コレラこれら
コレラはコレラ菌に汚染された水や食べ物からうつる急性の下痢症です。突然始まる大量の水のような下痢で、短時間に重い脱水を起こすことがあり、流行地域への渡航歴がある場合は早めの受診と補液がとても大切です。
コレラとは?
コレラは、コレラ菌(Vibrio cholerae)に感染することで発症する感染症です。主に汚染された飲み水や食品を口にすることで感染し、激しい下痢や嘔吐を引き起こします。
世界では現在もアジアやアフリカなどを中心に流行がみられていますが、日本国内での発生は多くありません。しかし、海外の流行地域へ渡航した方が帰国後に発症する「輸入感染症」として報告されることがあります。
コレラの特徴は、水のような大量の下痢によって短時間で脱水症状が進行しやすいことです。重症になると血圧低下やショック状態に陥ることもありますが、早期に適切な補液や治療を受ければ、多くの場合は回復が期待できます。
感染症法では、コレラは全数把握対象の感染症に指定されており、診断した医師は保健所へ届け出ることが義務付けられています。そのため、患者本人への治療だけでなく、感染拡大を防ぐための公衆衛生対策も重要な病気です。
コレラはどんな病気?
コレラは、コレラ菌が小腸で産生する「コレラ毒素」によって発症する細菌感染症です。
体内に侵入したコレラ菌は、小腸に定着して毒素を放出します。この毒素の働きによって腸管から大量の水分や電解質が失われるため、水のような激しい下痢が起こります。
一般的な細菌性食中毒では発熱や腹痛が目立つことがありますが、コレラでは高熱を伴わないことが多く、腹痛も比較的軽い傾向があります。その一方で、短時間のうちに大量の水分が失われるため、脱水症状が急速に進行しやすい点が大きな特徴です。
適切な治療を受けない場合は、重度の脱水や循環不全によって命に関わることもありますが、早期に補液療法を開始すれば死亡率は大きく低下します。
原因となるコレラ菌とは
コレラの原因となるのは、「コレラ菌(Vibrio cholerae)」と呼ばれる細菌です。
コレラ菌は塩分を含む水環境で生息しやすく、河口や沿岸部などの水域から検出されることがあります。特に、コレラ毒素を産生する「O1」および「O139」という血清群が流行の原因となることが知られています。
感染したからといって、すべての人が重症化するわけではありません。感染しても症状が現れない人や、軽い下痢だけで回復する人もいます。一方で、高齢者や乳幼児、免疫力が低下している方では重症化しやすいため注意が必要です。
日本でも発生する?
日本では上下水道や食品衛生環境が整備されているため、国内でコレラが流行することはほとんどありません。
しかし、海外の流行地域へ渡航した方が感染し、帰国後に発症する輸入症例は毎年報告されています。感染の多くは、衛生環境が十分ではない地域で、生水や十分に加熱されていない魚介類などを飲食したことが原因とされています。
そのため、海外旅行や出張の予定がある方は、渡航先の感染症情報を事前に確認し、飲食物の衛生管理を徹底することが大切です。また、帰国後に激しい下痢や嘔吐が続く場合は、海外渡航歴を医師に伝えたうえで速やかに医療機関を受診しましょう。
コレラの原因
コレラは、コレラ菌(Vibrio cholerae)が体内に侵入することで発症する感染症です。主な感染経路は、コレラ菌で汚染された飲み水や食品を口にすることによる経口感染です。
日本では衛生環境の整備により感染する機会はほとんどありませんが、コレラが流行している地域では、安全ではない水や十分に加熱されていない食品が感染源となることがあります。
ここでは、コレラの原因となる菌や感染経路、食べ物や水から感染する理由について解説します。
原因となる菌
コレラの原因となるのは、コレラ菌(Vibrio cholerae)という細菌です。
コレラ菌にはさまざまな種類がありますが、世界的な流行の原因となるのは「O1」と「O139」という血清群です。これらの菌は小腸でコレラ毒素を産生し、大量の水分と電解質を腸管内へ排出させることで、水のような激しい下痢を引き起こします。
一方、コレラ菌に感染しても、すべての人が重い症状を示すわけではありません。症状が現れない人や軽い下痢だけで回復する人もいます。しかし、高齢者や乳幼児、基礎疾患のある方では重症化しやすいため注意が必要です。
感染経路
コレラは、人から人へ直接感染することはほとんどなく、主にコレラ菌で汚染された水や食品を介して感染します。
主な感染経路は次のとおりです。
- 汚染された飲み水を飲む
- 十分に加熱されていない魚介類を食べる
- 汚染された食品を口にする
- 汚染された水で調理・洗浄された食品を食べる
コレラ菌は胃酸に弱い細菌ですが、大量の菌を摂取した場合や胃酸の分泌が低下している場合は感染しやすくなると考えられています。
また、患者の便や嘔吐物にはコレラ菌が含まれているため、適切に処理されないと周囲の水や食品を汚染し、感染が広がる原因となることがあります。
食べ物・水から感染する理由
コレラ菌は水中で生存しやすく、衛生環境が十分でない地域では、飲み水や食品が汚染されることで感染が広がります。
特に注意したいのは、次のような飲食物です。
- 加熱されていない魚介類
- 生野菜や果物
- 氷の入った飲み物
- 十分に煮沸されていない水
これらは、調理や洗浄の際に汚染された水が使われていると、コレラ菌が付着している可能性があります。
そのため、コレラが流行している地域では、「加熱した食品を食べる」「密封された飲料水を選ぶ」「氷入りの飲み物を避ける」といった基本的な衛生対策が重要です。海外旅行や出張の際は、現地の飲食物に十分注意することで感染リスクを大きく減らすことができます。
コレラの症状は?
コレラに感染すると、数時間から数日程度の潜伏期間を経て症状が現れます。感染しても症状が出ない人や軽い下痢だけで終わる人もいますが、重症化すると短時間で大量の水分が失われ、命に関わる状態になることがあります。
特徴的な症状は、「米のとぎ汁」のように白く濁った大量の水様便です。適切な水分補給や治療が遅れると、急速に脱水症状が進行するため注意が必要です。
ここでは、潜伏期間や初期症状、重症化した場合の症状について解説します。
潜伏期間
コレラの潜伏期間は、一般的に数時間から5日程度とされています。多くの場合は、感染後2~3日以内に症状が現れます。
潜伏期間には個人差があり、体内に取り込んだ菌の量や健康状態によって異なります。また、感染しても無症状のまま経過する人も少なくありません。
海外旅行や出張から帰国した後に下痢や嘔吐が始まった場合は、渡航先や滞在期間を医師に伝えることが診断の手がかりになります。
初期症状
コレラの初期症状として最も多いのは、水のような下痢です。
はじめは軽い下痢でも、短時間のうちに排便回数が増え、大量の水様便になることがあります。便は白く濁り、「米のとぎ汁様便」と表現されることがコレラの特徴です。
主な症状は次のとおりです。
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症状 |
特徴 |
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水様性の下痢 |
大量の水分を含み、米のとぎ汁のような白く濁った便がみられる |
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嘔吐 |
下痢と同時に起こることが多い |
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脱水 |
のどの渇き、尿量の減少、皮膚の乾燥などが現れる |
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筋肉のけいれん |
水分や電解質が失われることで起こりやすい |
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倦怠感 |
脱水の進行に伴って全身のだるさを感じる |
一方で、高熱や強い腹痛はあまりみられないことが多く、一般的な細菌性食中毒との違いの一つとされています。
重症化するとどうなる?
コレラが重症化すると、大量の下痢や嘔吐によって体内の水分と電解質が急速に失われます。
その結果、次のような症状が現れることがあります。
- 強い口の渇き
- 尿がほとんど出なくなる
- 血圧の低下
- 脈が速くなる
- 意識がぼんやりする
- 手足が冷たくなる
脱水がさらに進行すると、循環不全やショック状態に陥り、腎機能の低下や意識障害を引き起こすこともあります。特に乳幼児や高齢者、基礎疾患のある方では重症化しやすいため注意が必要です。
激しい水様性の下痢や嘔吐が続き、水分が十分に摂れない場合は、自己判断で様子を見るのではなく、速やかに医療機関を受診しましょう。早期に補液療法を開始することで、多くの場合は重症化を防ぐことができます。
コレラが疑われるときの受診の目安
コレラは、早期に適切な治療を受けることで回復が期待できる感染症です。一方で、大量の下痢や嘔吐によって短時間で脱水症状が進行することがあり、受診が遅れると重症化するおそれがあります。
特に、コレラが流行している地域への渡航歴がある方や、帰国後に激しい水様性の下痢が現れた方は注意が必要です。
ここでは、医療機関を受診する目安について解説します。
すぐ受診すべき症状
次のような症状がみられる場合は、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。
- 大量の水様性の下痢が続いている
- 嘔吐を繰り返し、水分が十分に摂れない
- のどの渇きが強い
- 尿の量が減っている、または半日以上尿が出ない
- めまいや立ちくらみがある
- 意識がぼんやりしている
- 手足が冷たく、ぐったりしている
特に、乳幼児や高齢者、妊婦、基礎疾患のある方は脱水症状が進みやすいため、早めの受診が重要です。
また、市販の下痢止めを自己判断で使用すると、病状の把握が遅れる場合があります。激しい下痢や脱水症状がある場合は、自己判断せず医療機関へ相談してください。
海外渡航歴がある場合
コレラは、日本国内で発生することはまれですが、海外の流行地域で感染し、帰国後に発症するケースがあります。
特に、アジアやアフリカ、中東などコレラの流行が報告されている地域へ渡航した後に、下痢や嘔吐などの症状が現れた場合は、コレラを含む感染症の可能性があります。
受診する際は、次のような情報を医師へ伝えると診断の参考になります。
- 渡航した国や地域
- 渡航期間
- 帰国した日
- 現地で食べたものや飲んだもの
- 同行者にも同様の症状があるか
海外渡航後の感染症は、コレラ以外にもさまざまな病気が考えられます。渡航歴を正確に伝えることで、適切な検査や治療につながります。
コレラの診断方法
コレラが疑われる場合は、症状や海外渡航歴、食事内容などを確認したうえで、便検査を中心に診断が行われます。
コレラは感染症法で全数把握対象の感染症に指定されているため、診断が確定した場合は、医師が保健所へ届け出ることが義務付けられています。
ここでは、コレラの主な診断方法について解説します。
1)問診・診察
診断では、まず問診と診察が行われます。
医師は、下痢や嘔吐の回数、便の状態、発熱の有無、脱水症状の程度などを確認します。また、コレラは海外で感染するケースが多いため、渡航歴や現地での飲食内容について詳しく聞き取ります。
問診で確認される主な内容は次のとおりです。
- 症状が始まった時期
- 下痢や嘔吐の回数
- 便の色や性状
- 海外への渡航歴
- 生水や十分に加熱されていない食品を摂取したか
- 同行者や家族に同様の症状があるか
また、診察では血圧や脈拍、体温、皮膚の乾燥、口の渇きなどを確認し、脱水症状の程度を評価します。
2)便の検査
コレラを診断するうえで最も重要なのが便検査です。
採取した便を培養し、コレラ菌が存在するかどうかを調べます。また、必要に応じて遺伝子検査などを行い、コレラ毒素を産生する菌かどうかを確認することもあります。
便検査は、コレラだけでなく、ほかの細菌性腸炎との区別にも役立つ検査です。
3)血液検査
血液検査は、コレラ菌を直接調べるためではなく、脱水症状や全身状態を確認する目的で行われます。
大量の下痢や嘔吐によって体内の水分や電解質が失われるため、次のような項目を確認します。
- ナトリウムやカリウムなどの電解質
- 腎機能
- 炎症反応
- 血液濃縮の程度
これらの結果をもとに、補液の量や治療方針が決定されます。
4)感染症法に基づく届出
コレラは、日本では感染症法に基づく全数把握対象の感染症です。
そのため、診断した医師は、速やかに最寄りの保健所へ届け出を行います。
届け出が行われることで、感染経路の調査や接触者への対応、感染拡大を防ぐための公衆衛生対策が実施されます。
患者本人は医療機関の指示に従い、十分な治療を受けるとともに、手洗いや排泄物の適切な処理など感染拡大防止への協力が大切です。
コレラの治療
コレラの治療では、失われた水分や電解質を速やかに補うことが最も重要です。適切な補液を早期に開始することで、多くの患者さんは回復が期待できます。
症状が重い場合や脱水が進行している場合には、点滴による治療や抗菌薬を使用することもあります。患者さんの脱水の程度や全身状態に応じて、治療方法が選択されます。
ここでは、コレラの主な治療法について解説します。
脱水の補正
コレラ治療で最も優先されるのが、脱水の補正です。
大量の水様性下痢や嘔吐によって、体内の水分や電解質は急速に失われます。そのため、脱水症状の程度を評価し、できるだけ早く水分補給を開始します。
軽症から中等症では、経口補水液(ORS)による水分補給が基本となります。経口補水液には、水分だけでなくナトリウムやカリウムなどの電解質も含まれているため、効率よく体内のバランスを整えることができます。
一方で、次のような場合には点滴による補液が必要です。
- 重度の脱水症状がある
- 意識障害がある
- 嘔吐が続き、水分を飲めない
- 血圧が低下している
脱水症状は短時間で悪化することがあるため、医療機関では血圧や脈拍、尿量などを確認しながら補液量を調整します。
抗菌薬
コレラでは、必要に応じて抗菌薬による治療が行われます。
抗菌薬を使用すると、下痢が続く期間を短縮し、便中へ排出されるコレラ菌の量を減らす効果が期待できます。その結果、症状の改善だけでなく、周囲への感染拡大を防ぐことにもつながります。
ただし、すべての患者さんに抗菌薬が必要というわけではありません。軽症の場合は、適切な補液だけで回復することも少なくありません。
また、コレラ菌には抗菌薬が効きにくい薬剤耐性菌も確認されているため、地域の流行状況や検査結果を踏まえながら、適切な薬剤が選択されます。
重症例で行う治療
重症のコレラでは、集中管理のもとで治療が行われます。
大量の下痢によって重度の脱水やショック状態になると、点滴だけでなく、全身状態を継続的に観察しながら治療を進める必要があります。
重症例では、次のような管理が行われます。
- 大量輸液による循環管理
- 電解質異常の補正
- 腎機能の確認
- 血圧や脈拍、尿量などのモニタリング
- 必要に応じた酸素投与
特に、乳幼児や高齢者、基礎疾患のある方では脱水が進行しやすく、短時間で容体が悪化することがあります。
しかし、適切な補液療法と全身管理を早期に開始すれば、多くの患者さんで回復が期待できます。そのため、大量の水様性下痢や脱水症状がみられた場合は、自己判断せず、できるだけ早く医療機関を受診することが大切です。
コレラの予後
コレラは、早期に適切な治療を受ければ回復が期待できる感染症です。一方で、治療が遅れたり脱水症状が進行したりすると、重篤な状態に陥ることがあります。
予後は、治療開始までの時間や脱水の程度、年齢、基礎疾患の有無などによって異なります。
ここでは、治療を受けた場合と受けなかった場合の予後について解説します。
治療した場合
コレラは、適切な補液療法を速やかに開始することで、多くの患者さんが回復します。
軽症であれば経口補水液による水分補給のみで改善することもあり、重症例でも点滴や抗菌薬などの治療を適切に行えば、症状は数日以内に改善することが一般的です。
また、脱水症状を早期に補正することで、腎機能障害やショックなどの重い合併症を予防できる可能性が高くなります。
症状が改善した後も、医師の指示に従って十分な水分補給を続け、体調の変化に注意しながら回復を目指すことが大切です。
治療しなかった場合
コレラを治療せずに放置すると、大量の水様性下痢や嘔吐によって体内の水分や電解質が失われ続けます。
その結果、次のような重篤な状態に進行することがあります。
- 重度の脱水
- 血圧の低下
- ショック状態
- 急性腎障害
- 電解質異常
- 意識障害
特に乳幼児や高齢者では脱水が急速に進行しやすく、適切な治療を受けない場合は命に関わることもあります。
しかし、コレラは早期診断と適切な補液療法によって十分に治療が可能な感染症です。激しい下痢や嘔吐が続く場合は、「そのうち治るだろう」と自己判断せず、速やかに医療機関を受診しましょう。
コレラの予防方法
コレラを予防するためには、コレラ菌を口から体内へ取り込まないことが重要です。
日本では衛生環境が整っているため感染する機会はほとんどありませんが、流行地域へ渡航する際には十分な注意が必要です。
ここでは、日常生活や海外渡航時に実践したい予防方法を紹介します。
手洗い・衛生管理
コレラをはじめとする感染症を予防する基本は、こまめな手洗いです。
食事の前や調理前、トイレの後には、石けんと流水で十分に手を洗いましょう。
また、調理器具や食器を清潔に保ち、生の食品と加熱済みの食品を分けて扱うことも重要です。家庭内で感染者がいる場合は、便や嘔吐物を適切に処理し、手袋やマスクを着用して感染拡大を防ぎましょう。
飲み水・食べ物に注意する
コレラは、汚染された水や食品を介して感染することが多いため、飲食物の衛生管理が欠かせません。
特に海外の流行地域では、次のような点に注意しましょう。
- 未処理の水や生水は飲まない
- 密封されたミネラルウォーターを選ぶ
- 氷入りの飲み物は避ける
- 十分に加熱された料理を食べる
- 生の魚介類やカットフルーツは控える
「加熱する・皮をむく・安全な水を選ぶ」という基本を意識するだけでも、感染リスクを大きく減らすことができます。
海外渡航時の注意
コレラが流行している地域へ渡航する場合は、事前に現地の感染症情報を確認しておくことが大切です。
滞在中は飲食物に注意するだけでなく、手指消毒剤を携帯し、食事前やトイレの後に使用すると感染予防に役立ちます。
また、帰国後数日以内に激しい下痢や嘔吐が現れた場合は、海外渡航歴を医療機関へ伝えたうえで早めに受診してください。渡航歴は診断の重要な手がかりとなり、適切な検査や治療につながります。
コレラワクチンについて
コレラは、衛生管理や安全な飲食物の選択によって予防することが基本ですが、流行地域へ渡航する場合にはワクチン接種が検討されることがあります。
日本ではコレラの発生が少ないため、日常生活でワクチン接種が必要になることはほとんどありません。しかし、海外で感染リスクが高い地域へ渡航する方は、渡航先や滞在期間に応じて接種が推奨される場合があります。
ここでは、日本で接種できるワクチンや、接種を検討したほうがよい人について解説します。
日本で接種できる?
現在、日本では定期接種として実施されているコレラワクチンはありません。
そのため、一般の方が日常的に接種する機会はほとんどなく、国内でコレラを予防する目的で広く使用されている状況ではありません。
一方、海外では経口コレラワクチンが使用されている国もあり、流行地域への渡航者や現地で活動する医療従事者、人道支援活動に従事する方などを対象に接種が行われています。
ワクチンは感染リスクを下げる効果が期待できますが、完全に感染を防げるわけではありません。そのため、接種した場合でも、安全な飲み水や十分に加熱された食品を選ぶなど、基本的な感染対策を継続することが大切です。
海外渡航前に接種した方がよい人
コレラワクチンは、すべての海外渡航者に必要なわけではありません。
次のような方は、渡航先の感染状況に応じて接種を検討することがあります。
- コレラが流行している地域へ渡航する方
- 流行地域に長期間滞在する予定の方
- 医療支援や災害支援に従事する方
- 衛生環境が十分ではない地域へ渡航する方
渡航前には、外務省や厚生労働省などが公表している感染症情報を確認し、必要に応じて渡航外来や医療機関へ相談しましょう。
コレラが流行している国・地域
コレラは、日本ではほとんど発生しませんが、世界では現在も流行が続いている感染症です。
特に、安全な飲み水や衛生設備が十分に整っていない地域では感染が広がりやすく、大規模な流行が発生することもあります。
海外旅行や出張を予定している方は、渡航先の感染状況を事前に確認しておくことが大切です。
主な流行地域
コレラは、世界各地で発生していますが、特に次の地域で流行が報告されています。
- アフリカ地域
- 南アジア
- 東南アジアの一部
- 中東の一部地域
これらの地域では、自然災害や紛争などによって衛生環境が悪化すると、コレラが急速に拡大することがあります。
また、流行地域は年によって変化するため、渡航前には最新の感染症情報を確認することが重要です。
海外旅行で注意すること
コレラの流行地域へ渡航する際は、感染予防を意識した行動が大切です。
特に次の点に注意しましょう。
- 生水は飲まず、安全な飲料水を選ぶ
- 氷入りの飲み物は避ける
- 十分に加熱された料理を食べる
- 生の魚介類や生野菜はできるだけ避ける
- 石けんによる手洗いや手指消毒を徹底する
また、帰国後に激しい下痢や嘔吐などの症状が現れた場合は、海外渡航歴を医療機関へ伝えたうえで速やかに受診してください。
コレラで起こる合併症
コレラでは、大量の水様性下痢によって体内の水分や電解質が急速に失われるため、さまざまな合併症を引き起こすことがあります。
特に治療が遅れると重症化しやすく、命に関わる状態になることもあるため注意が必要です。
ここでは、コレラで起こりやすい主な合併症について解説します。
重症脱水
コレラで最も注意すべき合併症が重症脱水です。
大量の下痢や嘔吐が続くことで体内の水分が急速に失われ、血圧低下や頻脈、意識障害などが現れることがあります。
重症脱水は短時間で進行するため、早期の補液療法が欠かせません。
急性腎障害
脱水が進行すると、腎臓への血流が低下し、急性腎障害を引き起こすことがあります。
尿量が著しく減少したり、腎機能が低下したりするため、重症例では継続的な全身管理が必要になります。
電解質異常
コレラでは、水分だけでなくナトリウムやカリウムなどの電解質も大量に失われます。
電解質異常が進行すると、筋肉のけいれんや不整脈、意識障害などを引き起こすことがあるため、血液検査で状態を確認しながら適切に補正します。
低血糖・栄養不良
乳幼児や栄養状態が良くない方では、下痢や嘔吐によって十分な栄養が摂れず、低血糖や栄養障害を起こすことがあります。
特に小さな子どもは体内に蓄えられるエネルギーが少ないため、短時間で状態が悪化することがあります。適切な補液と栄養管理を行うことで、多くの場合は改善が期待できます。
コレラについてのよくある質問
コレラは人から人へうつりますか?
コレラは、患者さんとの日常的な接触だけで感染することはほとんどありません。
主な感染経路は、コレラ菌で汚染された飲み水や食品を口にすることです。ただし、患者さんの便や嘔吐物を適切に処理せず、手洗いが不十分なまま飲食をすると感染する可能性があります。
家庭内で患者さんを看病する場合は、排泄物や嘔吐物を適切に処理し、石けんによる手洗いを徹底することが感染予防につながります。
コレラは自然に治りますか?
軽症の場合は自然に回復することもありますが、自己判断で様子を見ることはおすすめできません。
コレラでは大量の水様性下痢によって短時間で脱水症状が進行することがあり、治療が遅れると重症化するおそれがあります。
激しい下痢や嘔吐が続く場合は、早めに医療機関を受診し、適切な補液や治療を受けることが大切です。
日本ではほとんど見られないのはなぜですか?
日本では上下水道の整備や食品衛生管理が徹底されているため、国内でコレラが流行することはほとんどありません。
また、安全な飲み水を利用できることや、食品の衛生基準が高いことも、感染を防いでいる理由の一つです。
一方で、海外の流行地域で感染し、帰国後に発症する輸入感染症は毎年報告されています。そのため、海外渡航時には飲食物の衛生管理に注意することが重要です。
コレラと食中毒は違いますか?
コレラは、細菌による食中毒の一種と考えられることがありますが、一般的な食中毒とは特徴が異なります。
一般的な細菌性食中毒では、腹痛や発熱が目立つことが多い一方、コレラでは「米のとぎ汁様便」と呼ばれる大量の水様性下痢や重度の脱水が特徴です。
また、コレラは感染症法の対象となる感染症であり、診断された場合は医師による保健所への届出が必要です。
コレラワクチンは必要ですか?
日本国内で生活する方が、コレラワクチンを接種する必要性は高くありません。
しかし、コレラが流行している地域へ渡航する方や、現地で医療・支援活動を行う方などは、渡航先の感染状況に応じて接種が検討されることがあります。
ワクチンを接種した場合でも、感染を完全に防げるわけではありません。安全な飲み水を選ぶことや、十分に加熱された食品を食べること、手洗いを徹底することなど、基本的な感染予防対策を続けることが大切です。
コレラを正しく理解して感染を予防しよう
コレラは、コレラ菌によって引き起こされる感染症で、汚染された水や食品を介して感染します。特徴的な症状は「米のとぎ汁様便」と呼ばれる大量の水様性下痢で、短時間で脱水症状が進行することがあるため注意が必要です。
日本国内で発生することはまれですが、海外の流行地域への渡航をきっかけに感染するケースが報告されています。渡航先では、安全な飲み水を選ぶことや十分に加熱された食品を食べること、手洗いを徹底することなど、基本的な感染対策を心がけましょう。
また、激しい下痢や嘔吐が続く場合は、自己判断で様子を見るのではなく、速やかに医療機関を受診することが大切です。早期に適切な補液や治療を受けることで、多くの場合は回復が期待できます。
症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。
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■ 参考・出典
- 厚生労働省「コレラ」
(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-03-01.html) - 厚生労働省検疫所 FORTH「コレラ(Cholera)」
(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/name05.html)
■ この記事を監修した医師
赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック
近畿大学 医学部 卒
近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。
医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。
医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。
- 公開日:2026/03/03
- 更新日:2026/08/04
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