麻疹まあし
麻疹は、非常に感染力の強い麻疹ウイルスによる急性のウイルス感染症です。かぜのような症状から始まり、高熱・せき・鼻水・目の充血に続いて、顔から全身に広がる発疹が出ます。肺炎や脳炎など重い合併症のリスクがあり、ワクチンによる予防が最も重要です。
目次
⚫︎麻疹とは?
麻疹は、麻疹ウイルスによって起こる全身性のウイルス感染症で、主に小児に多いものの、大人がかかると重症化しやすいことも知られています。
空気中に漂うウイルスを吸い込むことで感染し、免疫(ワクチン接種歴や過去の罹患歴)がない人が感染すると、ほぼ発症すると言われるほど感染力が非常に強いのが特徴です。
発症すると、かぜ様の症状(発熱・せき・鼻水・目の充血)に続いて、コプリック斑(口の中に出る白い斑点)と、顔から体・手足へと広がる特徴的な発疹が現れます。多くは回復しますが、肺炎や脳炎など命に関わる合併症を起こすことがあり、決して「子どもの軽い病気」ではありません。
⚫︎麻疹の原因
麻疹の原因は「麻疹ウイルス」という一本鎖RNAウイルスで、パラミクソウイルス科に属します。
感染経路
- 空気感染:咳やくしゃみで出たウイルスが空気中を漂い、それを吸い込んで感染します
- 飛沫感染:近距離での会話や咳・くしゃみによるしぶきを吸い込むことで感染します
- 接触感染:ウイルスのついた手で口や鼻、目を触ることでも感染することがあります
麻疹ウイルスは空気中でもしばらく生存でき、同じ室内にいるだけでもうつるほど感染力が強いため、手洗いやマスクだけでは完全な予防は難しく、ワクチンによる免疫獲得がとても重要です。
潜伏期間は通常10〜12日程度で、その後かぜ様症状が出始めます。発疹が出るおよそ4日前から、発疹出現後4日ごろまで他人にうつしやすいとされています。
⚫︎麻疹の症状は?
典型的には、次のような流れで症状が進みます。
前駆期(発疹が出る前の時期)
- 38〜39度前後の発熱
- 強いせき(乾いたせき)、鼻水
- 目の充血、めやに、まぶしさ(結膜炎)
この時期は、インフルエンザやほかのかぜと区別がつきにくい状態です。
発疹期
- いったん熱が少し下がった後、再び高熱(39〜40度)になります。
- 顔(特に耳の後ろや髪の生え際)から赤い発疹が出始め、首→体→手足へと2〜3日かけて広がります。発疹は次第に融合し、全身が赤く見えることもあります。
回復期
- 発疹が消えていくのとともに熱も下がり、茶色い色素沈着を残すことがあります。
- ただし、合併症を起こした場合は、回復が遅れたり、状態が急に悪化したりすることがあります。
注意ポイント
- 小さなお子さんや妊婦さん、免疫が落ちている方(がん治療中・免疫抑制薬を使用中など)は重症化しやすいとされています。
- 息苦しさ、ぐったり感、けいれんなどが見られる場合は、すぐに受診・救急要請が必要です。
⚫︎受診の目安
次のような場合は、早めの受診を検討してください。
- 38度以上の発熱と、せき・鼻水・目の充血が数日続いている
- 顔から始まって全身に広がる発疹が出てきた
- 口の中に白いブツブツ(コプリック斑のようなもの)が見られる
- 麻疹の人と接触した、または流行地域に行った後に発熱・発疹が出てきた
- ぐったりして元気がなく、水分もあまり取れない
麻疹は感染力が強いため、「麻疹かもしれない」と感じた場合は、すぐに医療機関へ行くのではなく、まず電話で症状や受診方法を相談し、指示に従って受診することが勧められます。来院時はマスクを着用し、可能であれば公共交通機関の利用を避けてください。
⚫︎診断方法と治療方法(全体像)
診断
- いつからどのような症状が出ているか(発熱・咳・鼻水・目の充血・発疹の順序など)
- ワクチン接種歴や麻疹患者との接触歴、海外渡航歴
- 診察での発疹の性状やコプリック斑の有無
治療
麻疹ウイルスそのものを直接攻撃する特効薬はなく、基本的には「対症療法(症状を和らげる治療)」が中心です。重症の方や合併症を起こしている方では、入院して点滴や酸素投与などの全身管理が必要になることがあります。
⚫︎麻疹の診断
1)問診・診察
- 発熱・咳・鼻水・目の充血・発疹の出現する順番やタイミングを詳しく聞きます
- ワクチン(MRワクチン)の接種歴、麻疹の既往歴、麻疹が流行している地域への渡航歴、麻疹患者との接触歴などを確認します
- 全身の発疹の広がり方や、口腔内のコプリック斑の有無、呼吸状態などを診察します
2)検査
- 血液検査:炎症反応や肝機能、白血球などを確認するとともに、麻疹特異的IgM抗体やIgG抗体を測定して、急性感染かどうかを判断します
- ウイルス遺伝子検査(PCR):咽頭ぬぐい液や血液などから麻疹ウイルスの遺伝子を検出することがあります
- 必要に応じて、胸部レントゲンやCTで肺炎の有無を評価します
典型的な症状と発疹が揃っている場合には、臨床的に麻疹と診断し、検査結果を待たずに治療と感染対策を開始することもあります。
⚫︎麻疹の治療
A. 初期対応(まずやること/基本方針)
安静と十分な水分・栄養補給
脱水を防ぐため、こまめな水分摂取が大切です。食欲がない場合は、消化の良いものを少しずつ摂りましょう。
解熱鎮痛薬
高熱によるつらさを和らげるために、アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬を使用します(市販薬の自己判断使用は避け、医師・薬剤師の指示に従いましょう)。
目や鼻のケア
結膜炎による目の充血やゴロゴロ感が強い場合は、刺激の少ない点眼薬や清拭で対応することがあります。
B. 入院治療が必要な場合
次のような場合は入院での管理が必要になることがあります。
- 強い呼吸困難、低酸素状態(息苦しさ、チアノーゼなど)
- 脳炎が疑われる場合(けいれん、意識障害、異常な行動など)
- 重い肺炎や中耳炎などを合併している場合
- 乳児、高齢者、免疫不全状態の方など重症化リスクが高い場合
入院中は、点滴による水分・栄養補給、酸素投与、必要に応じて抗菌薬(細菌の二次感染が疑われる場合)などを行い、全身状態を慎重にモニタリングします。
C. 補助的治療
- ビタミンA投与(海外のガイドラインでは、特に小児の重症例にビタミンA投与が推奨されることがあります)
- けいれんが起こった場合は、けいれん止めの薬を用いて治療を行います。
⚫︎麻疹の予後
- 多くの方は1〜2週間ほどで解熱し、発疹も徐々に消えていきます。発疹が消えたあとに一時的な色素沈着が残ることがありますが、時間とともに薄くなります。
- 一方で、麻疹は合併症によって命に関わることのある病気です。主な合併症には、肺炎、中耳炎、脳炎、けいれんなどがあります。
- 長期的な合併症として、非常にまれですが「亜急性硬化性全脳炎(SSPE)」と呼ばれる重い脳の病気を、麻疹罹患から数年〜十数年後に発症するケースも報告されています。
- 特に、1歳未満の乳児、妊婦さん、免疫不全のある方では重症化リスクが高く、早期の診断と入院管理が重要です。
⚫︎麻疹の予防
麻疹予防の柱は「ワクチン接種」です。
MRワクチン(麻疹風疹混合ワクチン)
- 日本では、1歳と小学校入学前の1年間(5〜6歳)の計2回の定期接種が推奨されています
- 2回接種することで、多くの方が十分な免疫を獲得できるとされています
接触後の対応
- 麻疹患者と接触してから72時間以内であれば、麻疹含有ワクチンの接種で発症を防げる可能性があります。
- 接触後4〜6日以内であれば、免疫グロブリン(γグロブリン)注射で症状を軽くできる可能性があります。ただし、これは特殊な対応であり、必要性や適応については医師と相談が必要です。
一般的な感染対策
麻疹は空気感染するため、手洗い・マスクだけで完全に防ぐことはできませんが、他の感染症予防の意味でも以下は有用です。
- 体調不良の時は無理をせず休養する
- 咳やくしゃみが出るときはマスク着用・咳エチケットを守る
- 人混みへの外出は体調に応じて控える
⚫︎麻疹に関連する病気や合併症
肺炎
麻疹に伴う肺炎は、最も頻度の高い重い合併症の一つで、呼吸不全に至ることもあります。
中耳炎
子どもでは中耳炎を合併しやすく、耳の痛みや発熱の持続、難聴の原因になることがあります。
脳炎
麻疹脳炎は発疹出現の前後に起こることが多く、けいれんや意識障害を伴う重篤な合併症です。
亜急性硬化性全脳炎(SSPE)
非常にまれですが、麻疹罹患から数年〜十数年後に発症し、進行性に神経障害を起こす病気で、予後不良とされています。
⚫︎まとめ
麻疹は、ウイルスによって高熱と全身の発疹が引き起こされる病気です。非常に感染力が強く、肺炎や脳炎といった命に関わる重い合併症を伴うことも少なくありません。
残念ながら、麻疹を直接治す特効薬はまだありません。基本は安静にして症状を和らげる対症療法が中心となり、重症の場合は入院が必要になることもあります。
一方で、予防の主役となる「MRワクチン」の効果は極めて高く、2回の接種でほとんどの方が十分な免疫を得ることができます。もし「熱が出て体に発疹が広がってきた」という時は、無理に登校・出社せず、まずは電話で医療機関に相談しましょう。あなたの一歩早い行動が、自分と周りの大切な人を守ることに繋がります。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- 国立成育医療研究センター「はしか(麻しんウイルス感染症)にご注意ください!!」
(https://www.ncchd.go.jp/center/pr/info/0526.html) - 麻しん発生時対応ガイドライン 〔厚生労働省・国立健康危機管理研究機構〕(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002jsve-att/2r9852000002jsy0.pdf)
■ この記事を監修した医師
赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2026/03/06
- 更新日:2026/03/06
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