巨細胞性動脈炎(GCA)きょさいぼうせいどうみゃくえん

巨細胞性動脈炎(GCA)は、50歳以上に起こる大血管炎で、主に側頭動脈など頭部の血管が炎症を起こす病気です。強い頭痛や視力障害をきっかけに見つかることが多く、失明や脳卒中を防ぐために、早期診断と速やかなステロイド治療がとても重要ですが、適切に治療すれば長期予後は比較的良好とされています。

⚫︎巨細胞性動脈炎(GCA)とは?

巨細胞性動脈炎は、主に50歳以上の方に起こる「血管炎(血管の炎症)」の一種で、大動脈とその枝(特に側頭動脈や頸動脈などの中〜大型動脈)に炎症が起こる病気です。頭の外側を走る「側頭動脈」が障害されることが多いため、以前は「側頭動脈炎」とも呼ばれていました。

血管の壁を調べると、多くの核をもつ大きな炎症細胞「巨細胞」が見られることから、この名前がついています。
欧米の白人に多く、日本を含むアジアでは比較的まれですが、近年は国内でも診断される例が増えています。女性にやや多く、リウマチ性多発筋痛症(肩・腰周囲の強い痛みとこわばりを主症状とする病気)を合併することもよく知られています。

⚫︎巨細胞性動脈炎(GCA)の原因

巨細胞性動脈炎のはっきりとした原因は分かっていませんが、次のようなことが関係していると考えられています。

免疫の異常

本来は細菌やウイルスなどを攻撃する免疫が、何らかのきっかけで自分の血管を標的としてしまい、大動脈や側頭動脈の壁に炎症を起こすと考えられています。ステロイドがよく効くことから、自己免疫性の病気と考えられています。

遺伝的な素因

白血球の型(HLA)のうち、HLA-DRB1など一部の型との関連が報告されています。ただし「遺伝病」というより、発症しやすい体質の一因と考えられています。

環境要因

高齢になるにつれて免疫のバランスが変化することや、ウイルス・細菌感染などの環境因子が組み合わさり、発症のきっかけになる可能性が指摘されています。

なお、家族に同じ病気の方がいても、必ずしも発症するわけではありません。

⚫︎巨細胞性動脈炎(GCA)の症状は?

症状は血管のどこに炎症が起こるかで変わりますが、代表的なものは次の通りです。

頭部の症状

  • こめかみ(側頭部)中心の、今までに経験したことがないような新しい頭痛
  • 頭皮のピリピリした痛み(髪をとかすと痛いなど)
  • 側頭部の血管(側頭動脈)が太く触れたり、押すと痛い

目の症状

  • 片目の一時的な見えにくさ(視野が欠ける、かすむ)
  • 突然の視力低下や失明

これは眼に血液を送る動脈がつまることで起こり、緊急対応が必要です。

あごや顔の症状

  • 食事や会話であごを動かしたときの痛み(あご跛行)
    これは、あごの筋肉に行く血流が不足しているサインの一つです。

​​症状は一度にすべて出るわけではなく、頭痛だけ、視力の症状だけから始まることもあります。

⚫︎受診の目安

次のような場合は、早めの受診が重要です。

  • 50歳以上で、今までにないタイプの強い頭痛が続く
  • こめかみを押すと痛い、血管が太く触れる
  • 物をかむとあごがだるい・痛い
  • 片目が一時的に見えにくくなる、視野が欠ける、急に視力が落ちた
  • 原因不明の発熱や倦怠感に加え、肩や腰周りの強いこわばりを伴う
  • 医療機関で血沈(赤沈)やCRPが高いと言われたが、はっきりした原因が見つかっていない

特に、視力の変化(見えにくい・視野が欠ける・急な視力低下)がある場合は、一刻も早く眼科とリウマチ膠原病内科などの受診が必要です。放置すると失明が固定する可能性があります。

⚫︎診断方法と治療方法(全体像)

診断は、

  • 症状(頭痛・視力障害・あごの痛み・全身症状など)
  • 血液検査(炎症反応や自己抗体)
  • 画像検査(エコー、MRI、PETなど)
  • 側頭動脈生検(組織検査)

を組み合わせて行います。

治療の中心は

副腎皮質ステロイド(プレドニゾロンなど)による炎症の早期コントロールです。視力障害や脳梗塞などの重い合併症を防ぐため、多くの場合は疑いの段階からステロイドを開始し、その後検査結果を見ながら確定診断を進めます。
難治例や再燃を繰り返す場合には、トシリズマブ(IL-6阻害薬)などの生物学的製剤とステロイドを併用する治療も行われています。

⚫︎巨細胞性動脈炎(GCA)の診断

1)問診・診察

  • 発症年齢(通常は50歳以上)
  • 頭痛の性質と部位、視力の変化、あごの痛み、肩や腰のこわばり、発熱などの有無
  • 側頭部の血管の太さや圧痛、脈の触れ方、四肢の脈の強さ・血圧差などを確認します。

2)血液検査

  • 赤沈(ESR)やCRPなどの炎症反応は、多くの症例で高値になります。
  • 貧血や血小板増多がみられることもあります。
  • 他の膠原病や血管炎との鑑別のために自己抗体を調べることもあります。

3)画像検査

  • 側頭動脈エコー:血管壁のむくみによる「ハローサイン」と呼ばれる所見が見られることがあります。
  • 造影MRI、CT、FDG-PETなどで、大動脈やその枝の炎症や狭窄・瘤の有無を評価します。

4)側頭動脈生検(組織検査)

  • 局所麻酔で側頭動脈の一部を切り取り、顕微鏡で観察します。
  • 血管壁に単核球の浸潤や肉芽腫性炎症、多核巨細胞が見られれば診断の有力な証拠となります。

これらの結果を総合して、国内外の診断基準(日本の診断指針やACR/EULAR分類基準など)に照らし合わせて診断します。

⚫︎巨細胞性動脈炎(GCA)の治療

A. 初期対応(まずやること/基本方針)

ステロイド(副腎皮質ホルモン)

視力障害のリスクが高い場合は、速やかに中等量〜大量のステロイド内服や点滴を開始します。その後、症状や血液検査の改善を見ながら、数か月〜年単位で少しずつ減量していきます。

リウマチ性多発筋痛症を合併している場合

同じステロイド治療で両方の病気の症状が改善することが多く、投与量や減量速度を慎重に調整していきます。

B. 再燃予防・ステロイド減量の工夫

免疫抑制薬

メトトレキサートなどの免疫抑制薬を併用し、ステロイドの量を減らしながら再燃を防ぐ方法がとられることがあります。

生物学的製剤(トシリズマブなど)

ステロイド依存や再燃を繰り返す難治例では、IL-6阻害薬(トシリズマブ)を併用することで、炎症のコントロールとステロイド減量を図る治療が報告されています。

C. 生活上の注意

ステロイドの副作用(糖尿病、骨粗しょう症、高血圧、感染症など)を予防するため、食事・運動・骨のケア(ビタミンDやカルシウム)、ワクチン接種などを主治医と相談しながら行います。
禁煙や適正体重の維持も、大血管病変や動脈硬化のリスク低減に役立ちます。

⚫︎巨細胞性動脈炎(GCA)の予後

治療法が整った現在では、巨細胞性動脈炎の生命予後は全体として比較的良好とされています。一方で、治療が遅れた場合には、失明や脳梗塞、大動脈瘤・大動脈解離などの重い合併症が起こり得るため、早期診断・早期治療が非常に重要です。

ステロイド開始後は、多くの方で頭痛や全身症状は速やかに改善しますが、数年単位での再燃や、長期のステロイド使用に伴う副作用が問題になることがあります。そのため、定期的な血液検査・画像検査とともに、骨密度や血圧・血糖のチェックも行いながら、慎重に経過をみていきます。

⚫︎巨細胞性動脈炎(GCA)の予防

発症そのものを確実に防ぐ方法は、現在のところ分かっていません。

ただし、

  • 早期に症状に気づき、受診を遅らせないこと
  • 診断後は、自己判断でステロイドを中断せず、主治医と相談しながら減量・中止のタイミングを決めること
  • 禁煙、血圧・脂質・血糖のコントロールなど、血管全体の健康を保つこと

は、重い合併症の予防や長期予後の改善につながります。

⚫︎巨細胞性動脈炎(GCA)に関連する病気や合併症

リウマチ性多発筋痛症

肩・腰周りの痛みと朝のこわばりを主症状とする病気で、巨細胞性動脈炎の約半数に合併するとされています。

脳梗塞・一過性脳虚血発作(TIA)

頭や首の動脈の血流が悪くなることで、脳梗塞やTIAを起こすことがあります。

視神経障害・失明

眼に血液を送る動脈が詰まることで、視神経が障害され、突然の視力低下や失明につながることがあります。

大動脈瘤・大動脈解離

長期の経過で大動脈に炎症や弱まりが生じ、大動脈瘤や解離を起こすことがあり、定期的な画像検査でのチェックが勧められます。

ステロイド治療に伴う合併症

骨粗しょう症、糖尿病、高血圧、感染症、白内障・緑内障などがあり、予防と早期発見が大切です。

⚫︎まとめ

巨細胞性動脈炎は、50歳以上の成人に好発する大血管炎であり、側頭部の頭痛や視力障害が主要な初発症状として知られています。

本疾患において最も懸念されるのは、虚血性視神経症による視力消失や脳血管障害です。しかし、早期の段階で診断を確定し、副腎皮質ステロイドを中心とした適切な薬物療法を開始することで、これらの重症な合併症を回避し、良好な予後を期待することが可能です。

治療の鍵は、異変を感じた際の迅速な受診と、寛解(症状が落ち着いた状態)を維持するための長期的な管理にあります。患者さん一人ひとりの状態に合わせた治療計画を主治医と共に進めることで、日常生活の質を維持しながら病気と向き合っていくことが可能です。

 

症状が気になる場合や、体調に異変を感じたら自分で判断せず、医療機関に相談するようにしましょう。

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■ 参考・出典

■ この記事を監修した医師

赤松 敬之医師 西梅田シティクリニック

近畿大学 医学部 卒

近畿大学医学部卒業。
済生会茨木病院にて内科・外科全般を担当。
その後、三木山陽病院にて消化器内科・糖尿病内科を中心に、内視鏡を含む内科全般にわたり研鑽を積む。
令和2年9月、大阪梅田に『西梅田シティクリニック』を開院。

「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。 医院経営や医療関連のビジネスにも携わりつつ、医療現場に立ち続ける。
さらに、医師として医薬品の開発や海外での医療支援にも従事している。

  • 公開日:2026/03/11
  • 更新日:2026/03/11

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