊胞は鼻の中から直接見えないことも多く、CTやMRIで初めてはっきり分かることが少なくありません。

治療は、

  • 症状がほとんどなく、小さい嚢胞 → 定期的な経過観察
  • 痛みや腫れ、視力障害などがある → 薬+必要に応じて手術

という流れで考えます。嚢胞そのものを「完全に取り除く」というより、閉じ込められた空間を開放して、副鼻腔が元のように通気・排泄できるようにすることが目的です。

▶︎副鼻腔囊胞の診断

1)問診・診察

  • 症状の種類と期間(頭痛、顔面痛、鼻づまり、視力の変化など)
  • 副鼻腔手術歴、顔面外傷歴、歯科治療歴
  • アレルギーや副鼻腔炎の既往

などを確認し、耳鼻咽喉科で鼻の中を観察します。内視鏡検査で副鼻腔の出口周囲の状態や、他の副鼻腔疾患(副鼻腔炎・腫瘍など)の有無をチェックします。

2)画像検査

副鼻腔CT

副鼻腔のどの部分が、どのくらいの大きさの嚢胞に置き換わっているか、骨の壁が外側へ押し広げられていないかなどを確認します。典型的には、「丸くふくらんだ軟部組織濃度(白っぽい部分)」として映ります。

MRI

嚢胞内の液体の性状(サラサラか粘り気が強いか、血液が混じっていないかなど)をより詳しく評価できます。視神経・眼球との位置関係をみるのにも有用です。

3)必要に応じた検査

眼科検査(視力・視野検査)

眼の症状がある場合に行います。

歯科・口腔外科での評価

歯や歯ぐきの病気が疑われる場合には、歯科用CTやレントゲンで歯の状態を確認します。

▶︎副鼻腔囊胞の治療

A. 原因歯の治療

経過観察(様子を見るケース)

  • 嚢胞が小さい
  • 症状がほとんどない
  • 画像上も危険な圧迫(眼や脳へ)がない

といった場合は、定期的にCTや診察を行いながら「経過観察」となることがあります。

B. 薬物治療・穿刺

  • 痛みや腫れがある場合は、消炎鎮痛薬や抗菌薬で炎症や感染を抑えます
  • 嚢胞に針を刺して中の液体を抜く(穿刺・穿刺吸引)ことで、一時的に症状が軽くなることがあります
  • ただし、袋の壁が残っていると再び液体がたまりやすく、根本的な治療にはなりません

C. 内視鏡下鼻・副鼻腔手術(ESSなど)

症状が強い、大きくて骨や眼を圧迫している、繰り返し悪化する、といった場合は、内視鏡(カメラ)を使った鼻内手術が検討されます。

  • 鼻から内視鏡と細い器具を挿入して副鼻腔に到達します
  • 嚢胞の壁を開放し、中身を排出しやすくしたり、場合によっては嚢胞の壁の一部を切除します
  • 同時に副鼻腔炎を伴っている場合は、他の副鼻腔も広く開放し、空気の通りと排泄を良くするように手術します

手術の方法や入院期間は、嚢胞の部位や大きさ、全身状態によって変わりますが、多くは数日の入院で行われています。

⚫︎副鼻腔囊胞の予後

副鼻腔囊胞は良性の病気であり、適切なタイミングで手術を含めた治療を行えば、多くの患者さんで痛みや腫れ、視力の問題などは改善が期待できます。

ただし、

  • 術後性上顎嚢胞のように、手術後かなり時間がたってから再び嚢胞が出てくることがある
  • 嚢胞を開放しても、別の副鼻腔に新たな囊胞ができることがある

など、「完全に二度とできない」とは言い切れません。そのため、手術後も一定期間は定期的な診察・画像検査で経過をみることが大切です。

⚫︎副鼻腔囊胞の予防

はっきりと「これをすれば副鼻腔囊胞を完全に防げる」という方法は分かっていませんが、次のような点を意識するとリスクを減らしたり、早期発見につながったりします。

副鼻腔炎を放置しない

慢性的な鼻づまりや顔の圧迫感が続く場合は、早めに耳鼻咽喉科で評価を受けましょう。

副鼻腔手術後・顔面外傷後のフォロー

過去に副鼻腔の手術や顔面骨折があった方は、数年たってからでも顔の痛みや腫れ・視力の変化があれば、すぐに相談することが大切です。

歯や歯ぐきの病気の早期治療

歯性上顎洞炎や歯科治療後の副鼻腔トラブルが長引くと、嚢胞形成の土台になり得ます。定期的な歯科受診も重要です。

定期検診や画像検査の活用

別の理由で撮ったCTやMRIで副鼻腔の異常を指摘された場合、「今は無症状だから」と放置せず、耳鼻咽喉科で一度詳しく相談しておきましょう。

⚫︎副鼻腔囊胞に関連する病気や合併症

慢性副鼻腔炎

慢性的な副鼻腔炎の経過中に粘膜が嚢胞化することがあり、両者が混在することも多いです。

術後性上顎嚢胞

昔の上顎洞手術のあとの副作用として知られており、歯性上顎洞炎と紛らわしい症状を示すことがあります。

歯性上顎洞炎

歯由来の感染が副鼻腔に広がった状態で、嚢胞との鑑別が必要です。両者が合併しているケースもあります。

眼合併症(視力障害・複視など)

前頭洞・篩骨洞・蝶形骨洞の嚢胞が大きくなると、眼球や視神経を圧迫し、視力低下や複視を引き起こすことがあります。

⚫︎まとめ

副鼻腔囊胞は、副鼻腔の中にできる水ぶくれのような良性の袋で、多くはゆっくりと大きくなります。

小さいうちは無症状でも、頬の痛みや腫れ、頭痛、視力の異常など、日常生活に影響する症状を引き起こすことがあります。

CTやMRIで正しく診断し、症状や大きさに応じて「経過観察」「薬による治療」「内視鏡手術」などを選択することで、多くは良好な経過が期待できます。

顔や鼻・目のまわりの違和感が長く続くときは、我慢せず耳鼻咽喉科に相談し、早めに原因を確認しておきましょう。

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

岩野 圭佑医師 西梅田シティクリニック

大阪大学 医学部 卒

東京大学教養学部イギリス科卒業後、株式会社DeNAで新卒採用業務、Terramotors株式会社で営業・広報・採用業務に従事。
大阪大学医学部医学科に学士編入し卒業後、兵庫県立西宮病院で初期研修を修了。
大阪市立総合医療センター、大阪大学医学部附属病院にて耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研修した後、大手美容内科に転職し院長として勤務。
令和7年1月、兵庫県芦屋市に『芦屋駅前皮フ科ビューティクリニック』を開設。

患者様を第一に考え、一般皮膚科・美容皮膚科のクリニックを経営するとともに、大手美容内科の院長として長年の経験を蓄積。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医時代には悪性腫瘍の手術や病棟管理を数多く担当し、現在も非常勤で救命救急科医師として医療現場で勤務。
医療機関の開業支援やM&A仲介、人材紹介といった医療ビジネスにも積極的に取り組み、医療の質とアクセス向上を目指している。

  • 公開日:2026/03/31
  • 更新日:2026/03/31

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